ライフワーク

2008年12月21日

語り納め (ayan)

いろんなコト・モノを納める季節です。
今日は、声の表現を勉強している【語座】の年内最終稽古でした。

題材は、宮部みゆきさんの「車坂」。
車坂を上がった所で薬種問屋を営む老人の目をとおして紡がれる、とある女性の哀しい物語です。

前半はいつものように一人ずつ師匠にチェックしていただき、後半はひたすら輪読。…というか輪語り。
ピンと張り詰めた空気。
今年一年の総まとめだけあって、みな真剣そのものです。
緊張しました〜えっ


終わりに、みなそれぞれ来年の課題を表す一言を師匠からいただきました。
私は…
 「 粘 る

いわゆる“アナウンサーしゃべり”から脱却するためには、言葉の一つ一つを糊で貼り付けていくような粘っこさが必要!

…なのだとか。
うーん。私に足りないのは粘り気か。
性格的にはかなーり粘着質なのですが、しゃべりには足りませんか。

テレビに出てる人でいうと、誰の話し方が粘っこいでしょう。
…田村正和さんとか?
…桃井かおりさんとか?

新たな研究の日々の始まりです。
といっても、まずはテレビや映画三昧なだけですけどもあせる


「納める」ということは、新たになにかを始めるきっかけでもあるのですね。

年の瀬って大切だわ〜。

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2007年04月22日

宿題〜後編〜(ayan)

