私の名前は安藤雪江。
それは忘れもしない高校2年生の夏休み明けのこと。
新学期になり、若干暑さもピークを過ぎてきた頃だ。
高1から付き合っていた同じ高校の同級生であり、彼氏の筒井隆史がやけに積極的なのだ。
今までは、キスまでは隆史としたことがあった。
しかし、それ以上のことを隆史が求めてくると、私は拒絶した。
もちろん隆史が嫌いになったわけではない・・・。
むしろどんどん惹かれていく自分がいるのがわかった。
だからこそ隆史を受け入れてあげたい気持ちもあったし
彼もセックスを遊びでしたいだけではないというのも理解していた。
ただ、私は怖かった。
初めての経験・・・。当時処女だった私は、セックスに興味はあったが、いざ自分がする立場に
なると考えると、ただただ怖かった・・・。
夏休みに入り、隆史とは中学こそ違ったが自宅は電車で2駅と比較的近く、毎日のように隆史とは顔を合わせた。
学校の帰り道、私と一緒に電車に乗り、隆史が先に降りて私が2駅先の駅で降りる。
比較的近く、歩いてもいける距離だ。
そして付き合ってからは毎日のように体を要求されたが断ってきた。
夏休みが明け、新学期が始まると隆史はさらに積極的になった。
私と会う時間が、夏休みと比べると減ってしまったことが要因だと思う。
同じように私も隆史と一緒にいる時間が恋しくなった。
明くる日、学校が午前で終わったその日、私はついに隆史の自宅で彼と肌を重ねた。
とても痛かった・・・。声に出して叫んでいた・・・。
そしてただただ嬉しかった・・・。声に出して泣いていた・・・。
このときは、私は何も後悔なんてなかった・・・。
隆史とひとつになれたことが嬉しくて・・・。
いつまでも一緒にいたいと思った。
とても幸福感でいっぱいだった。
あんなことになるまでは・・・。
あっという間に冬が来て、世間はクリスマスムード一色だった。
私は不安でいっぱいだった・・・。このとき何ヶ月も生理がきていなかったのだ・・・。
最初の月はただの生理不順だとばかり思っていたが、最近になって胸が張ってきたりと、確実に今までの自分とは
違っていることに気づいた。
隆史は一緒にクリスマスを迎えることで頭がいっぱいで楽しそうにクリスマスの計画を練っていた。
私の体に起きた異変に気づいてほしかった・・・。
何ヶ月も生理がきていないのに・・・。
そんななかで、ある日の下校中、町を一緒に歩いていると隆史は
「あ、そういえばリップクリーム落としちゃったんだ!
すぐ買ってくるから、ここのドラッグストアに寄ってもいいかな?」
といって通い慣れた道にあるドラッグストアを指さした。
私がうなづくと隆史はすぐに店に入りリップクリームの置いてある棚を探し始めた。
外で待っているのもなんだし、寒いので私も一緒に店に入った・・・。
店内はドラッグストアなのにクリスマスをイメージしたポップやディスプレイが
多く飾られていた。
クリスマス特価、3000円お買い上げでサンタさんのストラッププレゼント。
とりわけ、かわいらしいデザインでもなく誰がほしがるのやら・・・。
そんなこんなで店内を見渡していると、店の隅に生理用品コーナーがあった。
私はそのコーナーのさらに奥に追いやられた片隅の商品に目を遣る。
「妊娠検査薬キット・・・」
今の不安な心に追い打ちをかけるシロモノがそこにはあった。
現実逃避をしていたがわかっていた。
私はきっと妊娠をしているのではないか・・・。
私はその商品を手に取り隆史に渡した。
「今は何も聞かないで一緒に買ってきて!」
もちろんたかしは豆鉄砲をくらったハトのようにビックリしている。
「なあ雪江・・・これって・・・」
「隆史は何も聞かないでっていったでしょ!お願いだから早く買ってきて!!恥ずかしいの・・・。」
私は隆史と商品を購入して、足早に店を後にした。
いつものように隆史の自宅に着くと、私はすぐに検査キットを開封し使用した。
説明書もわかりやすく書いてあり、すぐに使用することができた。
尿をかけて陰性か陽性かを判別するタイプのものらしく、トイレを借りて使用した。
隆史の両親は共働きで、母親は夜遅くまで仕事をしていて父親は単身赴任中ということもあり、
隆史の両親にバレる心配はなかった。
結果は案の定・・・陽性だった・・・。
「どうしよう・・・。私妊娠してるみたいなの・・・。」
隆史に初めて打ち明けることになった。
今の私達にはどうしようもできない状況に対して
すごく無力であるという実感がわいてきた。
「・・・・。」
隆史はうつむいてしまったまま何も言わない。
私は不安に覆われしくしくと泣き出してしまった。
「本当に俺の子なのか?」
一瞬、頭の中では想像もしていなかった応えが隆史から返ってきた。
「本当に俺の子供か?って聞いてるんだよ!
