2007年07月11日

★蝉

蝉


蝉、地面の中に7年も過ごして大きくなり、今日はいよいよ地上に這いだす日。
見上げる小さな穴からは、まぶしい日の光が見えている。さあ、これから一頑張り!

7年もの長い時を光のない地中で過ごした蝉の幼虫。これから地上に這い出て、大きな変化をする。いのちのドラマを演ずる時である。


夏場の夕方、毎日遊んでいる公園の大木の根元を歩きながらみつめる。すると、小さな黒い豆粒ほどの穴が地面にあるのを見つけるや、そっと手の指を突っ込んでみる。
すると、指の先をギュッと挟み返すものがいる。これが蝉の幼虫。土の下で暮らすに相応しく、固い殻につつまれながら腰を丸めた姿になっている。前足が大きいハサミ状の鎌を持ち、このもので挟み返してきたのだ。

挟む力が強力なことで、自らの体が地上に引き出されてしまった。地上に姿を表す時間が自らの力で這い出る時間とそれほど差がでなかったことで、羽化の時期が守られた。


幼虫を家に持ちかえり、使っていない水槽を利用し、中に幼虫を止まらせる止まり木を入れ羽化に最も安定した位置に幼虫を止まらせた。安心できるよう風呂敷を掛け、ちょっと一眠り。


ふと目をさまし、そっと布団を抜け出す。静かに水槽に掛けてあった風呂敷を小さく開けて覗いてみると、すでに羽化が始まっていた。殻の背中部分に縦の割れ目ができており、次第に抜け出していく。しばらくして、自ら脱いだ殻にしっかりつかまっては薄い黄緑の透き通った体を保持し、羽根の伸びきるのを待つ。


次第に昇る日の光を受けながら、透明な体に日の光の色で染まっていく。7年の土中の生活で準備されたすべてのものが、この数時間の中に一気に開いた。


いつのまにか、自ら脱ぎ捨てた過去の時間の脱け殻を離れ、地上で経験する超音速の時間の中へと飛び去っていった。生きた証を刻み、そして次の命へと繋ぐために。


                    「心の風景のデッサン」より


http://www2c.biglobe.ne.jp/~ofuroudo/dappi-semi.html



ofuroudo at 00:07│Comments(3)

この記事へのコメント

1. Posted by あ   2007年07月12日 00:02
昨年も何度か、近所の実家で子供らがセミの脱皮を途中まで見ていたようですが、自分の子供の頃のことを思い返すと、家にセミが結構いたのですが、虫が嫌いだったせいか一度も脱皮の過程を見た記憶がありません。
アグラゼミやクマゼミの鳴声は煩くて暑苦しい事しか覚えていませんが、こうして綺麗に撮った写真を見ると、一度くらいは子供と一緒に観察してみようかという気になりますね! でも、未だに虫は嫌いですが。。。
2. Posted by Com「想」   2007年07月12日 17:18
下積み重ねて準備を整えて、心解き放ち全身で羽ばたく。限りある時間を余計な遠慮しないで思う存分に生き抜く。
積み重ねたものを描く事で、どのタイミングでどこに向かって羽ばたけば良いのか見えてくる様な気がします。自分で在る証刻んで生き抜きたいと思います。ありがとうございました。
3. Posted by 温泉人(おふろうど)   2007年07月14日 23:28
いきものの生き様、こんなにも短時間に変化することに驚きの眼差しで見つめていた自分が居ました。もっともっと、いきものの在りかたをじっと見つめて暮らして行きたいと感じています。本物の生き方が、自然の在り様から感じられるのですから。きっと、ここにワクワク・ドキドキがあるのですから・・・。

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