ケウ・ブーエルンド監督の紹介

Cav_photo twitter

ケウ・ブーエルンド(Cav Bogelund)
1978年生まれ。デンマーク北西部(ユラン半島)のヴィボーにあるThe Animation Workshop(アニメーション・ワークショップ)の学士課程でキャラクター・アニメーションを学んだ後、2008年にDen Danske Filmskole(デンマーク国立映画学校)のアニメーション監督科を卒業(卒業制作作品『For Stor/Big Man』)。
映画制作のみならず、コミック・ブックの執筆(原作、作画)やシリーズ編集、そしてイラストレーションやグラフィック・ファシリテーションにも傾注している。2012年、母校であるアニメーション・ワークショップのグラフィック・ストーリーテリング科(学士課程)の設立を助け、現在は同校のアドバイザリーボードの一員である。

デンマーク国立映画学校卒業後は、ビデオゲーム「Happy Rails」の監督を皮切りに、Novo Nordisk(ノボノルディスク、グローバル製薬企業)、Trafikstyrelsen(デンマーク交通局)の依頼で教育用映画の監督、2009年〜12年はMcDonald’s(マクドナルド)とDanske Spil(デンマーク・ゲーム、デンマーク最初のゲーム開発会社)の数多くのTVコマーシャルに助監督、アニメーター、ビジュアルコンセプトデザイナーとして参加。14年以降はLego(レゴ)のさまざまなコマーシャル映像の監督をしている。
2014年にコペンハーゲンのFilm Makerで本作を制作、現在は次回作『The Glass Girl(仮題 ガラスの少女)』の制作に入っている。

◇アニメーション・ワークショップ、デンマーク国立映画学校そして『For Stor/Big Man』◇
横道に逸れますが、ブーエルンド監督が活動の拠点とするデンマークのアニメーション界の人材育成を紹介します。
わたし(オフィスHの伊藤)は、2009年に初めてデンマークとアニメーション・ワークショップ(TAW)を訪問しました。
フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭で見た、デンマークの学生作品のレベルの高さが気になり、デンマーク国立映画学校と名を連ねるTAWがどのような”学校”なのか実際に見て、知りたかったからです。
詳しくは、その時のレポート「躍進する北欧アニメーション デンマーク・アニメーションの力」(Anime!Anime! Biz)をご覧ください>>

2011年にTAWを再訪しました。TAWというのは単なる学校ではなく、多様な機能を持つ、コンテンツ産業のハブ組織です。その一端をご紹介します>>
代表のモートン・トーニンさんが2013年に京都国際マンガミュージアムに招かれ、KYOTO CMEX2012連携セミナー「コンテンツ産業と地域活性 – デンマークのアニメ人材育成現場より」で講演とパネルディスカッションをされました。その時のレポートもご覧ください>>

ブーエルンド監督のことは、09年のアヌシーで見た、監督のデンマーク国立映画学校の卒業制作『For Stor/Big Man』で知りました。上記レポートにも「体だけは人並み外れて大きい男が、精神的にはとても幼く、母の死を受け入れられず村人と起こす諍いが不幸を招くというもので、見応えがあった」と記しています。学生時代から、ブーエルンド監督は社会的なテーマに興味を持っていたようです。
『For Stor/Big Man』視聴>>
時は巡って、『アフガニスタン - 戦場の友情』を日本に紹介できるようになり、感慨深いものがあります。

◇『アフガニスタン - 戦場の友情』◇

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『アフガニスタン - 戦場の友情』は、NATO(北大西洋条約機構)の一員として治安向上、安定化のためにアフガニスタンに派遣されたデンマークの兵士に起こった事件に基づいた、ドキュメンタリータッチの手書きアニメーション。
ブーエルンド監督は、「本作はなによりもまず、アフガニスタンに生きる人々の映画です。紛争地域で避けがたい状況に晒された時、人々になにが起こるのかを描いています。信頼を得ることと失うこと、友情や同胞愛、そして生死について嘘偽りなく語った映画です」と語り、「白黒が判然とせず、根深い腐敗が支配する所では、真実を見抜くことほど難しいことはなく、信用が生死を分けることになる」ことを描きたかったとする。

