Band on the run Demo1

『007/死ぬのは奴らだ(1973)』の同名主題歌(LIVE AND LET DIE、以下LALD)はボンドファンのみならずポール・マッカートニーのファンにも人気がある曲だと思います。私は毎年来日公演に行きたくてもチケットが高すぎて諦めているのですが、今年こそは、と思っています(勿論ポールがまた来てくれたら、の話ですけど)。そんなことを考えていましたらヤフオクでちょっと怪しい白盤LPレコードを発見。ビートルズ解散後、ウイングスの3枚目のアルバム名『BAND ON THE RUN(以下、BOTR)』と記されています。しかしデモ盤・転売禁止(Not For Re-sale)と安っぽいタイプライター文字で書かれており、なんとLALDも収録されているらしい。これは珍しい音源が聴けるかもしれない、と思い私はCD1枚くらいの値段でこの二枚組LPを落札したのです。私自身はポールはおろか、ビートルズの知識も皆無の洋楽オンチですので、福岡のボンドお友だち、Fresh Toru-Cさん及びキム兄にアドバイスをお願いしました。本記事はこのお二人からの情報・ご意見の受け売りも多いのですが、他にも何かご存知の方がいらしたらコメント欄に是非お願いします。

Band on the run Demo2

まずはジャケットに記載された収録曲は以下の通り。

PM 007

PAUL McCARTNEY "BAND ON THE RUN" DEMOS Not For Re-sale

RECORD ONE

(A)
1. THE 007 THEME
2. JUNIOR'S FARM
3. JET
4. SOILY
5. WILD LIFE
6. HI HI HI
7. GO NOW

(B)
1. MAYBE I'M AMAZED
2. BLUEBIRD
3. MY LOVE
4. NINETEEN HUNDRED AND EIGHTY FIVE

RECORD TWO

(C)
1. LIVE AND LET DIE
2. BAND ON THE RUN
3. BLACKBIRD
4. INSTRUMENTAL
5. JET

(D)
1. SOILY
2. MY LITTLE WOMAN LOVE
3. C MOON
4. LET ME ROLL IT
5. INSTRUMENTAL
6. BLACKBIRD

Recorded in Lagos, Nigeria in September 1973

ビートルズ解散のあと、ソロ活動に力を入れるメンバーを横目にポールはバンド活動にこだわったのは洋楽ファンご存知の通り。ジャケットにはアフリカのナイジェリア、ラゴスで1973年9月にレコーディングされたとありますが、これは史実であります。映画『ボヘミアン・ラプソディー』でもクイーンのメンバーが郊外の古城でレコーディングする様子が描かれていましたが、クリエイティブな曲作りには誘惑の多い都会のスタジオを離れることもよい気分転換になるのでしょう。それにしてもアフリカまで行くとはポールの考えだったと思いますが、リンダやバンドのメンバーは大変だったことでしょう。現地は決して治安のよい場所ではなかったらしく、デモテープの盗難にあったとか。もしかしてこのデモ盤の音源の一部はその時盗難にあったものかも?

wings-paul-mccartney-mull-of-kintyre

因みに裏ジャケットの写真は『Mull of Kintyre』(邦題は『夢の旅人』)のもので、1977年11月11日発売ですので、少なくともこのデモ盤LPが出回ったのは1978年以降かと思われます。

さーて、ツッコミどころ満載のラインナップですが、まずは(A)面1曲目の『THE 007 THEME』は『007/死ぬのは奴らだ』のサントラに収録されているジョージ・マーティン版『James Bond Theme』に限りなく近い曲に聞こえます。この曲は当然にウイングスのアルバムには収録されておらず、このレコードを製作した人間が勝手に加えたと思われます。ウイングスの演奏にも聞こえませんし、他の曲に入っているポールの『ワン、ツー、スリー!』などの肉声もなし。因みにサントラの英国発売は1973年7月2日でした。

