昨日(5/31)は,第40回山中湖ロードレース(ハーフ)が開催される予定でしたが,他の大会と同様,新型コロナウィルスの影響で,中止になってしまいました。中止決定に際し,同大会事務局から,「中止までにかかった経費や参加賞送料等必要経費を差し引き,お一人当たり2000円を,現金にてお返しいたします。」との連絡が来ました。また,7月5日(日)に開催予定であった2020函館マラソンの場合は,「2021年大会の出走権を無料で付与する」との決定がされており,事実上全額返金されたことになり,これもすばらしい決断をされたと思います。
私は,これらの連絡を受け,事務局の真摯な対応に感謝するとともに,他の大会の処理について一度考える必要があると思いました。
マラソン大会では,通常,「主催者の責によらない事由で大会を中止にした場合、参加料の返金は一切行いません。」などの大会規約が設けられています。そして,多くのマラソン大会は,新型コロナウィルスの影響で大会を中止にした場合,Tシャツ等の参加賞を送付するだけで,参加料の返金を行っていません。
上記のような規約が設けられていなかった場合は,民法536条1項に基づき処理することになります。同条は,「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは,債権者は,反対給付の履行を拒むことができる。」と規定しています。新型コロナウィルスの影響でマラソン大会を中止する場合は,「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったとき」に該当します。したがって,債権者である申込者は,支払済みの参加料の返金を求めることができます。これを「債務者主義」といいます。
このように,私たちは,規約がない場合は,民法536条1項に基づき返金請求が可能であるにもかかわらず,規約によってこれを認めない扱いとすることは,果たして可能なのでしょうか。
ここで検討すべきは,消費者契約法10条です。この条文を要約すると,①法令中のいわゆる任意規定が適用される場合に比べ,消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって,②民法1条2項に規定する信義誠実の原則(信義則)に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効とする条文です。
「主催者の責によらない事由で大会を中止にした場合、参加料の返金は一切行いません。」などの大会規約は,民法536条1項の原則よりも消費者の権利を制限し,義務を加重しているので,消費者契約法10条の①に該当します。また,今回のようなケースでも返金しないとする規約は,信義則に照らして消費者の利益を一方的に害するものと言える可能性が高いと考えます。したがって,同条の②にも該当する可能性が高いと言えるでしょう。
したがって,上記の規約は,消費者契約法10条により,無効となるため,ランナーは,支払済みの参加料の返金請求をすることができる可能性が高いと考えます。
なお,参加料は返金しないが,Tシャツ等の参加賞を送る場合はどうでしょうか。この点については,異論があるかもしれませんが,私は,「参加賞を送っても,一切返金しないとの規約は,消費者契約法10条により無効となるので,返金請求は可能である」と考えます。なぜこのように考えるかというと,大会事務局が大会開催に向けて経費をかけていたとはいえ,大会を開催しなかった場合は,参加料から経費を控除した残金,つまり余剰が出ている可能性が高いと考えるからです。
今回のように,感染症対策として大会を中止することまで含めて,規約を設けているケースはほとんどないと思いますが,上記のような規約は,消費者契約法10条に該当し,無効と判断される可能性が高いことが,大会事務局のみならずランナーたちにも周知されることが望ましいと考えます。
私は,これらの連絡を受け,事務局の真摯な対応に感謝するとともに,他の大会の処理について一度考える必要があると思いました。
マラソン大会では,通常,「主催者の責によらない事由で大会を中止にした場合、参加料の返金は一切行いません。」などの大会規約が設けられています。そして,多くのマラソン大会は,新型コロナウィルスの影響で大会を中止にした場合,Tシャツ等の参加賞を送付するだけで,参加料の返金を行っていません。
上記のような規約が設けられていなかった場合は,民法536条1項に基づき処理することになります。同条は,「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは,債権者は,反対給付の履行を拒むことができる。」と規定しています。新型コロナウィルスの影響でマラソン大会を中止する場合は,「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったとき」に該当します。したがって,債権者である申込者は,支払済みの参加料の返金を求めることができます。これを「債務者主義」といいます。
このように,私たちは,規約がない場合は,民法536条1項に基づき返金請求が可能であるにもかかわらず,規約によってこれを認めない扱いとすることは,果たして可能なのでしょうか。
ここで検討すべきは,消費者契約法10条です。この条文を要約すると,①法令中のいわゆる任意規定が適用される場合に比べ,消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって,②民法1条2項に規定する信義誠実の原則(信義則)に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効とする条文です。
「主催者の責によらない事由で大会を中止にした場合、参加料の返金は一切行いません。」などの大会規約は,民法536条1項の原則よりも消費者の権利を制限し,義務を加重しているので,消費者契約法10条の①に該当します。また,今回のようなケースでも返金しないとする規約は,信義則に照らして消費者の利益を一方的に害するものと言える可能性が高いと考えます。したがって,同条の②にも該当する可能性が高いと言えるでしょう。
したがって,上記の規約は,消費者契約法10条により,無効となるため,ランナーは,支払済みの参加料の返金請求をすることができる可能性が高いと考えます。
なお,参加料は返金しないが,Tシャツ等の参加賞を送る場合はどうでしょうか。この点については,異論があるかもしれませんが,私は,「参加賞を送っても,一切返金しないとの規約は,消費者契約法10条により無効となるので,返金請求は可能である」と考えます。なぜこのように考えるかというと,大会事務局が大会開催に向けて経費をかけていたとはいえ,大会を開催しなかった場合は,参加料から経費を控除した残金,つまり余剰が出ている可能性が高いと考えるからです。
今回のように,感染症対策として大会を中止することまで含めて,規約を設けているケースはほとんどないと思いますが,上記のような規約は,消費者契約法10条に該当し,無効と判断される可能性が高いことが,大会事務局のみならずランナーたちにも周知されることが望ましいと考えます。