確かに雪江とはセックスをしたけど、ちゃんと外に射精したんだから、俺の子供かどうかわからなだろ!」
ビックリしてすぐに言葉が出てこなかったが、すぐに怒りが湧いてきて
「隆史の子供に決まってるじゃない!私、初めてだったんだよ!!もちろん
彼氏の隆史意外の人となんてできるわけないじゃない!!」
真っ赤になった目をこすりながら大声で隆史を責めた。
隆史も言い逃れができない状況であると確信したのか
「じゃあ、おろすしかないだろ。俺たちだけでどうにかできるものじゃない。
俺達には未来があるんだからな」
今度はいたってまともなことを言い返してきた。
「私はお父さんやお母さんに言えないよ・・・。子供できたなんて・・・。
それにこの子を殺してしまうことなんてもっと嫌だ。隆史はそれでいいかもしれないど、私は
おろしたら2度と産めなくなるかもしれないんだよ?それに隆史は来年受験じゃない・・・。
私は就職希望だからいいけど、こんなこと学校にバレたら隆史だって受験どころじゃないし、最悪退学だって・・・」
私は声を枯らしながらも必死に言葉にした。
「馬鹿なことを言うんじゃない!じゃあ産むしかないだろう!!
だけど、俺の未来はどうなるんだ!!これでも俺は一流大学を狙える成績を保っているんだ!!
全部諦めろっていうのか!?」
保身に走る隆史は少し滑稽だ・・・。
「だってしかたないじゃない!!」
私も理解してほしい気持ちで隆史に気持ちをぶつけた。
「クソッ!!・・・もうこうなったら禁じられた連立方程式を解くしかないのか・・・。」
隆史は何やらカルト的なことを言い始めた・・・。
「連立方程式って数学でよく出てくるアレのことだよね・・・。私、あまり勉強得意じゃないから
よくわからないけど・・・。禁じられた連立方程式っていったい何なの!?」
私は藁にもすがる思いで隆史に尋ねた。
「いつかこうなったときの為に考えていたロジックさ・・・。本当に実行しなければならないときがくるとはおもわなかったけどね・・・。」
隆史が何やら良くないことを考えているのはわかった・・・。
だけどどうしようもなかったのだ・・・。
あれから10ヶ月ほど経っただろうか・・・。私は近所のラブホテルで女の子を出産した。
高校3年生の夏休みだった・・・。
お腹はさほど大きくならずに目立たなかったため学校へは通うことができた。
体育なども無理をしない程度に体調不良を訴えながらも乗り切った。
両親にもバレることはなかった。
隆史も受験に集中させるため迷惑は掛けたくなかったのだが、定期的に私の面倒を診てくれた。
出産についても事前に必要なことを調べていてくれていたらしく、ラブホテルでは
わりとすんなり出産することができた。
生まれたばかりの娘は、とても元気で握りしめた指はとても小さく
一生懸命生きようと、私の乳首を一生懸命しゃぶっていた。
「おい、落ち着いたならすぐに実行するぞ!こんなところ誰かに見られるわけにはいかないんだからな!」
隆史が私をせかす。
最初で最後の授乳を終えると
「本当によかったのかしら・・・。こんなかわいい子を・・・。」
「しかたがないんだ・・・。これが俺達もこの子にとっても最善なんだ・・・。」
隆史は子供を抱き抱えると、子供を毛布にくるみ、大きなバックの中に大事に子供をいれた。
私と隆史は足早にラブホテルを後にすると、駅に向かった。
駅につくと用意していた新幹線の切符を取り出し。
二人で乗り込んだ。
そしてすぐに子供をバックから取り出すと抱き抱えたまま空いていた自由席に腰を下ろした。
「いったいどこまでいくの?」
「熊本さ」
隆史は言った。
私たちは九州に上陸すると、すぐに熊本方面の新幹線に乗り換えた。
隆史は実に綿密な計画を立てていた。
