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昨年末、新宿ゴールデン街『談SINGシネマ』映画大賞ベスト10発表会に出席させていただき、なんとか常連さんの仲間入りをさせてもらいました。映画館で見た本数も2018年は92本と常連さんの中でも悪くない数字でしたが、圧倒的な差を感じたのは日本の映画を見ている回数だったと思います。私はシネコン中心で23本見ましたが、やはり大きなスクリーンで公開される映画が良いとは限らない。そもそも実際に映画作りの現場で働いている方がたくさんお店にいらっしゃるのに、洋画ばかり見ていたのでは話もできないから失礼極まりない。2019年はそんな私の洋画・大作志向を改めるきっかけにしなければならない。それにはベスト20くらいまでの邦画を見なければ・・・

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そんなことを年始に思っていましたら、私もよく行くテアトル新宿で『2018邦画大忘年会』という2018年に公開した映画の上映イベントが昨年の12月15日からスタートしていることを発見。しかも結構監督さんや出演者が登壇するらしい。そこで私は1月6日上映の『きみの鳥はうたえる』を見に行ったのであります。本作は昨年9月に劇場公開され、『談SINGシネマ』大賞邦画部門で堂々第5位にランクインした話題作。主演は若手実力派の柄本佑、染谷将太、そして一昨年『夜空はいつでも最高密度の青色だ』で数多くの新人賞を受賞した石橋静河の三人です。私は同じテアトル新宿で上映された『夜空は〜』の舞台挨拶で彼女を実際に見て以来ずっと応援してきましたので、これだけでも見る気満々だったのですが、物語の舞台が北海道の函館市。私が小学校三年、四年を過ごした街だったのです。上映後舞台挨拶した三宅唱監督とはサイン会でちょっとだけ世間話もできましたが、なんと札幌市東区出身とのことで、私の実家のすぐ近くに住んでいたらしい。いやあ〜世間は狭いですね。

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原作は函館市出身の佐藤泰志が1981年に発表した同名小説で、第86回芥川賞候補となったそうです。彼は1990年に自殺してしまい、その作品集も永らく絶版となっていましたが、近年文庫化により注目され、『そこのみにて光輝く(2013)』『オーバー・フェンス(2016)』など次々に映画化、小説も再評価の動きが高まっているとか。そんな彼の『きみの鳥はうたえる』は原作では東京で物語が進行しますが、佐藤氏に敬意を表するかのように彼の生まれ故郷、函館に三宅監督は舞台を移したのです。主人公の『僕』(柄本佑)は失業中の静雄(染谷将太)とアパートで共同生活をしています。生活は決して裕福ではない。『僕』はバイト先の書店で一緒に働く佐知子(石橋静河)をなんとなく飲みに誘ってみるとOKだという。しかし『僕』はそれをすっぽかしてしまう。翌日あっけらかんとした彼女は特に怒る素振りも見せず、すぐに二人は惹かれあい、男女の関係になる。同居人の静雄がいるのにおかまいなく愛し合う『僕』と佐知子。そこに静雄が入り、三人は酒を飲み、歌い、踊り、夜通し語り合う仲に。絶妙なバランスを保ち、永遠に続くと思われた三人の関係は佐知子が書店の店長(萩原聖人)と不倫していたことが判明してから微妙に綻び始めてゆきます・・・

きみの鳥はうたえる (河出文庫)
佐藤 泰志
河出書房新社
2011-05-07


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三人の若手俳優のアンサンブルが素晴らしい。現実世界では男二人、女一人の組み合わせで友情なんて成り立たないと思いますが、この三人ならうまくいくかも、と思わせる。男二人が絶世の美男子とは言い難いので親近感が湧き、『僕』のようなぐうたらな男は確かにいるだろうし、静雄のように不器用で人の良さそうな男もいるはずだ。その二人が可愛らしい佐知子に惚れてしまうのも当たり前で、よくよく考えると彼女は男をコロコロ変える魔性の女なのに、その生い立ちも親兄弟も、これまでの彼女の人生も、将来の夢すら語らせない。こんなミステリアスかつ無色透明なキャラクターに三宅監督が仕立てたことで不思議に(男から見て)イヤミがない。かといってバカ女ではないし、わかりやすく感情を爆発させることもない。これって実は演技者として非常に難しい役どころのはずが、石橋静河は苦もなく演じきっているように見えるのです。しかも『僕』のアパートに乗り込むと上半身ブラジャーのセクシーな姿を見せるし、『僕』と何度となく交わすキスも濃厚。中盤では後ろ向きながら上半身ハダカでブラジャーをつけるのにちょっと手間取る姿も披露します。そんな大胆なシーンも必要とあらば難なくこなすところなんてタダモノではなく、親の七光りなんて全く関係ない。去年は朝ドラ『半分、青い。』で佐藤健の離婚する妻役でも存在感がありましたし、映画出演も多数。2019年は更に飛躍すること間違いないでしょう。ダンス留学経験もある彼女がカラオケ店で歌う『オリビアを聴きながら』は杏里ではなくハナレグミ・バージョン。歌詞が意味深でよかったなあ〜

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舞台挨拶で登壇し、Q&Aに応じた三宅唱監督は1984年生まれですので34歳。照れ隠しなのか敢えて自虐的なコメントも多く、若者言葉を使うぶっちゃけトーク連発で館内の爆笑を誘っていましたが、末恐ろしい才能の持ち主であることは間違いないでしょう。登場人物の暗澹たる気持ちを表しているかのような画面の陰影の使い方も巧みですが、私はラストシーンやエンドクレジットにも遠くに聞こえる汽笛の音に感激しました(Q&Aで最初にこの点も発言させてもらいました)。港町函館にはボーという船の汽笛がこんなにも聞こえていたのかと改めて思い出し、私自身40年以上前の郷愁を呼び覚ますことで更に物語の三人に若かった頃の自分を重ね合わせることができたのです。『僕』と佐知子が街中で交わすキスも忘れがたいシーンでした。あーキスってこんなふうにして良かったんだ、なんて思わせるくらい。ついでに昨今流行りのスマホでのやりとりも最小限に抑えたことも好感が持てます(私自身もスマホ中毒ですが、やたらと映画の画面に出てくると安易な演出に見えるので好きではないのです)。映画を見終わって久しぶりに女の子とビリヤードやダーツで遊びたくなりました!相手はいないけど!(爆)

追伸:書店の同僚、みずき役の山本亜依も超絶カワイイ。日テレのドラマ『トドメの接吻』に出てたのか・・・やはり娘とオクトパシーと一緒に見るべきだった・・・

ではまた。