2007年07月28日

35歳フツーの独身男が結婚するまで(7)

いざ!初めての結婚相談所

自慢じゃないが僕は優柔不断を絵に描いたような男だ。
さっさと決断することもできなければ、行動することもできない。
考えてみれば、バイクや車を買うときもあちらこちらからカタログ
を取り寄せたり、ネットで調べたり随分迷った。
っていうか、この間がまた楽しかったりする。
大枚果たすのだから、それまでに十分錬ったっていいだろう。
その行為そのものを楽しんだって良いはずだ。

で、ハタと考えた。
あれ?僕、なんで結婚相談所に入ろうと思ったんやっけ?
見合い、嫌だったはずやん?
自然な出会いをしたかったはずじゃなかったのか。
いつからこっちの方向に脳内変換されたのか??

おお、そうそう。
”気を遣うのが嫌だから、親や親戚や知人が介在しない
出会いがしたい”
と思い始めていた頃、偶然、結婚相談所から出てきた冴えない男
を見かけて奮起したんだったっけ。

そういえばあの男、あの結婚相談所に入ったのかなぁ。
実際、どうなんだろう。
何ていったって困るのは、身近の人間の体験談というのがないことだ。
いわゆる、人づてとか、評判を聞いて・・という機会に恵まれないのが
結婚相談所なのかもしれない。


むっちゃ、変なやつだと思われるだろうが告白する。
あれから1ヶ月経った先週の日曜日、実は例の結婚相談所あたりを
再びぶら付いてみたのだ。
いや、正確にいうとそのビルの前を5往復ぐらいした。
何が目的かと聞かれると困るけどなんとなく気になって、
その時のテンション次第では突然訪問して話を聞いてみようとさえ
思っていたのだ。
名前が通った情報系の結婚相談にしようと頭では考えていたのだが、
サイトで見たあのおばさんの強烈な笑顔がなぜか頭にこびりついていた。
悪魔のようないかつい笑顔に、僕は知らず知らず誘導されたのかも知れない。

ビルのエントランスに入りドキドキしながらためらっていると、
相談所がある2Fでエレベータが停まり少し時間を置いて降りてきた。
そしてドアが開いた。2Fには他のテナントは入っていないの
で間違いなく相談所から帰ってきた人だ。

女の子、可愛い!!3秒ほど目が合った。ドが付くほどタイプ!!
いくつぐらいだろう?28歳ぐらいかな。
振り返って彼女の後姿をまざまざと見た。
好みのややぽちゃ。ふっくらしたヒップから伸びる足の形も色っぽい。
サラサラの長い髪が踊るように揺れていた。

  
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2007年07月22日

35歳フツーの独身男が結婚するまで(6)

独身男の結婚相談所リサーチ


今日も僕はおひとりさま。
お目当ての古着ジーンズ屋を探すため繁華街を少し外れた道を
歩いていたら男が1人、1件の雑居ビルから出てきた。
なぜか周囲を見回している。
何気なく上を見ると、その雑居ビルの2階窓ガラスには「結婚相談所○○」
というロゴシールがドカーンと張られていた。
その男は、雑居ビルから数件先のコーヒーショップへ足早に入って行く。
僕もたまたま、そう、たまたまコーヒーが飲みたかったので彼の後に
続いたのだった。

男は歳のころなら30歳代後半、額がやや後退しているようだ。
服装の趣味はあまり良くない。
平日はスーツを着ている普通のサラリーマンだろう。
なんとなく挙動不審で、ときおり顔を上げて考え事をしている。
トイレに行くふりをして男が、テーブルの下で隠しつつも広げている
パンフレットのようなものを覗き見た。

うん、間違いなく結婚相談所の案内パンフレットだ。
「結婚相手をお探し・・・・」というフレーズが読み取れた。

ヤバイよな〜。暇にあかして人の後をつけるなんて。
で、おい、結婚相談所かよ。
いや、笑えない。
同病相哀れむとはこのことだ。
そうか、こんなところに結婚相談所ってあるんだな。
当然、利用者もいるわけなのだ。
こういう男が入会したりするんだ。
僕と比べてどうなんだ。
彼と比べて僕の方がまだ少しはモテそうか?

コーヒーショップ内、携帯電話を触りながらアホみたいに笑っている
コギャルたちに聞いてみたいほどだ。
「こっちのおっさんと僕、どっちがイケてる?
どっちとなら付き合う?」と。


深夜、鏡に自分の顔を映してみる。
相変わらずたいしたことはない。
溜息を大きくひとつ付き、パソコンを立ち上げた。
ネット歴は長い。パソコンはお手のものだ。
なんたって技術系だもん。

「結婚相談所」というキーワードでサイトを検索するのは初めてだった。
雑誌や新聞に広告が載っていたりして気にはなっていたが、
思うことは「高そう〜〜」「これで結婚できたヤツなんて本当にいる?」。
眠い目をこすりながら2時間、僕なりに学び初めて解かったことがあった。
いわゆる○ー○ットとか○○ァイとか、派手に宣伝をしている大手結婚相談所は
正しくは結婚情報サービス業。
情報のマッチングが主体。システムで相手をメールでアポを取り、
つまりは選び自分がアクションを起こして成婚まで持って行くというものだった。


それに対して今日、見かけた雑居ビルに入っているような「町の結婚相談所」は、
大抵大きな組織に、フランチャイズのようなカタチで加盟している。
多くの会員データを共有しながら縁組していくというスタイルだ。
コンピュータシステムを用いながら仲人の手も入れ、見合いをセッティング
してくれたりお見合いに付いて来てくれたりするという。


さすがに結婚情報サービス系のサイトは、グレードが高い。
女性人気タレントが美しく微笑み掛けてくる。
「あなたと結婚したい人がいます」というコピーにもかなりそそられたりして・・。
試しに件の町の結婚相談所も検索してみた。
うろ覚えの相談所名だがかろうじて見つけることができた。
うへっ!検索順位、低っ!!

ふんふん、なになに。料金はこんなものなのか・・。
経営者の写真が載ってるなぁ。
思いっきり薀蓄を垂れてるぜ。
あ、キッつーーー。ウチのお袋や叔母ちゃんを少し若くしたぐらいの
おばはんやーー。

「小うるさいおばはんは、ウチだけでお腹いっぱいや。
入会するなら、やっぱりシステマティックな情報系にしよう。高いけど」
僕はそんなことを考えながら深い眠りについた。


  
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2007年07月11日

35歳フツーの独身男が結婚するまで(5)

NOと言えない30男

お袋は意気揚々と僕の帰宅を待っていたようだ。
お見合い後しっかり夕食デート、上手く行くに違いないと思って
いたことだろう。
(女性に優しい)僕は、お袋にこう告げた。
「感じの良い女性だったけど、多分、僕のことなんか気に入らないと思うよ。
断ってくるんやないかな??」

「なんでやの。今まで一緒にいたんやろ?相手だって嫌だったら
一緒にいないわよ。
で、あんたの気持ちはどうやのよ、あんたの気持ちは!!」

「うん。先方さんさえよければね」
僕はお袋の顔を見ずに答え、2階の自室にさっさと引き上げた。
必ず断ってくることは解かっている。
お袋に彼女の強烈な告白内容なんて言えっこない。
そんなことを言おうものなら、今夜のうちにお袋→叔母→彼女の母親に伝わり
彼女の家に血の雨が降ること間違いない。


翌日、叔母から昼間に電話があったらしい。
お断りの理由は「私には勿体ない」という体裁文句と、
「フィーリングが合わない」とのこと。
苦笑しながら、僕は昨日の彼女の泣き顔を思い浮かべた。
またしても自身の問題点で発見。
それは「無意味に優しすぎる」という欠点だ。