まず、出産までの必要な知識、道具をインターネットや図書館などでかたっぱしから調べ上げた。
そして、とにかく出産までの約1年間アルバイトに励んだ。
とにかくこの計画は誰にも知られるわけにはいかない。そしてできるかぎり金が必要だった。
親には学費の足しにしたいと言って、ごまかし勉強も怠らずにがんばった。
そしてかなりの額を隆史は貯めた。
私は両親に友達とフリーきっぷであちこちに旅行に行ってくると伝えた。
隆史も両親に友達と勉強合宿に出かけると嘘をつき
ふたりで出かけた。
もしお互い嘘がバレたとしても、付き合っていることは内緒にしてあるので、
ふたりで出かけたかったといえば、怒られたとしても、まさか内緒で子供を産んでいたとは夢にも思うまい。
新幹線の乗車代金もこの金で支払った。ただ、学生割引もあって安くできたのだが
学割を使うと身元がバレるおそれがあったため、普通に券売機で購入した。
ここまでして、私たちがしようとしていた計画は第3の方程式・・・
つまり禁じられた連立方程式の3つ目・・・。
隆史が妊娠した私に対して逃げるための方程式・・・。
「1つ 認知しない。頑なに自分の子供ではないと主張すること」
「2つ 状況的に自分の子供であるという場合、おろすことを促す」
そしてこの2つが避けて通れない場合の3つ目の禁じられた方程式が・・・
「3つ 赤ちゃんポストへの子供の投函。最悪の場合は国で育ててもらう。また両親は匿名で
投函できるが、身元が割れる可能性が高い。だが未成年の場合はどんな処遇がまっているかはわからない。」
実におそろしいロジックである。
隆史曰く、このポストへ投函された子供は国が責任を持って育てることになる。
両親はやむを得ない事情で子供が育てられない場合、子供への虐待などを防ぐなどのために
熊本県に設置されたらしい・・・。
子供は不自由することはないかもしれないが施設で育ったその子供が幸せになれるのかは
私たちにもわからない。
隆史のロジックに賛同し、この子をポストへ投函しようとしている私が言えたことではないのであるが・・・。
熊本に到着するとすぐにタクシーを捕まえ、赤ちゃんポストの設置された県施設の近くまでやってきた。
時刻は午後3時半を回ったころだ。
タクシーの運転士に少し寄り道したいと言い、タクシーを降りて近くで待機していてもらうことにした。
私と隆史は帽子やメガネをかけ不自然にならない程度の変装をして熊本市内を見渡す。
「ねえ・・・こんな時間にポストに投函したら絶対ばれるよ・・・。どうするの?」
私は率直な疑問を隆史に投げかけたが、隆史は至って冷静だった。
すると隆史は近くを歩いていた小学校低学年の男の子に声をかけた。
「ねえ僕、お兄ちゃん道がわからないんだけど聞いてもいいかな」
隆史の優しそうな笑顔は子供の警戒心を取り去ったらしく
「うん!いいよ」
男の子は小学校1年生くらいだろうか・・・。
黄色い帽子に乳歯の前歯が抜けたばかりの、ちょっと愛嬌のある笑顔で答えた。
「うんとね・・・この近くにコンビニとかってあるかな?」
隆史は何故か子供に道を尋ねた。
「コンビニならあそこの角を曲がって真っ直ぐいけばビックストップがあるよ!」
元気よく答えた。
「ありがとう!あそこの角だね?助かったよ。あついから飲み物買いたくてね・・・。」
と、隆史は男の子の頭をなでると、持っていたガムをお礼にと手渡した。
今時の子供は学校教育で知らない人から物をもらってはいけないなんて
ならっていたりするけど、警戒心を解いてあげればこんなにもあっさりと子供を手懐けられるみたいだ。
私は隆史の考えていることがよくわからなかった。
「あ、そうだボク!あとひとつお願いなんだけどさ・・・この荷物をあそこの窓の中に入れておいてくれるかな?」
