ブルブル ブルース (Blues)

荻哲の音楽日記−Blues、世界の音楽、よもやま話など

ぼんやりとした思ひ出

大学に入学してから3年生頃まで僕は美術出版の会社でアルバイトをしていた。
版下や原稿を届けに行ったり、写真のネガを取りに行ったり、作品の撮影を手伝ったり、土日に美術館で展覧会の売り場に立ったり、様々な仕事を手伝わされた。

美術に興味の有った僕にとって、このアルバイトの一番の魅力は、画廊や美術館に出入り出来ることだった。たまに担当の人から展覧会の招待券を貰った時などは本当に嬉しかった事を思い出す。

ある時、上野の西洋美術館だか、何処かのデパートだかでシャガール展(とはいっても小規模だった)あって、その展覧会のポスターが好きで、見るたびに立ち止まって眺めていた。写真がそうだ。
Chagall%20Anges

なんてことは無い人魚と魚とお月様の絵なんだけれど、何だか心を掴むものがあった。静けさと安堵。シャガールは子供時代に見た物事を、夢の中の情景の様に記憶していたのではない、と考えたりする。
G8%20(25)

ところで、皆さんの記憶で一番に初めて出てくる想い出にはどんなものがあるのでしょう。僕のは、黄色の化繊の毛布、新しく引っ越した先の天井、生垣やレンガの壁などをプリントしてある積み木のセット(これは口に入れると苦かった想い出があるので、悪い塗料が使われていたのだろうか)、そして、「題名は分からないが、昼寝をしていた小熊の坊や」の歌で、これには「もこりん、もこりん」という擬態語が入る。なんだか、幼い僕の記憶の全体は曖昧模糊とし、のんびりとした感じだ。僕が、ブルブルだのズンズン、イソイソなどの擬態語を訳も無く好きなのは、この幼児期の歌の記憶によるものだろうか?

下は花のある静物画。彼の朝の食卓なんだろうか。
chagall42

Nobody Knows You…

アルバータ・ハンターが、ベッシー・スミスの曲を歌っている。
多くのミュージシャンによってカバーされて来た<Nobody Knows You When You're Down and Out>だ。歌う始まりに、「稼いだお金の半分は貯金しなさい、そうすれば誰にも頼らずに暮らせるから…」という有りがたきお言葉。


***
尾羽打ち枯らす俺に、誰も彼もが知らぬ素振り
言いたかないけど、昔しゃあ、「めんどう見たよ」

一ドルでも金が入ったら、なんとかそれでやり繰りしましょ
金に羽が生えて、また俺の懐に飛び込んで来るまでは

羽振りがまた良くなりゃ、見知らぬ素振りを決め込んでいた奴等も、
「やあ、久しぶり」なんて近づいて来るだろうな
***
などとちょっと適当な訳をしてみたり。

さて、英語の詩では、<…till that eagle grins>という部分がある。鷹はアメリカの札の裏に書かれている。鷹が再び微笑みかけるまで、つまり、懐がまた潤うまで、ということだ。<Storm Monday>の中にも、<Eagle Flies On Friday>という下りがある。週払いの金が金曜日に入ったという事なのだろう。
しかし、昨今、この鷹がなかなか俺にニッコリと微笑んでくれないので困っている。

ところで、皆さんはどう思います。
この歌の主人公、もう一度金が入ったら、今度は気をつけて金を使うのでしょうか、それとも、またもや取り巻き連に囲まれて、騒いで飲んでしまうのか。
アルバータのお婆には呆れられるだろうが、俺はきっと、後者の方だ。昔から、ノドもと過ぎれば熱さ忘れるタイプだから。<スズメ百まで踊り忘れず>の類だ。


