たしかに、シナリオと生活環境を用いたメソッドは普及するだろう。子供たちがシムズ社のゲームに興じているのを見て親はこう思うだろう、社会不安がシムズ社のゲームに出てくる登場人物の主題に姿を借り現れると。ヴィデオ・ゲームの最先端の最先端をみると、フランスのテクノロジーはヴェプシーVepsyプロジェクトの枠内で目覚ましい発展を遂げた。このプロジェクトはヨーロパ域内で行なわれ、「その目的は、臨床心理学領域で、ポータブルのヴァーチャル・リアリティー・システムを用いて、その技術面、臨床面での実現性と発展性を証明すること20」にある。この枠組みにおいて、4つの社会不安に対応した4つのシナリオがつくられている。次のようにがんばりましょう、「セールスマンの執拗な売り込みに屈しない(自己の肯定的評価)、アパートの住人と向きあい、打ち解けた会話をする(親密さ)、視点を変えて、他人の見方で話す(観察)、聴衆の前で話をする(達成感)」となっている。もちろん、「最初の試験成績は良好なもであったしこれは各グループとも同等の効果があった」21。理想自我にたいする体制順応的同一化はこのようにして推奨され、それは十分な効果を有すると納得させられてしまう。

 

20. 前書。Vepsyのサイト : www.vepsy.comも参照のこと。

21. 前書。

 

 ジャン・コトゥローの治療研究は広場恐怖という困難な障害に限定されていた。かれのアプローチは、マルチメディアと12のシナリオのよって構成される方法によっている。「まず広場恐怖患者にとって不安を生じやすい状況、例えば映画館に入るときあるいは寒村を車で行く等々23」である。間もなくこの成果を入手できるはずである。この手法によって、現実の映画館に足を運ぶことが多くなることを期待したい。このことで症状の改善した患者たちがブリジッット・ジャックの演出による幻影喜劇・を観にゆくことが出来ればと願う。現実とヴァーチャルな世界との関係について思いを走らせれば、患者たちにとっても得るものがあろう。カルデロン・をめぐって問いを発したい。人生とはあるシナリオなのであろうかと。

 所定のシナリオが施されたヴァーチャル・シーンに没入している患者は自分の反応について治療者に知らせることができるのであろうか。処方されているセッション数、12回以上のセッションを受けている症例については報告がない。しかしヴァーチャル・リアリティーは患者と治療者の労を軽くする。認知行動療法よりも早期に治療を終了できるからである。「認知行動療法と同等の効果があるが、ヴァーチャル・リアリティーにはその上別な利点がある。患者は思っていたよりヴァーチャルな刺激を避けることが困難であることを知る。患者を現地に連れて行って同様な刺激にさらすのは得策ではない。利点というのは、刺激への暴露は思い通り調整できるところにある。このことから恐れを引き起こす状況を漸進的に制御できるようになるのである。{・・・}それほど症状が複雑でない症例の場合、ヴァーチャル治療の計画は容易い。何回かのセッションの後、患者側からが治療を自己管理して、かれが望むかぎりのセッション数をこなし、治療者はスーパヴィジョンを行なうだけでよいような症例もありうる23。」では、すべての人が自分用にシナリオが設定されたSims Psyを購入すればよいのでは。店頭で購入できるゲーム機器に合わせて各自が別の設定のシナリオをもつことになろう。

 

 

23. 前書。