盛土規制法の3次元解析(9)賢い対策工法

「地下水位の低下は滑動崩落の防止に寄与しない」というのは、各省の技術基準べったりの人には理解できないと思います。

土のせん断抵抗力を低下させるのは地下水位ではないのか?なんで寄与しないなどと断定するのか?、、、ですね。

もちろん、土のせん断抵抗強度を低下はさせています。ちょっとはね。でも「失わさせてはいない」のです。

過剰間隙水圧は、土のせん断抵抗強度を「消失させる」のです。ちょっとでも、飽和地下水があって、排水距離が長くて過剰間隙水圧の消散ができない条件であれば、せん断抵抗強度が消失して滑動崩落が起きるのです。

それにブレーキを掛けるのは、過剰間隙水圧が発生しておらず「普通の土の強度」がある側面抵抗部です。幅/深さ比が変動・非変動の結果を支配していたのは、過剰間隙水圧で底面のせん断抵抗が「無くなった」からなのです。

土質屋さんは、この考え方に抵抗しました。土質は土質試験が王道で、土質試験をすれば土の強度が正確に分かり、それですべてが説明できると信じているからですね。「土質試験教」です。それしかしてないと、すがっちゃうんですね。

せん断強度が消失するなら土質試験は不要じゃないか!土質試験が不要だなどとは決して許さん!ってことです。

でもそうなんだからしょうがない。滑動崩落防止対策に土質試験は不要です。実現象の統計解析だけで十分です。よほど特別の土を使っていない限りは。

下図は、幅/深さ比を改善(小さく)する「賢い滑動崩落防止工法」です。この特徴は次の2つです。

1.工費がバカ安い

2.盛土の変形もない(加害者の盛土所有者にも利益がある)

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盛土底面に5〜10mピッチで集水ボーリングしても高い効果が得られるのですが、それだと工事費が高価となるので、過剰間隙水圧消散させる場所を限定して、あとは幅/深さ比を小さくして側面抵抗強度の寄与率を高めます。これだと安く工事ができますね。

実際、既存家屋が建ったままの造成地では、過剰間隙水圧消散だけを期待してもなかなか対策する場所がありません。私が目を付けたのは、お隣さんとの境界部です。ここだけは0.5〜1mは家屋を離さないといけないことになっているので空いています。埋設管があるかもしれませんけどね。

平べったい造成地だと、横からボーリングすることができないんので縦打ちします。縦打ちでも過剰間隙水圧は消散できますからね。

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これってちょうど、ダンプ実験でやったのと同じですよね。

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この対策は1件だけ施工事例があります。東京都八王子市の盛土造成地です。2007年4月に実施しました。あの劣悪な盛土変動予測ガイドラインがちょうど出るころです。

なぜここに施工事例があるかというと・・・・この土地の持ち主が、滑動崩落の説明を深く理解したからです。そういう立場にあった人、、、(これ以上は言いません)だったということです。

理解すれば、自分の土地が滑動崩落するリスクを持っていて、大地震が来れば避けられないと確信できたのです。さらに、周辺の人たちにも対策の重要性を知ってもらって自主的に対策することを促すために、外から目立つ対策もしました。

施主の方から「この工事を滑動崩落防止のための宣伝として使ってよい」という許可も得ています。むしろ施主の方がそれを望んだ、という方が正しいでしょう。

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でも、近所の方々は対策をしようという気にはならなかったようです。「防災は国や自治体がやってくれるものだ」という行政依存体質にどっぷり染まっているからですね。実際、その後の大地震でも、皆行政が金出して解決してますしね。。。

だから、今後起きる大地震でもそうなる確率の方が高いでしょう。ただ、命を失ったり、大怪我して身体障碍者になったりして後悔しなければ、、、ですけどね。

上記の工事の施主さんは、あまりにも滑動崩落のことを理解してしまったので、怖くて対策せずにはおれなかったそうです。

防災対策に関しては「天は自ら助くる者を助く」なので、強要してもしょうがありません。私は十分社会に対して注意喚起してアリバイ作りはできていると思っているので、、、静観します。

