2008年10月25日

★田んぼの兵隊さん(「心の風景のデッサン」より)

★田んぼの兵隊さん

稲掛け

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東北の稲刈りの風景だと気づいたのは、東北を離れてである。

刈り終えた稲を、田んぼに杭を真っ直ぐに立て、その杭に放射状に突き刺していく。
その結果として、蓑を身につけた人がきちんと並んで立っているような光景になり、そのあまりに規則正しい並び方が、姿勢を良くして立つ兵隊さんのように見えていた。

その風景が、果てし無くつづく一面の田んぼに見えているのだ。東北で暮らしているときは、田んぼの稲を干す光景は、どこも同じだと信じていた。しかし、山形を離れ、新潟に向かう列車の窓から見たものは、田んぼの畦道に沿って植えた木を支えとして地面と平行に長い棒を組み合わせ、その横棒に稲の束を引っかけていく干し方だったのである。

姿勢良く、広々とした空と田んぼの間に並んでいる。
どんな思いで、そこに立ちつづけているのだろう。なにが、見えているのだろう。

朝もやの中で、雀などの小鳥が肩にとまり、何をささやいていったのか。空の雲が形を変えながら流れていくのを、何に見立てていたのだろう。太陽が、地平線に沈む時のひしゃげた大きいオレンジに、手を伸ばしてみたいと思ったのだろうか。辺りが暗闇につつまれ数匹の蛙が遠慮がちに啼きだす中で何を考えたのだろう。

ちょっと前まで、田んぼの中で豊かに実った稲穂を付け、案山子に守られながら根っこに支えられて立っていた。今では、自らが案山子のような一本足の姿で、田んぼに立っている。思いも付かないことだったろう。

秋、稲刈りを終えた田んぼの住人達。                                                                                
お−い! と声を掛けたくなる。

                    「心の風景のデッサン」より



ofuroudo at 00:08│Comments(0)

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