前回のブログでは、「まほろのオフグリッドハウス」の内容を具体的に
ご紹介しました。

それを読んで、「太陽光発電で電力を自給してCO2の排出量を抑えられる家なら、
わざわざオフグリッドにしなくても電力会社とつながったままでいいんじゃない? 
発電した電気を買い取ってもらえるし、そのほうが得でしょう?」

そう思った人もいると思います。

そこで、今回は「なぜオフグリッドハウスにしたいのか?」という点をお話しましょう。
offgridhouse
 (★画像はイメージです)


きっかけは2011年の東日本大震災。
ご存知の通り、福島で原子力発電所の事故が起こり、
その影響により関東地方も電力不足に見舞われました。


それまで施主の岡野さん夫妻は大多数の人と同じように、
エネルギーについて関心はあっても、具体的な行動を起こすことはありませんでしたが、
電力と原子力発電について情報を集め、今後のあり方を考えるようになったのです。


しかし、大震災から2年経っても被災地の復興と事故の収束には
程遠い状況が続きました。
今なお現在進行形といえます。
そんな状況のなかで、夫妻は環境活動家・田中 優さんが暮らすオフグリッドハウスに出会い、
その覚悟ある暮らしぶりに共感を覚えてこう考えたのです。

「電気は私たちの生活になくてはならないものだが、
発電と消費が同時にできる『オフグリッドハウス』が広がれば、
原子力発電はいらなくなるかもしれない」。



また、田中優さんの活動を深く知るにつれて、
夫妻は電力会社による太陽光発電の制度にも疑問を感じるようになりました。


自然エネルギーを有効活用していると信じていた電力会社の太陽光発電システムは
目先の経済性を強調するばかり。

太陽光発電による余った電力の買取り(売電)は、発電を行わない他の家庭に
電気料金(再エネ発電賦課金等)を負担させてまかなっていること、
電気の特性や技術上の問題から、各家庭で発電した電力は送電ロスが多く、
有効に活用できていないこと・・・。

売電で自分の家の電気代が安くなるとしても、
電力会社をスルーして他の家庭に肩代わりさせているのはおかしい、
と気づいたのです。

全国の原子力発電所がいっせいに運転を停止している今、
電力会社の火力発電の燃料代をまかなうために、
電気料金値上げは避けがたいという言い訳、
そして事故後の後始末の費用を一般家庭から徴収しようという姿勢なども、
電力会社と距離を置きたい気持ちを募らせました。


そんなとき、偶然にも自宅の隣地を手に入れることになり、
この機会に建てる家は「オフグリッドハウス」しかない、と確信したといいます。

また、別の理由もありました。
あるとき、定年後のありかたを考えることになったご主人は、
「自分の食い扶持は自分で稼ぐ」という境地に至り、
休日に農村へ出かけて米づくりを始めました。

他人に頼らず、主食の自給自足を目指したいという姿勢の現れです。
そうした発想を持つ夫妻が
「自分たちでできるのなら、電力も自給したい」と考えるのはごく自然のことでしょう。


「電力会社に依存しない、オフグリッドの開放感、自由さ。
これを多くの人たちに知ってもらって、共感を得られれば大きな変化が起こると思っています。
オフグリッドは地域から日本、さらに地球を救う潜在能力を持っているんです」。


岡野さん夫妻はそう話しています。







今回は「まほろのオフグリッドハウス」の具体的な内容をご紹介しましょう。

(※環境活動家・田中 優さん(★1)のオフグリッドハウスをベースにしています)


基本的な考え方としては、

●電力会社に頼らずに自然エネルギーを利用して発電し、
  暮らしに必要な電力を自給できること


●地球温暖化の問題から、2050年には二酸化炭素(CO2)排出量を
  現状に比べ80%減らせる住宅であること

この2つです。


それでは、図1~3を見ながら順を追って説明していきましょう。

mahoro_fig1-2



電力会社の送電線網につながらないオフグリッドハウスでは、
自分たちの使う分だけ電力を発電することになります。
その心臓部となるのが、つくった電力を貯めて使うバッテリー(蓄電池)です。



現時点ではバッテリーが大型化するほど費用もスペースもかかることから、
バッテリー容量を抑える必要があります。

田中 優さんによれば、現状の標準的とされる家庭の電力消費量は1日10kWh。
雨天に備えて3日分の電力を貯めるとなると30kWhのバッテリーが必要になりますが、
その容量だとバッテリーの種類によっては費用が約1000万円かかったり、
重量が1.2トンに達してしまうのです。