DSC_2108

今回最大の収穫だったのが(C)面1曲目のLALDです。昨年はウイングス2枚目のアルバム『レッド・ローズ・スピードウェイ(以下、RRS)』のデラックス・エディションなどが発売され、LALDのオーケストラを重ねる前のスタジオ・バージョン(テイク10)が収録されました。しかしこの謎のデモ盤に収録されているLALDはこのオケなしバージョンとも明らかに異なり、出だしにはポールがメンバーに『次はリブ・アンド・レット・ダイ。えーと、テイク何だっけ?』『(たぶんリンダの声で)スリー。』という音声も収録されています。RRS収録のテイク10にはコーラスが入ってませんが、このデモ盤バージョンにはコーラスもちゃんと入っています。曲の終わりにポールは『ナーナーナー、イェイ!』とおどけた調子で叫ぶので、楽しそうにレコーディングしているのがわかります。私の調査不足でこの音源が既にYouTubeなどで出回っているのかはっきりしませんが、ファンにとっては貴重なテイクに違いありません。

DSC_2111

Band on the run Demo3

以下、その他の曲の簡単なレビューも書いておきます。全体としては殆どの曲がデモと思われます。

(A)面2曲目の『JUNIOR'S FARM』は1974年10月25日発売のウイングス9枚目のシングル曲なので、ラゴスでレコーディングされたものではないと思われる。冒頭に『テイク16』とポールが叫ぶ。

(A)面3曲目及び(C)面5曲目の『JET』は当初リリースされたBOTRのアルバムに収録されている曲(赤字で表示)だが、明らかにデモ曲。

(A)面4曲目及び(D)1曲目の『SOILY』は後年BOTRアーカイブ・コレクションに収録された曲。こちらもデモ曲。

(A面)5曲目『WILD LIFE』はウイングス最初の同名アルバム(1971年12月7日発売)に収録された曲だが、ほんのワンフレーズのみのセッション。これは本当にラゴスのスタジオで歌ったものかも。

(A)面6曲目『HI HI HI』は1972年12月1日発売のウイングス3枚目のシングルA面のデモ曲。

(A)面7曲目『GO NOW』はデニー・レインが歌っているようですが、前後に雑談めいた音声も入っているのでデモ曲に間違いない。

(B)面1曲目『MAYBE I'M AMAZED』は『さあ始めようか』などポールの掛け声も聞こえる。

(B)面2曲目『BLUEBIRD』はBOTRに当初から収録された曲だが、明らかにデモ曲。

(B)面3曲目『MY LOVE』は1973年3月23日発売のウイングス4枚目のシングルA面のデモ曲。

(B)面4曲目『西暦1985年』はBOTRに当初から収録された曲だが、現在聴くことができるバージョンとは異なるテイクのデモ曲。

(C)面2曲目『BAND ON THE RUN』も同じくデモ曲。

(C)面3曲目『BLACKBIRD』は歌いだしを何度も確かめるように歌うデモ曲。

(C)面4曲目は演奏のみ。

(D)面1曲目『SOILY』完全にデモ曲。

(D)面2曲目『MY LITTLE WOMON LOVE』笑い声も聞こえるのでこちらも完全にデモ曲。

(D)面3曲目『C MOON』はウイングス3枚目のシングルB面の曲(1972年12月1日発売)。

(D)面4曲目『LET ME ROLL IT』デモ曲。

(D)面5曲目は演奏のみ。

(D)面6曲目『BLACKBIRD』は最初にコーラを飲み干す音が入り、殆どおしゃべりだけの収録。『BLACKBIRD』を歌いだす瞬間で終わるもの。



尚、レコードの発売日などの情報はレコード・コレクターズ誌2019年1月号のウイングス特集記事を参考にしました。ものすごい情報量でしたが、007ファンとしてLALDの日本版7インチシングルレコードのバージョン違いの記事(52頁)には感激しました。一見全く同じなのにレコード盤面の細かい相違点を掲載するところなど、さすがこだわりが半端ない!ミュージック・マガジンさんには以前取材にいらした時に大変お世話になりました。007シリーズのサントラを特集するときはまた是非声をかけてくださいね〜

DSC_2110

レコード・コレクターズ 2019年 1月号
ミュージック・マガジン
2018-12-15



ではまた。