「自ら望んで被害を受けようとしている人」には何を言っても無駄なのでね。医者が自覚症状のない病人の首に縄をつけて引っ張ってきたら犯罪になるのと同じなので、静観するしかないんです。そして、ことが起きたら「ほーれみたことか!」と言います。テンプレートのお悔やみの言葉など言いません。

盛土規制法の3次元解析(8)地下水位の低下は滑動崩落防止に寄与しない

理屈の片押しはたいていとんでもない間違いを引き起こします。実現象や実測値計測で筋道を外れないようにすることが大事です。

また、災害は予防してナンボなので、対策工を考えることが最も重要です。

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いま国から出されている滑動崩落防止工法は、公共事業の地滑り対策工法の丸写しです。何の捻りもありません。公共事業の地すべり対策は、どんどん工事規模を大きくすることに邁進してきました。地すべりや崩壊を防止することから、建設業界発展促進助成事業化していきました。

経済は無駄遣いが回す、というのも一面の真理なのですべてを否定したりしませんが、一品豪華主義的対策工法の固定化は、個人が自費で対策する道を閉ざしました技術者が知恵を出さなくなる弊害も生まれました。

もともと私は滑動崩落防止対策が公共事業化されるとは夢にも思っていなかったので(個人資産に税金は入れないというのは阪神・淡路大震災を経ても変わらない国の哲学だったからです)、個人、と言っても資産家レベルですけど、が対策できる方法論を考える必要がありました。

2006年の改正宅造法では、盛土所有者は加害者、下流域に住む人が被害者の位置づけです。加害者を守る必要はありませんでした。だから盛土所有者に工事の費用負担を課しているのです。国が出している対策も、待ち受け型の対策が多いので、下流域の住民を安全にして、盛土所有者の家は盛土の変形によって壊れてもいい、ということのようです(たぶん対策マニュアルを作った人たちは所有者の盛り土にも効くと思ってるんでしょうけど)。

しかし民間ビジネスとしては、そうはいきません。

盛土所有者の資産家に利益がないとダメなんです。加害者を守る(当然被害者も守る)工法が必要でした。お金は資産家から出るんですから。

幅/深さ比を改善して側面抵抗を活用して、滑動も変形も許さない工法がまず頭に浮かびました。2002年〜2005年ごろに特許申請し、権利取得しました。今年の暮れでその系統の初期の特許はすべて特許権が切れるはずです。活用された例はほとんどありません。でも知財権ってそんなものです。大半は金食い虫です。

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2011年に東日本大震災が起き、白石市緑が丘で、滑動崩落がひどく発生した個所と、まったく発生しなかった箇所がコントラストよくあらわれました。ここに大きなヒントがありました。

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ここは1978年の宮城県沖地震で大きな滑動崩落が起きた場所です。もともと宅造目的だったのですが、用途変更して公園になりました。賢明な選択でした。対策工として2基の集水井が創られました。当初上図のような集水ボーリングエリアがあると思っていましたが、後述するように向かって左の集水井は違いました。

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2011年3月11日の東日本大震災で、この公園には再び滑動崩落が発生しました。ただし、全体に発生したのではなく、集水井からの集水管が伸びている区間のみは、滑動崩落を免れました。その上側も下側も大きく変動したのにもかかわらず、です。

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昨年(2024年9月)に仙台市で日本地すべり学会全国大会があり、そのついでに白石市緑が丘の中央集水井を見に行きました。径が2mと小さいので、どういう集水井だろうか?と思ったからです。てっぺんのエキスパンドメタルの隙間からリコーの360°カメラを下ろして撮影しました。そこにあったのは、「暗渠管」でした。集水ボーリングはされていませんでした。