最後に、少し他のミュージシャンのヴァージョンを並べてみる。
<Bessie Smith> やはり、元祖の歌声を聴かなければ。とてもソウルフルなのだからして。
<Carla Bruni > この人、フランスの猿誇示大統領の奥さんだよね。始めの語りの少し訛りが有る英語がとてもチャーミング。酒飲んでる時に、こんな姉さんが隣に座ったら、もうドキドキだね。
<憂歌団「ドツボ節」> ラストライブから。声が枯れるまで歌いまっせ。
<Janis Joplin> 落ち着いて聞くと、彼女の声ってやはり非凡ですネェ。バックがちょっとリズムを崩したりするのがご愛嬌。
<Nina Simone> こないだもニーナは出て来たじゃねーか、って? 実は俺ね、ニーナの隠れファンなのです。

アーチンボルト (二つの詩)

イメージ曲 <Red Onion Blues>

ウェルトゥムヌス(に扮するルドルフ2世)
arcimboldo13
行ったこともない国の王様は
美味しいお水を飲みながら、
泥だらけになって、
日向ボッコするのがお気に入り

悪い虫が付かぬように、
后がたまに見に来ます、
蝶々がフワリと逃げてった、
青虫も、たまげてニョーロニョロ



農園主
arcimboldo12a
な、な、なんだい、物騒な、
人の大切な顔を切り刻み、
ぐらぐらと煮えくり返った鍋の中に、
放り込んでしまいたいだと?
ひどいことを思いつくものだね

でも、そんなことをしたら、
ワタシの妻が悲しんで、
大粒の塩辛い涙を、
鍋の中に落とすことだろう、
ついでに、持っている香草のブーケもさ

おんや、よい匂い、味も調って来たね
arcimboldo12









絵は、16世紀のイタリアの画家、アーチンボルドの作品。一見、果物、野菜、動植物、本などを寄せ集めた静物画の様であるが、実は人物画。一種のだまし絵というわけだが、シュールな作品。中には風刺が込められているものもあるそうな。

子守唄

一概にそうだとは言えないかもしれないが、子守唄には寂しい調べが多いような気がする。子供の頃、母親が歌ってくれた、「ねんねん、ころりよ、おころりよ」という<江戸の子守唄>にしろ、寂しい調べではないか。

誰かがこの様なことを言っていた。子守で雇われた少女達は貧しい家の出で、自然と歌がヒガミっぽくなるのだとか。良い例が、<五木の子守唄>。僕も子供の時に、<おどんがうちんだって、誰が泣いてくりょか、裏の松山、蝉が鳴く>という下りにかなりのショックを受けた覚えがある。今聞いてみても、やはり悲しい歌だ。ところで、夏川りみさんという歌手は知らなかったが、クセの無い素直な歌い方をする人だ。

僕が子供の頃に赤い鳥というグループが<竹田の子守唄>を歌っていた。かなりヒットした曲だが、いつの間にか放送されなくなった。あるテレビ番組で、竹田の子守唄が<放送されなくなった理由>を解説していた。実はこれも差別される人々の歌だったようで、僕は大分の竹田だと思っていたので驚きだ。

さて、ブルースなどをフィールドワークで採集していたアラン・ローマックスは、自分でも歌を歌うのだが、<All the Pretty Little Horses>という歌を録音している(右上のPLAYボタンを押して下さい)。この哀しい調べはどうしてだろう、といつも思っていたのだが、調べてみると、こんな話が出て来た。南部の奴隷女性の歌う子守唄だったらしく、白人の家で子守りをさせられながら、家で自分の帰りを待っているだろう我が子を思う歌だったのだとか。

その他:
<イディッシュ語の子守唄>
イディシュ語と言うのは、東欧を中心にユダヤ人に話された言葉で、ドイツ語に非常に似ている。もともとユダヤ人の社会と言うのは、父系社会であったが、その代わり母親と子供の絆は深いようだ。「こんなに可愛がっている子供もいつかは育ち、家を離れてしまうのね」という母親の悲しみが有るのだろう。

<トルコの子守唄>
私の想像に過ぎないのだが、昔の乳幼児の死亡率は高かった訳で子供が無事に大きく育つまで、母親としてはやはり不安に溢れたものではなかったかと思うのだ。そんな吾が子への心配も歌に表れるのだろうか。医療が発達して、子供の死亡率が低くなった現代を有り難く思うのです。