そこで、生活に必要な電力消費量を見直し、
ムダを省いてスリムにするプロセスを考えてみましょう。


といっても、「節電しなきゃ!」と努力や我慢をして
ストレスをためることはまったくありません。


まず、建物本体や家電製品で省エネ・節電して電力消費量を減らし、
その次に太陽光発電などの自然エネルギーを利用する。
その順番で考えれば、機器の設置コストも抑えられます。


mahoro_fig2-2




■"電気を食わない"建物と省エネ家電がポイント

建物は暖房・冷房のエネルギーを逃がさない
断熱性能を備えながら、適度に通気できるつくりにすること。

建物の構造には蓄熱・放熱(夏は蓄冷・放冷)の機能を持つ
鉄筋コンクリート造(RC造)を取り入れ、
その輻射熱を利用して冷暖房機器の使用を抑えます。

夏は自然の風で涼をとり、冬は日差しの熱で部屋を暖める
パッシブな性能も欠かせません。

次に、電力消費量を抑えた家電製品を選ぶこと。
冷蔵庫、照明器具、テレビ、エアコンは電気を食う家電の筆頭ですが、
省電力の最新モデルに買い換えるだけで驚くほど節電できます。



■暖房・給湯の「熱利用」には電気を使わない

家庭内のエネルギー消費量を調べてみると
電力消費量は全体の1/3以下で、
そのほかの大部分は暖房や給湯などの「熱利用」が占めています。
つまり、部屋を暖めたりお湯を沸かすのに電力以外のエネルギーを使えば、
今よりもっと節電できるということです。

そこで、暖房にはペレットストーブを使おうと考えています。
ペレット(木質ペレット)とは、森林の間伐材や製材過程で出る
かんなくずなどの端材を粉にして固め、粒状にした成型燃料のこと。

ペレットの利用により廃棄される端材が燃料として活用でき、
山から間伐材を伐り出すことで、材木使用→植林・育成→伐採の
サイクルを守ることにもつながります。
近隣でつくられたペレットを使い地産地消すれば、
輸送エネルギーも大幅に減らせるでしょう。
もちろん、灯油は不要です。

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また、給湯には太陽の熱を利用した太陽熱温水器を導入したいですね。
いっとき蔓延した詐欺的な商法でイメージダウンしたものの、
「お湯を沸かす」という点では現時点では最も頼もしい機器です。

価格は太陽光発電装置の1/3程度で、これによりガスによる給湯を
半分程度に減らせます。


上記の方法によって、電力消費量を1日あたり3kWhくらいまで減らすことができます。
3日分でも10kWhですね。
これで何とかがんばれば手が届く費用のバッテリーを使うことが可能になります。
バッテリーについてはあとで説明しましょう。



■太陽光発電パネルは畳4枚分のスペースでOK

電力消費量が10kWh程度であれば、
設置する太陽光発電パネルは1kW分(広さ畳4枚分)で足ります。
(日本では1日に平均5.2時間晴れるとして換算)。

敷地や屋根面が狭い都市部でもOK。
余ったスペースは太陽熱温水器などに使えます。



■バッテリー(蓄電池)が電力自給のポイント

太陽光発電でつくった電力を充電して使う司令塔です。
田中 優さんが推奨するバッテリーは次の2種類。

●パーソナルエナジー
(★2)

送電線に接続できない場所、送電線から離れている海上や山の上、
病院などの緊急時の独立電源システムとして利用されています。
自宅の発電所として電力をコントロールし、
太陽光発電でつくった電力だけでなく、万一の場合を考えて
電力会社からの電力も受け取れる仕様になっています。

スマートメーター(通信機能を備えた電力メーター)としての役割も持つ
高性能のハイテク装置ですが、
費用は機器のみで400万円ほど、
太陽光発電と合わせたシステムで500万円程度と高価。


●自エネ組 再生鉛バッテリー(★3)

パーソナルエナジーに比べて性能は劣りますが、
目安となるコストは太陽光発電と合わせたシステムで
100~150万円程度。
充電・放電を繰り返すうちに劣化する鉛バッテリーを
再生させる方法によって、長寿命化しています。
パーソナルエナジーと組み合わせて使用することもできます。



■予備システムとしても利用できるプロパンガス

プロパンガスは調理用の熱源として利用。
そのほかに、梅雨時など太陽光発電ができない時期の予備システム
(プロパンガスを燃料とする小型発電機で発電)としても使われます。

都市ガスを使っている家庭では、配管の必要がないプロパンガスに切り替えることで、
「オフグリッド」化を進められます。



■ガソリン代がゼロになる電気自動車

太陽光発電した電力をエネルギーにして走ります。
将来的にはガソリンスタンドのお世話にならず、ガソリンの値上げに悩むこともなくなります。



■自給の助けになる雨水

雨水を貯めて植物の水やりや散水などに利用します。
井戸水を飲料水として使える地域では飲み水、生活用水が自給できて、
水道管からの「オフグリッド」が可能になります。

