2011年01月15日 21:09

アンストッパブル 5

*新作レビュー
「アンストッパブル」(トニー・スコット監督・米)
デンゼル・ワシントン、クリス・パインほか出演

 単純な操作ミスから無人のまま暴走し始めた大型貨物列車。しかも積み荷
は危険な化学物質。大惨事を止めるべく奮闘する機関士と車掌の活躍を描い
た本作は、疾走感と緊張感溢れる一級品のパニックサスペンスに仕上がって
いる。

 ペンシルバニア州フラー操車場で、職員の怠慢からブレーキをかけ忘れた
貨物列車777号が無人のまま走り出す。当初は走って追いつける速度だった
が、ギアを「力走」に入れていたため39両の巨大列車は次第に加速し、やが
て100kmを超えるスピードで暴走してゆく。
 同じ頃、同州ブリュスターの操車場で、勤続28年のベテラン運転士フラ
ンク(デンゼル・ワシントン)と、4カ月の新米車掌ウィル(クリス・パイン)
が初めて組む乗務のため顔をあわせるが、早期退職を迫られているフランク
と、コネで入社した若いウィルは反りが合わない。
 やがて女性操車長のコニー(ロザリオ・ドーソン)は、積み荷が危険な化学
物質で脱線転覆するとミサイル並みの破壊力を持つということを知り、司令
室は緊急事態の対応に追われる。そして反対方向からフランクとウィルの乗
った1206号が。ヘリコプターや脱線装置を使った会社側の停車策は失敗、会
社と州警察はもはやどこで列車を脱線させるか、の検討段階に。
 危機を知らされたフランクとウィルは間一髪で難を逃れ、ここからフラン
クのベテランらしい仰天の方法に賭けた「勝負」が始まる……。

 面白い。暴走した列車を止めるというそれだけのストーリーなのに、並走
する横からのカット、線路すれすれの下からのカット、ヘリからの上空から
のカットと、アングルが疾走感を伝え、なんと本物の列車を衝突させて撮っ
たという衝突シーンは迫力があり、全編ほとんどCGを使わず実写で撮ったこ
とがリアリティーを生んでいる。
 加えて主人公2人の背景や、現場と経営陣の乖離といった人間ドラマも、
お決まりとはいえ上手くはまっている。
 出だしの操車場の臨場感から引きこまれてしまうテンポの良さは、トニー
・スコット監督らしく、時間軸をスピーディーに描く手法は健在である。

 デンゼル・ワシントンが渋くキマッている。若者に職を奪われるベテラン
の運転士魂が、覚悟を決めて背走する際の引き締まった表情に現れている。
脇役では、溶接士のネッド(リュー・テンプル)が良い味を出している。

 99分でまとめたため歯切れ良くダレないが、人々が事態に気付くまでのエ
ピソードがもう少し欲しかった。110分くらいがベストだったのではないだ
ろうか。まあ長すぎるよりはいいけれど。
 おそらく誰が観てもある程度満足できる一本だと思うので、気になってい
る方はぜひ映画館でこの迫力を味わってほしい。

「アンストッパブル」公式サイト↓
http://movies.foxjapan.com/unstoppable/


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