<童神> 沖縄の子守唄の一つ。好きな歌です。

下はクリムトの<母と子供>。長方形の画面に正方形が上手にはめ込まれている構図。
img_512260_12250820_1

脱線:
<浪曲子守唄>
最後にバカな男の子守唄です。ビオラの調べが哀しい。「そりゃ... 無学なこのおれを親にもつお前は ふびんな奴さ」。しかし、何てセリフだ! 芸名の一節太郎が現すように一曲しかヒットしなかったですが、今でも根強い人気が有るそうです。

とにかく、おやすみなさいです。

下の答えです

1)ニーナ・シモン のっけから難しいのを出してしまった。彼女にしては可愛い写真です。
Nina+Simone

2)エーモス・ミルバーン 以前、このブログでも紹介した写真を使いました。

3)ジュニア・ウェルズ とにかく、様になる兄い。
junior wells

4)トミー・マクレナン トミーはオチビさんなので、帽子が大きく見えます。
tommy Mcclennan

5)メンフィス・スリム パンダ頭のピアニスト。
MemphisSlim1

6)ジェームス・ブラウン 頭からして、JBです。
james brown

7)サニー・ボーイ・ウィリアムソンII この三白眼が恐い。

8)ブッカ・ホワイト サル山のボス。

9)レモン・ジェファーソン 当時は凄い売れっ子なのに、写真が一枚しか残っていない。

10)サニー・ボーイ・ウィリアムソンI 歯並びが良いでしょう?

11)キャブ・キャロウェイ 若い頃は極めてハンサム
Calloway_Cab


12)サン・ハウス ちょっと可愛いポーズのサンです。
blog_son_house_1970

13)ドクター・クレイトン 写真は笑えるが声はハンサム系。
clayton
オマケ:<Watch Out, Mama>

14)キャリー・ベル これも以前、ブログで紹介した時の写真を使いました。

15)ジョン・エステス 元祖貧乏ブルース。鉛筆のカポで有名?

16)ロバート・ジョンソン この細長い指!

17)ライトニン・ホプキンス 雰囲気プンプン
lightnin hopkins

18)ラバーン・ベイカー コルセットで締めてるのかしら?
lavern

19)メンフィス・ミニー これも彼女の有名な写真だと思うのですが、部分で出されると分らないものです。
memphis_minnie-1

20)バディ・ガイ 水玉とストラトキャスター

誰だか判るかな?