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1978年当時のスケッチが当時調査した地質学者さんの書籍の中にあったので、写真と重ね合わせたものが上図です。

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中央集水井の位置は、盛土がすべて移動して地山が露出しているようです。地山が出ているところを盛土で埋めてから集水ボーリングするのはお金の無駄ですから、暗渠管を配置して埋めたのです。これだと集水井内にボーリングマシンを入れる必要が無いので、径2mの小さなもので良かったわけですね。

動いていないのは、集水ボーリング管、暗渠管が敷設されている場所だけです。それ以外は変動しています。

このことは示唆に富みます。

地下水位の低下は滑動崩落の防止に寄与しないということです。変動防止に寄与するのは「過剰間隙水圧の消散」のみです。過剰間隙水圧が消散するためには、圧力を逃がす場所との距離=排水距離が問題です。圧密沈下でも排水距離が問題になりますし、液状化防止のグラベルパイルも然りです。過剰間隙水圧は「距離」がキーワードです。

近くに「機能する排水管がある場所だけ」は過剰間隙水圧の発生が不十分となり滑動崩落が起きない、ということです。

盛土規制法の3次元解析(7)滑動崩落の原理

滑動崩落の原因は過剰間隙水圧です。わざわざ法面などの急こう配の場所ではなく、一番緩い場所、それも5度前後のチョー緩い場所で滑るのは、特別の理由がなければいけません。

盛土と地山の非常に緩い勾配の場所が滑るためには、どのような過剰間隙水圧が、どのような場所に発生しないといけないでしょうか?

サウンディング結果などから地山との境界近くで、Nd値がゼロに近づくので、地中侵食部だということはわかるのですが、なかなか肉眼で見ることができません。長い間、想像の世界でした。

豪雨で崩壊した盛土で、「その場所」が肉眼で見えました。釜井先生が撮影された写真です。地山との境界部に空洞が連続して発達しています。ソイルパイプです。これは豪雨時の崩壊なので、この空洞の排水能力を上回る地下水の供給があって過剰間隙水圧が発生したのですが、地震時にはこの空洞が潰れて過剰間隙水圧が発生します。

この写真は『盛り土等防災マニュアルの解説』にも掲載されています。

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過剰間隙水圧が発生すると、抵抗強度はゼロになりますね。水の上に浮いた状態になるのでね。だからわざわざ一番低角度の場所をすべり面にするんです。過剰間隙水圧を考慮しなければ法面に最小安全率の滑りが出ます。わざわざ低角度の場所にそんなものが出るはずありません。

過剰間隙水圧を無視したがってる宅地盛土の方々は、国交省都市局を筆頭に、いまだにそのことを理解しようとされません。もう過去の経緯などから宗旨替えできないようになってしまっているようです。

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それでも、宅地盛土以外の人たちや、高速道路を建設するネクスコなどは、過剰間隙水圧が犯人だとわかっています。だから『盛土等防災マニュアルの解説』では、液状化ではなく、過剰間隙水圧に着目してFL値が1未満でも=液状化しない判定でも、過剰間隙水圧比を考慮する方法論が紹介されています。

ここまでは譲歩せざるを得なかったってことです。ただし、これはできるだけ盛土の中心部のサンプルを取り高いFL値を出すことによって回避できますから、実際には使われないでしょう。

地震時に過剰間隙水圧が発生するのは、上の写真のような空洞部なので、サンプリング自体ができない場所です。サンプルがないのでFL値も出せません。

統計解析からしか過剰間隙水圧を求める方法はないのです。

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地中の空洞が地震時に潰れて過剰間隙水圧を発生させ大崩壊を起こす事例は、盛土だけでなく地山にも起きるようです。2004年の中越地震では、下のような大崩壊が起きましたが、直径2mの水圧による爆裂口がすべり面の奥にありました。これは過剰間隙水圧でできるものです。

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『盛土等防災マニュアルの解説』で、少しだけ前進したことがあります。

1)盛土内の地下水は完全に排除するのが原則。盛土に地下水があったらそれは施工不良で仕様を満たしていない!

