稜線に吹く風をさがして

そのとき、その場所にしかない風景をさがして。山登りの記録と記憶。

霊仙山 - 咲き誇る福寿草とカレンフェルトの台地 (2017.4.16)

ルート : 榑ヶ畑 → 落合 → 西南尾根 → 霊仙山 → 榑ヶ畑 (周回)
天候 : ガス のち 晴れ


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私事だが、この4月から単身赴任で名古屋在住となった。
4年前にも1年半の間、愛知に住んでいたことがあって、その時にいくつか鈴鹿の山々を登っている。
そして、東海地方での復帰戦に選んだのが 「霊仙山」 である。

霊仙山は鈴鹿山脈の最北部に位置する。
「花の百名山」に数えられており、花シーズンの開幕を告げるこの時期の主役は福寿草である。
例年だと3月末から4月初めが盛りのようだが、雪の多かった今年は開花が遅れている模様。
願ったり叶ったりのタイミングとなった。

今回、スタートとするのは米原に近い「榑ヶ畑登山口」である。
ここまでは醒ヶ井養鱒場から狭い林道を10分ぐらい走って到着する。
駐車スペースはあまり広くなく、10台分程度しかない。この日は、6時の到着時点で2台先着だった。
なお、下山時にはかなり下の方まで路駐の列が続いていた。


準備を整えて、6:20にスタート。
真っ直ぐに広い林道を進み、最初のヘアピンカーブから登山道に入る。
植林の森を10分ぐらい歩くと「山小屋かなや」が見えてくる。


分かりやすい看板があったので記録として。
今回は汗拭き峠から落合・今畑に向かい、西南尾根登山道で山頂に向かうルートを選択。


山小屋からは本格的な登りになって、10分で汗拭き峠。
ここから落合へはいったん下りとなる。降り始めはなかなかの急斜面だった。
ちなみに、このルート、現地に表示や規制線はなかったが、
米原市のHPには数年前の台風被害で通行止めと表記されていることを記しておく。


これが台風の爪痕。ルートはやや高巻きを迂回するので、問題なく通ることができた。


やがて沢が近づいて、ひとつめの徒渉。
過去のレポートなどを読むと水量によっては苦労することがあるようだ。
夜のうちは雨が降っていたのでちょっと心配していたけど、思っていたよりも楽に渡ることができた。


ふたつめの徒渉は水没した飛び石を使い、靴を半分ぐらい水に浸して通過。
もっと水量があるとやや苦戦するポイントかもしれない。


汗拭き峠から30分と少しで、廃村の落合集落まで降りてきた。
ここからは少し車道を行くことになる。
人気のない集落を歩くのは、あまり気持ちのいいものではなかったが、
神社などは手入れが行き届いている感じで、まだ完全に忘れられた場所という訳ではなさそう。


そして今畑登山口。ここからが本当のスタートも言える。


西南尾根コースを登り始める。
植林、廃村を抜けると、だんだんと自然林に変わって行く。
日差しがあれば、もっと透き通ったような緑色に見えるのだろうけど、それでも十分にきれいな新緑だ。


標高を上げていくと、鈴鹿の山らしい石灰岩が目立つようになってくる。


笹峠が近づくと視界が開けるが、あれれ、山頂方面はガスの中…。
天気は回復傾向のはずなので、青空を信じて登り続けるしかない。


近江展望台に向けて、なかなかの急斜面を登って行く。
風景は御池岳の方角だと思うが、霞で遠望は効かず。


やがて周囲は真っ白に…。基本、尾根通しでいいと思うが、ルートミスしないよう慎重に登って行く。
足下は岩々していて、歩きやすいとは言えない。 


風景を楽しむことはできないので、小さな花に励まされるように、ひたすら前へ進み続ける。


ネコノメソウもたくさん咲いていた。


そうして、今畑から1時間半ぐらいで近江展望台に到着。
しかし、当然のように何も見えない。晴れていれば、琵琶湖なんかが良く見えるのだろうけど…。


ここからは山稜に向けて稜線を辿るルートになるが、
実際の道(踏み跡)は稜線筋の少し下、東側の斜面にトラバース気味に付いていた。
それも錯綜しているものだから、ガスに巻かれている状況ではルート選択に注意が必要だった。

