ぼちぼちと2

   生活や人生設計に間接的にかかわる防災や地球科学のおはなし

     ・・・でも毒にも薬にもならないお話が中心です

設計手法の独り歩き

グラウンドアンカーを法枠工の交点に打設することは多いですが、梁として計算すると「仮定したとき」、端部は張出し梁構造となるため、他の場所で計算した梁構造では破壊されることになります。このため、現在は会計検査をパスするために、張出し長とそれ以外の梁を「縁切り」することになっています。

質問12.52頁 6.5.5抑止工を併用した場合の端部構造について
http://www.norimen.or.jp/teisei_q-a/1qa-1.html#q11
”このように、周辺枠を設置する必要のある場合は、グラウンドアンカーの支承構造物として用いる部分と、周辺枠を縁切りし、別構造として下さい。”

昔の法枠は、一体構造であることが重要であると考え、こういった場合にも縁切りはしませんでした。また、荷重の小さいロックボルト工では、計算自体方法自体は同じですが、縁切りをしなくてもよいということになっています。

玉虫色、グレーな決着となっています。現実主義的なので「工学的」とも言えるかもしれません。

engiri02実際、張出しを考慮せずに「計算上持たない」梁はどうなっているのでしょうか?少なくとも私は折れた法枠を見たことはありません。

逆に、張出しを考慮して縁切りした法枠はどうなっているでしょうか?特にアンカーが施工されている下側の梁(すなわちアンカーなし)が心配です。鉄筋による滑り止め以外に何もない重たいものが、斜面に貼り付けてあるだけですから、下にずり落ちたくなるでしょう。で、、、実際にもそうなります。

「梁で計算すると仮定した便宜上の計算」を重んじて、縁切りをし、実際に施工したらずれちゃった、というのを善しとするようになっています。基準通りに設計すれば山が崩れても良い、という方法論なので違和感があります。

同様の違和感を感じられる発注者もおられるようで、「法枠はややこしいので、独立受圧板にしてくれ」と小声で言われる人もいます。私も同じで、できるだけ独立受圧板を使うようにしています。本当は、面で抑える法枠工も悪くないのですが。。。

悪影響の無いものならまだしも、机上の設計法の矛盾を回避するためには、施工された構造物はどうでもよいというのは、設計手法の独り歩きの悪い例のような気がします。

実は、この縁切り問題には古くから斜面対策をやっていた人たちは、強く抵抗していました。ところが、バブルがはじけて、それまで開発関係を担当していた基準・指針を強く意識する癖のついた技術者が斜面防災部門に参入するようになって、こんなことになってしまいました。悪化は良貨を駆逐する、的な感じです。彼らは、土がコンクリートや鉄と同様に均質な規格品だと思っているのでこんなことになってしまうのです。

Made in Tokyoのノート Vol.50

madeintokyo大学卒業以来、大きく言えば同じ仕事を30年近くやっています。そして、その仕事の雑多な記録は、大学ノートに時系列で綴ってあります。厚手のノートを使いますが、いま使っているA4版100枚綴りのものを一番長く使っています。

以前は東急ハンズでしか売っていなかった200枚綴りのものも使っていましたが、紙をぺたぺた貼ってスクラップブック状態になることが多いので、200枚綴りだと重くて後半大変になります。

今使っていたのが終わったので、新しいノートを出しました。第50巻です。といっても私はナンバリングを11番から始めるので、40冊目です。11番からナンバリングするのは、桁数を2桁にするためです。20代中ごろに11番をつくりました。25年以上の記録が40冊弱のノートに時系列で残っています。

野帳や別の小さなノートや、メールで送られてきたもののうち、大事だと思うものはコピーをとったりプリントアウトしたものを貼っておくわけです。検索は、「いつ頃」です。いつ頃かさえ憶えておけば、情報を容易に取り出せます。

初期のノートには、ソースコードやそれに関するメモがたくさん貼り付けられています。パソコンは企業に入ってきても、プログラムが全然なくて、自作でいろいろと造らざるを得ませんでした。発注者の担当に鍛えていただいた記録もあります。

いい年したひとが女狂いしている記録や、私用に会社や組織の金を使いこみしていた人、仕事そっちのけでギャンブルに狂っていた人なども残っています。見栄を張ってお金持ちと付き合って破産して逃げた人や、見栄張ってマンション買って払えなくなってマチ金に追いかけ回されてやせ細って「他人の戸籍を買いたい」と金を借りにきた人の顛末なども。だいたい人間が落ちぶれるきっかけは「見栄」ですね。男にとって女が絡むと、この見栄が暴走し始める傾向が読み取れます。

開き直った悪人は危険極まりないので、慎重に皆と相談し作戦練ったけれど結果的に返り打ちにあってひどいめにあった、、、等々、長い間にはいろいろあります。まったく怪しい動きをしていたので探偵に調査してもらった素行レポートなども。大看板をバックに威張り散らしてきた人たちの記録と悪口も。。。仕事をリタイアしたあとで、楽しみに読んでみたいことが沢山あります。

もちろん、大半は真面目な仕事のメモですが。。。

防災と環境・・・

バブルがはじけて、開発ものが少なくなって、「これからは防災と環境だ!」と言われたころが10数年くらい前にありました。日本は雨が多いので、自然環境の回復力が高いのと、やっぱり環境は「オマケ的」という印象の刷り込みがあるようで、最近は頭打ちです。

