2008年07月06日

月見草 (「心の風景のデッサン」より)

★月見草


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この花は空き地や川原にも夏の花として、夏の間中、夕方から朝にかけて月の色でまわりを照らしている。この花が、幼年期の記憶にある。

3軒長屋の縁側から、庭に植えたのか自然に生えてきたのか、数本の月見草が光を放っていた。
毎日、毎日、夕方を楽しみにしていた。その花の咲く様子をネガのコマ送りのように割りに短い時間の中で1つの花が咲くまでの間を見るのである。

その日のうちに咲こうとしているつぼみは、朝顔のように先端の絞れた長細い筒状のものがねじれており、花びらの一端がほんのり黄色にのぞいているのだ。この姿が、咲く準備のことを知らせる合図なのである。
昼間の明かりから、夕方の明かりへと変わりかけるのを待って、つぼみは瞬間にクルッとねじれ、そこから花びらの頭の部分がはみ出してくる。にわかに数分おきに、おやっという間にねじれては、つぼみからの脱皮をはかるのである。

長時間、一つの花を咲き始めから咲き終わるまで、じっとみつめ続けることはなかなかない。しかし、縁側へ座り込んで薄明かりの中、月色の花に逢おうと、年輪の浮き上がった板の間に座り込んでいた。いつ動くか、いつねじれるか、時間を感じつつ少しづつ動いていく花の動きをじっと目を凝らし見つめていた。

パラ・・、しばらくして、またパラリ。

かすかな風の中でゆれる葉の動き、今咲こうとしている月見草の他は、自ら動いて見えるものはない。
時間の動きを、見える形で表現している不思議さが、そこにはあった。

一人、縁側でじっと見とれていた。

それに応えるかのように、月色の花はしっかりと、開いていく姿を舞台の中で演じている。月色の花の舞台である。

 

http://www2c.biglobe.ne.jp/~ofuroudo/dessan.htm 「心の風景のデッサン」より:温泉人(おふろうど)



ofuroudo at 00:08│Comments(0)

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