やや迷ったのは「南霊仙」とされる小ピークで、稜線がふたつに分かれるポイントである。
右手方向にやや下って行くのが正解だが、視界が効かず、なかなか確信が持てなかった。

そんな中、今回のお目当てである福寿草を発見。岩の間に小さく顔を出していた。


こちらは仲良く並んで。 
この透き通るような黄色の花は、癒しと元気をもらえる気がする。


岩々の稜線の北西側は灌木帯になっていて、
その中は足場に気をつけないといけないほどの大群生だった。


一生懸命に花を開こうとしている姿が愛くるしい。


寄り添うように咲いて。


逆光に透ける福寿草。


灌木帯から出ると、これまで視界を遮っていたガスが晴れてきていた。
こういう稜線だったんだ。


今年は雪が多かったせいで、開花時期がだいぶ遅くなった。
茎が伸びて背の高い福寿草が多いのは、その影響かも知れない。


明け方までの雨のおかげもあってか、みんな活き活きと咲いているように見える。


この場を離れることが惜しく感じたが、切りがないので先に進むことにする。 
登ってきた西南尾根(何故、南西じゃないの?)を振り返るとこんな感じ。


東側の斜面は広く開けており、草原に木々が点在していてどこか牧歌的。
新緑や紅葉の時期に見てみたい風景である。


稜線の西側には、たおやかな曲線を描く霊仙山の山頂方面。 


ここまで来ると、もうきつい登りはない。
散歩気分で快適な山歩きを経て、霊仙山の最高地点まで目前。


10:20 霊仙山・最高点
福寿草の撮影に時間を掛けすぎたので、それほど疲れを感じないけど、いちおうの達成感。
少し早いけど、山頂方面が混んでいるのが見えたので、ここで昼食とした。


北側の眺望。伊吹山が頭だけ出していた。


鈴鹿方面の御池岳と藤原岳。
あちらも福寿草で有名だけど、たくさん咲いているだろうか?


やたらアルペンチックな雰囲気の避難小屋と背景に伊吹山。
昼食を取っている間に、ガスがだいぶ抜けて来た。


伊吹山を望遠で捉える。
これまでちゃんと意識して眺めたことはなかったと思うが、なかなかどっしりとしたいい山容だ。
雪ががっつりある時期に登ってみたい。


カレンフェルトらしい光景の広がる山頂部。


この開放的な山頂部の風景は、間違いなく霊仙山の魅力のひとつ。
何も知らずに登ってきたら、驚くだろうし、感動することだろう。


山頂の直下には、まだまだ大きな雪渓があった。


最高点から15分で山頂に到着。


山頂といっても、だだっ広い辺り一帯が山頂みたいなものだから、景色は代わり栄えしないが…。


多くの登山者で騒がしい山頂を早々に後にし、経塚山を経由して榑ヶ畑へ下山する。
このあたりもカレンフェルトらしくて好きな風景。


あちこちに穴(ドリーネ)が開いている。
もっと大きくて深いものもたくさんあって、落ちたら大変?


経塚山を振り返って、そろそろカレンフェルトも見納めとなる。


お虎ヶ池。色々と謂われがあるようだが、池自体はいたって普通。


 一気に下って樹林帯の中へ入る。


汗拭き峠に咲いていたスミレ。
福寿草以外はあまり花が咲いていなかったけど、色のある春はやっぱりいい。


山小屋かなやの周辺には、たくさんのミヤマカタバミ。


山頂から1時間半で榑ヶ畑登山口に下山。
咲き誇る福寿草に、独特のカレンフェルト台地と、イベント性も高い霊仙山。
春先のトレーニングとしてもまずますの疲労感で、充実した山行となった。


