<ブルースってのはな、衝動、堪え切れない衝動なんだよ>BBキング

夜も遅くなって家人も寝床に入る頃、突然ギターを弾きたくなることが時たまある。文句が来ることは知っているので、アンプを繋げないでエレキギターを弾く。当然ながら、普通は大丈夫だ。ところが、不思議なことにある曲を弾き出すと、まだ起きている娘が「お父さん、うるさいよ」と言うことがある。この曲は、<preaching blues>。どうやら聞き手を苛立たせるようなリズムを持っているようだ。サン・ハウスも同じ題名で録音しているが、こちらは題名の通りに信仰について歌っているのに対して、ロバート・ジョンソンのはご信心のことなどおくびにも出さない。それに、メロディすらガラリと変えてしまっている。

<朝起きたら、ブルースが人の様に歩いていた>とか<ブルースは肺病のように、徐々にお前を殺すのさ>、<ブルースは胸が痛む心臓の病さだ>といった歌詞は、多くのデルタのブルースミュージシャンによって使われた気の利いたフレーズで、他の歌でも聞くことが出来る。しかし、この痙攣を起したようなテンポだけは、どうにもユニークである。

その昔、真似して弾こうとしたが、初めのうちはどうやっているのか想像出来なかった。運の良いことに、ある映画でKeb Moが、ジョンソン役でこの曲を弾いており、ようやく理解出来た(ただし、その演奏にしても100%のコピーと言うわけはなかったけれど)。

基本的には、第一弦の12フレット、10フレット、そして、3フレットへとスライドを素早く動かし、ツッタ、ツッタ、ツッタとリズムを刻んで行くのだけど、良く聞くと、どうも細かいリズムがその後に入る。しいて書けば、ツッタ、ツッタ、ツッタ、(ッタタタ)という感じだろうか。試してみると分ると思うが、歌いながらだと極めて難しい。

彼のこの演奏法は一体どこから来たのだろう?

Steber07

一弦しかないギターの様な楽器に、ディドリー・ボウと呼ばれるものがある。上は、ナイフをスライドさせてディドリー・ボウを弾いている写真だ。この単純な楽器はアフリカにそのルーツを求めることが出来るのだとか。最近、いくつかディドリーボウを演奏している動画を見ていた。
1)<Lonnie Pitchford - Diddley Bow1>
2)<Lonnie Pitchford - Diddley Bow2>
家の柱に釘を二本打ち、針金をつけてビンビンと弾いて鳴らす遊びは、ロバート・ジョンソンもやっていたそうな。日本でこんな事をすると、お父さんにこっぴどく怒られるだろうけど、アメリカはその点、のんびりしている。まあ、安普請なので気にならないと言うことかもしれない。とにかく、彼らは幼い頃から、こんな遊びを通してリズム感を養っていたわけだ。

そこで考えたのは、ロバジョンの<Preaching Blues>は、このディドリー・ボウの弾き方をかなり意識しているのではないかな、ということ。もちろん、ジョンソンは6弦のギターを使用しているけれども、メインの旋律は第一弦のスライドを弾くことによって出されている。ここが、ディドリー・ボウ的効果なのだ。そして、高音から低音にせわしなく叩きつけるように弦を弾くことで、彼の朝の落ち着かない気持ちと旅への衝動が表現されるのだろう。

オマケ:
ロバート・ジョンソンのファンの方には見て欲しい動画:
演奏しているロニー・ピッチフォードは、残念なことに、若くして亡くなってしまったが、ジョンソンと同じくミシシッピの出身。次の歌を聞くとかなりロバジョンを髣髴させる腕前で、ロバジョンの演奏はこんな感じだったのではないかと思わせる。彼が生きていれば、ぜひロバート・ジョンソン役で映画に出て欲しかったが、かなわぬ夢である。
<If I had Possession Over Judgment Day >