アジャストメント [DVD]アジャストメント [DVD]
出演：マット・デイモン
販売元：ジェネオン・ユニバーサル
(2011-09-16)
販売元：Amazon.co.jp
クチコミを見る

マット・デイモン主演の最新作、『アジャストメント』をJ:COMのVODで鑑賞しました。SF小説界の巨匠、フィリップ・Ｋ・ディック（PKD）のAdjustment Teamが原作ですが、オリジナルの映画タイトルはThe Adjustment Bureauです。『チーム』が『支局』に変わったんですね。人間の運命を微妙に調整するという原作のコンセプトは活かされていますが、ほぼ映画オリジナル・ストーリーといえると思います。PKD原作映画は『ブレードランナー』、『トータル・リコール』、『マイノリティ・レポート』など名作揃いですが、本作も十分楽しめました。

adjustment bureau

主人公はニューヨーク州下院議員のデヴィット・ノリス（マット・デイモン）。上院議員選挙に立候補していましたが、若い頃に下半身を露出させたスキャンダルをマスコミにリークされてあえなく敗退。敗北宣言スピーチをトイレで考えたいたデヴィットはそこでエリスという美しい女性に出会います。彼はその後通勤バスの中で彼女に再会し、意気投合します。しかしそのバスを追いかける一人の男がいました。デイヴィットは実はそのバスに乗るはすではなかったのです。

adjust1

デヴィッドが新しい職場に行くと職場の同僚は時間が止まったかのように動きません。更に謎の男たちが何やら怪しい作業中。デヴィッドは命からがらその場から逃げだしますが、リチャードソン率いる調整支局の男たちに捕えられます。デヴィッドはエリスの携帯番号を書いた紙をリチャードソンに焼き捨てられてしまい、エリスのことを諦めなければ記憶も人格もリセットすると脅されます。

泣く泣くエリスを忘れようとしたデヴィッドでしたが、3年間毎日同じバスに乗り込んでエリスを探し求め、ついに再び出会い、二人は愛し合います。業を煮やした調整支局は上司のトンプソンが登場。デヴィッドは将来アメリカ大統領になる運命であり、バレリーナのエリスはキャリアの邪魔になると告げます。二人が別れることでエリスは将来国際的なバレリーナになって幸せな人生を送るのだ、と言われたデヴィッドは彼女のことを思い、苦渋の決断を下します。11ヶ月後、再び上院議員選挙に出馬した彼はエリスの婚約を知り・・・

adjust3

アメリカ版『どこでもドア』の実写化ですね（笑）。人類の運命を操作してきた神のような存在の調整支局の人たちは帽子をかぶっていて、人間界のあらゆるドアを使ってテレポーテーションできるのです。オフィスや美術館から突然ヤンキー・スタジアムに移動し、またニューヨーク市内に戻る場面は圧巻。特殊効果に頼らず、行きたい場所に壁とドアを作れば撮影は可能ですね。勿論CGも多用されていたんでしょうけど、単純な撮影方法であっと驚く効果を得ることができるので、映画の原点を見た気がしました。

adjust2

エリス役のエミリー・ブラントは『プラダを着た悪魔』の演技が印象的で、どちらかというと非英語圏のヨーロッパ人のような顔立ちですが、イギリス出身です。バレリーナの役ですが、劇中見事な身体の動きでしたので、経験者でしょうか？ハリウッドの大作系にもばんばん出演していますが、エキゾチックな容姿の演技派ですので今後も出演作が続くでしょう。

Selected Stories of Philip K. DickSelected Stories of Philip K. Dick
著者：Philip K. Dick
販売元：Pantheon
(2002-11-05)
販売元：Amazon.co.jp
クチコミを見る

映画本編を見終わった後、どうしてもPKDの原作が読みたくなり、US AmazonにてSelected Stories of Philip K. Dickのキンドル版をiPhoneアプリでダウンロードしました（$16.39）。物語は主人公のエド・フレッチャーの運命を調整するのに失敗した調整班のメンバーが全世界の平和を推進するためにエドを脅かす話。エドが勤める不動産会社はカナダの土地を購入することを検討していましたが、その土地には人類の未来を変えるある物質が埋蔵されています。調整班は不動産会社の社長をその気にさせる必要がありました。もしその物質が発見されたら世界中の科学者が知恵を出し合って交流が進み、争いごとがなくなる平和な世界が到来するはずだったからです。しかし、エドはそのための調整の現場で、人々や建物が灰となって崩壊する恐ろしい現場を見てしまいました。調整班に『絶対他人に話してはいけない』と釘を刺されたエドでしたが、妻のルースが疑心暗鬼になって・・・

こうして読み終えると映画とは全く似ても似つかないことが分かります。PKDの短編集は映画『ペイチェック　消された記憶』公開時に別のペーパーバックを読みましたが、タイム・トラベルでいつの間にか戦争中の未来に巻き込まれてしまうBreakfast at Twilight（邦題『たそがれの記憶』）、ミニチュアの街並みを作る男が製作をやめた途端に街そのものが変わってしまうSmall Town（邦題『小さな町』）、人口抑制のため魂が宿っていない12歳以下の子供を野良犬同然に狩るThe Pre-Persons（『まだ人間じゃない』）など、とにかく怖くて面白かったと記憶しています。PKD作品の先見性と発想力は半世紀以上経過しても色褪せないところが素晴らしい。キンドル版でDLしたその他の短編も早く読みたいと思います。

ではまた。