その窓とは通称赤ちゃんポストの投函口である窓口のことである。
男の子はもちろん、そんなものの存在など知るはずもなく、小さな親切をして感謝のガムを
もらったことに気分は最高潮に達していたため、快く引き受けてくれた。
私は隆史が男の子を最初から利用するつもりで声をかけたことに、このとき初めて気づいた。
「じゃあ、ボクよろしく頼むよ。この荷物、軽いけど大事なツボが入ってるから落とさないでね?」
「うん、わかった!じゃあね、おにいちゃん!!」
男の子はポストに向かって歩き出した。
「おい雪江!ぼーっとすんな!すぐにタクシーに戻って熊本をでるぞ!」
「えっ!?・・・うん、わかった!!!」
私たちはすぐにタクシーに乗り込み、車を出してもらった。
その直後、どうやら窓口ではセンサーが動き、サイレンを鳴らしたようだ。
あとで隆史に聞いた話だとポストの周りにはカメラが24時間監視していて、赤ちゃんを投函するとセンサーによってサイレンがなる仕組みになっているらしい。
深夜こっそり投函してもバレる可能性があったし、未成年の私たちの場合は深夜行動すると警察に身柄を拘束される可能性があったため
昼間の時間帯をねらったという。やはり隆史は頭が良い・・・。
熊本から、すぐに帰りの新幹線に乗り込み私たちはそれぞれ帰宅した。
赤ちゃんポストへは毎年何人も投函されているため、あまり報道の対象にならず、その後の私たちが疑われることもなく、時間が過ぎて入った。
私はたった1日だけだったが母娘としてすごした娘を忘れることはなかった・・・。
私と隆史の子供であるという証として
「隆江です。かわいがってください・・・。」
と書き記したメモをバックの中に入れておいてことは今でも隆史には内緒にしている。



あれから17年の時が経った。
私は高校を出てからすぐに、自宅近くの運送会社の事務として働きはじめた。
一方で隆史は、福岡の難関大学に現役合格して大学生となり、卒業後は福岡の
大手企業に就職した。
私たちは二人で犯してしまった罪から、お互いが離れられなくなり数年後結婚した。
もちろん隆史のことが嫌いだったわけでもなく、たぶん隆史も私を愛していたと思う・・・。
結婚後は普通に隆史とセックスもしたが、子供には恵まれなかった・・・。
不妊治療も受けにいったのだが、どうやら原因は私ではなく隆史のほうにあったらしい。
隆史はいつの間にか精子が少量しか生産できない体になってしまったらしい。
私たちはもう子供に恵まれないのかもしれない・・・。
子供を捨てた罰なのかもしれない・・・。
ある日、隆史は仕事が早く終わったため早く帰宅した。
いつもはほとんど見てないテレビをつけて、一緒に自宅で食事をした。
私は結婚してからは、仕事を辞め家庭に入り隆史を支えるために家事全般をこなしている。
私が手作りで作ったコロッケをかじりながら隆史はふいにテレビにめをやる。
すると、ちょうど旬な音楽番組がはじまっていた。
「最近はこーゆー音楽が流行ってんのか・・・。時代はすすんだなあ・・・。」
時代に置いて行かれてしまったようなことを口にしながら隆史は笑いながら
私に語りかけた。私もそれに応じる。
この番組は最新楽曲を紹介し、司会がその楽曲のアーティストにインタビューしながら
生演奏してもらう生放送形式のホットな音楽番組だった。
「お次は新曲が大ヒット中のアイドル、下柳隆江ちゃんです!!」
「よろしくおねがいしまーす!」
アイドルの下柳隆江という子が今は人気あるらしい・・・。
司会は次々と質問をしていく。
「隆江ちゃんは、お母さんの手作り料理で好きなものってなーに?」
「うんと・・・私、実はホントのおとーさんもあかーさんも知らないんです!