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実際にアフガニスタンで起こったことを映画化する。そのために、アフガニスタンに派遣されたデンマーク軍の隊長であった、俳優のMartin Tamm Andersen(マーチン・ターム・アナースン)氏をコンサルタントとし、同氏の目撃談や経験から多くの着想を得ている。同氏は主人公アルン役(声)で出演し、その他の兵士の声も退役した兵士を起用した。
さらに映画では、デンマーク語とアフガニスタンのパシュトー語が交わされ、デンマーク兵たちがアフガニスタン警官と会話する時は常に通訳を介す。観客がその臨場感を感じられるように、デンマークではアフガニスタン人の会話には字幕を付けず、海外上映ではデンマーク兵の会話のみに英語字幕が付いた。制作者たちの意図に沿って、日本でもデンマーク語のみに日本語字幕を付けている。

日本では昨年、自衛隊の海外派遣がしやすくなる、平和安全法制関連2法が成立・公布された。日本人が、日本語の通じない外国の紛争地域あるいはそれに準じる地域で治安維持や邦人救出をするということがどのようなことか、現場ではどのようなコミュニケーションがなされるか、本作で疑似体験できるのではないだろうか。
『アフガニスタン - 戦場の友情』トレーラー>>

◇次回作『The Glass Girl』◇

ブーエルンド監督は、Film Makerのスタッフと共に次回作『The Glass Girl(仮題 ガラスの少女)』の制作に取り掛かっている。
父親の不慮の死で心に深い傷を負った10代の少女の物語で、いじめや社会に対する不信・怒りを超能力を得た少女が乗り越えて行く。
マンガ・コミックスが大好きというブーエルンド監督は次回作で「スーパーヒーロー」を描くという。
共同製作や出資をするパートナーを広げて本制作に入る予定とのこと。
日本からのパートナーも大歓迎だそうだ。


ケウ・ブーエルンド監督のTwitter>>https://twitter.com/saintcav
Film Maker ApSのHP>>

◇Cartoon d'Or(ヨーロッパ賞、ヨーロッパ・アニメーションのオスカー)◇
ブーエルンド監督が本作でノミネートされたCartoon d'Or(カートゥーン・ドール)賞は、CARTOON(カートゥーン、ヨーロッパ・アニメーション協会)が年に一度選ぶ、ヨーロッパの最優秀ショートアニメーション。
ヨーロッパ・アニメーションの振興を図るCARTOON(カートゥーン)は、クリエイション(作家性の強いショート)と産業の間を取り持つ目的で、1991年にCartoon d’Or(カートゥーン・ドール)を創設した。パートナー映画祭の受賞者の中からノミネート作品を選び、毎年9月に開催されるCartoon Forum(テレビアニメーションのピッチ)で受賞者を発表する。受賞はもちろん、ノミネートだけでも「名誉」とヨーロッパのアニメーション界では考えられている。
受賞者には、ニック・パーク(1991年と1994年の受賞者)、シルヴァン・ショメ、ジャックレミー・ジレール、マーク・ベーカー、マイケル・ドゥドックドヴィッチ、ジョアンナ・クインといった蒼々たる監督が並ぶ。
これまでのCartoon d’Or受賞者>>

◇『アフガニスタン - 戦場の友情』制作陣◇
監督:Cav Bogelund
助監督、声の出演、ストーリー:Martin Tamm Andersen
脚本:Christoffer Ornfelt
プロデューサー:Claudia Siesbye Halsted
音響:Frank Molgaard Knudsen
コンポーザー:Jonas Colstrup
製作:Film Maker Aps
助成:New Danish Screen、Den Vestdanske Filmpulje
協力:JA Film

コンセプト開発に参加したTeddy Kristiansen氏のブログにコンセプトデザインが掲載されている>>

WAT2016_B2 http://www.wat-animation.net/




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氏名表記の訂正
WAT 2016開催時の本サイトでは、Cav Bogelund監督の氏名カタカナ表記を「カヴ・ブゥーロン」としていましたが、デンマーク語の発音に近い表記が「ケウ・ブーエルンド」と分かりましたので、訂正いたします(2019年8月24日)