誰に対してもネガティブなことははっきり、きっぱり伝えること
ができない。
相手を傷つけるのが怖いのだ。
返せば自分が傷つくことも恐れているのだろう。
「NOと言えない日本人」っていう著書があったよな。
そう、「NOと言えない30男」がこの僕なのだ。
守るものもないのに、なぜNOという意思表示をすることが苦手なのか
を考える。
自己保身?自己愛?
そうだよな。こんな男に人生を預けたいと思う女性はいないかもしれない。
家族を守るため、愛する人を守るためなら、NOと言わないことにも価値がある。
こんな気弱な僕だけど、心の奥底で「誰かのため」に生きたいと願っている。


あの見合いから数ヶ月が経った。
何か言いたげなお袋を避けるよう、僕は休日も家にいないようにしている。
が、テニス以外で毎週の休みに遊んでくれる友達がいるはずもなく、
仕方なく単独行動することになる。
行くところがない・・。実際の話。


カップルや家族連れ、女性が多い場所に男が独りでブラブラしていることが
みっともなく思うのは僕だけだろうか?
自意識過剰と言われればそれまでだが、居心地が悪いことを解かってほしい。
本屋、メンズショップ、CD、DVDショップ、バイクショップ、
パソコン系ショップをブラブラ、究極の暇つぶしはパチンコだ。
ギャンブルに熱くならない僕にとってパチンコは程よい遊びだと考えている。
おかげさま(と言えるかどうか?)で、風俗系には嵌ったことがない。
どちらかというと僕の性欲は淡白なのかもしれない。
男性なら誰もが好きな、アダルトサイトやDVDあたりで十分処理できる
レベルと言って良いだろう。  
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2007年07月10日

35歳フツーの独身男が結婚するまで(4)

お見合い相手の強烈告白


今日は先日叔母が持ってきた見合いをすることになっている。
日曜日にスーツってどうよ。
いかにも「今日、お見合いします」って感じに見えないか?
「アンタのことなんて、誰も見ていないわよ」とお袋が
リビングで仁王立ちになっていた。

「いい?今日こそ決めないともう後がないわよ。
お母さんは恥ずかしくて、お義姉さんにもう頼めへんっ。
しっかり大きい声で話す。男らしく自分がリードする。
明るい雰囲気で場を盛り上げる。
ああ、もう。お父さんと違ってお母さんに似たら、あんたも
もう少し社交的だったのに」

ああ、嫌だ嫌だ。お袋よ僕は35歳や。
ええ加減にしてくれ・・。

待ち合わせはホテルの喫茶室。
叔母に付き添われ僕はお見合いに今、臨んでいる。
先方の女性は母親が付いて来ていた。

33歳かぁ、微妙なお年頃やな。
横井彩さん。
仕事は普通の事務職OLさん。
趣味は映画とショッピング。
僕と同じく実家住まい、典型的な京都の独身女性だ。
学歴は彼女も専門学校卒、福祉関係だったと言う。
卒業して福祉関係に就職したものの、ハードで給料が安いから
転職したとのことだった。

そうだな。条件的にはピッタシなんだと思う。
美人じゃないけど笑うと目が細くなって可愛いし、
性格も控えめそうな感じだ。

叔母や彼女の母親は先に帰り、場所を変え2人で話をすることになった。
世間話をしながら鴨川を少し歩き、テラスのあるティールームに
席をとる。
開口一番、彼女はこう言った。

「あの・・。篠原さんはいい人だと思うけど、私、
実は結婚する気ないのです。
今日のお見合いは、母や篠原さんの叔母様に強引に勧められて来たのです。
本当にごめんなさい。許してください」

呆気に取られる僕。
見栄を張って「ああ、僕もそうなんですよ。実は乗り気じゃなくってね」
とも言えず、もちろん「そうですか。では失礼します」と
怒って帰ることもできず、こんなところにも僕の気の弱さが表れる。
黙ること数分間(長く感じた)、彼女がまた話し出した。
どうしてそんなことを僕に告白したのか解からないのだが、内容はこうだった。

「好きな人がいるんです。離婚調停中の男性。実はその・・、不倫だったの。
いろいろあって親にもバレて、もちろん、彼の離婚が成立しても結婚なんて絶対
許さないと言われています。
絶対、お見合いで結婚させるって親が強引なんです。」

「え、ああ、そうなんや。親御さんの気持ちとしてはそら、そうだろうね。」

気が付いたら僕は、彼女の悩み相談を受ける立場になっていた。
彼女の障害だらけの恋愛について、その辛さ痛みを聞く側になっていた。
泣き出す彼女、「お見合い相手にこんなことを聞いてもらうなんて・・」とか、
「篠原さんがあまりにいい人なので、なんでも話したくなってしまった・・」
とか言われ、お人良しな僕は晩メシまで彼女に付き合った。
っていうか奢ってあげた。

「私が彼のことをあなたに言ったことを、叔母様には言わないでもらえますか?」
と最後に釘まで刺され、僕の見合いの1日は終わった。  
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2007年06月25日

35歳フツーの独身男が結婚するまで(3)

出会いたいし、恋愛したい!

ちなみに会社はメーカーなのでほとんどが男ばかり。
総務や経理、受付に女性はいるけど、なぜかほとんどが人妻
だったりする。
たまに派遣で事務の女の子が入ったりするけど接触する機会もなく、
30歳代独身男だらけの我が社は悶々とした空気が漂っている。
福利厚生の一環で、どこかの女子社員と合コンなど開いて
くれないものかと思ったりしている輩は多いはずだ。


社内で比較的仲が良い友達がいる。
青木浩という名で僕より一つ先輩の36歳だ。
ひょろりと背が高く痩せていて、はっきり言って地味な男だ。
だが、妻子持ちなんだよな、これが。
3年前、僕と同じくバイクが趣味の彼は、事故で骨折して
運ばれた病院先で今の奥さんと出会った。
奥さんは看護師、彼は2週間の入院生活中に彼女を見初めたらしい。
羨ましいじゃないか!
こういう運命的な出会いを僕も求めている。
ただし、彼から聞かされる家庭生活の話には結構キツイものがある。
しっかり者で気の強い嫁の尻に、彼は完全に敷かれている。
残業をしていると青木はソワソワし出す。
「もうすぐ1歳半の娘を風呂に入れるのが俺の役目やねん。
あんまり遅いと、嫁はんに文句言われるんやぁ」と。

「ふ〜〜ん、大変やな。でも今、奥さん専業主婦状態やろ?
休職中なんじゃないの?」
と尋ねても

「アホか、約束されられたんや。”子供が保育園に行くように
なったら、仕事と家事を両立させバリバリ働いてマイホームを買うから、
それまでの休職期間はゆっくりさせてね。育児は当然役割分担制やで”って。
俺も素直に合意した。」

そうか。生々しい話や・・。
結婚って本当に”生活”なんだと思ったり、感心したりする。
そんな青木夫妻に、以前女の子を紹介されたことがあった。
奥さんがまだ妊娠中の時、後輩の看護師31歳を僕に引き合わせてくれたのだ。
青木のマンションでのお好み焼きパーティ、その子は結構可愛い感じ
だったことを覚えている。
これってよくあるパターン。
夫婦者がそれぞれの友達をくっつけてくれるというヤツ。
「友達の紹介結婚」の大王道、成婚率70%ぐらいはアリ?っていう
素晴らしいシステムだ。


だからそういうシステムは上手く利用しなければならない。
チャンスを逃してはいけなかったのだ。


頑張ったんだけどね。
「ちょっと頼りなさ気でタイプじゃない」って言われて玉砕。
うん、青木夫妻の”仲人ごっこ”は失敗に終わったというわけで、
僕はなんだか情けなかった。
「看護師さんって女ばかりの職場だから、まだ他に独身の女性いるでしょ?」
と卑屈におねだりもしてみたが、あれ以来誰も紹介してくれない。
1回のミスで見限られたか??


