理由もなく人をバカと罵倒する人はたいていバカとしたものだが、これほどの典型例は見たことがない。
それにしても週刊ポストという名の知れた週刊誌、小学館という名の知れた出版社が、これほど間違いだらけで、悪意に満ちた、愚かで、下劣な記事を掲載するとはいったいどうしたことか。
著者の不勉強、不誠実はもちろんだが、編集者、校閲者はいったい何をしていたのだろう。
たとえ署名記事であろうと、記事内容をチェックし、誤りを正すのが編集者、校閲者、版元の最小限の役割、責任ではないのか。
届いた原稿を印刷所に回すだけなら、小学生でもできることだ。
出版不況、雑誌不況が継続的に叫ばれているが、こうしたネット以下とも言えるデタラメ記事が掲載されるようでは、出版業界、雑誌業界の未来は無いと思った方がいい。

ここで批判、抗議するのは、週刊ポスト2016年2月19日号に掲載された中川淳一郎氏の連載コラム「ネットのバカ現実のバカ 第2回 小保方晴子氏を頑なに擁護する方々に「あのよ…」と嘆息」である。
それがいかに悪意と錯誤に満ちたものであるか、まず実際の記事を読んでいただきたい(下に現物を紹介、同記事はネットでも読めます http://news.infoseek.co.jp/article/postseven_383487/)。

中心的な錯誤、言いがかりは、以下の個所である。

「こいつらのバカさかげんがいかんなく発揮されたのが昨年12月10日のブログ記事だ。こんなタイトルがつけられた。
〈小保方晴子さんの発見は真実だった! ネイチャーにマウスの体細胞が初期化して多能性を持つ「STAP現象」がアメリカの研究者により発表されました。〉(http://blog.livedoor.jp/obokata_file-stap/archives/1047183994.html)」

「要するに、こいつらは、「科学雑誌『ネイチャー』の姉妹誌」で発表されたとされる論文を誤読しているのである。この論文はあくまでも、「STAP現象は存在する」という人による論を紹介したうえで、「でも誰も証明できていない」と述べている。それなのに、自動翻訳を使い得た情報を「STAP現象はあった」→「小保方さんは正しい」というすり替えを行ない、勝利宣言したのだ。」

何もかもデタラメと言うほかない。
「この論文」とは、科学雑誌「Nature」の姉妹紙でオンライン専用媒体「Nature.com SCIENTIFIC REPORTS」に2015年11月27日付けで掲載された「Characterization of an Injury Induced Population of Muscle-Derived Stem Cell-Like Cells」(損傷誘導性による筋肉由来の幹細胞様細胞(iMuSCs)、http://www.nature.com/articles/srep17355)のことだろう。
しかし、論文中に、中川氏が言う「この論文はあくまでも、「STAP現象は存在する」という人による論を紹介したうえで、「でも誰も証明できていない」と述べている。」という内容はどこにも出てこない。
やり玉に挙げている当会の〈小保方晴子さんの発見は真実だった!・・・〉記事でも、そのような文言はどこにも出てこない。
 
これはいったいどうしたことか?
おそらくネットに多く出回っている、たとえばネットギークの以下のような記事を鵜呑みにしたのだろう。

「【速報】「小保方晴子さんのSTAP細胞あった!アメリカの研究者が見つけてネイチャーで発表」というデマが流れる」(ネットギーク 腹BLACK、http://netgeek.biz/archives/60882

これも中川氏と同様の、とんでもない錯誤と悪意に満ちた記事だが、こうした記事や、ネットで飛び交ったガセ記事、デマ記事を、中川氏はろくに検証もせず、鵜呑みにして、信じ込んでしまったのだろう(同記事のコメント欄を見れば、いかに錯誤に満ちたものかわかったはずなのだが)。

iMuSCs論文の主旨は、〈小保方晴子さんの発見は真実だった!・・・〉記事の冒頭にある通り、「負傷したマウスの骨格筋から幹細胞になる新規の細胞集団を発見した」というものだ。
そして、この論文で報告されている「物理的ストレスで体細胞が初期化され、多能性を持つ」現象は、小保方氏らがSTAP細胞論文で提唱した、〈体細胞が物理的要因で未分化の状態に戻り、多能性を持つ細胞に変化する〉現象、すなわちSTAP現象と同じ現象が存在したことを報告したものではないか、というのが〈小保方晴子さんの発見は真実だった!・・・〉記事の主張である。

中川氏の記事の残りの部分もみな似たようなものであり、怪文書の類としか言いようがない。
もう一度繰りかえすが、すべてがデタラメであり、誹謗中傷の類いの記事である。 
中川氏は当会の該当記事を読んだとはとても思えず、当然iMuSCs論文も読んでいないだろうし、STAP細胞騒動の概要もご存じないのだろう。
中川氏の記事の末尾には「本の内容で批判しろこのバカめ」なる一文があるが、悪い冗談としか思えない。
このようなデタラメ記事が、編集者や校閲の目をくぐり抜け、小学館の名の下で、印刷され、店頭で販売されていることに驚きを禁じ得ない。
有志の会は断固抗議し、謝罪と共に訂正記事の掲載を求めるものである。 

それにしても、STAP細胞事件、STAP細胞騒動には、この手の錯誤、誤解、デマ、誹謗中傷を撒き散らす研究者、新聞記者、サイエンスライター、ネットの論調が非常に多かったし、現在も後を絶たない。
有志の会が始まったのも、そうした論調、傾向に疑問を感じてのものだ。
そして、あろう事か、小保方氏やSTAP細胞、STAP現象に対してと同じデマ、誹謗中傷が、有志の会にも行われたのである。
それも週刊ポスト、小学館という日本有数の媒体、出版社を介して。
もちろん、その規模は限りなく小さなものだが、この神経症的な反復強迫はいったいどうしたことなのか。
マルクスの「歴史は繰りかえす、一度は偉大な悲劇として、もう一度はみじめな笑劇として」にならって言えば、「歴史は繰りかえす、最初は巨大な悲劇として、その後は笑えぬ喜劇として、何度でも」ということだろうか。

(文責:南青山) 

週刊ポスト記事
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