2012年02月

「落としもの」、アンドリュー・ルヘマン監督とショーン・タン監督の紹介

落としもの
THE LOST THING - Picture 1


作品の紹介
原題:The Lost Thing
2010年/15分/オーストリア、英国
英語(日本語字幕版)
3Dコンピュータアニメーション

◆脚本、監督:Andrew Ruhemann(アンドリュー・ルヘマン)、Shaun Tan(ショーン・タン)
◆アニメーション: Leo Baker
◆CGアーティスト/CGスーパーバイザー:Tom Bryant
◆ストーリーボード、デザイン、アートディレクション:Shaun Tan
◆モデリング、テクスチャ、ライティング:Tom Bryant
◆リギング:Leo Baker
◆作曲:Michael Yezerski
◆サウンドデザイン:John Kassab
◆効果音、音響編集:Adrian Medhurst、Daniel Varricchio
◆声の出演(ナレーション):Tim Minchin(ティム・ミンチン)
◆プロデューサー: Sophie Byrne
◆制作:Passion Pictures Australia、Screen Australia
THE LOST THING - Picture 4


◆あらすじ:
少年は、海岸で瓶の王冠収集をしていたとき、とても不思議な物体に出くわした。それは“落としもの”で、少年は所有者を捜したが、見つからなかった。誰も、そんな物体に関わり、自分の生活を邪魔されたくなかった。少年は自分でも理由は分からぬまま、その物体に惹かれるようになり、それにふさわしい“場所”を見つけてあげるのだった・・・

◆受賞など:
第83回アカデミー賞(短編アニメーション部門賞)受賞、2010年アヌシー国際アニメーション・フェスティバル クリスタル賞(最優秀短編作品賞)受賞、ほか受賞多数

◆監督の略歴:
◇Andrew Ruhemann(アンドリュー・ルヘマン)
The Lost Thing Andrew Ruhemann copyルヘマンは、1987年に自ら設立した、アニメーションとスペシャルエフェクトの制作会社Passion Pictures(パッション・ピクチャーズ)の共同オーナーであり、エグゼクティブプロデューサーを務める。
それ以前は、ルヘマンはロバート・ゼメキス監督の『Who Framed Roger Rabbit(邦題 ロジャー・ラビット)』を制作したRichard Williams Studioのプロデューサーであった。
パッション・ピクチャーズは、ヨーロッパの独立系制作会社を代表する企業の一つとなり、世界中から集まった、30名を超す優秀な監督を擁する。
Gorillazのアニメーションビデオなど、コマーシャルとミュージックビデオの分野で活躍著しい。近年の代表作としては、Campaign Magazineの2009年コマーシャル・トップ10の首位に輝いた、「Alexsandr the Russian meerkat」をフィーチャーした「Compare the Market」、「The Beatles: Rock Band game」(Harmonix and MTV)などがある。ロンドンとパリのスタジオに加え、2009年にはニューヨークにオフィスを開設した。
パッション・ピクチャーズは、数々の受賞を誇る長編映画とテレビ番組制作の部門があり、ルヘマンはビジネスパートナーのJohn Battsekと共にドキュメンタリー映画の制作も行う。長編の初制作であった、ケヴィン・マクドナルド監督の『One Day In September(ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実)』(1999年)は社会派ドキュメンタリー映画として高く評価され、2000年の米カデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した。
ルヘマンは世界各地を巡り、才能ある人々を探し、パッション・ピクチャーズの制作の新しいマーケットを広げようとしている。本作『落としもの』はルヘマンの初監督作品となった。原作者のショーン・タンと共同監督した本作は、オーストラリアのPassion Pictures AustraliaがScreen Australiaと共同制作し、世界中の映画祭で絶賛され、2011年の米アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞した。