なんかダラダラ話したけど、つまりは、
僕は結婚はしたいと思っている。
それなりに大変だろうけど、独りで一生いるつもりもないし、
結婚したくないと言い放つ勇気もポリシーもない。
「平凡で穏やかな人生」は、やっぱりパートナーがあってこそ完結する。


ただ、見合い結婚はいかがなものかと思っている。
恋愛、したいよ。
かれこれ何年していない?って話。
いや、僕の名誉のために言わせてもらうと4年間交際した彼女以外に
付き合った女性は1人、2人、いや3人ほどいた。
でも、3ヶ月とか半年?で自然消滅みたいな感じでフェイドアウト。
うん、今から考えると感情の部分では恋人未満なのだったような気がする。
そんな恋愛下手な僕だけど、20代の時のような気持ちにもう一度なってみたい。
女の子と自然に出会って恋を育んでゴールイン、これを望んでいる。


つまりは出会いさえあれば、なんだよな。
出会い、出会いね。  
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2007年06月21日

35歳フツーの独身男が結婚するまで(2)

35歳の憂鬱と昔の彼女

ほら出た。
箸を置いたとたん、お袋が見合い写真と釣書を出してきた。

「お父さん、ほらさっきお義姉さんが持って来てくれはった話、
ええよねぇ。写真をゆっくり見た?感じの良い人やないのねぇ。
高志!もちろん、お受けするやろ?早い方がいいからねっ」

どうもこうもない。
僕の返事など聞くまでもなく親父に同意させ、さっさと
「よろしくお願いします」と叔母に電話を掛けることなどお見通しだ。

「うん。わかった・・。」
僕はまじまじと見合い写真を見た。
お袋には逆らえない。

誰かに似ているな。
TVに出ている子。
そうそう、最近人気のあるバラエティタレントの・・。

悪いけどあんまり趣味じゃない。
はいはい、解かってますよ。
選べる立場じゃないってことぐらい。
僕は取り立てて面食いじゃない。でも好きなタイプはある。
派手じゃない子がいいな。
どちらかと言うとややポチャが好き。
いつも笑顔を絶やさない家庭的な女の子と結婚したい。
あ、待てよ。
家庭的なのはありがたいけど、今の給料ならやっぱりしばらくは
共働きしてもらいたいし・・。


見合いをする前になると、なぜかいつも思い出すことがある。
専門学校時代に知り合い「かなり深い関係」になった昔の彼女のことを。
アルバイト先の大型家電店で出会ったのがきっかけで、交際は4年間続いた。
思えば、あの日々すべてが青春そのものだった。
男兄弟しかおらず、男子ばかりの工業高校を卒業した僕は女の子に対して
まったく免疫がなかった。
ドキドキの片思いから始まり、告白、初めてのデート、初めてのキス、
初めてのセックス、初めての半同棲生活、彼女は最高だった。
明るくて優しくて働き者で我慢強く、僕のことを本当に大切に思っていてくれた。


だけど振られたんだよな。
他の男に取られてしまった・・。
僕がぐずぐず子供っぽいことを言っている間に。
笑いたかったら笑え。
でも、実はいまだトラウマになっている。
風の噂ではすでに結婚して子供もいるとか、そりゃそうだ。
あんな良い子がずっと独身でいるわけがない。


月曜日の朝は部署の会議から始る。
1週間の中で一番、憂鬱な時間だ。
仕事自体はやりがいを感じている。
社風も悪くないし、人間関係にもまず問題を感じていない。
口の悪い同期の仲間などは、
「篠原は鈍いかならなぁ。なぁ、どこかで感じてない?
大卒の工学部出の後輩がなんとなくジワジワと肩を並べてきていること、
会社自体もそういう感じで見ていることとか」
って言うけど、正直実感はない。
欲がないのだろうか僕は?


もちろん、定年までこの会社に世話になろうと一応は思っている。
そうだな、でも、せいぜい課長どまりかもしれない。
平凡な結婚をして、子供を1人か2人設け、街中だったら中古、少し離れたら
新築のファミリータイプのマンションでも買って普通の家族生活を送る。
そんなことぐらいしか考えていない。
趣味のテニスやバイクは子供が大きくなったらまた復活させよう。
それまでは良きマイホームパパでいるつもりだ。

ともかく、「一山当てよう」とか「社内で異例の出世をしよう」という
大それたことは考えていない。
平凡で普通、健康で穏やかな一生が送りたい。
これって親父譲りの性格なんだろうと思う。
お袋はなんだかんだ言っても見栄っ張りだし、上昇志向が強いもんな。


35歳という年齢は微妙。
結婚しているヤツはもうとっくに父親だし、正直「大人」って感じ。
周りのこともよく見ている。
僕みたいな独身はどこかまだ子供の部分があって、関心事が常に「自分」
なんだと思う。
いや、違うな。
別に「自分大好き」ってわけじゃない。関心や愛情を向ける対象者が
いないだけなんだ。

  
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2007年06月08日

35歳フツーの独身男が結婚するまで(1)

イエ男クンと呼ばれても

「ほんなら、高志くん、おじゃましましたぁ。
ええ(良い)お返事、待ってるわねぇ。詳しくはお母さんから聞いといてね」

と、大きな声が階下の玄関あたりから聞こえてきた。
日曜日、午後の早くから我が家に来ていた叔母(父の姉)がやっと
帰ってくれる。

「うん、わかった。ありがとうな、叔母ちゃん。
気を付けて帰ってください」玄関まで見送りに出た僕の横で
母がぺこぺこお辞儀をする。

「ありがとうございました。お義姉さん、今度こそ決めさせますわ。
絶対、お見合いさせますし、お義姉さんのお顔潰さないようにしますから」

今年に入って2度目の見合いがまた組まれようとしている。
話を持って来てくれる叔母には悪いが、正直あまり気乗りがしない。

僕こと、篠原高志は今年35歳になる。
某メーカー(二部上場企業)勤務、勤続15年目の技術者だ。
肩書きは一応主任。
工業高校を卒業した後、専門学校を出て今の会社に入社した。
残業や休日出勤を含めて年収は410万円、実家暮らしなので
趣味に掛ける小遣いはたっぷりあると言っていいだろう。
専門学校時代から8年間、兄貴が結婚してこの家を出るまでは
独り暮らしを経験したが、部屋が空いたので戻ってきた。
やっぱり実家は楽。
「ぬるま湯状態」と言われようが、出て行く理由が今はない。
昨今、僕のような男のことを”イエ(家)男クン”などと呼ぶらしい。

そう。だから”結婚しろ”と親から言われている。
周囲からありがたくもない見合いの話が舞い込んでくる。

実際のところ見合いは楽しくない。
紹介者がやたらしゃべるのもウザいし、なにより相手の女性が
「ヤル気なさげ」に見えるからこちらのテンションもダダ下がってしまう。

かれこれ何回しただろう。
32歳を越えたあたりから、5,6回?
会社の同僚や、趣味のテニス仲間にはまさか見合いをしている
なんて言えない僕だ。

どちらかと言うと口下手である。
どちらかと言うと優柔不断である。
どちらかと言うと問題先延ばし派でもある。
そして、
どちらかと言うと「モテるタイプ」ではない。
もちろん、誰から言われるまでも無く自分で解かっている。

これが見合いの時の紹介になると、
「口数は多くないが、真面目で大人しくて優しい男性」。
仲人口とはよく言ったものだ。
どう贔屓目で見ても、僕のスペックはあまり良いとは言えないだろう。
専門学校卒だし、身長も170cmを切る。
年収はまぁ、あんなもんだけど、親父やお袋だって高卒で兄貴だけが大卒、
まさしく典型的な庶民一家だ。
こんな僕になぜ、しょっちゅう見合いの話があるかと言うと、
それはお袋の人付き合いの良さがあってのこと、地元町内会の役員から、
ボランティア活動、地元から出た市会議員の世話役までやっている。
ともかくマメなおばはんで、ボーっとしている親父の代わりに、
外の付き合いや親戚付き合いをソツなくこなしている。

おばはん、いやお袋は、本当にどこにでもいる関西人特有のおしゃべりで
逞しい初老の女なのだが、見た目がスッキリしているらしく(僕にはわからんが)、
”そこそこの家のご婦人”と周囲には映っているようだ。

