ぼちぼちと2

     生活や人生設計に間接的にかかわる防災や地球科学のおはなし

     ・・・でも毒にも薬にもならないお話が中心です。通勤途上の暇つぶしにご利用ください。

     『唯一生き残るのは変化できる者である』 チャールズ・ダーウィン

地質リスクの共有

おそらく、全地連などの陳情の成果が上がったのだと思います。

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3者会議に地質技術者/リスク情報の共有徹底/国交省 直轄事業で試行開始2017-04-10
国土交通省は、2017年度から発注者と設計業務の受託者(設計者)が行う合同での現地踏査や、施工者を交えた3者会議に地質技術者を参画させる取り組みを試行する。地質調査で明らかになった地盤に起因するリスクを設計業務に的確に反映させることが狙い。より上流の段階から関係者間の情報共有を徹底することで、設計業務におけるミスや施工段階での手戻りを防ぐ。
3sya15
 
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これは、とても良い方向に全体が動く可能性を感じることができて良いと思います。

1.施工者は、工事で予想が外れるとマズイ場所はわかるので、その場所の地質の推定の確実性について地質屋に聞いたら良いです。地質図や地質断面図になってしまうと、「推定の曖昧さ」の情報が消えてしまいます。これを確認することはとても意味があります。

2.推定の曖昧さは、実際に山を歩いて地質図を書いた人しかわかりません。「名ばかり地質屋(外注に歩かせた人)」には対応できなくなります。正常化への確かな一歩になるでしょう。

3.結果が地質屋にフィードバックされます。推定は「当たったか、外れたか」の答え合わせをして確度が磨かれます。これまでは、報告書の書きっぱなしということが多かったと思います。良く外れるから、設計者は頭から信用しないで、基準の標準値を使うし、施工者は独自に調査していました。

4.「地質リスク」についての知見が深まると思います。地質調査業界が「地質リスク」という時、えてして「ボーリングの数が少ないと地質の推定が曖昧になります」というバカみたいな説明をしていました。「何本なら良いんだ?」と返されると答えられませんでした。明確なあいまいさの指標が必要になります。

地球統計学では、推定の「確からしさ」や「不確からしさ」を確率で表現できます。確率の良いところは、期待値が計算できることです。確実性が小さくても、それで発生する手戻りが小さければ、無視しても良いという答えになることもあるでしょう。

逆に、確実性はとても高いが、絶対確実とまでは行かず、その影響が安全性や工期・工費に莫大な影響を与える、となれば「確度をあげられる場所」に追加調査を行う判断ができます(EVSはその場所を計算から導けます)。
risuku11
 

これまで地質屋は「勘」で対処してきました。理学的知識と経験に基づく「勘」なので、「当てずっぽう」とはかなり違います。でも、だからといって地質の素人が「勘」に納得するわけではありません。

勘と計算をミックスさせる必要があります。最低限、悲観的マップと楽観的マップくらいは作って説明する必要があるでしょう。
tityuunoniji12
 

地質調査業界が「ボーリング屋」から脱却する必要があるということです。

新入社員の方々へのツイッター

年度が明けたら、新入社員へのアドバイスのようなツイートがちらほら見えるようになりました。
sinjin22

(1)「あなたのためだから」と怒鳴る人が現れますが、全部自分のためですから、ご用心
→環境や防災でも、「孫・子のために・・・」と前置きする人が必ずいますが、それは自分が非難されたくないから、非難できない孫・子をダシにしているだけです。このセリフを吐く人は、「超」自分のための人ですからご用心。あなたのため・孫子のためというセリフが出てきたら、嘘つきと思って間違いありません。
→ビジネスでは「チームだから」「組織だから」という人も要注意です。あなたの情報は私のもの、私の情報は私だけのもの、という人が良く使うセリフです。 

(2)上から目線のおじさんたちは、自分の人生を肯定して心の平安をとろうと必死です。上手に付き合ってください。
→内容は無視して良いので、暖かく見守ってください。可哀想なおじさまたちなのです。害は少ないですから・・・。

(3)怒鳴る人(臆病を隠す人)も、自分の人生の肯定と、自分へ服従しないなら潰してやるという意思表示ですが、こちらは有害なのできちんと反論してください。放置すると長期にわたり困ることになります。穏やかに反論するなら「詳しく聞かせてください」と言えばいいです。なんにも答えがありませんから。どうしても直らないなら、経営者に直談判です。合理的な経営者であれば、残り時間が長い方を選択しますから。
新入社員の壊し方(心の声)
・怒鳴る・・・(将来の脅威は早めに潰す。いやなら服従せよ。)
・他の社員達の前で説教・・・(将来の脅威は早めに潰す。いやなら服従せよ。)
・全ての失敗をやる気の問題にする・・・(将来の脅威は早めに潰す。いやなら服従せよ。)
・他の優秀な新人と比べる・・・(将来の脅威は早めに潰す。いやなら服従せよ。)
・同じことを何度も言わせるなと怒る・・・(将来の脅威は早めに潰す。いやなら服従せよ。)
・反論も言い訳もさせない、口ごたえと見なす・・・(将来の脅威は早めに潰す。いやなら服従せよ。)
・お前はこのままだといずれ潰れる等と予言・・・(将来の脅威は早めに潰す。いやなら服従せよ。)
・良い職場だと信じ込ませる(→ダメなのはお前) ・・・(将来の脅威は早めに潰す。いやなら服従せよ。)