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谷川岳 - 神々しいまでの白銀世界を行く (2017.1.7)

ルート : 天神平 → 谷川岳 → 天神平 (ピストン)
天候 : 晴れ (山頂付近は風強し)


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2017年の初登りは谷川岳へ。
昨シーズンは冬に一度も山へ行っていないので、2年ぶりの雪山である。

谷川岳といったら「魔の山」なんて呼ばれるけど、あれはロッククライミングでの遭難の話。
冬山を軽視してはいけないけど、3連休の初日、しかも晴天予報となれば多くの人が登るだろうから、
雪山初心者でも敷居はそれほど高くない。

がっつり雪山やスキーに行くわけではない僕は、車に冬タイヤを履かせていない。
ロープウェイまでの道のりはさすがに積雪、凍結しているようなので、次のようなアクセスを計画した。
関越道の月夜野インターから国道17号経由で、新幹線の上毛高原駅へ。
ここまでの路面状況は問題なかった。(もちろん事前にネットなどで状況を把握済み)
駅前の駐車場に車を停めて、路線バスへ乗り換える。

バスの始発は少し遅めの8時。
のんびりバスの写真なんて撮っていたら、新幹線が到着して、続々と登山客がこちらに向かってくる。
慌てて乗り込むと、結局、席は全部埋まって、5名ぐらいが立つこととなった。

この後、水上駅でたくさんの乗客があり、バスは通勤さながらの満員状態に。
ルート的には沼田駅から上越線で水上駅へ、そしてバス乗り換えも選択肢にあったが、
上毛高原経由をおすすめしておく。


上毛高原から45分掛かって、谷川岳ロープウェイ駅のベースプラザに到着。
10分ぐらい切符を買う列に少し並んで、ここで登山届を提出する。
谷川岳のロープウェイはゴンドラタイプなので、待ち時間なく、乗り込むことができた。
スキーヤー、スノーボーダーに混ざって、一気に標高1400メートルの天神平に向かう。
天気は予報通りに快晴である。
白く輝く雪の峰に、早くも気持ちが昂ぶって来る。


天神平に降り立つと、さすがに身の引き締まる寒さ。
久しぶりのアイゼンを付けて、防寒対策もしっかり、身支度を整える。
スタートは9:45で、バス利用だとどうしてもこれぐらいの時間になってしまう。
かなり遅いが仕方ない。周りにも、まだたくさんの登山客がいた。

ありゃ、ストックのバスケットを雪用に変えてくるの忘れた…。
そのままでもいいかなと思ったけど、なんとなくピッケルで行くことにする。

最初から正面に谷川岳が見えていて、ちょっと有り難味に欠けるけど、あの白い頂を目指して出発。


右側には朝日岳、笠ヶ岳、白毛門の峰々がよく見える。
そういえば、土合橋のバス停で夫婦と思しき一組が下りたけど、あそこを目指しているのか?
いかにも雪深かそうで、大変だろうな。


天神平のゲレンデを横目に見て歩きはじめる。
すでにたくさんのシュプールが付けられているけど、ここは整地していないのかな?
もう10年近く遠ざかっているけど、久しぶりにスキーもやりたくなってきたかも。


こんな時間だから、もちろんトレースはばっちり。
先日に降雪があったようなので、最初のラッセルは大変だったに違いない。
多くの先人に感謝しながら、ウォームアップには少々きつい斜面を登って行く。


20分ぐらい喘ぎ登ると、天神尾根と田尻尾根に分岐(雪に埋もれてよく分からなかったが)に着く。
ここまで来ると、谷川岳がその全体像を見せてくれるようになる。
谷川岳の標高は1977メートルで、2000メートルに少し届かない。
それぐらいの高さしかない山とは思えないほど、どっしりと重厚感に溢れる山容。
そして、純白をまとった頂が美しすぎる。


双耳峰をなす谷川岳。
左側が南峰のトマノ耳。右側が北峰のオキノ耳(最高峰)である。
トマノ耳の左斜面には、小さく肩の小屋も見えていて、早くも登頂目前の登山者がいるようだ。