笑ってまうなぁ。
築20年、敷地面積わずか25坪足らずの建売住宅に住む主婦なのに。
もちろん年金暮らし、お袋の才覚で10年前に買った借家があったりして
そこの家賃収入が夫婦に少しだけ余裕を齎せている。

日曜日の夕飯時、35歳の息子と食卓を囲む状況が、心から嬉しい親なんか
いないだろう。
僕だって楽しくない。
平日は大抵9時か10時ごろに帰宅し、お袋が作った夕飯を1人で食べる。
土曜日はテニスの仲間と外食をすることが多い。
ただ日曜日は、明日からの仕事に備え家でゴロゴロしていたいのだ。
彼女でもいたら、日曜日の夕方、家でサザエさんを見ることなど
ありえないはずだ。  
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2007年06月03日

37歳人生の決断 (最終回)

最終回 〜必ず結婚できる私〜

彰男との別れから2ヶ月が経ち、和世は再び結婚相談所での活動を再開した。
「もう、無理だ」と諦め掛けていたのだが、少しずつ自分の中で
気持ちが変化しているようにも感じる。
その証拠に、お見合いを申し込んで来てくれても、今までは見向きすらし
なかったタイプの男性に対してだってありがたく思える。
「成長したのね」とカウンセラー。
「・・そうですか?」と、和世はさほど感情を込めずに答えたりする。

男と女、惹き合うものがあってこその結婚なのだと思う。
根底の部分にそれがないと、やっぱり途中で折れてしまう。
それが「恋愛感情」と呼ぶに至らないものであっても、愛情を感じる
種のようなものが芽生えないと始らない。
愛情の種とは、すなわち相性なのだと思う。
相性と言うからにはハートにスポットを当てるべきだろう。
だが、どうだろう。
私たち、結婚相談所で活動する会員の前にあり、大きく意味を成すはずの
ものそれはやはり「相手の条件」だ。
一見、矛盾すら感じるこの現実に対し疑問を感じ、自問自答を繰り返す
うちは一歩たりとも前に進めない。

条件にも納得でき、相性もぴったり、
結婚相談所にそういう人はいるだろうか?
「出会わなければそれは解からない」と言われている。
探さなければ永遠に見つかることはない。
落胆することもあるかもしれない、傷つくことだってあるかもしれない、
思いどおりにならないことだってあるかもしれない。

しかし、和世は”強くなろう”と決意を改めている。
それは、和世の今までの人生において必要なかった「別の強さ」だ。
世間の結婚している女たちは、この強さを持っているような気がする。
寛容さ、大らかさ、良い意味での鈍さ、少しの諦めと自分自身を客観視
できる賢さ、これらを嫌でも叩き込んでくれるのが結婚相談所なのかもしれない。
ある意味、人生、鍛錬の場?和世は時々、苦笑したくなってくる。

”今の自分が嫌いではない”と思う。
「絶対、私は結婚できる」という自信があるからだ。


エピローグ

「結婚しない方が良い人間なのかもしれない」と言っていた彰男には、
今、気になる人がいる。
昼は定食屋、晩は居酒屋になる駅前の小さな店で働く32歳のバツイチの女性だ。
何度となく通ううちに、知らず知らず親しくなっていた。

「磯山(彰男)さん、これ家で食べて」と、店の余り物を容器に入れて
持ち帰らせてくれたりする。
「ええよ、ええよ。今度、お代に余計に付けとくさかい」と
店主は苦笑いを見せる。

今度、ドライブに連れて行ってほしいと彼女から言われた。
とことん明るくあけっぴろげで肉感的。
「今までの人生、いろいろあったし、怖いもんなんて何にもあれへん」
と豪語する彼女は本当に逞しく、彰男はいつも癒される。

「こんな女との暮らしは、一体どんなだろう?」と、実は心のどこかで思っている。

  
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2007年05月27日

37歳人生の決断(25)別れのとき

別れのとき

不安な気持ちを抱えたある日、彰男からの長いメールを受け取った。

要約すれば「やはり、ご縁が無かったということにしてください」
という内容。
理由は彼自身の心にあるという。
「どこかで、弟の看病に追われていたころの自分をまだ引きずっている。
正直なところ、苦労知らずのあなたに、自分のことを解かってもらいたい
というのはあまりに勝手過ぎる。
2人で会っているのは楽しいけど、いつか人生観や価値観の違いが
障害となり、お互いを傷つけ合いそうになるような気がする。
自問自答を繰り返したが、やはり、あなたを幸せにしたいという気持ち、
また、できるという自信が持てない・・・」

丁寧過ぎるお詫びの文面から、伝わるものある。
彰男は和世と交際をして初めて、自身を内観することができたのかも
しれない。
「僕は結婚しない方が良い人間なのかもしれない。」
という言葉で最後は締め括られていた。

和世は不思議と冷静な気持ちでそれを受け止めた。
そう、結婚に対し不安感を持っている男性とはどうしようもない。
恨む気持ちも沸いてこなかった。
例え数ヶ月だろうが、お互い理解しようと努力したことに悔いはない。
一旦、わだかまりを感じた時が実は終わりだったのだとも考える。

結婚はしたい。
しかし、「大丈夫、私となら幸せになれる。私がしてあげる」と言うほど、
愛情を感じていないことを和世自身も気が付いていた。
もっと長く交際すれば、そういう気持ちになったのだろうか?
それは和世にも解からなかった。



  
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2007年05月24日

37歳人生の決断(24)大人だからこその難しさ

大人だからこその難しさ

恥ずかしさと嬉しさで熱いものが込み上げてくる。
その後、2人は付近の居酒屋でこれでもかと言うほど飲み倒した。
もう取り繕ったりしない。長所も短所もたくさん解かり合いたい。
多少酔っ払って、醜態を晒したって構わない。

”和世さん”と呼んでいた彰男は、酔ってカズちゃんと呼び名を改めた。
お返しに彰男のことを”あっ君”と呼ぶことにした。

2人はその日、正真正銘のカップルになった。
見た目はどこにでもいる中年カップル、中身は中学生カップルのように
初々しい。
小さなケンカがあって当たり前、何でも正直に言い合える仲になろうと誓う。
近いうちに、それぞれの結婚相談所に「成婚退会届」を出そうとも話し合った。


あの晩の盛り上がりは何だったのだろうかと考える。
1ヶ月以上経って、ふと思う。
「これからは素直に自分を出し合おう」と約束した和世と彰男だったのだが、
実際はそんな風になれていない。
なぜだろうか・・?
考えても答えが出ない。やはりお互いのどこかの部分が、それを自然にできな
いようにしているのかもしれない。
それまで歩んで来たそれぞれの人生経験が、「勢いと流れで結婚する」こと
を阻んでいるような気がする。
そう、すべて先を読み、頭で判断しようとしている。

メールの出だしが”和世さん”から”カズちゃん”に変わっただけ、
お互いの仕事の都合で、あれから1回デートしただけだった。
結婚に向けての具体的な話を進めたい和世だが、彰男は切り出してこない。
2人の距離を縮めようと、何かの冗談の後、笑いながら肩に寄り掛かってみたが、
彰男は真顔になりすっと身を避けた。
和世はその意味を薄々感じ取らざるを得なかった。

  
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2007年05月18日

37歳人生の決断(23)知って欲しい、本当の私

知って欲しい、本当の私

だって、本当にしんどかったんだもん。
慣れていない所で寝るより自分の部屋で休みたかったのよ。
いくら磯山さん(彰男)の家でも、手も握ったことが無い男性のウチで
心底休まるはずないじゃないっ!!遠慮するわよ、普通。
トイレも借りっぱなしで本当に恥ずかしかった。
初めてお家に行ったのだったら、元気な状態で機嫌良く手料理のひとつ
でも作ってあげたかった。
あなたに良いところを見せたかったわよ。
磯山さんに比べて、人生甘えてばかりで全然ダメな私だから、頑張ってたのよ。
何よっ!!人の気も知らないで。だめなのよ、
こんな風にしか男の人の前で振舞えないの。わたし、わたし・・」

