「理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問」というブログに紹介してありましたが、NHK経営委員会の2月14日会合の議事録が公表されています。経営委員会でのNHK荒木理事からの報告に対して、委員の長谷川三千子氏からは、NHKの反論はBPO勧告に対する「お手本となる」対応だという評価がされているようです。
http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt2/17805373.html


 BPO勧告にはこう書かれています。
『委員会は、NHKに対し、本決定を真摯に受け止めた上で、本決定の主旨を放送するとともに、過熱した報道がなされている事例における取材・報道のあり方について局内で検討し、再発防止に努めるよう勧告する。』
 この勧告を受けたNHKの当日のニュースがこちらです。

『 NHKが3年前に放送したSTAP細胞の問題を検証した報道番組で、理化学研究所元研究員の小保方晴子氏が人権を侵害されたと申し立てたことについて、BPO=放送倫理・番組向上機構の委員会は「名誉毀損の人権侵害が認められる」として、NHKに対し、再発防止に努めるよう勧告しました。
 3年前の7月に放送されたNHKスペシャル「調査報告STAP細胞 不正の深層」について、理化学研究所元研究員の小保方晴子氏は人権を侵害されたとしてBPOに申し立てていました。
 これについて、BPOの放送人権委員会は、10日、記者会見し、番組の一部について、「場面転換などへの配慮を欠いたという編集上の問題があり、小保方氏が元留学生作製のES細胞を不正行為により入手して混入し、STAP細胞を作製した疑惑があると受け取られる内容になっている」としたうえで、「名誉毀損の人権侵害が認められる」と指摘しました。
 また、番組の放送直前に行われた小保方氏への取材について行き過ぎがあり、放送倫理上の問題があったとしました。そのうえで、NHKに対し、再発防止に努めるよう勧告しました。

 一方で9人の委員のうち2人が「人権侵害があったとまでは言えない」、「名誉毀損とするべきものではない」と、決定とは異なる意見を出しました。

 決定について小保方氏は、代理人の弁護士を通じてコメントを出しました。

「NHKスペシャルから私が受けた名誉毀損の人権侵害や放送倫理上の問題点などを正当に認定していただいたことをBPOに感謝しております。国を代表する放送機関であるNHKから人権侵害にあたる番組を放送され、このような申し立てが必要となったことは非常に残念なことでした。NHKスペシャルの放送が私の人生に及ぼした影響は一生消えるものではありません」

 一方、NHKは「BPOの決定を真摯(しんし)に受け止めますが、番組は関係者への取材を尽くし、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したもので、人権を侵害したものではないと考えます。今後、決定内容を精査したうえで、BPOにもNHKの見解を伝え、意見交換をしていきます。また、放送倫理上の問題を指摘された取材の方法については、再発防止を徹底していきます」としています。』

 このニュースの構成は、前半部分が勧告で指示された「本決定の主旨を放送」に該当するもので、中盤の代理人のコメント紹介で「ニュース報道」となり、最終部分がNHK側の見解=反論を述べたものとなっています。
 ここで注目していただきたいのは、代理人弁護士のコメントの前に、『一方で9人の委員のうち2人が「人権侵害があったとまでは言えない」、「名誉毀損とするべきものではない」と、決定とは異なる意見を出しました。』として少数意見が強調されていることです。これではまるで委員の中にNHKの主張を認める意見があったかのような印象を与えていて、「本決定の主旨」をすっかり歪めた報道になってしまっています。

 実際には二人の委員も決してNHK側の「表現にも配慮しながら制作したもので、人権侵害をしたものではない」という主張を認めているものではなく「人権侵害とまでは言えないまでも倫理的に問題がある」としているのですが、このニュースから視聴者に伝わる印象としては、まるで「NHKの主張を認める少数意見があった」という印象になるでしょう。
実際の印象は動画でご確認ください。

 つまり、この報道でもまた
「印象操作」が行われているのです。少数意見を出した奥武則委員は『「……人権侵害はない」とせずに、「……人権侵害があったとまでは言えない」と表現していることに留意していただきたい。』として注意を促していました。ところがNHKはこうした少数意見を悪用して印象操作を図っているのです。
 この放送を『本決定を真摯に受け止めた上で、本決定の主旨を放送』したものだったと思う人がいるでしょうか。

 そもそもNHKスペシャルは悪質な印象操作が行われていたことが問題なのであり、事実と事実の繋ぎ方に問題がある「編集上の問題」で人権侵害と認定されているのに対して、「客観的事実を積み上げたものだから人権侵害ではない」というのでは反論の体をなしていません。ところがNHKの経営委員会では『今回のNHKの対応は、まさに本当の意味での真摯な対応であって、今後こういう勧告が出たときのお手本になると言ってよいかと思います。』ということで意見の一致を見たようです。

 冒頭に紹介したブログではこう指摘されています。

『 メディアが問題提起すること自体は悪い話ではありませんが、番組の受け止め方には人によって様々なものがあり、その内容が問題視された場合には、第三者機関のBPOに判断を委ねるということを、自らがルールとして決めて公開しているわけですから、それに従わないというのでは、自殺行為です。』

 BPO勧告に対するNHKのこういった対応の一体どこが「お手本」になると言うのでしょう。小保方晴子さんに対して甚だしい人権侵害をしておきながら、全く反省の態度を見せないNHKに対しては、今後もっと厳しい目を向けていく必要がありそうです。

追記:
 このNHKの問題について、小保方晴子さんの代理人である三木秀夫弁護士が「現代ビジネス」に寄稿されています。

『NHKの「BPO勧告への反論」は報道機関の自殺行為である、』

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51092