2)施工時の仮説排水を暗渠排水管に接合するな!別系統にしろ!

ただし、新設盛土に限っての話です。さらに、渓流盛り土では、地下水の存在を許容しています。出来ないことが明白と感じたのでしょう。

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既存の盛土は、変動予測ガイドラインのままです。過剰間隙水圧も考慮しないし、二次元解析のままです。すべての盛土に滑動崩落は起きません。稀に法面の急傾斜部に基準値を満たさないものが出てきて(これは滑動崩落ではありません。ボロ盛り土の不安定化です)、アンカー工でもするのでしょう。

滑動崩落に対しては当然無対策です。危険なすべりとして抽出されないのだから対策するわけないですね。だから、常に仁川百合野町のような加害者になる可能性が盛土所有者には残ることになります。

スクリーニング済みの安全判定された危険盛り土は、その後堂々と都市の中に残るので、前より危険です。そのことに気がついてるのかどうかわかりませんが、言い訳のための「経過観察」に一定量を回すようです。

市民から相談を受けると、私は、国や自治体が安全だと評価している間に、高値で売り抜けちゃいなさいよ!いまなら合法だし、行政が「危険性無し」と言ってるんだから後ろ指さされることもないでしょう。とアドバイスします。次に買う人が確実にババ引きますけどね。 

盛土規制法の3次元解析(6)閑話休題「守秘義務ロンダリング」

私が「守秘義務ロンダリング」の情報公開請求に夢中になっているのは、2006年の苦々しい思い出があるからです。

2005年に国交省の現在の都市局の担当者(S氏とH氏)から依頼されて側方抵抗モデルを完成させたのですが、「これを学会発表したいと考えていますがよろしいですか?」と尋ねた時のH氏の反応をよく覚えています。

H氏は「えっ何言ってるのですか?あなたが発想してあなたが創った方法をあなたが学会発表するのに、なんで私の許可が必要なのですか?もちろん自由に発表していただいて結構ですよ」と言われました。非常に心強く思いました。

2006年3月末に全会一致で改正宅造法が成立し、担当者がH氏からM氏に交代し、同じことを言ったら今度は「国が金を出した仕事なので勝手に発表されては困ります」と全く逆の対応でした。今思えば、そのときには、側方抵抗モデル(簡易三次元モデル)は現象を再現できるが、二次元解析では全く信ぴょう性がないと書かれた報告を世間一般に出されたくなかったのだと思います。

すなわち、M氏とガイドラインを作ったF氏の間で、「過剰間隙水圧を考慮せず従来の二次元解析手法でガイドラインを作る」という約束ができていて、「あの報告書は決して表に出すな」という合意ができていたということです。

2006年の法改正が終わってから15年くらい経過してから情報公開請求しました。普通、古い報告書は処分され存在しなくなっていることが多いのですが、ありました。事情通によれば、法改正に使った報告書は破棄しないのが通例なのだそうです。

そのおかげで、法改正時の報告書の内容と、盛土変動予測ガイドラインが、真逆のことが書かれているということを、守秘義務フリーで公開することができるわけです。

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「守秘義務ロンダリング」は使えますよ。情報公開法、正しくは行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)ができたのは1999年です。2006年の法改正時には使えたのですが、現役の時には使いにくかったです。受注産業の発注者に対する忖度ですね。

報告書の控えを持っているのでいいや、、、と思っていたこともあります。でもそれは守秘義務を楯にして公開を阻まれます。情報公開請求すれば公開してはいけない部分は黒塗りされます。逆に言えば、塗られていない部分は、全面的に公開してよい=守秘義務は掛かっていないということです。

引退したら、発注者への忖度も同時に引退したようで、守秘義務を外したい情報があったら、すぐに公開請求するようになりました。日本の法律で、これが一番いいです。
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実はこの情報公開では興味深いことがありました。