防災は、私の誤った見方かもしれませんが、、、人口増加時代に人間の活動領域がどんどん自然の側に食い込んでいくときに発展するものです。これからはその逆なのであまり必要性がなくなるかもしれません。国のお金も無くなりますし。

環境も防災も、やろうと思ってやるものです。逆に言えば、やろうと思わなければやらないものです。だからやらなくなる可能性があると思っています。これからは、被災すればそこを整地して、そこに住んでいた人を都市のコンパクトシティに移住させるという時代になるのでしょう。

どうしてもやらざるを得ないものしか残らないのだろうと思います。それは、造ってしまったものの維持管理です。造ってしまったものの防災というのは維持管理の中で存在し続けることはできます。道路、橋などの社会インフラは、老朽化した時に放棄するか維持管理し続けるかの二者択一しかありません。「だましだまし」は基本的にはできません。当然放棄されるものも出てくると思います。

放棄された人工地盤の代表格である盛土は、降雨や地震で流れ去り、元の地山の格好に戻るでしょう。猿の惑星の風景は、放棄された大都市のイメージですが、放置された街は同じようになるはずです。

「義務付ける」のはやめて「知らせる」だけにしましょう

仕事柄、行政からの仕事を受ける場合もありますし、民間の企業からの場合もありますし、個人からの場合もあります。個人からの場合、当然のことながら自分に関係することで相談があります。

理想的には、「自分の住んでいる場所が安全か危険かを知りたい。もし危険であれば、安全になるように対策したい」という技術コンサル依頼を受けたいと思いますが、現実はそうはなりません。

規制・法制度・損害賠償云々といった、おどろおどろしい話になります。

その中で、法指定・規制に関するものは、世の矛盾を感じ、かつ行政の防災担当者を大変気の毒に思います。私個人の改善案も持っています。

土砂災害防止法による法指定(特に特別警戒区域)、造成宅地防災区域について懸念を持っています。

土砂災害防止法による法指定は、特別警戒区域に指定されると、構造物を強固にする義務が生じるとともに、地価(財産価値)が下がります。造成宅地防災区域は、ほとんど指定されていませんので未知数ですが、安全化対策の工事をする義務(しないときは罰則あり)が生じ、同時に地価が下がります。

要するに、住民個人にとってみれば、防災という国や自治体がするものと信じていたものに対して、自分のお金を拠出しなければなくなり、かつ財産の価値が下がり、土地がれなくなるという、踏んだり蹴ったりの状況になります。

そして、出てくる苦情として最も多いのは、「迷惑だから指定を外せ」というものです。当然行政の方もそうなることを織り込み済みで、「ルール通りにやったので指定は外せない」ということになります。住民にとっては、財産の目減り阻止が最大の興味で、安全か危険かはあまり興味がありません。

規制や義務をかけるからそうなるのだろうと思います。私は、土砂災害防止法の精神、「(行政が危険情報を)伝える努力」「(住民が)知る努力」だけで良いともいます。そして、何もせず被害が発生した場合には、粛々と民法の工作物責任を適用する。

外為オンラインのCMで「あなたのためだから」と恩着せがましく言う面白いものがありますが、いまの法指定はまさにその感覚を感じます。「あなたのために安全化対策を義務付ける」とやると、「義務付ける」ところだけに反発してしまいます。

私の提案は、個人を尊重し、個人の自由と責任を明確化することだと思います。地盤の危険性だけでなく、法的責任についても伝えておく必要があるでしょう。そうすると、「危険・責任」のところだけが頭に残ることになると思います。

「あなたの場所は特別危険なのだけれど、行政側としてはそれを知らせたので、あとはあなたのお好きなように。もらい災害型の場合には、発生源の対策を所有者・占有者に要求してください。また、あなたの土地が原因者となる場合、すでに危険と評価されているのですから、何も対策せずに第三者に被害を及ぼした場合には、工作物責任(無過失責任)よりも重い賠償がくるかもしれませんよ。」

もらい災害型の場合、その原因が土石流や地滑りにある場合には、その対策があまりにも多額の費用になるため、移転制度などを行政型の仕組みとして持っておくのが良いのかもしれません(すでにあると言えばある)。直接対策する費用と、移転費用との天秤で考えればよいと思います。

自然現象が災害になるかどうかは、住んでいる場所とその自然との距離(いろんな意味で)の問題です。自然が大好きな人は、自然に近付こうとしますが、その分危険度は高まります。とはいえ生きている満足感は高くなるわけですから、自然から離れなさいと命令するのは個人の尊厳を無視した話です。

「そんな危ない場所だったとは知らなかった」と言わせない、ということが防災としてやるべきことです。それ以上のことは、当事者の判断に任せましょう。

「あなたを安全にしてあげるために、お願いですからこの対策をさせてください」というのは「あなたのためだから」のCMと同じくらい、変な話です。「危険性を教えてくれてありがとう。でも、天気予報を見て、避難勧告が出るずっと前に安全なところに避難することにしていますから私は大丈夫ですよ。たとえ家が壊れても、ちゃんと再起できるだけの準備もしていますからご安心ください。」という大人の会話ができなきゃだめです。

実際問題、1000兆の借金で、100兆予算の1/2を毎年借金している状態ですから、自然現象を起因とした災害に対しては、あまり遠くない将来、自治体単位の存亡に関わるレベル以外は対応できない、という時代が来るかもしれません。防災は自分で考えてやりましょう。

太田ジオメルマガ


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