下の写真は、各ブルースミュージシャンの一部であります。

「目」
1)なんとなく、つげ義春の「ねじ式」の一コマみたい。
partial eyes of nina_simone

2)目は口ほどにモノを言い。なかなか、色っぽい目ですよね(男です)。
partial eyes Amos_milburn

3)大将のちょっと色っぽい仕草
junior wells eyes


「頭」
4)へっへ、ハットはどうだ。ご法度か?
partial hat - mcclennan

5)俺ってやはり性格が優しい。難しく作るつもりでも、ついつい判りやすいものを選んでしまう。
partial of MemphisSlim

6)丸座布団頭
james brown-head


「鼻」
7)この鼻と言い、目と言い、あの人しか居ません。ええ、あの方です。
partial nose- sonny-boy-williamson-ii

8)この曲がり方がヒント
bukka White nose


「口」
口は意外に判りにくいかと思ってたが、やはり表情豊かなブルースマン達です。
9)ホッペが決めてだね。
PArtial - Mouth Jefferson

10)ニカっと笑ってるハーピスト。
partial month sonnyboy1

11)ハンサムなおじいさんの口元。
partial mouth Cab Ca

12)この写真を見たことある人は一発で当てられるはず。
partial of son akinbo


「手」
13)この手は…蛙か?
partial arm of Clayton

14)ちょっと簡単すぎ? オットセイに似た目です。
partial eyes of carey bell

15)生活に疲れたよ、わしゃ。ギターのカポがヒント。
partial hands - estes

16)誰もが知っているこの男。
partial hands robert_johnson


「その他」
17)伊達な着こなしは、あの人しか居ない
partial lightnin hopkins

18)「クビレ」フェチの人に
lavern-hip

19)ギタリストの「脚」。しかし、良い形してます。
partial leg memphis_minnie-1

20)今も健在なあのギタリスト。
partial buddy-guy-hat


では、また。

海の生物二つ

Krilleye
写真を見て何だか分かる人はまずいないだろう

実は南極オキアミの目玉。なんだか妙に美しいのであります。
さて、南極オキアミは、6センチぐらいの海老に似た生物ですが、地球上でもっとも成功してる生物だそうです。つまり生物的マスが一番高いと言うことで、なんだそりゃ、と言う方には、一番量的に大きな生物と言いましょうか。ご存知、あの大きなクジラの餌にもなります(正確に言うとヒゲクジラの類の)。いわゆる、クジラのヒゲで濾し取られて食べられて…。そんな、食物連鎖の下にある奴らですが、夜光する美しいプランクトンです。いま、南極の氷が減少しており、量が減ることが懸念されております。krill-night

okiami

写真を見てたら、カッパ海老せんが食いたくなったよ。


海のボクサー
アッパーと呼ばれる下からすくうパンチは、近距離から出されるので見えにくい。顎はもちろん効きやすいが、腹でもレバーに入ると気分が悪くなったり、体が動かなくなったりする。
シャコは必殺のハードパンチャーだ。人の大きさにすると、なんと一トンパンチ! 水槽に入れておくとガラスを割ってしまうこともあるという。ああ、昔は寿司のネタで、時々食べたりしたけれど。

下の動画は、海の生き物同士の壮絶なバトル。下手なK1の試合より見ごたえがある。最後は寝技が打撃に勝ったという感じだ。<海の王者決定戦>
<東海の磯の小島の白砂に われ勝どきを上げて喜ぶ>

しかし、なんて言ったって、人が一番恐ろしいね。これが<証拠>じゃ。

旅に出たいよ

ここ数年、11月の終わり頃に日本に帰っていたが、今年は日本への旅が出来ない。しごく残念。



11月。毎年のことながら、俺はロバート・ジョンソンを聞き出す。彼を彼たらしめているのは、休まず各地を流浪したことじゃないかな。同じ時代の平均的な黒人男性と比べて、彼は数多の旅をしている。目的が有ったというより、衝動的に歩き彷徨ったという方が近いだろう。

ロバートは一度結婚をして腰を落ち着けようとしたことがある。しかし、妻は出産時に子供と共に他界する。こうして、ロバートは腰を落ち着ける機会を失った。と言うより、機会を与えられなかった。後にいつまでもブルースの星であり続けために、始めに失うことを余儀なくされたのだ。彼が失意で佇む協会の中、夕日に長く影を落とした十字架。彼が始めて出会ったクロスロードだ。悲しみと失意の中で、彼は「魔」を心の中に宿した。

当時、田舎に住むミュージシャンにとってレコードを吹き込む機会は運も左右した。良い例がマディ・ウォーターズで、アラン・ローマックスという変わり者の音楽コレクターが機材を担いで彼の前に現れた。その録音で自信と幾ばくかの金を得た彼は、シカゴに行く決心をしたらしい。

ロバートにギターのレッスンを施したとされるアイク・ジンナマンという無名のミュージシャンが居る。旅を続けるロバートが出会ったモノの一つだ。ロバートにギターを教え、その後、彼の腕が恐ろしく上達したというから、ジンナマンの技巧も優れていたに違いない。しかし、ジンナマンにはレコードの録音の機会が訪れなかった。

姑息なロバートは誰にもアイクのことを話さなかった。自分の才能を誇示したいがため、人から習ったとは言えない。腕が突然に上達したことを訊ねられたら、「クロスロードで悪魔の旦那」と取引をしたと冗談めかして話したし、また人々にそう信じさせるだけの技量も身に着けていた。白人のタレントスカウトに、「各地を旅していて、誰か上手い奴は居なかったか?」と聞かれても、「さあ、僕は知らんです」とトボケタであろう。

とにかく、ジンネマンは自分に与えられた役割を終えると、生没年も分らぬまま、ひっそりとブルースの歴史の外へ出ていった。一枚だけ現存する写真から判断すると体も丈夫そうでないので、彼は彼で別の旅に出たのだろう。