気がつけば和世はボロボロと泣き出していた。
「こんな私でも、この間の帰り、磯山さんと結婚したいと初めて思った。
ゆっくりでも、あなたとなら穏やかな愛情を育てて行けると感じてた。
私に足りないものを教えてもらおうと思ってた」

恥も外聞もなく、彼女は彰男に本音のすべてをぶつけた。
どうせ終わるのだ。格好をつけて”大人のいい女”を演じるつもりはない。
最後に本当の自分を知って欲しかった。

気まずい雰囲気のまま時間は流れ、2人は喫茶店前で別れる。
交際そのものを辞めるかどうかの結論は出さないまま。

和世は放心状態で自宅マンションまで帰ろうと、地下鉄の階段をゆっくり降りる。
"恋をして付き合った相手ではない。ただお見合いをして少しの間交際をしただけ。
なのにどうしてこんなに悲しいのだろう。情けないのだろう。
自分を否定されたことが辛いのか、彰男を失ってしまうことが辛いのかは
わからない。ただ、胸が痛い"

ホームに電車が入って来て、乗り込もうとしたその時、
後ろから「和世さんっ!!」と叫ぶ声がした。
彰男が凄い勢いで走り寄り、彼女の腕を掴んだ。
驚く和世の手を引き、人気が少ないホームの端まで無言で歩く。

「ちょっと待ってください!!」

呆気に取られる和世。
「君の本音を聞きたかった!思っていることを知りたかった。本当の姿を
ぶつけて欲しかった。そういう和世さんを待ってた。
和世さんとの結婚を前向きに考えたいと思ってる。」

  
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2007年05月10日

37歳人生の決断(22)甘えられない性格

甘えられない性格

和世は帰りの電車の中で、少しぐったりしながら今日あったこと
を思い出す。
きちんと整理整頓されていた彰男の部屋、家具もシンプルながら
落ち着いた雰囲気の物を選んでいる。
キッチンはほとんど使っていない感じだが、トイレや洗面場も清潔で、
男の独り暮らしながら洗濯や掃除を怠っていないことが解かった。

真面目な性格を物語るような暮らしぶりに安心感を抱き、
小まめで思いやり深い彰男を、今さらながら好ましく思う。
「プロポーズしてくれたら結婚してもいいかも・・」
阪急神戸線は乗っていて気分が良い。乗客は皆上品で車窓から眺める
景色も清清しい。
住環境、イメージの良さ、阪急神戸沿線エリアは京都に生まれ育った
和世にとって、地元に勝るとも劣らない”住んでみたい場所”だった。
彰男との結婚生活のアウトラインを想像してみる。悪くはない。
彼の普段着ファッションのセンスをなんとかしなければと、和世は考える。

翌日の晩、和世は彰男に丁寧なお礼の電話をした。
彼は変わらず優しく、今日も身体の心配をしてくれる。
次の週、京都で会う約束をした和世は、彼からプロポーズされるその日
の自分を想像した。

京都駅近くの喫茶店、予想に反してそこには重い空気が漂う。
笑顔を保つことができず表情を強張らせる和世。

「この間ね、和世さんに家で休んでもらったやろ?凄くしんどそうで
気の毒だったけど、僕は嬉しかったんや。元々、人に何かをしてあげるっ
てことが好きな性格だから、頼ってほしい、甘えてほしいというところが
僕にはあって・・。
うん、弟の看病を長年していたから、自分を犠牲にしてでも誰かの役に
立ちたい、と思う性格なんや。なんかええ格好してるみたいやけど。

でもな、和世さんって、言い難いけど、人に甘えるとかが嫌いで、
自分の弱みを見せたくない人なんかなぁって思う。
いつも”ちゃんとしていたい””きちんとした女性でいたい”って感じなんだ。
ほら、先日も無理して帰ったでしょ?きれいに掃除までして、
”迷惑を掛けたくない””明日仕事だから”と言って・・」

和世の寝顔を見て、思ったとも言う。
なんでもできてすっかり完成された大人の女性を、僕が幸せにできるだろうか?
身内の不幸に翻弄され”幸せ知らず”の僕なんかで良いのだろうか?
恵まれて生きて来たこの人を、この先安泰させ守ることができるだろうかと。

和世は黙って聞いていた。
私はそんなに肩肘貼った女だと思われていたんだ。
甘え下手で、可愛気なく、相手に距離感を抱かせてしまうような。

「私とはもうお付き合いできないって言うことなの?
一緒にいて疲れてしまうんでしょ?」

彰男は下を向く。
和世はどんな時も、思ったことをすぐそのまま口にする性質ではない。
でも、今日だけは違った。

  
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2007年05月01日

37歳人生の決断(21)デート中のアクシデント

デート中のアクシデント

なんだかんだで彰男との交際は3ヶ月近くになっていた。
それぞれが所属する相談所において、お伺いが立てられる。
「いかがでしょうか?そろそろお相手に対して結婚の意思が
あるかないか?決められますか?」

「決めれようにもまだわからない・・。良い人だと思うし好意も感じるけど」
和世はそう答えるしかない。

彰男の母親のこと。(同じ神戸市内に昔から飲食店を営む実妹と今は機嫌良く
一緒に暮らしている。
実妹も早くに夫を亡くした未亡人、共に生活資金には困っていない)
結婚した場合の住居のこと。
(彰男は阪急沿線の六甲付近に3LDKのマンションを買いそこに住んでいる。
ローンこそまだあるが、幾ばくか、実家を売却し生前分与で受けた資金も
あるので繰上げ返済を考えている。)
等、具体的な話は聞いているが、プロポーズはおろか彼の気持ちを
はっきり聞いたことはなかった。


初秋の風を肌に感じる頃、和世が神戸に出向き2人は会っていた。
彰男が車を出し明石方面まで、新鮮な蛸料理を食べに行った帰りのこと、
和世は体調を崩してしまった。
夏の疲れが残っていたのか、生理の影響か、和世の体質に生蛸が合わなかった
のか解からないがとにかく吐き気がして、腹痛がする。
何度もトイレに立ち寄り、結局は彰男のマンションで休ませてもらうことになった。

初めて上げてもらった彼の住まいだか、そのときは室内を観察する余裕はない。
トイレに閉じこもったままの和世を心配して、彰男は知り合いの医師に
電話を掛けてくれた。
「出すものを出して水分を取って、1、2時間休んでも具合が悪いようだったら、
休日診療をやっている病院に行った方が良い。連絡をしておいてあげるよ」
と医師のアドバイスを受け、すぐさまリビング横の和室に来客用の布団を敷き
和世を促した。

気が着くと夕方の6時だった。
2時間以上眠っていた和世は、目覚めて周囲を見回した。
和室の襖は閉められている。

和世が目覚めた気配を感じて彰男が顔を覗かせた。
「どう?気分は。まだ気持ちが悪い?お腹痛い?病院に行かなくって
大丈夫かなぁ。あ、でも大分、顔色が良くなってきたよ」

「・・ありがとう。すみませんでした。心配かけて。
本当に自分でもびっくりしちゃった。
こんなこと滅多にないのに。
単なる食あたりやわ。たくさん頂き過ぎたのだと思う」

彰男はそれでもまだ和世の体調を気にかけ、再度医師に電話をし、買い置きしてある胃腸薬を飲ませても良いか、おかゆなら食べさせてもよいかなどと聞いてくれた。

「京都まで帰るのしんどいでしょう?今日はここに泊まって、明日こっちから
出勤したらどう?無理しないほうがええよ」
彼は何度もそう言った。
彰男の好意はもちろん嬉しいし、泊まったからと言って何かがあるとも思って
いない。
だが和世は頑なに、なんとしてでも今日中に帰ると言い張った。
泊まる準備もしていないし、なんだか気が引ける。
気を遣って休ませてもらうぐらいなら少し無理をしてでも家に戻り自分のベッド
で寝たい。
それなら、車で京都まで送って行くという彰男だったが、「大丈夫だから」と
拒否をした。
まだ調子が戻っていない身体を起こし、汚したトイレを掃除し、
周囲をかたずけ化粧を直して彼のマンションを出た。晩の9時だった。
  
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2007年04月26日

37歳人生の決断(20)お見合い後の交際

お見合い後の交際

「お付き合いをOKしようか・・」。
ただ、思う。
仕事の苦労は当たり前のこと、それ以外、なんの不幸にも見回れず、
恵まれ自由気ままに生きてきた自分と、彼との価値観は合うのだろうか?
彼が持つ”人生に対する厳しさ、それを知り得た強さ”を自分自身、
素直に受け入れることができるだろうか?
真面目な彼の女性観も気にかかる。いくつかの恋愛経験がある自分で
良いのだろうか?