上記の表には、2次元安定解析は「地震時安全率の信ぴょう性は極めて低い」と書かれていますが、情報公開されてきた報告書の記載は、マイルドな表現になっていました。

上記の表は、日本地すべり学会の委員会の委員に配られた最終報告書原稿です。実際に提出されたものは、「信憑性」という言葉が削られていました。念の為、日本地すべり学会事務局に保管されていた報告書を確認したら情報公開されたものと同じでしたから、学会から提出時に誰かがマイルドな表現にしたわけです。

それが誰なのかは、結局わかりませんでした。内容は同じなので、たいした問題ではないのですが・・・。

「ずっと二次元安定解析で指導してきたのに、いまさら三次元法でないと解けないといったら大混乱が起きる」と土木研究所あたりの力の強い人に強く当たられていたということも聞いていましたので、わざわざ彼らとケンカしたくないためにマイルドにしたのではないかと想像しています。

あるいは、盛土変動予測ガイドラインに二次元法を使うと決めていたので、きつい表現を避けたのでしょうか?でもそれは辻褄があいません。日本地すべり学会の報告書が納品されたのは、ガイドラインを出鱈目にした人たちがまだいない時期だからです。たぶん、無駄なケンカをしたくなかったからでしょう。

今日は仕事に対する考え方が変わった「非特定記念日」

6月15日は私が社長をしていた時代に、ビジネスの方向性を変化させるきっかけとなった「非特定通知」をもらった記念日です。

私自身は非常に達成困難な技術提案条件に対し、世界で唯一実現していた工法をニュージーランドに見つけ、それを計画した大学の先生と連絡を取り合って、「それ以外の方法はないだろう」というところまで詰めて提出したので、特定されないとは夢にも思っていませんでした。

特定されたらすぐにニュージーランドのその先生のところに飛んで行って、詳細な打ち合わせをする予定まで立てていました。社員の中でパスポートを持っていない人には取得させました。

なぜそこまで特定されることに確信があったかというと、対策困難な事案だったので、3社特定という異例の方法がとられていたからです。技術基準べったりの提案が最低一つは特定されるのはわかっていましたが、そんなので実現できるなら世話ないわ・・・というプロポ案件でした。少なくとも2件、どんなに保守的でも1件は斬新なアイデアが特定されると思っていました。

特定の予定期日が何度も延期され、半年間業務受注をストップせざるを得なくなりました。平成16年度は年の半分しか仕事をしませんでした。そして、30年ちょっと会社をやってきて、その年度だけが赤字になりました。大概大きな赤字額でした。

いまでも、特定されなかったことに対してまったく納得していませんが、結局のところ、選ぶ側のレベルの問題もあったのだと思います。当然業界に染み付いた癒着もあったのでしょう。結局、陳腐な案だけが特定されましたので・・・。それらの資料も、ぜんぶ額に入れての飾ってあります。いつでも開けて見られるように。ただ、現役を終えたので、A3版からA4版にダウンサイジングしました。

最終的に特定された1案についても、その後、当初の厳しい制約条件はどんどん緩められて、工費も工期も、最初の話とは全然違う余裕のあるものになりました。なんじゃそりゃ!でした。結局、最初の条件を満たせるのは太田ジオ案だけだったと今でも思っています。

まず、平成16年6月15日付の「非特定通知書」がきました。そして5日以内に書面で非特定通知の説明を受けられると書かれていたので、翌日書面で提出しました。「平成16年6月16日に請求のあった」と書かれているので、会社に非特定通知書が到着した、その日のうちに出したのでしょう。