皆、半径2mほどの世界でしか生きていないし、自分のためにしか生きていません。人間をあまり買いかぶってはいけません。たいした人などいません。

希に、半径が広くアフリカの困った人たちのために一生を捧げる偉人もいますが、こういうのは例外です。ただ、「自分のため」ということだけは共通しています。

人は自分のために生きています。外見上、人のために生きているようでも、本当は自分のためです。「自分のためにやってます」とさらりと言える人は信用に値します。It's  my pleasure 、ですから。

現場実装の障壁取り除く(3)3次元安定解析もお願いします!

地すべりは窮屈な動きです。窮屈だからこそ、長い時間をかけても斜面にとどまり続けています。

地すべりは力学的バランスです。計算で安定度が出せる問題です。でも2次元解析だと100万年たっても計算できません。原理的に無理だからです。

地すべりは、とても滑りやすい「すべり面」と、その動きを妨げる周縁部摩擦のバランスで成り立っています。3次元解析だと容易に計算できます。

ところが、「基準」が、2次元解析(それも簡便法に限る。林野庁は除く)の逆算法と計画安全率との組合せで成り立っていますので、3次元解析は全く使われません。

順算法で計算できないものに、技術の発展はありえません。

技術の発展は、効率的な対策工、経済的な対策工を発想可能にします。

逆算法は、対策設計量(規模)を計算することしかできず、効率的な対策工が選択できないので、高価な抑止工中心になります。予算に窮してくると、放置するしか手がなくなります。それが現状です。
jigyouhi10

3次元安定解析は、滑りやすい滑り面と、滑りにくい周縁部と、水圧のバランスを順算で計算します。滑り面を滑りにくくする、周縁部の抵抗力をさらにあげる、水圧を下げる、というバランス改善方法があります(滑動力を減らすもあります)。どの方法、どの組み合わせ比率が効果的かを検討することができます。

ただ一つ大きな問題があります。計画安全率1.2が使えないことです。1.2は、2次元解析+逆算法(簡便法)の組み合わせで作られた経験法なので、条件が異なれば使える道理がありません。

今更新しい3次元安定解析用の計画安全率を作るのは馬鹿げていますので、土質強度や、水圧変化のバラツキを考慮した確率計算を行い、安全率1.0 を下回らないようにする、というのが最も論理的です。1.0だけは議論する必要のない目標数値です。2次元法は、地すべりでは順算できないので(周縁部摩擦の影響力が大きいからです。その影響が小さい表層崩壊ならほぼ順算可能です)、1.0の議論にならなかったのです。

現場実装の障壁取り除く(2)EVSもお願いします!

当社はEVSを地すべり地の地盤と構造物の3次元化に使う目的で導入しました。いま流行りのCIMの先取りと言えると思います。2000年前後のことです。

あと数年すれば、地盤も3次元化の時代になるだろうと当時思っていましたが、20年近く経って、ようやくCIMという言葉が流行り始めた程度なので、これも「社会実装が遅い」代表格です。

もともとEVSは、土壌・地下水汚染に用いるツールで、主にアメリカで使われていたソフトです。
toyosu_sontaku7

土壌汚染をやっている会社に営業に行ったところ、最初はまたソフトの営業かいな・・・的な態度だった方が、絵を見るなり「欲しい〜」に変わったのを今でも良く覚えています。

そして、ある有名な汚染現場の3次元汚染分布図を作成したところ、「素晴らしい!委員会に出す」と喜ばれました。結果的にその絵は「生々しすぎてとても公表できない」という名誉ある理由(?)で没になりました。

東京都知事が小池氏に変わってから、豊洲汚染がクローズアップされました。東京都は、データを十分公開していましたので、それで3次元汚染分布図を作成しました。豊洲の問題解決の目的ではなく、あくまでもEVSの宣伝目的で作成したものです。

昨年11月ごろの地質リスク学会の口頭発表にもエントリーしていたのですが、講演要旨を送ったところ直前でリジェクトされ、発表できませんでした。下記がそのリジェクトされたものです。

すべて公開データで作成したものですし、豊洲問題は地質リスクそのものなのですが・・・。リジェクト理由はわかりません。「忖度」されたのでしょうか?