ここでご紹介した方法や機器は、現時点で最もエネルギー自給につながる効果が
高いと考えられるものですが、今後の技術の進歩によっては、
より画期的なシステムが登場するかもしれません。


ざっくりと「まほろのオフグリッドハウス」の基本形はこんな感じ、と
頭に入れておいてくださいね。




★1 田中 優さん
環境活動家、未来バンク事業組合理事長、ap bank監事。
「まほろのオフグリッドハウス」建設プロジェクトの
きっかけとなった岡山県・和気町のオフグリッドハウスで
エネルギー自給生活を実践中。
「電気は自給があたりまえ 
オフグリッドで原発のいらない暮らしへ」(合同出版)
など著書多数。 

田中優 公式HP
http://www.tanakayu.com/ 

★2「パーソナルエナジー」を開発・販売している慧通信技術工業(株)のHP 
http://www.ieee802.co.jp/index2.html

★3 「自エネ組」HP
http://jiene.net/

















こんにちは!

このブログではアーキポート(★1)
の協力による建設プロジェクト、
「まほろのオフグリッドハウス」についてご紹介していきます。

「まほろ」って何?
「オフグリッドハウス」ってどういう意味…?

皆さん、そう思われたかもしれませんね。


「まほろのオフグリッドハウス」を一言で言えば、

「東京・町田市に建てる、電力会社に頼らない電力自給の家」

ということです。

「まほろ」とは、今回のプロジェクトの建設地、東京・町田市をさす言葉。
町田市がモデルとされる三浦しをんさんの小説、「まほろ駅前多田便利軒」に
あやかりました。

それでは、「オフグリッドハウス」とは?

私たちが生活するには電力やガスといったライフラインが不可欠ですね。
日本の場合、電力会社によって発電所でつくられた電力を
それぞれの家庭まで送り届ける送電線が張り巡らされています。
これを送電線網といい、電柱から建物に電気を引き込む電線も含まれます。


その送電線網(グリッド)を切断(オフ)し、
太陽光発電+蓄電池などにより電力を自給しながら暮らす。
それを実現する住宅(ハウス)が「オフグリッドハウス」というわけです。

と同時に、暮らしに必要なエネルギーを自分たちでまかなうことができれば、
料金値上げなどの電力会社の都合に振り回されることがありません。
災害時などに停電して困ることもなく、
地球温暖化の要因のひとつである二酸化炭素(CO
2)の削減にも
ささやかながら役立てます。

つまり、自分たちの意思を持って自立した生活を送れる家だということ。
そして、その自立性を支えるためにセーフティハウス(★2)としての側面も
兼ね備えた家でありたい。
「オフグリッドハウス」にはそんな意味も込められているんです。


「まほろのオフグリッドハウス」の施主である岡野さん夫妻は
オフグリッドを提唱する環境活動家の田中 優さん(★3)
の考え方に共感し、
岡山・和気町にある田中さんの自宅でエネルギー自給生活を見学。


tanaka1
太陽光発電パネルを設置した自宅前で説明する田中 優さん


tanaka2
太陽光発電でつくった電気を貯めて使うバッテリー


tanaka3
電力会社の電気メーターと送電線は撤去されている



東日本大震災を経験した日本のこれからを考えるとき、
オフグリッドの考え方は大きな選択肢のひとつになる、と予感し、
偶然のチャンスにも恵まれて今回の建設プロジェクトを決意したといいます。

この「まほろのオフグリッドハウス」をきっかけとして
ひとりでも多くの人に電力自給の暮らしを知ってもらい、
「これなら自分にもできるかも・・・」と思ってもらえればうれしいです。

これからオフグリッドハウスの詳しい内容や
家づくりの過程を少しづつアップしていきますので、
どうぞよろしくおつきあいくださいね。




★1 アーキポート

建築に関わる様々なことに、
ワンストップで相談できる場所です。

建築家をはじめ、施工者、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、
不動産アドバイザー、司法書士、造園家、照明デザイナー、
グラフィックデザイナーなどの専門家がチームとなって
お客さまの希望をかなえ、悩みを解決するベストの答えを導き出します。
http://www.archi-port.com/


★2 セーフティハウス
ここでは電力、給水、エネルギーシステムなどを自前で確保し、
災害時に近隣住民などが避難所として利用できる建物を指します。


★3 田中 優さん
環境活動家、未来バンク事業組合理事長、ap bank監事。
「まほろのオフグリッドハウス」建設プロジェクトのきっかけとなった

岡山県・和気町のオフグリッドハウスでエネルギー自給生活を実践中。
「電気は自給があたりまえ オフグリッドで原発のいらない暮らしへ」(合同出版)
など著書多数。

田中優 公式HP
http://www.tanakayu.com/ 


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