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ほどなくして呼び出しがあって、担当者と面談していろいろ話しました。結局「非特定理由説明書」として文書で出せるものは、しょうもないことしか書かれないよ、、、書面がいらないということであれば、内情を詳しく話してもいいよということを言われた記憶があります。
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私は、このプロポの3年前、近畿農政局の非指名通知の説明要求に行っています。ボーリング、弾性波探査、岩石試験を全部外注するよ、と書いて応募したのです。受注すれば当然そうなるし、、、受注できると思っていたわけではないですが、、、応募している大手中堅のコンサルだって、結局全部外注になることはわかっていました。同業者だからね。

平成16年の担当の方は、この話をHPを見て知っておられたようです。好意を持ってもらっていました。「あれ(農水省の対応)は酷いですねぇ」と言っていましたから。でも自分がその立場になると、この時よりはマシでしたが、それでも「文書にすると意味のないものになるよ」と文書を出すのを拒んできました。

内情を聴くのと、形式的な文書をもらうのの二者択一を迫られたわけですが、、、私は結果が変わらないのだから「証拠が欲しい」と思って、文書を選択しました。「内情」もそれなりに想像はできましたし。

届いた「非特定理由説明書」の中身は、どうでもいいことしか書かれていませんが、「どうでもいいことを書いて文書を発行した」という実績はできたわけです。これまで文書を出してたかどうかわからない「非特定理由説明書」を文書で出した「実績」ができたわけですね。農水省は出してくれませんでしたが、国交省は文書で出してくれました。

このやり取りの文書は、送られてきた封筒も含めて、ずっと額に飾って見えるところに置いています。私にとっての「しかみ像」なんです(しかみ像の意味が最近見直されたようです。ここで言っているのは古い俗説の方です)。

これを見るたびに、ハラワタが煮えくり返ってエネルギーが湧いてきました。(実は今でもハラワタが煮えくり返ります。そういう偶像を与えてもらえたのだから、「文書」の選択で正解でした)

農水省の事例は、下にあります。実名入りの詳細な文書記録も残してあります。こちらはもともと受注意欲があったわけではなかった(どのコンサルも外注している業務について「外注ダメ」という言質がとりたかっただけ)ので、それほどハラワタは煮えくり返りません。そうはいっても、その後も1ミリの改善もありませんでしたけどね。

総論賛成、各論妨害(1)平成生まれが悪弊を引き継ぐ

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建設コンサルタント業界で起業した私は、新規参入者が排除される根本原因は、「再委託の禁止の見て見ぬ振り」だと確信しました。天下りを受け入れている会社には見て見ぬ振りなのですが、受け入れない弱小起業や新規参入者には「ルールを盾に排除する」というダブルスタンダードでした。やることが小さいです。

21世紀になったらそういう悪習もなくなるだろうと予想して起業したわけですが、全く改善される気配がないので2001年に近畿農政局であった公募型入札に参加しました。大きな仕事だったので、太田ジオが指名される可能性はゼロだったので、むしろリトマス試験紙として適していました。

太)再委託業務の許容範囲はどうなっていますか。オペレータはいいのですか。ほとんどの会社が弾性波探査や岩石試験も外注しているのが実状です。

●)実際再委託先のところにボーリングを書かれている会社がありましたが,そこに尋ねたら,管理者は社員で出しますと確認しています。

太)管理者というのは現場管理する人のことですか。オペレータはいいのですか。オペレータも技術者です。

●)マシンを借りるだけならいいんです。オペレータは・・・オペレータはだめでしょ

→皆さん、知ってました?ボーリングでオペレータを外注するのは、農水省の見解では、再委託申請を出してもダメ、契約不履行なんですよ!地質調査業務だと、地質調査が「主たる業務」だからですね。
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今日が記念日になった平成16年の仕事で、私は公共事業から心が遠のきました。そして、それ以降は、どこからであっても、声がかかった順番に仕事を請けることにしました。仕事の種類は問いませんでした。大物釣りは金輪際考えない、と決めました。

標準歩掛があるような、コンサルタントがやるまでもないような陳腐な仕事など、銭のため以外の目的では請けない。請けたら割り切って公的技術基準書通りにさっさと超スピードでやる、と心の整理がついた事件でした。