一晩考えた末、和世はもう一度彼に会ってみようと思った。
交際OKの返事、彰男もそれを望んでくれた。
翌々週の日曜日に、2人はお見合い後、初めてのデートをする。

神戸から京都に出向いてくれた彰男は、ゆっくり京都散策ができる
ことをしきりに喜んでいた。
「和世さん任せっきりにしてもいけないと思い、下調べして来ましたよ。
ありきたりですが嵐山はどうでしょう?
美味しい料理屋の情報も仕入れてきました」

渡月橋、天龍寺、嵯峨野の方にも足を伸ばす。
新緑の中、観光客に混じりながら2人は少しぎこちなくも散策を楽しんだ。
山紫水明の美しさや歴史の重みに感動し、土産物屋の活気に驚く。
凝った京料理の美味しさに舌鼓を打ち、京都の良さをその都度言葉にする。
彰男は見かけの印象とは異なり、思ったことを素直に表現する男性だった。

「何年か前、嵐山に来たときはこんなのなかったなぁ」
と、有名なあぶらとり紙の店を見てしみじみ言う。
元々は祇園にあったのだが、観光名所のあちらこちらに支店を出している。
あぶらとり紙だけではなく、趣向を凝らした様々な化粧品や化粧道具が
溢れんばかりに店内に並び、女性観光客の関心を集めていた。

「女性ばかりだから入りにくなぁ」と笑いながら、彰男は一緒に店内に入り
あぶらとり紙を二つ買った。
「珍しくもないものだろうけど・・」と、和世に一つくれ、もうひとつは
自分が使うと上着のポケットに仕舞い込む。

「磯山さん、小粋なんですね。京都の遊び好きの年配男性は粋で、夏場になると
あぶらとり紙と扇子を持ちあるかはるんですよ。お茶屋さんとかクラブで
遊んだはる社長さんやらの必須アイテムって聞いたことがあります」

「へぇ、そうなんだ。僕は粋でもなんでもなく、ただ、汗っかきだからこれが
あると便利かなぁって思って。変ですかね?
僕みたいな無粋でヤボな男がこんなの使うのって」

少しづつ会話が馴染んでくる。
和世は彰男といることが決して嫌ではなかった。
気負わず自然体で話ができる男性だとも思う。
”親しく付き合った女性が、過去、いなかったわけではない”ということ
も彰男にうっすらと感じた。

それからの交際は、まずまず順調と言って良いだろう。
1〜2週間スパンのデート。
彼が京都に来たり、和世が神戸に行ったり、中間地点の大阪、USJにも出掛けた。
電話やメールも1、2日置きにする。ある程度の回数を重ねるとその頻度にも慣れ、
むしろ無いと「どうしたのかしら?」と感じる。


スケジュールを決めてのデート先は、美術館や水族館や博物館、
テーマパークやちょっとしたイベント。”行き先ありき”のものだった。
タウン誌や観光雑誌のデートコース情報を頼りに、今まで足を運ぼうとも
しなかった場所に出掛けて行くのは、良い歳をした大人同士の男女にあって、
ある意味新鮮なのかもしれない。


お見合い後の交際とはなんとも不思議なものだ。
やはり恋愛とは違う気がする。


熱い恋愛感情を持ち合う2人だったら、一緒にいられさえすれば良いのだから
行き先は行き当たりばったりだろう。
安いコーヒーショップで時間を潰すだけでも嬉しい。車を停めて話をするだけでも
ドキドキする。ウインドショッピングするだけでも浮き立つ気持ちになるものだった。
居酒屋チェーン店でのお酒や食事だって楽しく、
もちろん、最後は2人っきりになれる空間と場所を求め合う。


結婚相談所においては交際期間中、肉体関係もしくはそれに準じる行為は禁じられていた。いや、禁じられているのではなく、そうなったら「結婚の意志あり」イコール「成婚退会」というのが決まりごとだと説明を受けている。
「デートはそこそこ長時間した方がいいわよ。疲れないお相手かどうかも、決め手ですしね」昼間か夕方、食事のみデートでも十分相手を知ることができると和世は感じていたが、カウンセラーからそう諭された。
  
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2007年04月25日

37歳人生の決断(19)お見合い再チェレンジ

お見合い再チャレンジ

気を取り直し結婚相談所をやめることはせず、
また1人の男性とお見合いをする。

和世に申し込んで来てくれたその男性は43歳、神戸の某鉄鋼会社に
勤める技術系のサラリーマンだった。
長男、年収520万円、大卒、身長は172cmとある。
背丈はすらっとしているが顔は歳相応の老け具合、
真面目そうでお堅い勤め人という感じだ。
父親は他界、6歳下の弟も他界と家族欄に記されていた。
名前は磯山彰男という。

お見合いをした感想は、今まで同様、可もなく不可もない。
ホテルのティーラウンジから、場所を変えもう一件の喫茶店で話をした。
彰男の弟は3年前に亡くなったばかりだという。
彼が33歳のとき、弟は27歳で交通事故に遭ったそうだ。
打ち所が悪くほぼ植物人間状態になった弟は、長年寝たきり
状態になり、一家はその看病に追われていたと言う。
絶望の中、それでも奇跡を信じ回復を祈り続けた7年間、
老いゆく両親に成り代わり、彼は長男として出来る限りのことをした。
会社と病院の往復、昇進レースも退け、私生活のほとんどを犠牲にしたとの
ことだった。
そんな中、父親も突然の脳溢血で亡くなる。
残され疲弊した母親を支える役目も加わり、彼は43歳の今まで独身生活を
余儀なくされたのだった。

「すみません。初めて会った方にこんな重い話をしてしまって。
弟が亡くなって3年、ようやく気持ちに余裕ができ、自分のことを
考えられるようになったんですよ。
母もすっかり元気になり、”結婚してくれ”としょっちゅう言いますしね」

「そうだったんですか。ご苦労をされて来られたのですね・・」
和世はそう慰労するしかない。
自分が歩んで来た道はこの人に比べ、なんと幸せだったんだろう。
家族が健康であることに感謝しなければならないとも思った。

「あ、でも、悪いことばかりじゃなかったんですよね。
周囲の方々の愛情や思いやりを感じることがいっぱいありましたし、
命の尊さというか、ありがたさも知りました。
少々辛いことがあっても、なんとも思わないんですよ。
神経が頑丈になってしまったんですよね。
寝たきりの弟が僕に教えてくれたことはいっぱいあります。
可愛いヤツでしてね。学生のころは・・・」
彰男はそのあと、弟の思い出話を少しだけしてくれた。

お見合いの返事をしなければならない。
彰男の”人となり”はよく解かった。
家族想いで真面目で強い心を持っている。
婚期を逃してしまった理由も頷ける。
じっくり話を聞いているうち、彼の表情の穏やかさに好感を持つ和世だった。

  
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2007年04月13日

37歳人生の決断(18) 会うべきでなかった・・

会うべきでなかった・・

今の会社に勤めて何年になるとか、和世は昔と変わらずキレイで
格好良いだとか、先の電話の件を交えて雄二は堂々と明るく会話を進める。

和世から逃げた件に関してはすべて若気の至り、一切自分に非があると
平謝りをしながら
「自分はあの当時、劣等感の塊だった。和世と比べて。だから別れるしかなかった」と、自尊心を擽って来る。
いつしか2人は先斗町の小さな一品料理屋のカウンターで肩を並べていた。
彼が仕事でよく利用する店だと言う。