憂鬱に襲われると、ロバートはあっという間に荷物をまとめて、汽車に飛び乗った。自暴自棄ですらある。「ひどい扱いを受けたから、死んだってどうってことねだろう(Walkin’ Blues)」。そして、多くの場合は目的地も持たない。ただ、まっすぐに歩み続けるだけだ。「可哀想なボブさんよ、決して後ろを振り向くんじゃないぜ(Preachin’ Blues)」。振り向いて過去を回想しても、楽しい想い出は少ない。母親と愛人の間に生まれたロバートは、子供の頃しばらく、母親から離れて暮らさなければならなかったそうだ。母親への思慕と恨みに苛まれていた。この背反した感情は、ロバートが歌うブルースの詩の中に幾らでも見つけることが出来る。

どこにでも居そうな田舎の女との失恋を悲しく嘆く「Love In Vain」。しかし、そのウィリー・メイが後年語ったには「知り合っても間もないロバートが、彼女に一緒に旅に出よう」と誘ったそうで、不安に思った彼女が断ったらしい。彼にしても彼女の面倒をどれだけ見るつもりだったのだろう。「自分のお袋と女には、幾らでも迷惑をかけてもいいんだ」とうそぶく<麻雀放浪記>の博徒の様ではないか。自己中心的な、って、まあ男ってそんな生き物…か。

だが、そんな彼も不安や罪悪感に常に付きまとわれていた。「雹のように降るブルースに追われながら、地獄の犬が追ってくる<Hellhound On My Trail>」という詩を歌うが、それにしても、こんな凄まじいイメージの描写の後で、「クリスマス・イヴとクリスマスを一緒に過ごさないか」と女性を口説くのだ。こんな淋しい旅には「優しい女」が道連れとして欲しいのだとか。



始めに取り付いた奴は、目を醒ますと寝室でピョンピョンと跳ね回る騒がしい悪魔(Preachin’ Blues)だったようだが、金と名声を得ると礼儀正しい高級な悪魔に移ったのか、悪魔はきちんと部屋のドアを叩くようになる。しかし、礼儀正しい悪魔の方が実際は性質が悪かろう。魂を取られるだけでなく、彼の魂は死後もいつまでも彷徨うはめとなった。ロバートも自分は死後も彷徨うと思っていたようで、「グレーハウンド・バスが通る道の傍らに亡骸を埋めてくれ<Me and the Devil Blues>」と願うのだ。

そう、確かに彼はまだ彷徨っている。いまだに多くのミュージシャンを虜にして回っている。おかげで、ブルースはインフルエンザの様に少しずつ亜種を作りながら、人種も性別も年齢も無く関係なく取り付くようになってしまった。ロバート・ジョンソンを聞きながら、「ああ、良いなあ」と思うアナタの傍にはロバートが立っているのが見える。

どうやら、俺の後ろにも立って居たらしく、こんな文章を思わぬうちに書かされてしまった。

下は1937年のグレイハウンドバスFord_Greyhound

イアン・カーティス (Joy Division)

少し前に<Control>という映画を借りて観たのだ(写真はそのポスター)。

control大学の頃、友人が良く聞いていた<Joy Division>。この映画は、ボーカリストのイアン・カーティスを中心にして描かれた<Joy Division>のセミードキュメンタリー的な映画だ。主演の俳優が力演で、イアンの<変てこさ>と<クネクネさ>を良く演じている(映画からの場面)。

さて、久日ぶりに彼等の音楽を聞いてみると、驚くことにもう30年ほど経つのに色褪せたかんじがしない。友達はこのバンドについて詳しかったのだろうが、僕はただ彼と一緒に聞いていただけで、バンドについて詳しいことなんか知らなかった。大体、このバンドはどんなジャンルに入るのだろう。ポスト・パンク・ムーブメントとでも呼ぼうか?

