以下の文章は「月刊社会民主」2012年9月号の読者投稿欄に掲載された拙文の転載です。
内容的に全く不十分な点の多い稚拙な文章ですが、この時期に社民党内部にも、末端党員ではあれこうした主張があったという「記録」として、敢えて転載することにしました。


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「反原発」運動内部の
看過し難い否定的傾向

中川龍也(47歳) 東京都練馬区

7・16の17万人集会をはじめ、今や反原発運動は大きな盛り上がりを見せているが、この空前の高揚に
さる6月29日に総理官邸前に20万人(主催者発表)を結集させた通称「官邸前行動」とその主催グループ
である「首都圏反原発連合(以下「反原連」)」が一役買っていることは多くの方が認めるところであると思う。

既成の運動団体(左翼政党および労働組合)による組織動員によらず、「ツイッター」「フェイスブック」といった
インターネットツールを駆使した「普通の市民たちによる」「新しいスタイル」の運動に対して、反原発運動を
3・11以降も一貫して黙殺してきた大手マスコミが、先の大結集を機に一転して好意的な報道で迎えるようになった。

しかし、彼らに代表される「新しい」「普通の市民」こそが、これからの反原発運動の「あるべき姿」とされる事に
対しては、大きな違和感と危惧を抱かずにはおれない。

1つは、「反原連」が官邸前行動の「ルール」として掲げる「政治団体や労働組合の旗・幟」の排除である。
「反原連」の公式サイトには
「原発問題と直接関連しない文言を掲示することはお控えください。下ろしていただくよう、スタッフが
お願いする場合があります」
とあり、一見反原発の主張と関係ない(と主催者がみなした)物への自粛要請と取れるが、実際には
左翼団体・労組の旗は「一般参加者が怖がるから・嫌がるから」との理由で集中的に取締を受けるのに対し、
右翼団体の掲げる「日の丸」には自粛要請がないばかりか積極的に「黙認」されているなど、「反原連」の
運動の方向性は明らかに「左翼・労組排除」の方向を向いていると言わざるを得ない。
実際に「反原連」関係者のツイッター上の書き込みは、こうした「反左翼・反労組」の方向性をあからさまに
したものが少なくない。

もう一つには、警備・公安警察に対する異常なまでの信頼と協力ぶりである。過去、反原発運動を含め
多くの社会運動は警備・公安警察の狡猾で暴力的な弾圧に徹底的に苦しめられてきた。そうした運動の
歴史をとても踏まえているとは思えない主催グループの「警察官の指示に従ってください!」の連呼に
違和感を覚えた参加者は少なくないと思う。

「反原発に右も左もない」 主催グループが強調するこの主張に、マスコミや知識人・文化人の同調者も
多い。しかし実際には「左」を排除し、原発問題の本質──国家・資本総ぐるみの差別・抑圧構造──への
視座は「再稼働反対」の単一課題になじまぬものとして切り捨てられる。

果たしてこうした傾向は、今後の反原発運動の質的発展に寄与するものであろうか?残念ながら私には
そうは思えない。

既成の組織による社会・政治運動が今まで支持を得ることができなかった本当に多くの人々を「官邸前」と
いう「政治」の最前線に誘った点においては、確かに「反原連」の運動は大きな成果を勝ち取った。
その点は大いに評価されるべきであったとしても…

あとは私たち自身の問題である。3・11以降多くの人びとが「生活」と「生命」に対する不安から反原発の
声を上げ始めたが、これらの人びとに私たちの主張を確かなかたちで発信できていたのかどうか?

「社会民主主義はなぜ脱原発を目指すのか?」を、私たちは明確に語らねばならない。これら運動内部の
否定的傾向に対し曖昧にせず、きちんと向き合わねばならない。


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