このセミネールの底本について ラカンのセミネールはセッションごとに直接速記録として残されます。この速記録からタイプ印刷がなされます。このタイプ印刷をラカンの秘書部のタイプ印刷と呼びます。いわばマスター版です。 『不安』のセミネールは、タイプ印刷されたもののかなりの頁がラカン自身によって訂正加筆され、それがまた新たなタイプ印刷として流布してきました。またこれとは別に、聴講者の何人かによって、統辞面で修正がなされ、最終的に語ったものditから書かれたもの醇Pcritとして認められるのです。 このセミネールの録音も残されているが,多くの版(スイユ社の正規版、その他匿名版、ネット上に公開されている版)は、多くの場合、タイプ印刷を準拠としています。 ラカンの秘書部による版からは、ラカンの修正加筆版とは別に、ウラディミール・グラノフ、ピエラ・オラニエ、ピエール・コフマンその他による修正が施された版が生まれ、エリザベート・レポルドゥによって失われていた断片が復元されました。 アミッシュHamiche版、国際フロイト協会Association freudienne internationale版はこの復元されたパッセージも採用しています。 小生が準拠とするのはジャック=アラン・ミレールによる正規版、初期のタイプ印刷版、2003年の匿名版です。問題の箇所はそれぞれの版を比較検証することにします。 凡例 V.M. ミレール版 V. A. 匿名版 G.W. フロイトのドイツ語版全集