今回、映画を観て分かったのが、ボーカリストのイアン・カーティスは、ロックミュージシャンとしては、かなり変り種であった、ということだ。イギリスの典型的な中産階級の出身で、両親共に健在で家庭に不満や問題があったわけでもない。デビッド・ボウイ、イギー・ポップ、ルー・リードに憧れ、高校時代には音楽で成功することを夢見ていた文学少年だった。彼自身も高校を卒業後、役所の福祉課に勤めており、真面目で礼儀正しい青年だったそうな。

癲癇の持病を持ち、ステージで発作を起こす時もあったので、照明なども派手に使わないようにしていたという。下の動画を見ても分かるだろうが、服装も地味だ。そんなごく普通の彼が、曲が進むにつれて、段々と荒々しく感情的になって行くのだ。<カッコ良い>と<ブザマ>の間を行ったり来たりする<危うさ>がある。


この手の歌い手には珍しくバリトンの声、そしてジタバタした痙攣の様な動き。やけっぱちにも聞こえる、<ラジオに合わせて踊ろう>という繰り返されるフレーズ。実はこの曲は、彼等のナンバーの中でもお気に入りの一つ。何だか、最後に近づくにつれて、歌の中の伸び上がる力みたいなものを感じたりするのだ。

定かなことは分からないけれど、トーキン・ヘッズのデイヴィッド・バーンも影響を受けているのではないかと思ったりもする。<Joy Division>自体は、アメリカツアーを前にイアンが亡くなったために、解散してしまったが、次の<Love will tear us apart>は、彼等の歌の中でも特にヒットした曲だろう。<愛が私たちを再び分かつのだ>と繰り返される。残されたグループメンバーはNew Orderというグループになるわけだが、この歌の中にはすでにNew Order的な音が出て来ている。

グループ活動は短いものだったが、本国のイギリスではいまだに根強い人気があるのだとか。この様な映画が今頃作られるのも分る。

オマケ:
<She's Lost Control>
イアンの顔からはイギリス人よりもロシア人を思い浮かべる。
写真下はJoy Division。イアンは左から2番目。
joy division

Good Gulf Gas

この時期になると、いつもロバート・ジョンソンの歌を聞き出す。
彼が最初に録音を行ったのは11月なので、そんな些細なことも頭の何処かに入っているのだろう。

gulfgasさて、今日は<They’re Red Hot>という曲の小話。

これはロバジョンの軽快なラグタイム。明るい曲調なので、好きな人も多いだろう。物売りの歌と言うのは陽気で楽しくなくてはね。
タマル(タマレース)というのはメキシコの料理で、トウモロコシの衣の中に味付けした肉が入っていて、トウモロコシの葉に包まれて蒸される。日本でいうと中華の肉まんみたいなものかと思う。

売り口上の歌だから、寅さんの啖呵みたいで面白い。
<背の高い女の子、台所で寝ると、脚が廊下に出てしまう>とか、<二つで5セント、四つで10セント、でもこれ以上売れたら、俺のぶんが無くなるなあ>。<蜂の巣の上に寝転ったビリーさん、それからずっと寝ビ足だ>と言う部分は、面白く日本語に翻訳出来ないけど、英語では<nest>と<rest>と韻を踏んでいて楽しい。

ただ、一つだけ困るのが、早口でまくし立てる歌なので、英語で歌おうとすると口が回らないのだ。しかし、一番の歌詞が、英語でなんとか歌えるようになったので、歌詞を改めて調べてみたのだが、こんな意味不明の一節がある。
<ねえ、猿とヒヒが草の上で遊んでいてさ、猿が'Good Gulf Gas'に指を入れちゃった>

この<Good Gulf Gas>ってなんだろう、とインターネットで調べたら、アメリカのガルフ石油の宣伝文句だったそうだ。質の良いガルフのガソリン…しかし、それでは、歌の意味が通じないではないか。(上の写真は昔懐かしい、Gulfのガススタンド)

そこで、何回か早口で<Good Gulf Gas>と言ってみた。すると、なんとなく<Good Gal’s Ass>に響きが似てる来る。可愛いあの子のお尻…ってことなんだけど、想像が逞まし過ぎるかな。

しかし、ロバジョンの歌から、色々、色めく想像が働いてしまう僕なのだ。

They're Red Hot
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