しばらくの間、樹林帯の中のをトラバース気味に進んだ後、天神尾根に乗っかると、
ここからは開放的な風景の中、楽しい雪山ハイクの時間になる。


左側に見えてくるのが俎嵓(マナイタグラ)からオジカ沢ノ頭の稜線。
これぞ迫力と精彩さとを兼ね備えた雪山の姿。


進む方向には、圧倒されるほどの谷川岳の山容。


ここで急斜面の下りがあって、少し渋滞が発生していた。
通過に5分ぐらい掛かったが、もう少し前方では密集して登山者が列をなしていたので、
その集団の中なら、もっと時間を要したに違いない。

渋滞待ちの間にじっくり眺望を楽しむ。
朝日岳、笠ヶ岳、白毛門には馬蹄形縦走で挑戦してみたいが、チャンスはあるかな?
手前に見えている西黒尾根も登らなくては。


渋滞のボトルネックになっていた急斜面を振り返ると、こんな感じ。
写真の左側は沢に向かって切れているので、ほんの少しだけ高度感がある。
この時はしっかりとステップもできていて、怖さは感じなかったけど、
雪の付き次第ではもっと難易度が高くなるかも知れない。


引き続き、大パノラマの尾根を行く。
尾根筋は風が強いかと思っていたのだが、このあたりは意外にも穏やかで、平和そのもの。


何度見ても美しくて、ため息ばかり出てしまう。


行く先の尾根道に見える行く登山者の列が、いい感じに撮れた。
この写真を見れば、谷川岳がいかに人気の雪山であるか分かるだろう。
翌日からは悪天候になるようなので、余計にこの日に集中したのも知れないけど。
それでも、ストレスになるような混雑ではなく、自分のペースで雪山歩きを楽しむことができた。
遅めのスタートになったけど、それが逆に功を奏したものあるかも。


上の写真の尾根の手前には、熊穴沢避難小屋がある。天神平からちょうど1時間だった。
小屋の埋もれ具合はこんな感じ。例年だとこれからもっと積もるようだ。
疲れは全くないので、そのまま歩みを進める。


避難小屋を過ぎて、このあたりからは風が強くなりはじめた。
スタート直後は歩いていると暑いぐらいでアウターを脱いでいたけど、さすがに寒くなって再び着る。


なかなかの急登が繰り返し現れるようになって、だんだんと息も上がってくる。
振り返れば、遠くに赤城山を望む。 


ひと際、キツイ急登を乗り越えると、森林限界を越えたのか、眩いほどの大雪原が広がっていた。
このあたりは西側からの風がかなり強くて凍えそうだった。


目の前の斜面を山スキーヤーが駆け下りてきた。
すごく恰好が良くて、シュプールも画になっていたのだけど、写真はイマイチだな…。 


俎嵓の高さにだいぶ近づいてきた。ここも真っ白の世界が美しい。


強風と急斜面に苦しめられながらも、一歩ずつ焦らずに登って行く。
頂上はもう近いはずなので、最後のひと踏ん張り。


そして、傾斜がなだらかになって肩ノ小屋に到着。 天神平から2時間とちょっとだった。
小屋の前は休憩する登山者で賑わっていた。
苗場山の方の眺望も開けて、風景はさらに開放的になる。


小屋の向こう側に広がるのは、オジカ沢ノ頭、万太郎山へと続く谷川連峰の主稜線。
風の通り道になっているのか、滝雲のような薄いガスがずっと掛かっていた。
左側に分かれていく俎嵓、川棚ノ頭の稜線の湾曲もいい感じ。


寒風吹き抜ける雪原に佇む指導標。
冬山らしい深い青色の空とのコントラストが、なんだかとても印象に残った。


肩ノ小屋から双耳峰の南側のピークで、トマノ耳までは、もう10分ほど登る必要がある。
夏には笹原が広がっているようだが、今は風紋が刻まれた緩やかな斜面を突っ切って行く。


