J. コルトゥローは治療成果そのものとは別に、ヴァーチャル構造による治療の成果を裏付けるメカニズムについて自問している。「説明すべきとして残された点もある、それはこの現在進行形の研究とこの新型の精神療法の基礎となっているプロセスから得られるものだが」と。かれが覚え書きとして認めたものに手がかりがありそうである。「不安をもつ患者は恐怖症以外の患者よりもヴァーチャルな世界の実在感をより強く感じてしまう」と。言い換えれば、恐怖症患者は自己の症状を信じてしまうのであり、このことはコトゥローの次に示す、ヴァーチャル世界に対する懐疑の言葉と完全に照合している。「ものごとには表と裏があるのだ。恐怖症患者は感覚的対比conflitをことさら強く感じてしまう。たとえば音響と画像にずれが生じているときが特にこの衝撃が強く現れる。」要するに、信じていることと信じていないこととの間の主体の分割から発する葛藤conflitが感覚上の対比conflitに形を変えて現れてしまうのだ。おそらくこの技法の評価基準の重要な指標と考えてよいであろう。

 要約して言おう。福音は告げられた。認知行動療法のプログラムの最終的形態はもはや認知行動療法ではなく、それにとって代わる新しい療法アプローチは、ヴィデオ・ゲームを使用する療法である。もちろん、ゲームは教育的意味合いが強いものであり、認知的学習といった形をとっている。しかしながら、マシンだけで利用者は暗示にかかってしまうのである。NICE(National Institute for Health and Clinical EXcellence,フランスのINSERM国立厚生医学研究研究所に相当する英国の研究所)治療者不在の大規模治療を試験的に実施する旨発表をおこなっている。同機構はCCBT(computed cognitive behaviour therapies,コンピューター認知行動療法、フランス語ではTCCOの略語が当てられる)が、不安、うつ病、恐怖症、パニック発作、強迫性障害の治療に効果があると評価している。同じくこの機構は、将来の研究はNCCHTA(National Coordinating Center for Health Technology Assessment,国立厚生テクノロジー評価連繋センター)の研究と合流する旨歩調を合わせてゆくことを推進している。「コンピューター認知行動療法の位置づけを明確にしなければならない。段階を踏んだ治療プログラムに関してはどの地点にこの治療を位置づけるか、また認知行動療法や心理療法へのアクセスを容易にするような試みに対して本療法になにができるのかである。比較研究が必要である。つまり、コンピューター認知行動療法と他の治療期間を短縮出来る治療、特に読書療法bibliothérapie[本を読むのではない、マニュアルの自己適用である]との比較研究が必要だ。{・・・}将来の研究において、コンピューター認知行動療法がインターネット上で行なうことが出来るよう研究開発も必要となろう。{・・・}研究はインディペンデントな研究者によって行なわれてしかるべきであり、かれらにが商業的報酬によって動かされてはならない。{・・・}コンピューター認知療法の研究の実施に際して、サンプリングは無作為的に行なわなくてはならない。またデータ分析はこの研究対象となった患者が研究の実施を終了した時点でその人権に対して配慮を講じなければならない。サンプリングから落伍した場合、その事由が明らかにされなければならない。患者の意向が直接かかわっているからである26。」

 

26. E. Kaltenthaler, P, Shackley, K. Stevens et al., «A systematic review and economic evaluation of computerised cognitive behaviour therapy for depression and anxiety», Health Technology Assessment, vol. 6, no22, 2002, p. 42-43 ; http://ncchta.org.およびhttp://www.nice.org.uk/参照のこと。

 

 忘れてはならないのは、認知行動療法関連の統計処理で、この療法を適用した患者について、統計上都合のよいような患者数の選択が行なわれていることが隠されているということである。認知行動療法を許容する患者だけからなるプロトコールに騙されてはいけない。ここで強調されるのは、この療法の法の普遍性が特殊性に出会うという点である・。コルトゥロー自身が言うように、「行動療法はそもそも、その有効性についていうと、症状の改善の程度とその持続期間双方が50から70%の患者で優位の差をもって証明されているが、この患者群は既定の治療期間を全うした群である。しかしながら、本療法の限界も示されている。もっとも悲観的な統計によれば、本療法が適用されて然るべき患者の25%が治療を拒否し、残りの75%のうち25%は改善が認められなかった。改善例の50%のうち20%は3ヶ月から3年のあいだに症状が再燃したとされる。この数字では本法での治療に対して消極的になっても致し方なく他の新たな生物学的、心理学的治療法に期待するしかないであろう27」。

 

27. J. Cottraux, Les Ennemis intérieurs. Obsessions et compulsions, Paris, Odile Jacob, 2005, p. 197.