※ Passion Picturesの個人制作支援「イギリスのコマーシャル制作会社は、個人プロジェクトで優秀なスタッフを確保している」>> 

◇Shaun Tan(ショーン・タン)
The Lost Thing Shaun Tan copy1974年、オーストリアのパース(西オーストリア州)近郊に生まれる。
学生時代は、“腕のよい絵描き”として知らしが、どのクラスでも一番背の低い生徒だった。1995年に美術と英文学の学位を得て西オーストラリア大学を卒業した。現在は、メルボルンでフリーランスのアーティストそして作家として活動している。
10代の頃から、タンはサイエンス・フィクションとホラーのイラストや絵画を小出版社の雑誌に掲載していて、社会、政治、歴史をテーマにしたシュールで空想的な絵の絵本で知られていた。「The Rabbits」、「The Red Tree」、「The Lost Thing」そして世界的評価の高い「The Arrival」は、ヨーロッパ、アジア、南米で翻訳され、年代を問わず幅広い読者に支持されている。
タンは舞台美術のデザイナーでもあり、ブルースカイ・スタジオの「Horton Hears a Who!(ホートン/ふしぎな世界のダレダーレ)」やピクサーの「WALL-E(ウォーリー)」といった映画のコンセプトデザインも手掛けた。
最新作「Tales from Outer Suburbia」も、パッション・ピクチャーズ・オーストラリアで短編映画として制作中で、タン自ら監督を務めている。
2011年の米アカデミー賞を受賞した『The Lost Thing(落としもの)』はタンが初めて監督した短編アニメーション。

◆関連HP:
「The Lost Thing」公式サイト>> 

Shaun Tan のHP>> 

◆短編アニメーション映画『落としもの』制作裏話
ルヘマンがタンの絵本「The Lost Thing」に出会ったのは、イタリアのボローニャ国際ブックフェアのことだった。それは偶然の出会いだった。「その本は、個性的で印象深いビジュアルと、奇抜ながら、底流にメランコリーがある語り口で、他の出品本を凌駕していた。わたしは即座に惹きつけられ、映画化を考えた」と、ルヘマンは振り返る。
「本作をアニメーション映画に翻案するに当たり、僕は監督として、原作のアイデアと美学を余すことなく映画という手法へ移すことにした」と、タンは語る。さらに、「僕には、映像の“スチール”として、本を構成する連続した絵を想像する癖がある。だから、キャラクターや背景を映像化し、彩飾し、レイアウトするのに、映画化あるいは演劇化しても相当の質を保てるのです」。
「ショーンの原作ビジョンに忠実であることを心掛けると共に、観客が物語の中で感傷にたじろぎ、抑制の利いた横糸を追えるように心を配った(というチャレンジに魅了された)。観客の涙腺を緩ませるバイオリンは登場しないが、心を揺さぶる要素を巧みに、底流に織り交ぜた」とルヘマンは語る。

タンは、制作の全行程、つまりストーリーボード(絵コンテ)、プロダクションデザイン、そしてCGのテクスチャに手でペインティングを施すのも、音響の(生効果)収録にも参加した。
タンはクリエイティブの課題を解決するのを常に楽しんだ。「例えば、緻密に描かれた画像、特に視覚体験の焦点となる超現実的な背景を、ディジタルアニメーション相応に作り込むようなこと」。

プロデューサーのソフィー・バーンは、メルボルンにあるパッション・ピクチャーズ・オーストラリアで、3人のコアチーム(うち1名はスコットランド)と3年半掛けてストーリーボードを仕上げた。74体を超すCGのキャラクターと22個のセットが登場する。原作に登場する無数のクリーチャーも見事に再現されている。
モデリング、リギング、アニメーション、ライティング、レンダリングにはSoftimage XSI 6.5を、コンポジティングにはNukeが用いられた。サウンドデザインとフォーレーは1836以上の録音と創作がなされた。
THE LOST THING - Picture 2

メーキングビデオで、タンとルヘマンは揃って、レオ・ベーカーのアニメーション、トム・ブライアントのビジュアルエフェクト、そしてマイケル・ヤージースキーが作曲した楽曲が作品のクオリティを高めるのにとても貢献したと語っている。ルヘマンは「レオのアニメーションは細部が良い」と、タンの原作の美的世界が見事に再現されたことを絶賛した。また、「幻想的でサスペンス感を醸し出す」と評された、ヤージースキーの音楽が効果的に使われている。