12:00 谷川岳・トマノ耳
そして、12時ちょうど、トマノ耳に到着。
時間的にはあっけないといえる範囲内だけど、しっかりとした充実感。 


トマノ耳に立ってまず目に飛び込んで来るのが、オキノ耳へと続く稜線。
迫力があるけど繊細にも見える雪庇が続いている。
背後に真っ白な茂倉岳、一ノ倉岳も。


そして360°の大展望。
北東方面は笠ヶ岳、朝日岳。
その左奥、遠くに見えるのは越後三山の越後駒ヶ岳、中ノ岳かな?
右側は平ヶ岳。


山頂の高層湿原が有名な平ヶ岳を望遠で。


尾瀬方面の至仏山と燧ケ岳。


こちらは2年前の冬に登った武尊岳と日光白根山。


万太郎山、仙ノ倉岳まで続く谷川連峰主稜線。
稜線を超えていくガスは、さっきまでよりも密度が薄くなってきているようだ。
左奥には浅間山も見える。

 
山頂が平らな苗場山。
よく見れば背後に後立山もうっすらと控えている。


茂倉岳、一ノ倉岳に続くたおやかな稜線。


谷川主稜線をアップで。なんというか、荘厳ともいえる雰囲気を持っている。
この稜線はいつか、夏か秋に縦走してみたいと思っているのだが、
このアップダウンの繰り返しは、一筋縄ではいかなそう…


ぐるりと一周、眺望を楽しんだ後、オキノ耳へ向かう。
この冬の初めはなかなか寒くならなかったのでこんな感じだけど、
雪庇はこれからもっと巨大に生長するらしい。


さくさく歩いて15分で谷川岳・最高峰のオキノ耳に到着。
山頂標がかろうじて頭を出していた。


兎にも角にも、風が強くて、雪庇から舞い上がる雪煙がそれを物語っている。
じっとしているとどんどん体温が下がっていくので、とても長居はできない。
急ぎトマノ耳に戻ることにする。


岩には巨大なエビの尻尾が成長中。 


写真だけ見ると穏やかそうな風景だが、実際にはめちゃくちゃ寒い。
他の登山者がたくさんいるので危機感は感じないけど、ひとりだったら心折れそう…


いつの間にか主稜線のガスが消え去っていた。 


雪山が寒いのは当たり前のことで、だんだん最高の雪山ハイク♪ って思えてきた。
なかなか天気の安定しない山域で、これだけ晴れてくれたのは幸運かも知れない。
存分に楽しもう。 


トマノ耳の直下はシュカブラもできていた。


トマノ耳に登り返したあと、肩ノ小屋に緩やかに下っていく。
こうして見ると、この小屋、最高のロケーションに立っている。


凍てついた指導標。


半端ない寒さの中、ゆっくり食事するのも億劫なので、
風の避けられる小屋の影でパンをかじるだけの少し寂しいランチを済ます。

それにしても、2000メートル足らずしかないとは思えない風景が、相変わらず目の前に広がっている。
人が容易に立ち向かうことの許されない、神々しいまでの白銀の世界。
その入り口で、真っ白な世界の美しさに心震え、そして同時に冬の山々に対する畏怖を感じる。

また一歩、雪山の魅力に取りつかれてしまったかな。


昼食後、多少急げば、予定してたバスよりも一本早く帰れそうなので、ガシガシ下って行く。


美しき雪景色に別れを告げて。
午後になって陰影がはっきりしてきたことで、俎嵓は立体的な風景に。


谷川岳も少しまどろんだような感じに見える。
山頂の厳しい世界が嘘のように優しい表情だった。


1時間20分で天神平に下山できた。


アイゼンを外して、ロープウェイで麓に帰還。
ただ、乗ろうとしていたバスが冬ダイヤでは運行しておらず、16時発の便まで1時間以上、待つことに…
ベースプラザの食堂は休日にもかからわず、昼を過ぎたら営業していなかった。
バスの時間調整をする場合は、ロープウェイに乗らないで天神平のレストハウスがいいだろう。

ちなみに翌日からは悪天になったようなので、最高の日に登ることができて幸運だった。
最後にちょっとミスしたけど、今年は幸先のいいスタートが切れたかな?

