2010年07月19日 22:26

こんばんは風邪を引いてしまいました。

新作レビュー「トイ・ストーリー3」
 *ちょっと蛇足
*次号予告
 
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*新作レビュー
「トイ・ストーリー3」リー・アンクリッチ監督(米) 3D字幕版
 
 ご存知の通り、ピクサーの出世作でもある人気シリーズの第3作。世界一
と云っても過言ではない完成度の高いリアルなCGアニメーション技術と、
現実をからめ、心をくすぐる脚本が今回も健在だ。

 初作からの主人公、カウボーイ人形のウッディらお馴染みのおもちゃたち
も月日が経ち、少年だった持ち主のアンディも17歳、大学進学のため家を出
ることになった。おもちゃたちの心配事は彼らの処遇。大学行きの荷物に入
れてもらえるか、屋根裏で保管されるか、捨てられるか…。手違いでゴミに
なりかけ、間一髪で逃れたまではよかったが、寄付された保育園の子供達は
マナーが悪く、さらに古株のおもちゃたちのボス、ピンクの熊は実は凶悪な
独裁者だった。ウッディは仲間達と脱出を試みるが頼りになる相棒のロボッ
ト人形、バズが初期設定に戻され感性を変えられてしまう……。

 このシリーズの最大の魅力は、人間が普通に生活している片隅におもちゃ
たちが存在し、人間の目をかわして行動するところにある。このスリルや葛
藤に、お得意の人間関係に置き換えた綾を織り交ぜて、大人の鑑賞に堪えう
る作品に仕上げている。
 今はディズニーと合併して「ディズニー&ピクサー」になったが、ディズ
ニーが非現実的な空間で夢のような展開をみせる、というパターンであるの
に対し、ピクサーはテーマも設定も大人向き。主人公は、おもちゃだったり、
魚だったり、車だったりと様々だが、内容の核心には人間関係や社会が投影
されていて、いわゆるお伽話的なファンタジーとは一線を画している。

 今回は、誰にもいつかは訪れる「別れ」を、おもちゃと持ち主の心理をか
らませてテーマにしている。苦境に立ってもあきらめない主人公のリーダー
シップ、一見おいしい話には裏があるというセオリー等、夢物語の中だけで
なく、現実に近いファクターを上手に取り入れていて、思わずふふんと共感
する場面も多い。

 映像は本当に完璧で、その見事な出来に唸ってしまうのだが、本作では、
ラスト近くの焼却場の映像表現が圧巻だ。3人の子供エイリアンと、近所の
おもちゃ好きの幼女ボニーが、最後に重要な意味を持ってくるところも絶妙。
脇役の配置も巧みだ。
 ただ、舞台がアンディの家の周辺だけなので、冒険部分はややスケール感
に欠け、テーマもわかりやすいのは確かだが、前作までと比べると少し平坦
であっさりしている。個人的には、より複雑な現実が交錯して移動範囲も広
く興味深かった「トイ・ストーリー2」の方が、勝っているように思う。
恒例の本編前のおまけの短編も、映像は素晴らしいがストーリーはちょっと
弱い。

 3Dブームとあって、ご多分に漏れず3D上映の劇場が多いが、本作はア
クションを売り物にした映画ではなく、飛び出してくるシーンもないので、
特に3Dを選ぶ必要はないように感じた。むしろ眼鏡なんか掛けずに広い視
界で映像美を堪能した方が良いかもしれない。
 3Dなんか要らないと思わせるアニメを作るピクサーは、やっぱりスゴイ
とあらためて思った。

「トイ・ストーリー3」公式サイト↓
http://www.disney.co.jp/toystory/

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*ちょっと蛇足
 総指揮を執るジョン・ラセター氏が、以前日本の「横浜ブリキのおもちゃ
博物館」に影響を受けてこのシリーズの構想を練ったエピソードは有名です
が、おもちゃというのは異国のものであってもどこか懐かしさがあり、違和
感がないものです。愛着を持ったモノたちを処分する気持ちもまた、万国共
通なのかもしれません。

 当地神奈川では、20館で本作を上映していますが、そのうち字幕版をやっ
ているのはわずか6館だけ。だからこんなメジャーな映画をわざわざ川崎ま
で行って観るハメになるのです!洋画は基本的に字幕でないと心地悪いもの
で…。
 3Dか2Dか、よりも、字幕か吹き替えか、をもっと自由に選べるように
してほしいものですね。

川崎チネチッタ スクリーン7、E列11番にて。観客約30人。
ちょっと投影面積が小さいです。吹き替え版もやっているため、分散したよ
うで、それほど混んではいませんでした。


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