酒が進むにつれ、昔の雄二が顔を出す。
どこか少年のよう。調子良いくせに馬鹿みたいに正直なところがあって、
意地っ張りで、優しくて、周囲にいつも気を配り”華”を作ってくれる男。
私が好きなのは、やっぱりこういう男なんだと和世は思った。


耳にしたくない言葉だったがそれは仕方がない。
「3年前に結婚したんや。できちゃった婚、子供は男の子。
笑うやろ?俺が父親だなんて」
カイショが無くったって、一応そこそこの大学を卒業した上にこのルックス、
女たちが雄二を放って置くはずがなかった。
女性に対するアプローチの上手さも去ることながら、天性の色気を
備えた男は、器用にそしてそれなりに世の中を渡っているように思う。


「私は雄二と比べて、生き方が不器用やからね・・」
懐かしさと心地よさが手伝って、いつしか自分語りを始めていた。
いい加減、酔いが回ってきたころ、和世は後悔した。


酒の力に任せて、雄二がうっかり漏らしてしまったその仕事の実態・・。
新規事業のビジネス英会話スクールの責任者に課せられるのは、
教材販売の厳しいノルマだった。
生徒獲得のための強引な営業力が、なにより求められるもの。
自分が紹介して誰かに新たなスクールを開講させると、マージンが入る
仕組みだった。どこかで聞いたようなピラミッド形式の組織体・・。


不快感を露にし、帰ろうと席を立つ和世に雄二が言った言葉は、
「今晩、嫁はんと子供、滋賀県の実家で泊まってくるらしいから
遅くなってもええねん。
和世んちにこれから行ったらあかんかなぁ?
久しぶりにもう少し飲みたくない?
な、ええやろ?俺、やっぱり和世のことを忘れられなかったんやなぁって思う」
だった。


雄二と会って数日、和世は屈辱感に苛まされる日々を送っていた。
わざわざ8年も経って、リスキーで怪し気なビジネスに誘い込もうとした
昔の恋人、雄二。
都合の悪い流れになると、自分の魅力を試すかのよう、男女の関係を迫る卑劣な奴。
家庭があるのに、倫理観のかけらもない下種な男。
別れた女さえ、今だ自由になると思っている。
馬鹿にされた。舐められた。
こんなことに簡単に引っか掛かる女だと、見下されていた。
今だ独身で、一つの会社で燻っている情けない女だと思われていたのだ。
悔しくて溜まらない。どうしてノコノコ出掛けて行ったのだろう。


ふと、お見合いで出会った男性たちを思い出した。
真面目で口下手でちょっとダサくて、でも仕事がしっかりしていて、
だから、その自信が裏づけとなる重みのある人ばかり。
雄二のように華やかで器用だが、軽薄で心のない男とは違う。


私は変わらなければいけない。今のままでは恥ずかしい。
このままでは別の意味で雄二と一緒だ。
和世はそう思い始めていた。
  
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2007年04月08日

37歳人生の決断(17) 昔の彼との再開

昔の彼との再開

いつ退会を申し出ようか、迷っている和世に事件が起こった。
およそ、10年ほど前、初めて購入したころから番号を変えていない
携帯に、8年前に付き合っていた年下の男から電話が掛かって来たのである。

「あのぉ、滝田和世さんの携帯でしょうか?」

表示された見知らぬ電話番号、どこかで聞いた声
「はい、そうですがどちら様ですか?」

「うわ、良かった。電話番号そのままやったんや。
俺、いやあの僕、雄二です。
吉谷雄二。あ、切らんといて、いや、切らないでくださいっ!!」

あまりの驚きと、じわっと沸いてくる不快感に和世の声は裏返った。
「そういう方は知りません。切りますよ。今後掛けて来ても
着信拒否をしますからっ」

「違う、違うっ。お願い、お願いだから切らないでください」
悲痛な声で懇願する昔の男の言葉に、和世は軟化した。
いい歳をして、いつまでも振られた事に拘っていると思われるのもシャクだった。

聞けば雄二は、仕事のことで恐る恐る和世に電話をして来たらしい。
彼は英語教育教材の企画、販売や、子供向けの英会話教室を全国展開し
ている企業に勤めている。営業開発部課長補佐だとか。

「だから、なんなのよ・・」

「和世、いやごめん、滝田さん、今でも以前の会社に勤めてるの?
だとしたら、このままずっと勤めを続けるのかなと思って。
英語力を生かして、独立したいとか起業したいとか考えたことはない?
そのスキルをもっともっと生かしたいと思ったりしていない?

実はウチの会社、新たな事業展開を考えていて、新規の英会話スクールを
方々に立ち上げる予定やねん。
いや、子供相手じゃなくって、ビジネス英会話とか
それに付随する英語力が必要な文書作成カリキュラムなんかもあってな。

で、人材が欲しいんや。
業務責任者となってくれるキャリアがある人が必要なんや。
”今さら顔なんて会わせられへん”と思いながら、すぐに滝田さんのことを
思い出した。
ああ、あの人なら適任や。あの人にもっともっと大きくなってもらいたい。
厚かましいかもしれへんけど、俺、滝田さんのキャラ、
実力ともめちゃめちゃ格好いいと思ってたし尊敬していた。

当時は俺、アホなことをして傷つけてしまったけど、今ならあんたのために
何かできる。っていうか、一緒に何かしたい。
償いなんていうたら怒るかもしれへんけど、とにかく、もっともっと
活躍して欲しいと願ってる。
そのために逆に俺を利用してくれ」

「とにかく断ってもいいから話だけでも聞いてくれ」という雄二に和世は折れた。
翌週土曜日の夕方、喫茶店で会う事になった。

待ち合わせの三条京阪近くの喫茶店に先に来て待っていた雄二は現在35歳、
あの頃とすっかり雰囲気が変わったように思える。
シャープな顎と甘い目鼻立ちはそのまま、流行のデザインのメガネが
よく似合っている。
三つボタンの細身スーツに包まれた身体は、以前よりほんの少しだけ
肉付きが良くなっただろうか。
背の高さとサラサラな髪質は変わらない。

「大人の男になった・・」と和世は感じ、お見合いで会う男たちとは異なる
その様相を前に和世は息苦しくなった。

「仕事の話などというのは、私に会うためのきかっけでは・?」と、
心の奥底でもう1人の和世が囁いた。
打ち消したい想いと、そうだったらの想いが微妙に錯綜する。
  
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2007年03月30日

37歳人生の決断(16)厳しい苦言

厳しい苦言


お見合い後、交際を断る理由、交際してもすぐに終わってしまう理由
を聞かれれば簡単だ。

「(相手を)好きになれる予感がしない」
「(相手と)結婚を考えることができない」
お見合いとは言えど、1ミリたりとも心が動かない相手と結婚できる
はずもない。

恋愛とは違う心の動かし方が必要だと和世は思う。
それができる人が、お見合い結婚に向いているのではないかとも考える。

例えば、相手が電話やメールをくれるとする。
次はいつ会うかなどを決めるため。
恋人でも友達でも、気がつけばできる限り早くコールバックやリメール
をするのに、なぜ、お見合い後の交際相手にはできないのだろう。

仕事で疲れているから、眠いから、明日が早いから、アルコールが
入っているから、読んでしまいたい本があるから、
なんだかんだ勝手な理由をつけてしまう。
「失礼だからすぐ返さなければ・・」と思う気持ちが、
反応の悪さに余計繋がるのだった。

