Lashana Lynch in Bond25

『007シリーズのお約束』第六弾は『PLAYBOY誌とのイイ関係(仮題)』でもやろうかな、なんて考えていましたら、先日は珍しくBond25の話題が一般のニュース番組でもばんばん取り上げられていて驚きました。熱心な友人がテレビ画面の画像まで送ってくれましたし。ロジャムーくらいの大物逝去の訃報ならまだしも、新作撮影真っ只中の段階で007シリーズがこれほど世間の注目を浴びたのは珍しい。普段は映画ファンにすら忘れられているキャラクターですので、ボンドファンとしては喜ぶべきなんでしょうが、そのニュースの内容はにわかに信じがたいものでした。なんと新作ではラシャーナ・リンチ演じるノミ(もしくはノーミ。ミノではありません)がジェームズ・ボンドに代わって007号を襲名する、という衝撃的な情報。ボンドが円満退社なのか、会社都合(クビ)なのかわかりませんが、007という(恐らくダブルオー課のエースナンバーである)番号が、あろうことか黒人女性の手に渡ってしまうとは・・・(絶句)しかもこんな極秘情報を今の段階で意図的にリークして世間の反応を見ている感じがするのがあざとい。

はっきり言わせてもらいましょう。このアイデア、クソです。もうネット上の禁止用語なんて気にしちゃおれん。クソ、うんこ、英語でいえばホーリー・シット!ホワット・ザ・ファック!スペイン語でいえばケ・ミエルダ!毛、見えるだ!で覚えましょう。

うーそうはいっても、冷静にならねば・・・

私は以前新作の妄想脚本を披露し、ボンドが007号を剥奪されることを予想したことはありましたが、あれは完全にウケ狙いのジョーク、飲み会の席で披露するための冗談でした。それがまさか現実になる日が来ようとは。私は長い映画シリーズで役者が変わることを説明するためにジェームズ・ボンドという名前をそのまま英国秘密情報部での引き継ぎ事項にすることを提案してきました。つまり007を襲名する敏腕スパイは名前も本名ではなく、ジェームズ・ボンドを名乗る。かつてトレイシーという新妻を亡くし、両親を登山事故で失ったのも架空の経歴を語る上でのお約束事項。もしかしたら女性の好みもそれぞれの歴代ボンドによってまちまちかもしれず、美女に弱く、人妻好きというのもあくまでロシアなど他国の諜報機関に意図的に流した情報にすぎない。しかし・・・

007をジェームズ・ボンド以外に与えるのは許しがたい。

007というイアン・フレミングが創造した男性ファン憧れのアイコンに対する冒涜、掟破りも甚だしい。もうすぐフレミング没後55年になりますが、彼が怒って墓場から出てきますよ。それもはっきり言って見た目がパッとしないラシャーナ・リンチなんですから。百歩譲って若手のいかにも仕事ができそうな高身長の白人男性ならまだしも、ポリコレ問題を一気に片付けるかのように黒人の女性(31歳)とは・・・しかもあんまり優秀そうに見えない。千歩譲ってフィールド・エージェントの素質があるナオミ・ハリスならまだマシ。開いた口がふさがらん、とはこのことでしょう。

そもそもBond25のジャマイカ記者会見で彼女を見たときにイヤな予感はしてました。アナ・デ・アルマスのボンドガール決定に興奮する一方、並列扱いの華やかな第二ボンドガールがいない。レア・セドゥは最初から最後まで登場するほど出番はないだろうし、ナオミ・ハリスは厳密にはボンドガールではない。昔で言えばクロディーヌ・オージェとルチアナ・パルッツイ、若林映子と浜美枝、バーバラ・バックとキャロライン・マンロー、キャリー・ローウェルとタリサ・ソト、イザベラ・スコルプコとファムケ・ヤンセン。もしベッドインするならどっちにしようか、なんてボンド少年の妄想と下半身を駆り立てる存在であったのに、ラシャーナ・リンチでは残念ながら抜けない。そこが不満だったのに、まさか我々が半世紀以上も大事にしてきた007ナンバーをあっさり彼女に渡してしまうとは・・・そんな脚本を考えたのはどこのどいつだ、出てこい!

ハリウッド映画や海外ドラマのポリコレ的配慮はもはやネタ化しています。『X-ウーマン』、『ウイメン・イン・ブラック』など劇中に実際にセリフで登場することも珍しくないし、オーシャンズ8やゴーストバスターズなど女性だけのチームにしてリブートすることも流行りですね。果たしてそれで女性の地位向上を訴える人、男性社会に虐げられてきた人たちが満足するのか。ワンダーウーマンやキャプテン・マーベルなど男性キャラを圧倒的に凌駕する女性をヒロインにすればスカっとするのか。少なくともバーバラ・ブロッコリはもうすぐ『リズム・セクション』で女性スパイを描くのだからそれでいいじゃない。なんだったらジェーン・ボンドというボンドの妹(姪?)的キャラを創造してMやQ、敵キャラまで全部女性、ただしマネーペニーだけ男性にして男性中心の社会をギャフンといわせる痛快スピンオフ映画でも企画すればいいのです。

ただしラシャーナ・リンチに非はない。彼女はプロの女優としてオファーされた仕事をするだけなので、仮に今回のニュースをきっかけに心無いバッシングが起きたとしたらそれは気の毒です。彼女をキャスティングし、そんな信じられない演出にゴーサインを出したスタッフが悪いのだから。今回のこのニュース、好意的に解釈するボンドファンがいたらそれはそれで立派だし、否定するつもりはないです。しかし私を含め世界中の99%のファンは『頼むから冗談にしてくれ』と思っていることでしょう。まだ製作途中だし、仮にティーザー予告でレイフ・ファインズがラシャーナ・リンチに対して『入りたまえ、007』というセリフがあったとしてもそれはカット割りのマジックであるかもしれないし、最後の最後にはボツになったり、『0077』など別のナンバーに差し替えられることを願っています。フクナガ監督、そこんとこヨロシク。

ではまた。