「夏の靴」 〜ayan version〜 

少女は、剣のような山々が連なる中にひっそりとたたずむ、小さな藁葺きの家で生まれ育った。

暮らし向きは楽ではなく、父も母も里へおりて働いている。

少女は、この家で祖父と二人暮らしていた。

だが、裸足で野山をかけめぐり、疲れれば草をまくらに昼寝をし、泉でのどを潤すくらしは、少女をすこしもさびしくさせなかった。

ある日、突然叔母が訪ねてきた。

東京でおまえに立派な教育を受けさせてやる、おまえの両親もとても喜んでいる、という。

少女は柱にしがみつき泣いて拒んだが、両親に別れをつげる間も与えられず、むりやりに列車に乗せられた。

少女が連れてこられたのは、ある貴族院議員の邸宅である。

生まれつき病弱で外に出られない一人娘の遊び相手また勉強相手として、年の近い少女を探していた。

叔母は、執事に押し付けるように少女を引き渡すと、かわりになにやら厚い封筒を受け取り、逃げるようにして邸を出ていった。

執事は少女の頭の先からつま先まで、舐めるように見回すと、女中にいいつけてまず少女の身支度をととのえさせた。

無造作に結い上げられていた髪は、肩までの断髪に切りそろえられ、腰に大きなリボンのついた桃色の洋服、そして白い靴。

山で育った少女には、耐え難い日々が始まった。

することなすことに小言を言われ、ときには小さな鞭で叩かれる。

楽しさよりもマナーが重んじられる食事。そしてなにより、邸内では走ることがいっさい禁じられていた。

やがて少女は、しじゅう山を思って夜も寝付けないようになった。

しかし、貴族院議員の娘とはたいへん仲がよかった。

娘は気立てがよく、少女をなにかと気遣ってくれる。

自分がここを出たらこの子はまた一人ぼっちになってしまう、と孤独で窮屈なくらしに必死で耐える少女であった。

ある日、少女は庭の鳥小屋に見覚えのある鳥をみつけた。

山の人間すら滅多に入らないずっと奥に棲む鳥だ。

草が生い茂る夏には深い藍色、雪が降り積む冬には純白の羽で身を包む不思議な鳥。

それが今は、埃にまみれ、毛並みも荒れて、小屋の隅にみじめにうずくまっている。

それをしばらく見つめていた少女は、つとそばの石を取り上げると、渾身の力をこめて鳥小屋の大きな鍵を壊し始めた。

やがて鍵はぽろりと地面に落ち、少女は小屋の扉をいっぱいに開いた。

「さあ、逃げなさい」

一斉に飛び立つ、色とりどりの小鳥たち。

そして、あの不思議な鳥は、臆病そうにあたりを見回しながら、最後におずおずと小屋を出てきた。

とことこと歩きながら何度も少女を振り返り、やがて草むらに消えていった。

この一件で、貴族院議員は激高した。

その鳥は、国策で保護されているごく貴重な鳥。

飼うことは禁止されているが、その地位を利用して密かに手に入れたものだったのだ。

貴族院議員は、ただちに少女を家から追い出した。

しかし、彼女を罰しなければ気が収まらないので、山には帰さない。

彼女が山を恋しがっていることは、貴族院議員の耳にも入っていたからだ。

そこで彼は、海辺の感化院に少女を送ることにした。

感化院での生活は、思いがけず楽しかった。

感化院では、自分たちの食べるものは自分たちで作り育てる。

土にまみれる毎日は、少女に山のくらしを思い起こさせた。

少女はどんな作業もいとわず、率先して体を動かす。

少女がここへ送られた詳しい事情を知らされていない教官たちは、なぜ彼女がここで矯正教育を受けねばならないのか首をひねった。

しかし、彼女は時折、施設を抜け出した。海を見にいくためだ。

東京へ連れて来られるとき、列車の窓から長いこと海が見えていた。

そして列車がトンネルに入り、しばらく真っ暗になったかと思うと、突然、おしくらまんじゅうをするように家が立ち並ぶ街の景色が目に飛び込んできたのである。

少女は、この海をたどれば山に帰れる、と思っている。

少女は、懐かしいふるさとの山を見に、海へ行くのである。

教官たちは、少女のこの小さな家出を知ってはいたが、みな知らぬふりをしていた。

十年後。

山のふもとの小さな村で、馭者と少女は夫婦になっていた。

馭者の馬車は、ここでもいつもいちばんぴかぴかだ。

そして、その馬車に、馭者はあいかわらずひらりと乗ってひらりと降りながら、ときどき馬車のうしろにぶら下がる子どもにこつんと拳骨をくれている。

少女は、村の学校の先生になった。

一日の授業を終えて子どもたちを送り出すと、彼女は白鷺のように家へ飛んで帰る。

家では、彼女によく似たきらきらした眼の小さな女の子が二人、彼女の帰りを待っている。

https://livedoor.blogimg.jp/office_prego/imgs/2/6/2630780e.jpg

最後まで読んでくださった方、ありがとうございます<(_ _)>

また、

「あれ、こんな女の子、スイスあたりにいなかったっけか?」

と思った方、あなたはスルドイ!!(~_~;)



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2007年04月21日

宿題 〜前編〜(ayan)

私は〈Katari-Za 語座〉という団体で、声の表現を勉強しています。

文学作品を動きのない一人芝居のごとく読み語る、という形態の表現です。

稽古は週に2日。

1日は「通常稽古」といって、座長がセレクトした作品をみんなで揃って勉強します。

もう1日は「公演稽古」で、公演に出演する予定のある人が、自分で選んだ作品を仕上げていくための時間です。

川端康成 作 「夏の靴」。

「通常稽古」では、いまこれに取り組んでいます。

とある海辺の村を舞台に、そこでいちばんの馬車を引く馭者と少女との交流を描いた掌編。

ごくごく短い作品なので、余分な説明はいっさいありません。

こういう作品を語るとき、

語り手には、説明がされていない部分を補って背景を明確にする、想像力&創造力が求められます。

背景を自分なりにきちんとしておかないと、なんだかよくわからない表現になっちゃうからね。

☆ ストーリー ☆

少女は、高貴な雰囲気を漂わせ、身なりもきちんとしている。

それなのに、靴を履いておらず、裸足で血を流しながら、延々と馬車を追って走ってくる。

結局、終点の港までついてきた少女。馭者は自分の馬車に乗せてやった。

……「ここで降ろして」という少女の声に馬車を停めると、少女はそこに落ちていた白い靴を履き、感化院へと飛んで帰った。

……謎なんです、この少女が(ーー;)

「この少女は、いったい何者なのか。

 どんな境遇で育ち、

 どんな理由があって感化院へ送られ、

 そしてどんな行く末をたどるのか。

 自由に想像して、自分なりのストーリーを作ってきなさい」

座長から、こんな宿題が出されました。

こういう宿題、私大好き♪

電車、お風呂、はばかり等々で構想を練り、一気に書き上げました。

「よくもまぁ、ここまで大風呂敷を広げられるもんだ」

と、座長を言わしめる出来!