なんか小さいころに今の両親のところに養子に出されたみたいで?
でも、今のおかーさんはホントの子供みたいに可愛がってくれるから大好きです☆
好きなものは今のおかーさんのマーボー豆腐ですね!」
「へえ、そんな辛いことあったのに平気な顔してがんばってるなんて・・・
おじさんお小遣いあげたくなっちゃうよ!きいてごめんね!!」
「やだぁもう?今は隆江はファンのみんなや今の家族にも応援してもらってとっても幸せです☆」
「がんばれ隆江ちゃん!!じゃあ歌にまいりましょう。ミュージックゴー!!」
軽いノリで話す売れっ子アイドルとおじさん司会のやりとりがなんともおもしろおかしい。
だが、それを観ていた隆史の顔はどんどん青ざめていった・・・。
「なあ、雪江・・・。この子、やけにお前に似てないか?まるで若い頃の雪江をみているみたいなんだが・・・。
しかも、この子の目元の泣きホクロ・・・。確か、あの時の子供にもあったよな・・・。」
隆史は食べかけのごはんを残し、急に立ち上がるとパソコンの置いてある仕事部屋にこもってしまった。
「ちょっとあなた・・・。」
私は何も言えなかった。


明くる日、隆史は急遽会社を休み、私を外に連れだした。
出かけたいところがあるといいタクシーを呼び止め乗りこんだ。
1時間ほど乗ると、とある雑居ビルの前で隆史はタクシーを止めた。
「昨日のアイドルの女の子おぼえているか?」
隆史は私に問いかけた。
「ええ・・・私に似てるって・・・。そういわれるとなんか人事に思えないけど・・・。」
「実は俺もそう思ってな、昨日俺のパソコンであの子のことをいろいろ調べたんだ。
そうしたら実はあの子、孤児だったらしい・・・。今は、引き取られた家で暮らしてるらしいんだが・・・。
年齢もちょうど俺たちが捨てた子供と同じ17歳。名前は本名らしい。」
「ホントなの!?じゃあ隆江はやっぱりあの子なのかしら・・・。信じられないわ・・・。」
「どういうことだ、雪江!?」
隆史は叫ぶ。
「実はあの子供に名前をつけてたの・・・。あなたと私の名前を一文字ずつとって隆江ってね。あの子への
最初で最後の親からのプレゼントとして・・・。だからあの子をみてビックリしていたの・・・。」
「なんで早くいわないんだ!!まあいい・・・。」
隆史はため息をつくと
「実はあの娘が所属する事務所の社長とは大学の同期でな・・・。コネクションがあるんだ。
今回たまたま仕事で隆江が福岡に来てるらしくアポイントメントをとってもらったんだ!