最悪なのは男性の方が勝手に盛り上がってしまうパターン、
まだ何がどうともなっていないのに、勘違いをする男性がいる
ことには驚いた。

好きでも嫌いでもない、”ただ、見合いをしただけの相手”
に対して、好感度の高い大人の女らしい対応がどうしてもできない。

そして、こういうときは決まって自己嫌悪に陥る。
「何が気に入らないというのっ!!」と、自分自身に問い掛けずには
いられなくなる。


「素のままの感情に任せた言動と態度では結婚できませんよ。
努力だって必要なのです。男性も女性も”自分の我や思いを
あえて抑えて”相手を知ろう”としないと難しいのです。

え?なぜ、相手を知る努力が必要なのですかって?
結婚したいのですよね。結婚するために相談所に入っているのですよね。
自然に感情が燃え上がるような、ドキドキとスリリングな恋愛の相手
と出会うために、ここに入られたわけじゃないですよね」

最近のカウンセラーはなかなか手厳しいことを和世に言う。

さらにこんなことも

「和世さんはお仕事でいろんな場面を経験していますよね。
”利害関係も含め、この人とは友好的な関係を築いたほうが良い”
と感じたら、そのように動きませんか?相手を知ろうと努力しませんか?
で、最初は目的ありきで親しくなった方とでも、いつしか人として好感を
抱き心底親しい間柄になったということもあるでしょう」

あっと思う。

「キャリアウーマンさんの良いところは、ヒューマンスキルが高いってこと。
一般的に、男性より女性の方がそれは高いはずですしね。
あなたがお見合いを望むお相手は、仕事や勉強一筋で生きて来たようなタイプの
方が多いから、上手くリードをして盛り上げてあげれば、
絶対、男性はあなたの虜になるはずです。

”虜にしたいなんて思わない。別にどうでもいい相手ばかり”とおっしゃるなら、
仕事もバリバリ、ヒューマンスキルも高く、あなたをドキドキさせてくれるような
男性をいつまでも待ち続けますか?
そういう男性がいたとして、あなたを確実に選んでくれるという自信が
ありますか?」


電話の向こうから発せられ、辛辣な叱咤激励に対し返す言葉もないまま、
和世はぼんやり聞いている。
疲労感だけが和世の胸に押し寄せてきた。


「辞めちゃおう。結婚相談所なんて、やっぱり私には無理だったんだ。
解かってる。意味のないプライドが邪魔をして、それでもそんな自分を
変えることなんて今さらできない。」


親しみを感じていたカウンセラーが、なんだかとても意地悪な人に感じられた。
  
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2007年03月27日

37歳人生の決断(15)初めてのお見合いは×

初めてのお見合いは×

そんな折、和世から申し込んだ男性からやっと
お見合いOKの返事が来た。


条件も良い。年収600万円、41歳、次男で国家公務員だった。
早々、お見合いの日時が調整される。
当日、少しドキドキしながらお見合いの待ち合わせ場所に向う。
通勤用のジャケットはたくさん持っているが堅い感じなので、
柔らかい色合いのデザインニットを新調した。
美容院にも平日遅い時間の予約を入れて、先日、行ったところだった。


和世側と男性側の仲人(カウンセラー)と4人で席に着く。
京都駅に程近いホテルのティーラウンジ、紹介や取り留めない話をして
15分ほど後、仲人たちは席を立って行った。
2人になって話すのは、やはり互いの仕事のこと。
今までの経歴、趣味、普段の生活ぶり、親の話などだ。
約1時間半でお見合いは終了し、和世は軽い疲れを感じていた。


なにかがピンと来ない。
良い人なんだろうけど、会話がイマイチ噛みあわない。
先方もそう思っているだろう。
次の話の糸口を掴むまでしょっちゅう、無言の時間が流れていた。
結果、お断り。交際に至らずだった。


初めての結婚相談所でのお見合いを経験し、
和世は幾分吹っ切れたような気がしていた。


--こうやって、いろいろな人と淡々と会えば良いんだわ。
大きな期待を持たず、その場の空気が馴染む人がいれば、
また次に会えば良い。
”この人と結婚するのか、しないのか”と気負わず、
自分を追い詰めさえしなければ、
いつか波長の合う男性と巡り会えるはずだ--


条件に拘らなければ、その”波長の合う男性”
に巡り合う確立は高いのかもしれない。
重々、それは解かっている。
ただ、でも、一生のパートナー、自分の価値を下げるような
相手とは結婚したくない。
”プライドばかりが高い、高望み女”と言いたいなら言えば良い。
こうなったらやるだけやってみよう!諦めるには全然、まだ早い。


和世はその後、少しだけ条件を下げて自分から申し込みをしOKを
くれた相手1人と見合いをした。
申し込んで来てくれて、そこそこ希望の条件に近い相手3人とも見合いをした。
(カウンセラーからも強くプッシュされて)
いずれも交際に発展せずか、交際が決まっても1回だけデートをして
交際終了となる。


後者の場合、和世、先方、どちらともなく「もう、会っても意味ないなぁ」と、
結婚相談所を介し交際の終わらせてしまうのだった。
自分が悪いのだとも思う。
会っているうちに相手の欠点や問題点が目に付いて溜まらないのだ。
些細なことばかり、エスコートの仕方、会話から感じるところの人柄、
志向性、プロフィールに嘘偽りないことなのに、家族との関係や仕事に
おける将来性まで採点したくなる。


”女が歳を取ると、男性を見る目が厳しくなる”とは和世をはじめ、多
くの30歳代独身女性の特徴だった。
  
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2007年03月26日

37歳人生の決断(14)独身男性の本音?

独身男性の本音?

ネックは年齢?子供が持ち難いという年齢?
まだまだ若いつもりなのに、世間では高齢出産が当たり前になっているのに・・。
今の会社は正直辞めたいが、子供ができなかったらなんらかの仕事はしても
良いと考えていた。

エリート男性との現代的な家庭生活を夢見ることがここでは(結婚相談所)
ご法度なのか?と、和世は臍をかんだ。

--今まで一生懸命、自分を高めて来たのに、”時すでに遅し”だっていうの?
自分を求めてくれる男性だったら誰でも良いと、妥協しなければならない
ということなの?
現在の自分に相応しいと思える相手でなければ「良い結婚」だと納得で
きないことが、驕りだというの?--

依然、申し込んでくれる男性は週に1人、2人あったが、和世はその中の男性
とお見合いする気にどうしてもなれなかった。

沈んでいるときに限って、嬉しくない知らせが入る。
2ヵ月ほど前に義姉の世話で45歳の再婚男性と見合いをした、友人の良子だった。
和世は結婚相談所に入ったことを良子に告げていない。
そして、ここしばらく会っていなかった。


「ご無沙汰してごめんね。来週の金曜日あたりの晩、
ご飯とか食べに行けるかなぁ?ちょっとね、報告したいことがあってさ。」
和世はピンと来た。

「報告って何よ。え〜〜、もしかして、この間のお見合い相手と上手く
行っているとか?まさか、もう、結婚することを決めたとか?」


「ふふん、察しのええことで。実は、そうやのよ。プロポーズ受けちゃった・・
あれこれ悩んでも仕方ないし、エイ、ヤー!!って感じ」


プロポーズされるまでの成り行きを1時間近く電話で聞かされた和世は、
とりあえず次の金曜日、良子と会うことになった。

良子との付き合いは10年近く、最初に出会ったのは英語の他にもこれから
需要が高まると思い通い始めた中国語講座だった。
学校や会社以外の場所で、初めてできた仲の良い友人。
同じ年齢の気楽さと、似たような境遇、価値観が2人の絆を堅くした。
様々なスキルを身につけることが幸せな未来に繋がると、
信じて疑わない年頃の二人はあの頃、確かに輝きを放っていたはずだ。

自分が先に結婚してしまうことを、ほんの少し申し訳なさそうにしながら、
でも簡単に「和世だって、その気になればすぐ決まるよ。出会えるよ」と
言い、笑う良子に和世はイラだった。
これ以上、結婚の話は聞きたくない。

決して好条件じゃない男性とのそれを決めた良子が、何を言い出すか予想がつく。
約束の3日ほど前に仕事を理由にドタキャンしようと、和世は考えていた。


  
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