本日BPO放送人権委員会は、NHKスペシャルの放送に名誉棄損の人権侵害があったと認定し、NHKに対して再発防止を求める委員会勧告を出しました。

http://www.bpo.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/brc/determination/2016/62/dec/k_nhk_62.pdf


Ⅲ 結論

 以上の検討から、STAP細胞とされるES細胞は若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたものであって、これを申立人が何らかの不正行為により入手し混入してSTAP細胞を作製した疑惑があるとする事実 摘示については、名誉毀損の人権侵害が認められる。

 なお、本件放送が公式発表に頼らず、疑惑を検証していく調査報道であることからすると、本件放送が人権侵害に当たるという判断が報道の自由に及ぼす影響を懸念す る見方もあるいは生じるかもしれない。しかし、名誉毀損の人権侵害に当たるとの判 断に至った主な要因は、2.(2)で関係部分の構成として整理した⑤までの場面と⑥との間に連続性が認められたことにある。つまり、NHKの取材が不十分であったと いうよりもむしろ、場面転換のわかりやすさや場面ごとの趣旨の明確化などへの配慮 を欠いたという編集上の問題が主な原因であった。このことは2.(3)c)で詳しく述べたところであるが、改めて端的に説明すれば、そのような編集の結果、一般視聴 者に対して、単なるES細胞混入疑惑の指摘を超えて、元留学生作製の細胞を申立人 が何らかの不正行為により入手し、これを混入してSTAP細胞を作製した疑惑があると指摘したと受け取られる内容となっている点が問題なのである。

 こうした編集上の問題を避けることがそれほど困難だったとは思われないことをも考え合わせると、本決定の結論が、今後の調査報道に対して萎縮効果を与えるという 見方は適当ではない。

 次に、番組制作過程での申立人への取材方法に行き過ぎがあった点で放送倫理上の問題も認められる。

 さらに、Ⅱ.3.及び5.で指摘したように、人権侵害や放送倫理上の問題があったとまでは言えないが、科学報道番組にふさわしくない演出や、申立人に対する印象 を殊更に悪化させるような箇所も見られる。

 以上で指摘した本件放送の問題点の背景には、STAP研究の公表以来、若き女性研究者として注目されたのが申立人であり、不正疑惑の浮上後も、申立人が世間の注 目を集めていたという点に引きずられ、科学的な真実の追求にとどまらず、申立人を 不正の犯人として追及するというような姿勢があったのではないか。

 委員会は、NHKに対し、本決定を真摯に受け止めた上で、本決定の主旨を放送するとともに、過熱した報道がなされている事例における取材・報道のあり方について 局内で検討し、再発防止に努めるよう勧告する。
(以上BPO勧告より。下線強調は引用者によるもの)

 
このBPO勧告に対してNHKは「客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したもので、人権を侵害したものではない。」と反論しています。http://www.sanspo.com/geino/news/20170210/sot17021017230008-n1.html
NHKニュース7では、付記された「少数意見」を紹介し、自己正当化を図りました。反省の見られないNHKには、小括にある下記文章を百遍読んでいただきたい。※1)上記を以下に変更しました。
 『単なるES細胞混入疑惑の指摘を超えて、元留学生作製の細胞を申立人 が何らかの不正行為により入手し、これを混入してSTAP細胞を作製した疑惑があると指摘したと受け取られる内容となっている点が問題なのである』と、NHKが行った名誉毀損を認定し、今後の改善を求めたこのBPO勧告は、日本のジャーナリズムが正しく機能するために、報道の自由を守るためにもマスコミ自身による自浄作用を求める、とても有意義な勧告であると言えるでしょう。

「BPOの厳正な委員会勧告を期待」
http://blog.livedoor.jp/obokata_file-stap/archives/1059827109.html


 ところが、このBPO勧告に対してNHKは
「客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したもので、人権を侵害したものではない。」と反論しています。
当日のNHKニュースでは、勧告に付記された「少数意見」を強調して紹介し、自己正当化を図りました。
 しかし実はこの少数意見に於いても「人権侵害とまでは言えないまでも、放送倫理上問題あり」とされているもので、それにもかかわらずこのニュース内での紹介の仕方は、まるで委員の中にNHKの主張を認める意見があったかのように
印象操作されたものでした。これは勧告で指示されている「本決定の主旨を放送」したものではまったくなく、BPO勧告の趣旨を完全に無視したものです。
*当日のNHKニュース7の動画(※2)

 このように、
まったく反省の見られないNHKには、勧告文の小括にある下記文章を百遍繰り返し読んでいただきたいと思います。


不正疑惑の発覚後、申立人は心的外傷後ストレス障害(PTSD)で治療を受ける事態に至っている。これは申立人に対するマスメディアによる、あるいはインターネット上での過熱したバッシングが数か月にわたって継続したことなどの結果であり、本件放送の影響は全体から見れば一部に過ぎないとはいえ、本件放送がNHKの看板番組の1つである『NHKスペシャル』として全国に放送され、相応の社会的影響があったことからすれば、本件放送による名誉毀損によって申立人の受けた被害は小さいものではない。
 

「本件放送による名誉毀損によって申立人の受けた被害は小さいものではない。」

 このBPO勧告に対して「人権を侵害したものではない」と嘯くNHKの人権感覚の鈍麻には驚くばかりです。

※1)2月16日:文章の一部を修正しました。 
※2)2月19日:リンク先のNHK NEWS WEB動画が削除されたため、You Tubeにあった動画に差し替えました。