(一言も褒められてはいません)^_^;

記念にブログにも載せておきたいと思います。

読んでいただけますか〜?

(つづく)



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2006年12月10日

プチ燃え尽き症候群(ayan)

先日「軍艦じいさんの運転ぶり」と題してご紹介した「確認家族」を

ついに語ることができました!

所属する語座の月例勉強会「師走会」。

今回の会場は、東京都庭園美術館・小ホールです。

開門前にそそくさと入場する私たちを、

大橋巨泉似の守衛さんと、目にも鮮やかな銀杏のじゅうたんが出迎えてくれました。

月例勉強会、いつもは1発勝負なのですが、

今回は会場の関係で、

 1回目:座員だけの会

 2回目:友の会会員の会

と、なんと語るチャンスが2回アリ。

幸せ♪

……と思ったら……落とし穴は思わぬところにあるものですね。

座員という、気心の知れた仲間の前なのに、あろうことか、私は生まれて初めてというくらいにド緊張してしまったのです。

口の中はカラカラ。喉は絞まってキューキュー。

最低最悪の出来でした。

なんでだろ、どうしてだろ、この作品は緊張して語ったら面白くもなんともないのに…。

2回目が始まるまでの時間に、一生懸命考えました。

そうしたらね、あることがピン!とわかりました。

「笑わせてやろう」などという不遜でよこしまな野心が、私の頭のどこかにあったのです。

こんないやらしい考えをかけらでももったら、その時点で、語りは死にますよね。

死んだしゃべり→おもしろくない→笑ってもらえない→焦る→かたくなる→ますますしゃべりは死んでいく→ますますおもしろくない→……

“すべり”スパイラルです。

軍艦じいさんのドライブっぷりと、

佐和子さんにとってはそれがとっても大切な家族の記憶であることを、

目の前の皆さんにとにかく一生懸命伝えよう。

このことだけに集中するのだぁぁぁ

と、出番が来るまでずっと自分に言い聞かせました。

さて、結果は。

一生懸命に語ったことだけは伝わったようです(^.^)

「クリアー!っていうあなたの叫び、今晩夢に出てきそうだわ」

なんて、お客様から声をかけていただいたりもして。

…誉められたんだか、けなされたんだか、なんてフクザツな…。

多少なりとも、自分なりに修正して2回目に臨めた。

これが、今回の勉強会の収穫です。

そして。収穫のあとにくるもの。

それは……脱力。

はぁぁぁ〜〜。サッと、モーレツ校正者に切り替わらなきゃいけないのだけれども、ね。

とりあえず、眠りましょう(*^_^*)

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20年来の友MとEちゃんが、こーんなキャワイイお花をもって駆けつけてくれました。サンキューね。感謝☆☆☆



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2006年11月26日

「軍艦じいさん」の運転ぶりは…(ayan)

