家庭内暴力で命を落とす子どもたちを思うと、やるせない気持ちになります。
人生を自分らしく全うするために生まれてきたはずなのに、親の手で殺されるとは、さぞ無念だったろうに。

プラネタリウムアニメーション『おおきなぞうとあっちゃんの星』の感想で、「親の虐待で命を落とした子どもたちも、願いが叶うよう、星を見上げていたのかと思うと、胸が熱くなった」と、感傷的に述べたので、現実はそんなもんじゃないと反感を持った方もいるでしょう。

WAT-世界のアニメーションシアター2011で上映させてもらった、ノルウェーの短編アニメーション映画『アングリーマン〜怒る男〜』。
アニータ・キリ監督は「本作は心理療法と啓発教育の両面で機能してほしいと考えると共に、人々の心を突き動かすような芸術性も兼ね備えた映画にしたいと考えました。暴力は家庭内の秘密にしておいてはいけない、「誰かに話してごらん」という重要なメッセージを伝えることをわたしは重視しました」と語っていました>>

数年前、わたしも幼い友だちを喪いました。近所の公園の掃除を手伝ってくれたし、いっしょに遊んだ男の子でした。
母親も一生懸命に子育てしている様子だったし、周りの人たちも気にかけていたのに、小学校に上がる前年、母親とそのパートナーの手で殺されてしまった。親たちの未熟さを感じました。
わたしも男の子を救えない、無力な大人でした。

『アングリーマン〜怒る男〜』では、子どもが助けを求め、暴力を振るう父親と別に暮らすようになります。平行して、父親は教育プログラムを受け、自分の感情をコントロールできるよう、少しずつ成長するというエンディングでした。

DV殺人の報道では、子どもを親元に戻した児童相談所や行政の対応の手落ちが指弾されますが、親子を引き離すだけでは不十分なようです。
自制できない親の心を正さなければ、加害者を精神的に成長させねば、DVはなくならない。それどころか、DVの世代間連鎖も続く。
実際、現場の方々は「保護者支援」でも不断の努力をされている。

厚生労働省の平成29年度(2017年度)子ども・子育て支援推進調査研究事業で、「保護者支援プログラムの充実に関する調査研究」もなされています。
厚生労働省 平成29年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業

名古屋大学ハラスメント相談センターの千賀則史さんは児童・障害者相談センターでの勤務経験を踏まえ、家族再統合に向けた心理的支援を提言されています。
子ども虐待 家族再統合に向けた心理的支援 児童相談所の現場実践からのモデル構築(千賀則史著、明石書店)

感傷的なだけでなく、子どもを救おうと奮闘する方々とアニメーションの現場が共に取り組めば、子ども支援、そしてDVをしてしまう親への支援にもアニメーションを役立てられるのではないかと思うのです。
アニメーテッドラーニングも出番はありそうです。

アニメーション映画「パパ、ママをぶたないで!」>>

絵本「パパと怒り鬼 ―話してごらん、だれかに―」>>