認知行動療法について、批判的なEric Laurentというラカニアンの論文の拙訳をそっと出します。かなり以前に訳したのですが、今般の厚労省の診療報酬の改定に認知行動療法が点数化され、かなりの高得点が与えられましたので、一応当医なりのスタンスを示さなければと思い、これをここで再発表する次第です。認知cognitionという、はっきりとした定義も定かでない(漠然と知覚と思考を包括している概念でしょう)タームが一人歩きし、脳科学の、いわゆるscienceとしてはまだ極めてまばら的で部分的な仮説しか提供できていない現況(各分野で地道な研究を続けられている研究者の方たちを、小生は尊敬しているということを誤解しないでいただきたいです)を隠蔽し、Popper的にいえば、反証されるまでの証明として暫定的なコンセンサスに拠りかかっている以上、そのまだら的な、決定的とは言い難い証明を繋げただけなのに、網羅的事実みたいな捉え方をしそれを認知科学と呼ぶことすら問題があるのに、それを支柱としていると称する認知行動療法(Eric Laurentがいうように認知行動療法と認知科学はなんら関係がありません)をどのように規定したらよいのでしょうか。明らかなのは古典的な行動療法(条件付け等による)とは異なる行動療法(このことがしばしば当の治療者に認識されていないことがあります。フランスでは認知行動療法はThérapie cognitivo-comportementaleであり英語のBehavior modification - 日本語の「行動療法」に相当 - とは異なる療法)であり、古典的行動療法とは異なった手順(しばしば極めてアナロジカルにアルゴリズムと呼ばれています)で実施するには厚労省が定めた、医師が30分かけて(5分間も診ないで臨床心理士等に丸投げは御法度です)念入りに行なうことが義務づけられています。今まで認知行動療法を受けていた患者さんで、極めて短時間の診療(精神科医師によるものが診療です)で済まされていた方は、その点だけでも確認すべきです。