私が所属する<語座 Katari-Za>には、友の会という活動支援組織があります。

公演のない月は「月例勉強会」を開き、

会員のみなさんに私たちの読み語りを聞いていただいています。

あ、勉強するのは会員でなく、私たち座員ですからね。

耳の肥えている会員さんたちから、忌憚のないご意見をいただくのです。

12月の勉強会に、私も出演させてもらうことになりました。

今日は、それに向けての初稽古。

今回私が語るのは、阿川佐和子氏の「確認家族」というエッセーです。

この作品、実は、

その昔まだE.T.が編集者だった頃に、

「車をテーマに、なにか書いていただけませんか」

と阿川氏にお願いして、書き下ろしてもらったもの。

しかも、

ある雑誌に一度掲載されただけで、単行本にはおさめられていない幻の作品です(たぶん)。

父・阿川弘之氏の運転にまつわる幼い頃の思い出を綴ったもので、

ごく短いのだけれど起承転結がきちんとついているし、

読後感も爽やか。

いつかこれを語りたいなーと、ずっと思っていました。

ついに実現します♪

阿川弘之氏。

海軍出身で、故・吉行淳之介に「軍艦じいさん」と揶揄されていたそうです。

なるほど、車の運転もかな〜り軍人チックです。



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2006年11月12日

公演、無事に(ayan)

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「第5回 語座公演」。

9・10日の二日間にわたる、語座最大のイベントだったわけですが、

無事、好評のうちに終了しました。

ご来場くださった皆様、本当にありがとうございました。

写真は、記念に配られたワインです。

座長の出身地である函館の、ルビーのような赤ワイン。

ボジョレー・ヌーボーがひと足早く呑めちゃった♪

そんな気分にしてくれる味でした。

語座の次回公演は、おそらく来年4月。

わたしたち若手座員による舞台です。

これに出演するには、まず座内のオーディションを突破しなければなりません。

私もガンバリマス。



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2006年11月05日

もうすぐです(ayan)

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先日このブログでも宣伝した「語座 第5回公演」。

本番まであと4日となった今日、演出家や舞台監督も立ち会って最終稽古が行なわれました。

ぴーんと張り詰めた空気。

出演者だけでなく、裏方の私たちまで緊張で体がかたくなります。

と同時に、

ことばで表現された世界を、声だけで伝えようという

この芸術が、いかに難しく、演者を消耗させるものであるかを思いしらされもします。

「厳しい世界に飛び込んでしまったもんだなぁ」

と、自分の選択を他人事のように眺めてしまったりもして。

とにかく、あと4日です!

運営、進行、そして語り。すべてがうまくいきますように…。

写真は、今回の公演にあたって新調された見台。

座長がこの見台で、山本周五郎を語ります。



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2006年10月18日

だまされたと思って(ayan)

https://livedoor.blogimg.jp/office_prego/imgs/3/9/3948dd75.jpg

私ayanが〈語座 Katari-Za〉に入門し、

〈読み語り〉という話芸を修業していることは、

このブログを読んでくださる皆様にはすでにご存知のことと思います。

その語座が、来月公演を行ないます。

座長と幹部クラスの座員が出演する、特にオススメの公演です☆

11月9日(木)19時開演

  10日(金)14時開演 

 会場 古賀政男音楽博物館・けやきホール(代々木上原)

 席料 3500円(全席指定)

 出演 槇 大輔……「御定法」作:山本周五郎

    横尾まり……「天使の都」作:加納朋子

    目黒光祐……「かたきうち」作:池波正太郎

    広居 播……「禁酒の心」作:太宰 治

    福 笑子……「おぼろ月」作:藤沢周平

講談でも落語でもなく、はたまた朗読でもない〈読み語り〉。

そのアバンギャルドな芸を、ぜひ一度体感してみてください、だまされたと思って(^o^)/

「お、なんか面白そう♪」

と、思ってくださった方は、

オフィス・プレーゴ いながき まで、どうぞお問い合わせください。

お待ちしておりまーす。



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2006年05月01日

無事に終了しました(ayan)

4月20・21日に三鷹でおこないました「語座bis公演」、

無事に打ち上げました!

お陰さまでチケットは完売、

また、

なんと原作の先生がお見えになるというサプライズもありました(注:川上先生ではありません。あぁ)。

朗読の公演には、

つまらない(ー_ー)!!