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奥穂高岳 - 夏から秋へ、厳しくも優しかった穂高の山々 (Day 2 ; 2016.9.10)

(1日目) 上高地 → 岳沢 → 前穂高岳 → 奥穂高岳 → 穂高岳山荘 泊
(2日目) 穂高岳山荘 → 涸沢 → 横尾 → 上高地

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ぐっすりと眠ることができて迎えた朝。
9月の穂高稜線の朝は当然のように寒く、凍えながら小屋前のテラスに出ると、
雲海の水平線から一日が始まろうとしていた。


4時を少し回ったところだが、小屋の中では、
北穂高に縦走する人や奥穂高へご来光を見に行こうとする人たちが、すでに騒がしく準備をしている。
僕は涸沢に下って、そのまま上高地に下山するだけの予定なので、そう慌てる必要もない。
ただ、ご来光は静かに迎えたいので、涸沢岳まで登るつもりでいた。

談話室で昨晩、受け取っていたお弁当を食べていると、小屋のスタッフさんが温かいお茶をくれた。
こういう気遣いは嬉しい。

しっかりと防寒対策をして、4:50に涸沢岳へ向かう。
途中、前穂高の向こうに富士山と南アルプスを望むことができた。


20分掛けて到着した涸沢岳の山頂は360°の大パノラマ。
ただ、涸沢側はスパッと切れ落ちているので、注意しながら眺望を楽しむ。
北側には北穂高と槍ヶ岳。


朝焼けに穂先を突き刺す槍ヶ岳。
無条件にカッコいい、そのシルエットに惚れ惚れ。
昨日は完全な姿を見ることができなかったので、妙に嬉しくなってしまう。 


奥穂高と前穂高の上に茜色の朝焼け雲。


常念山脈の向こう側、雲海から朝日が昇ってきた。
冷え込みは思ったほどでなかったけど、やっぱり太陽は温かく、そのぬくもりにほっとする。


涸沢カールにも陽の光が入って来た。
下から見上げた穂高の稜線は、素晴らしいモルゲンロートになっているのではなかろうか?


奥穂高は稜線を挟んで明と暗に。


大キレットから槍ヶ岳の稜線。岩肌が赤く染まっていた。 


槍ヶ岳の右奥に位置するのは後立山連峰。
双耳峰の鹿島槍と三角の山頂の白馬岳が目立って見える。 


西側の眺望。笠ヶ岳、黒部五郎岳の山頂にも陽が当たりはじめた。


そこからさらに北側に視線を動かせば、北アルプスの最深部、黒部の山々。
双六岳、薬師岳、鷲羽岳、水晶岳、赤牛岳などなど。
1週間ぐらい掛けて、雲の平あたりをゆっくり歩くことが夢のひとつだけど、
家族持ちにはなかなか叶わぬ願いかな…


すっかり明るくなってきて、険しい穂高の稜線から大キレットが丸見え。
ここは歩いてみたいような、歩きたくないような…。
いずれにせよ、今はまだ挑戦したいと思わず、
それは自分の中で準備が足りていないという自覚があるからなんだろう。


ロバの耳とジャンダルムに差すスポットライト。


奥穂高の空もしっかりとした青色になった。
40分も楽しんだ穂高の朝の風景。そろそろ小屋に戻ろう。


小屋前で朝弁当の残りを食べて、6時半に下山開始。
ザイテングラードで涸沢に下る。


ドイツ語で "支稜線” を意味するザイテングラード。
すぐ岩場がはじまるが、特に怖いと感じるところはなかった。
ただ、ここは事故が絶えないところなので、慎重に下りていく。


これは帰ってから知ったことなのだが、
ザイテングラードでは、9月に入ってわずか10日足らずの間に3件もの死亡事故が起きてしまった。
いずれも下山中の事故で、僕が歩いた前日にも、ひとりの登山者が亡くなっていたのだ。
さすがにこの頻度はイレギュラーだと思うが、最大限の注意と緊張感を持って歩くべき場所だろう。

しかし、景色は最高に素晴らしい。
北穂高の斜面から涸沢カールへの落ち込みは、スケール感が大きすぎ。


このあたりがザイテングラードの核心部か?