※ ショーン・タン監督とアンドリュー・ルヘマン監督のメーキングビデオはワーナー・オンデマンド THE EDGEで配信中>> 


◆ここの掲載する画像、写真のコピーライト:(c) Screen Australia & Passion Pictures Australia

ピョートル・サペギン監督『ノルウェー最後のトロール』を語る

ショートアニメーション『ノルウェー最後のトロール』は、ノルウェー民話「De tre Bukkene Bruse」(邦題:三匹のやぎのがらがらどん/絵: マーシャ・ブラウン、訳: 瀬田 貞二、出版社: 福音館書店)を基にしています。
原話は、どの世代でもこどもに人気の民話です。本来は、3匹の若ヤギが夏の放牧地に向かう途中で橋を渡るというお話しです。この橋はトロールに支配されていて、トロールはヤギを食べようとするのです。しかしヤギたちはトロールの裏をかきます。トロールを橋から突き落とし、殺してしまうのです。なんて賢いヤギたちでしょう・・・

わたしの話しは現代で、主人公はトロール、つまり絶滅種の最後の生き残りです。
このトロールは世の流れに適応してきました。仲間のトロールが死んでしまった後も、数百年を生きのびてきました。
3匹の若ヤギが放牧地へ近道しようとした時、ベルが鳴ったのです。

どうして、古い話しを持ち出してきたかって?
どうして、賢くて若いヤギから役立たずの年寄りのトロールにスポットを当てかって?
なぜなら、古い話しというのは、観客の心に架かる架け橋のようなものだからです。共有したい思いの根幹を持ち込めるのです。
本作をご覧になる方がトロールに共感してくれることを願っています。この民話を聞くと、誰もが愚かなトロールが殺されるのを笑ってしまいます。こういうのは観客が衆愚の一部になってしまっていて、みなさんの同情をうまくトロールに向けられたらと思ったのです。
troll_illustlation

昔と今への言及も織り込みました。
その昔、ノルウェーは、トロール、モンスターあるいはゴーストといった、未開のクリーチャーで溢れていました。
彼らは何世紀もの間、どうやって共存してきたのでしょうか?
おそらく、彼らは互いに互いの風変わりな態度を大目に見てきたのでしょう。あるいは、ランチの時には、誰かの行く手を遮らないようにしてきたのかも知れません。肉食獣が闊歩していた時代でも、共存していたのです。
ところが今は、みんな"友だち"でなければならない時代に、あなたが誰かの"友だち"でなければ、彼らは結託してあなたを殺してしまう・・・

原話で起こる事件はそのまま使いました。
そして、その事件の前と後に何が起こったかを語りました。昔々のトロールがまだトロール少年だった頃のこと、そして年老いたトロールも。ノルウェーの神話と民話でなじみ深いクリーチャー、動物や人間が登場しています。
以上、サペギン監督のディレクターノートより。

サペギン監督の略歴>>



・・・50歳を超したベテランのアニメーション作家、ピョートル・サペギンさんはステキな行き方をしているようです。
アニメーションマガジン・オンラインの問いに答えた、「サペギン流12戒(Sapegin's 12 Commandments)」をご紹介します。
1. Eat hot lunch.(暖かいランチを食べるべし)
2. Wear comfortable, light shoes at work(仕事用の靴は軽くて快適であるべし)
3. Always wear gloves outside(外出するときは手袋をするべし)
4. Have a 27-minute nap in the daytime.(昼下がりに27分の昼寝をするべし)
5. Take weekends off.(週末は休むべし)
6. Get yourself a sex life.(セックスライフに熟達すべし)
7. Bicycle to work.(自転車で通勤するべし)
8. Never work later then 11 p.m.(午後11時以降に仕事するべからず)
9. Do not start before 10 a.m.(午前10時前に仕事を始めるべからず)
10. Do not work nights more than once for every production.(一つの仕事で、一晩以上の徹夜するべからず)
11. Never lend out your tools.(他人に道具を貸すべからず)
12. Do not whistle in the studio. It chases away good luck.(スタジオで口笛吹くべからず。吹いたら、幸運が逃げていく)



ノルウェー語通訳・翻訳家の青木順子さんが紹介する「トロール」・・・トロールは存在する?映画「トロール・ハンター」の衝撃!>> 
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