というイメージがつきもの。

そんな友人・知人たちを拝み倒して観にきてもらう

なんてことも、実はよくやっておりまして…

友人・知人にはいい迷惑なのですが(ミンナゴメン)…

でも、そんな彼らから

「いやー、おもしろかったよ。意外だった!」

なんて言ってもらえることがありまして。

そんなときは、もう天にも昇るような気持ちになります。

聞く人がそれぞれに、物語の情景を思い描けるような語り。

それが「おもしろい」語りです。

そんな語りが、もっとできるようになりたいなぁ。

…という夢を抱きつつ、

まずは〈モーレツ校正者☆〉という日常をしっかりやりましょ

と思う今日このごろです。

語りの勉強と校正の仕事、ことばに向き合うという意味では同じですものね!

公演においでくださった皆様、ほんとうにありがとうございました。

また是非いらしてくださいネ。



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2006年04月17日

カミングアウト2(ayan)

「一人芝居風の語りってなに??」

との声におこたえして、

評論家の吉 喜久蔵(よし・きくぞう)先生とのインタビューを掲載させていただきます。

ぜひ参考にしてください☆

【語座bis公演に出演の稲○○子さんにインタビュー】

〜“親子”と“友達”の間をいったりきたり。その心の機微を語ります〜

みなさん、こんにちは。朗読評論家の吉 喜久蔵です。

今日は、4月20日(木)に行われる「第5回語座bis公演」にご出演の稲○○子さんにお話をうかがいます。

―― まず、今回上演される「夜のドライブ」(作/川上弘美)は、どんな作品ですか?

《稲○》 この作品は、初老の母親と、40歳を過ぎて独身の娘の二人の物語です。大人になった娘の目には母親のか弱さや幼さ、危なっかしさが見えてきて、「お母さん、かわいい」と思えてくる。30代女性の多くが抱きはじめるであろう母親への思いが、この作品には込められていると思います。

―― なぜ母と娘の話を選んだのでしょう。ご自身の体験と重なる部分があるとか?

《稲○》 ええ。私自身、最近になって、「母と娘というのは、ある時期を境に立場が逆転するんだなぁ」と感じまして。母が、自分のことを「あたし」と言うようになって、なんとなく私に甘えるような口ぶりやそぶりを見せるんです。もう完全に「友達親子」ですね。そんなときに、ちょうどこの作品に出逢ったのです。

―― 「ぜひここを聞いてほしい!」というところはどこですか?

《稲○》 やっぱり会話ですね。何気ないやりとりの中に、母と娘にしかわからない微妙な心の動きがある。そこをきちんと表現できればと思います。それと、作中の「母」のお茶目な一面も伝えたいですね。

―― 川上弘美さんは好きな作家なのですか?

《稲○》 そうですね。去年の舞台(第4回語座bis公演)でも語りました。川上さんの作品は、読んだ後に、まろやかでちょっと温かで……なんともいえない感じが残るんです。その「なんともいえなさ」がとても好きです。語りでもそれが出せればいいな、と思っているのですが。

―― ところで稲○さんといえば、おバアちゃんが登場する作品に縁がありますよね。意地の悪いへそ曲がりのおバアちゃんとか、買ったお菓子を誰にあげたのか思い出せずに頭を悩ませるおばあさんとか……。

《稲○》 たしかに(笑)。今回の母親は、おバアちゃんというには少し若いかもしれませんが、「あの作品のおバアちゃんと同じじゃないか」などと言われないよう、新しいおバアちゃんをお見せします。「そうそう、あんなお母さんいるよねー」と思っていただけるようなキャラクターをめざしたいですね。

―― なるほど。では、最後に、公演に行こうかどうか決めかねている方に一言メッセージをお願いします。

《稲○》 私たち語座が取り組んでいる「読み語り」は、朗読とはちょっと違います。本を持った一人芝居、とでも想像していただければ。今回、私は、「わたし」「母」そして地語りの3役を演じます。平日、そして都心からちょっと離れた会場と二重苦の公演ですが(笑)、8時過ぎまでにおいでいただければ、私の出番に間に合います(大笑)。ぜひ、聴きに観に、いらしてください。

    ※これは、参考資料として作成した架空のインタビューです。



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