EVSを用いた土壌汚染3次元モデルの有効性 〜ゼロリスクを目指した豊洲新市場を例にして〜
有限会社太田ジオリサーチ 川浪 聖志、林 義隆、太田 英将

私の知人で、土壌汚染をやっている人に、「汚染は人工的なものなので、地質のルールは通用しないから3次元的な分布を推定しないと何も始まらないはずなのに、なぜ土壌汚染やっている人たちは、いまだに2次元断面と平面でやってるの?」と聞いてみました。

「土壌汚染は金が安いので、そんな高価なソフトが買えないからだ」が答えでした。

2次元図面と土壌汚染防止法のメッシュ調査で浄化工事を始めると、浄化が予定通り行かず工期も費用も大幅に増加することは、EVSでちょっとシミュレーションすればわかります。その費用はケチらないのに、僅かなソフトの費用はケチる・・・。まったくソロバンに合わない行為ではあるのですが、なぜかいまだにそうです。

なにか、ここにも「現場実装の障壁」があるようです。豊洲で懲りて、3次元分布を表示するのを常識化してほしいと思います。

現場実装の障壁取り除く(1)LPDもお願いします!

こういう記事が出ていました。

「新技術の活用−現場実装の障壁取り除く」
LPD3

LPD工法は、堤防の浸透破壊防止のための通年施工でき、簡易で安価な工法です。
LPD4

2006年頃発案し、実験を重ね、堤防土質に詳しい宇野尚雄先生にも相談し、2011年には中部地整の河川で施工しました。その後出水時に法尻の地下水位が想定よりも低下していることも実測により確認されています。

河川堤防に関わるコンサルの方々も、その有用性は認めており、設計折込までは行くようになったのですが、最後の最後で「実績がない」の一言でお釈迦になるということが連続で続いています。(担当者の声は「上からの指示だとやりやすいが、自分が判断して決めたというのは怖い」ということのようです)

役に立つことが明らかになっているのに「現場実装」できない技術というのは、LPD以外にもたくさんあるのだろうと想像します。

建設コンサルタントは、ある分野に関して一生を通じて仕事をしているので知識が深くなります。河川堤防は、行政以外の民間分野が無い仕事なので、行政担当者に論理的に理解してもらうことが不可欠なのですが、いろいろな「障壁」があるようです。

新聞記事に書かれているLPD工法の利点を列挙してみます。(この新聞記事が出た2日後に東日本大震災があったのですね。新聞発表のタイミングが悪かったかもしれません)

1.地域の建設業者でも容易に施工できる。(従来のドレーン工法のような大型機械は不要)

2.掘削を行わないので、従来のドレーン工法のように堤体の地盤を緩めることがない。

3.従来のドレーン工法は渇水期しか施工できなかったが、掘削を伴わないパイプドレーン工法の場合、出水期の施工も可能。

4.パイプの内側に交換可能なフィルターが入っているので、定期的にメンテナンスが可能(従来のドレーン工法は埋殺しフィルターなので目詰まりしたら再構築)。

5.従来のドレーン工法に比べ工期とコストの大幅削減が期待できる(コストは3割から5割程度安くできる・・・実際はもっとです。安すぎるのは不都合、ということがあるでしょうか?)。
LPD5

新聞記事にあるように、 「新技術の開発者側には、現場実装までに手間がかかるという抵抗感があり、現場のニーズと開発者のシーズがうまくマッチングできていない」と思います。LPD工法は、10年以上経過していますが、まだ「現場実装」できていません。

自分が最初に採用する責任を負いたくない、、、気持ちはわかりますが、国民の利益になりません。安全と公的資金(納税者のお金)の話ですから。

技術士資格が業務独占になり、論理的な説明を技術士自らが行い、結果責任も担うということになれば、担当者が責任を負うリスクがなくなります。一番わかっている人が判断を下すということにしなければいわゆる「スピード感」は出ません。

片田先生の「率先避難者になれ」と同様に「率先採用者になれ」といくら言っても難しいと思います。 
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LPD裏話

LPDをKK事務所でNETIS登録しようとしたところ、順調にいっていたのに、最後の有識者ヒアリングでまさかの拒絶。NETISは良し悪しを判定するのではなく、登録要件が整っているかどうかの判定なので、担当者も「こんなの初めてです。申し訳ない。どうしようもないんです」とのことでした。 

時は淀川流域委員会真っ盛り(ダムか堤防整備か)。委員の先生のどなたかにとってLPDは都合の悪い工法だったようです。逆に値打ちが実感できましたが。権威って本当に邪魔ですね。

LPDは単独登録できませんでしたが、排水補強パイプ(PDR)の用途拡張でNETIS登録できています。堤防が政治問題化していたKK地区ではなくKT地区で登録されています。そもそもLPDは、わたしの発案ではなく、KT地区の河川行政担当者からの「やってみませんか」で始まっているので、KT地区では拒絶されませんでした。
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