| 1月31日 | 応募締切り 応募数 78点 |
| 2月18日 | 一次選考 通過作品 33点 |
| 3月13日 | 二次選考 通過作品 9点(ホームページに発表) 9作品を4人の選考委員に送付する |
| 4月10日 | 最終選考会 午後6時、旭川市高砂台「扇松園」 |
選考委員
- 辻井喬 詩人・作家(東京)
- 工藤正廣 詩人・北海道大学文学部名誉教授(札幌)
- 石本裕之 詩人・旭川工業高等専門学校教授(旭川)
- 藤井忠行 造形作家(旭川)
※辻井氏は、出席できなかったため、書面で意見を述べる形になった。
1回目の話し合いで、以下の5点に絞る。この5点を第43回小熊秀雄賞の最終候補作品として検討を進めた。
| 「GIANT FIELD」 | 山田 亮太 |
| 「アイヌモシリの風に吹かれて」 | 花崎 皋平 |
| 「わが縄文」 | 新井 章夫 |
| 「八月の夕凪」 | 上田 由美子 広島県広島市 |
| 「食虫記」 | 正岡 洋夫 |
■「GIANT FIELD」
若々しいエネルギーに溢れ、視野も広い。従来の言葉のシンタックスを壊すところから新しい詩的世界を、という挑戦の試み、反復変容の表現方法的姿勢に共感するとの評価とともに、その破壊の中から何が顔をのぞかせるのか見守りたい、デジタル社会の危さを乗り越える方向性の有無が問題だ、との指摘もあり、期待を込めてこの先の仕事を見たいということになった。
■「八月の夕凪」
広島・原爆をテーマにした詩集。今日的現実に向かって鋭い問題提起をしている。その提起が生硬な表現になっていないのは、現実の暮らしから遊離しない生活のリアリティの強さに支えられているからであり、母親としての人間の愛で乗り越えているのだろう。後半に比して、前半の作品は、この種の作品が背負う宿命なのであろうが、作者の思いは十分に伝わるのだが、やや、もどかしさを感じるとの指摘があった。
残り3点について選考は難渋。2時間に及ぶ緊迫した議論が続いた。
■「アイヌモシリの風に吹かれて」
貴重な長編物語詩。分かり易い平易な言葉で、しかも、長い歴史を自分と重ね合わせながら、淡々と、安定した落ち着いた表現で描き切っている。平易でありながら、作者の表現者としての強度が揺るぎなく貫徹されており、周到な工夫に裏付けられた作品。小熊の切り開いた叙事詩の地平を引き継ぐものとして、長い時間の評価に耐える作品であろう。
■「わが縄文」
烈しい熱気に溢れる言葉で、小熊の「しゃべり捲くれ」の歌が全篇に響いている。迷路に落ち込んで、行き場を見失っている現代人、ことに「現代詩人」への痛烈な、根底的な批判があり、応募作品中、飛び抜けた強さを持っている。詩集の構成や思い込みの強さからくる瑕疵に対する指摘もあったが、それを越える詩人としての強靭な力量と意志を評価する声が強かった。
■「食虫記」
秀れた寓意詩集。現代に生きる辛さが切々と伝わってくる。それでいて、シンボリックな表現を抑制していることが、作品の思想性をかえって浮き彫りにしている。全篇を通して詩的緊張が揺るぎなく、並々ならぬ力量を感じさせる作品である。
この3点は、改めて、小熊秀雄賞そのもののあり方を選考委員に鋭く問うものになった。
最終的に「アイヌモシリの風に吹かれて」を第43回の受賞作と決定したが、辻井氏から、「わが縄文」を特別賞という形で顕彰できないかとの提案もなされ、難しさを痛感させられる選考であった。
蛇足を承知で付記すれば、両作品とも、アイヌ民族が素材であり、作者も道内在住の詩人だが、それが選考の中で考慮されたことは全くない。
(文責・石川郁夫/運営委員)
