このたびの東日本大震災によって被災された方々に心からお見舞い申し上げます。生命を失われた方々やご遺族に心よりお悔やみを申し上げます。

●被災地以外もこころの変調が

 死者・不明者が2 万5000人を超え(3 月24日現在)、明治以来最悪の災害。被災した岩手・宮城・福島・茨城の方々の受けた苦しみは同じ人として耐えがたいものでした。

 苦しんでいる人のもとに駆け寄り、助けたいと思うのは、私たちのヒトの脳の高次な働きのようです。とりわけ、自ら被災地を経験した兵庫県の方はそうかもしれません。

 しかし今回の場合、被害が甚大すぎ、被災地の自治体も機能停止している、道路が寸断されガソリン不足で交通も制限されているなど、市民ボランティアが現地に入るには不利な条件が揃っています。「救援活動の経験のない人はまだ現地に入らないで」と、災害専門家は呼びかけます。

 そうしているうち、直接被害を受けていない私たちにも、こころの危機は忍び寄ります。

 何かしたいのに何もできないという無力感、フラストレーションにより不眠になる。鬱気味になる。そして怒りが湧く。

 地震発生から10日ほど経ち、被災地以外の地域にも職場で鬱傾向を示す人が増えているとメンタルヘルスの専門家は指摘します。

 人の「多様性」でいえば、ネガティブな情報に接することの得意な人、苦手な人がいるようです。人によっては、一定量以上のネガティブ情報に接していることで心のバランスを崩すことがあります。勇気を持って震災報道のTVをオフにすることも必要です。


●ビジョンを持った支援とリーダー育成を

 言うまでもなく、もっとも助けが必要なのは、当然ながら被災地の避難所でひどい環境で生活している方々。


 全国から多額の募金と救援物資が集まり、既に大阪、兵庫などの施設に被災者が集団で移動する動きも始まっています。しかし被災者に対する支援も、当初は手厚いのですが震災から1年、2 年たつうちには手薄になってきた、心細かったと話す阪神・淡路の被災経験者がいます。

 長期にわたる建設的な関わりが必要。被災を免れた私たちは、元被災地だからこそ、平常心を保ったうえでそうした未来設計をもちたいものです。

 さらに、震災発生翌日から福島第一原発での放射能爆発が起き、放射能漏れの危険が発生。原子炉への放水など冷却作業の難航、ホウレンソウなど農作物の風評被害など、一連の人災ともいえるアクシデントの中に、情報を総合し必要な決断をするリーダーシップの不在、組織行動の弱い面と強い面がみられました。

「日本は情報を隠蔽し混乱した情報しか出さず、信用できない」と米政府関係者の耳の痛い話がある一方で、放水作業に当たった東京消防庁の隊長らの会見は見る者に感動を与えました。

 優れたリーダーの育成は、目の前の問題解決に迂遠なようでいて実は近道なのです。災害時には世界に讃えられる我慢強さの美質をもった私たちですが、それだけに甘んじず、意識的に未来を創造する態度を身に着けたいものです。

 NPO法人企業内コーチ育成協会は、4 月7日に緊急よのなかカフェとして「大震災神戸の私たちにできることは」というテーマで市民討論会を行います。参加費無料(要ドリンク代)。真摯な読者の皆様のご来場をお待ちしています。(了)



TEIKOKU NEWS兵庫県版2011年3月28日号所載