2004年の春から初夏にかけての出来事です。21年前のことですね。私が40代半ばのころです。

その年の秋、10月末に新潟県中越地震が起きました。そして、宅地盛土の滑動崩落がたくさん発生し、他に映すものが無いので、TVが連日それを流しました。長岡市高町団地の滑動崩落です。

その地震の数年前から、盛土の地震時地すべりの存在を役所から発信してもらうように行政機関にお願いしに行脚していました。霞が関の内閣府防災担当にも行きました。山本繁太郎政策統括官(当時)にお会いして説明し、担当者として紹介されたのが渋谷和久でした。2003年か、2004年ごろの話です。

渋谷氏に話をした、まさにその「盛土の地震時地すべり」が2004年10月に起きました。非特定通知を受けた4か月後です。新潟県中越地震です。中越地震の現場に行っている時に、渋谷氏から盛土地すべりの様子を教えてほしいと電話が入りました。関心を持たれていたわけです。

翌年、渋谷氏が国交省に戻られ、宅造法を改正するので手伝ってほしいといわれました。民間宅地盛土の耐震化事業をつくるための法改正をするのだ、とのことでした。渋谷氏が国交省に呼び戻されたのは、宅造法改正目的ではなく、都市三法(都市計画法、中心市街地活性化法、大規模小売店舗立地法)のためだったはずですが、澁谷氏はスーパーマンだったのでもう一つの法改正にも取り組まれたわけです。

(山本政策統括官は住宅局長で国交省に戻ってきておられました。良くしていただきましたが、姉歯事件が起きてからは大変そうでした)

2004(平成16)年は、このプロポの非特定のせいで仕事を半年しませんでしたが、この盛土の地震時地すべり関係でかなり動きました。当時は民間ビジネス化を目論んでいたのです。暇を持て余していたわけではありませんでした。逆に、特定されていたら盛土にこれほど深く関われなかったでしょう。

翌2005年は初夏のころから、宅造法改正にむけて国交省とやり取りしていましたから、大忙しでした。連日朝方まで資料作りをしていました。「滑動崩落」に私がめっちゃ詳しいのは、1990年代後半から掛けた時間が半端なく多いからです。(技術マニュアルで仕事する人は、準備時間ゼロですからね。話が合うはずありません)

2006年に宅造法が全会一致で可決成立し、2007年にこの世のものとは思えない仰天の最悪ガイドラインができて、、、その過程をつぶさに知っている私に、防災に関して国を信用しろというのは無理です。

とはいえ、この最悪ガイドラインができなければ、私は盛土問題にこれほど長い間関わることは無かったでしょう。良いガイドラインなら、短い時間で問題が解決するからです。

人間万事塞翁が馬、、、ですなぁ。
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この非特定事件で2004年に仕事のやり方の方向性を変えたおかげで、知財権取得にも目覚め、個人、民間業務にも積極的に動き、裁判案件にも今までより積極的にかかわりはじめ、メーカーとのタイアップも積極的にやり、、、「その他大勢」の建設コンサルと違う道を目指し始めました。。。とさ。

業界内や役所との「調整」とは完全に縁を切りました。そういう心境になると、以前にも増してストレスが無くなり、いい感じでした。

やってこれたのは、あの毎日目にする「非特定理由説明書」が私のエネルギーを引き出し続けてくれたからです。おかげさまで楽しいビジネスマン人生になりました。
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半年ほど前に、技術士会の仕事で国交省を訪れた時、偉くなったこの時の担当者が会議に出てこられました。他の出席者には挨拶(名刺交換)しましたが、この人には挨拶しませんでした(個人的な恨みがあるわけではないですけど。。。むしろ良くしていただいたと思ってますけど)。挨拶したら、思い出してハラワタが煮えくり返ると思いましたので。。。私は相当根に持つ性格のようです。
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