ここのビルで再会の約束を取り付けた・・・。入るぞ、隆江。」
「ホントなの!?じゃあ隆江に・・・あたしの子供に会えるのね!!」
わたしはあまりの興奮に頭が真っ白になってしまっていた。
気づけば隆史と共にビル内の事務室に来ていた。
そこにはひとりの体育会系な男がいた。どうやら事務所社長であり隆史の同期の男であるようだ。
「やあ!隆史ひさしぶりだな。」
隆史は男から声をかけられる。
「なんか悪かったな、突然。下柳ならなんとかしてくれるっておもってたから!!ホントにありがとう!!」
隆史も下柳という社長の男に礼をいう。
「実は隆江ちゃんなんだけど、僕らの娘かもしれないんだ!!だから引き取らせてくれとは言わないけど一目合わせてくれないか?」
「話は事前に聞いてるからわかってるよ。でもね・・・このギョーカイはそんなに甘くないんだよ・・・悪いね・・・」
私の期待とは裏腹に社長は隆史にそう答えた。
それはそうである。売れっ子アイドルを民間人のたのみでホイホイと合わせてくれるわけはないのであるから。
隆史はビックリした顔をして反抗した。
「どういうことだ!?昨日は仕事で隆江も来てるからあわせてくれる・・・って・・・え・・・?」
すると隆史は部屋の後ろで待機していた黒服のオトコたちの囲まれたその瞬間、地面に言葉を途切れさせながら崩れた・・・。
その瞬間「あな・・・った・・・!?」
隆史に駆け寄ろうとした私は首筋にチクリと刺さる痛みを覚えた。
そして何もわからないうちに体に力が入らなくなり倒れてしまった・・・。
「これはこれは・・・。おふたりとも仲が大変よろしいようで・・・カカカ。」
下柳は不敵な笑みを浮かべながら、倒れた私たちの耳元で囁いた・・・。
「これは一種のフグ毒ってやつでね・・・。まあ即効性のものなんでちょっとだけ苦しいけどすぐにラクになるから☆
トリカブトなんかみたいに少量でも効いちゃうんだよ、これが・・・」
薄れる意識のなかで黒服が手にする注射器がみえた。
隆史はすでに息をしていないようで・・・。
私もそのすぐ後は何も覚えていない・・・。
さようなら・・・。
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「これで良かったのかい?隆江・・・?」
下柳が目線を送ったそのさきのドアからひとりの女の子が入ってきた。
「ありがとう!パパ♪
もう、こんな人達も早くあの世のポストに投函されちゃえばいいんだから!!」
「しかし、お前の実の両親だろ・・・わが娘ながら恐ろしいよのぉ・・・。」
「何いってんの!?パパの子なんだからあたりまえでしょ!!
まあ、ああやってテレビで過去に触れておけばマスコミも飛びついて、すぐにおバカさんな親が名乗り出てくると思ったけど、昨日の今日とはね。キャハハハハハハ☆」
「カカカ・・・。よし、後は専門の方々におまかせして、ワシと隆江の二人で大帝公国ホテルのスペシャルランチでも食べに行こうかのぅ?今日は隆江の大好きなデザートビュッフェ付きじゃぞ!!!コココ・・・笑」
「わーい、さっすがパパ!!だーいすき☆隆江ずっとパパの子でいるう!!!」
「カカカ!!!・・・これ鳥谷!!はやくリムジンを手配せんか!隆江が腹をすかせているのがわからんのかっ!!
あとネズミ駆除の専門部隊もな・・・っ!!」
「はっ!旦那様・・・っ!!仰せのままに☆」
「今日はいい夢見れそうだな、隆江!」
「うん、パパ!今日もパパのベットで一緒に寝るぅ♪」
「コココ☆いつまでも隆江は子供じゃのぅ。よしよし!今日はパパプロデュースの特性子守唄を歌ってやろう♪」
「わーいわーい!パパだいすきー!!」
「カカカカカカッカカカカカカカッカカッカッカカ!!!!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・
・・・。
・・・FIN・・・・・