途中、涸沢から登ってくるたくさんの登山者とすれ違った。
傾斜はなかなかきつく、登りはかなり大変そうだった。


逆光だけど、前穂高の北尾根がカッコいい。


徐々に離れていく稜線。
間近から見上げる穂高の岩稜は迫力があった。


驚いたのは、草紅葉が既にかなり進んでいたこと。黄金色がきれいだった。


難所を越えて、高度を下げてくると、赤く色付いたナナカマドの実がちらほら。
今はまだ緑の葉っぱだけど、あと2,3週間もすればすっかり紅葉の世界になるのだろう。


パノラマコースで涸沢ヒュッテに出るはずが、分岐を見逃して涸沢小屋に…


8:20 涸沢ヒュッテ
夏の終わりの涸沢カール。抜けるような青空が気持ち良すぎる。
穂高の稜線に囲まれた円形劇場のようなこの場所は、やはり特別な存在感を持っている。
3年前に訪れた紅葉の風景の記憶も甦って来る。(→ 涸沢の紅葉


涸沢槍の尖り具合も堪らなくカッコいい。


北穂高も登らないとなぁ。残雪期に狙っていたりするのだが、叶うか?


涸沢ヒュッテで30分ほど小休憩。
昨日の疲れが抜けきっていないようで、下りなのに、かなり息が上がってしまった。
ここから上高地まで、まだまだ長い道のりが待っている。
まずは横尾を目標に出発。


涸沢カールを見下ろす大展望の屏風の耳が忘れられず、
パノラマコース経由も一瞬考えたけど、間違いなくキツイのでパス。
横尾本谷の曲線が美しい。


涸沢から1時間15分で本谷橋。横尾までやっと半分…。


屏風の頭を見上げて。


そろそろ北穂も見納め。


涸沢から2時間と少しで横尾に到着。
なんだか終わった気になってしまったけど、上高地まであと3時間…。


梓川沿いから見上げた前穂高岳。
今回の山行で前穂高はすっかり思い入れのある山となった。


横尾からの平坦路は、本当に苦行のような時間だった。
それまでは疲れていながらも、そこそこのペースで歩けていたが、ここに来て完全に足が止まった。
ほとんどの人に抜かれたけど、競っても仕方ないので、ゆっくり行く。

徳澤でソフトクリーム休憩(写真忘れ)を挟んで、明神で明神池に立ち寄るか悩む。
次の機会にしようかと思ったが、ひと踏ん張りすることにした。


観光客はたくさんいるけど、池には静寂の時間が流れていた。


梓川のせせらぎに癒されながら、右岸歩道をラストスパート。
岳沢湿原から眺める六百山。


最後に観光客の喧騒に混ざって、河童橋から穂高を見上げた。
昨日と同じように少し雲が掛かっているが、吊尾根が目の前に立ちはだかる。


最近、あまり歩いていないせいか、それとも根本的に体力が足りていないせいか、
なかなかシンドイ山行になってしまった。
それでも、あの稜線を歩いてきたことを少しだけ誇らしく思えた。

山の上での見た風景は何事にも代えがたく、登るたびに、心に刻まれる記憶が増えていく。
山というのは、そこに変わらず居続けているが、いくつもの表情を持っている。
その表情に自分の感情を重ねたら、それこそ無限の風景になって、二度と同じ風景には出会えない。

奥穂高の山頂に向かって一歩一歩を噛みしめた、あの時間が忘れられない。
この穂高は、いつも以上に大切な記憶となりそうな気がしている。 (End)

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