ぼちぼちと2

     生活や人生設計に間接的にかかわる防災や地球科学のおはなし

     ・・・でも毒にも薬にもならないお話が中心です。通勤途上の暇つぶしにご利用ください。

     『唯一生き残るのは変化できる者である』 チャールズ・ダーウィン

「最先端の」斜面安定評価と合理的な対策技術(4)崩壊に至る過剰間隙水圧比

爆裂型崩壊を発生させる際には、位置エネルギー起源の過剰間隙水圧が鍵を握っていることがわかりました。土中でその水圧は、ミズミチ=ソイルパイプで発生します。

圧力水頭ゼロの位置を探すのが鍵となりますが、それは地表と地中がつながっている場所です。斜面の最上部であったり、斜面に穴の空いたところだったりします。

斜面に穴が空いたところというのは、崩壊跡のことです。

ここで「おやっ?」と思われたと思います。道路防災点検では、地表変状を手がかりに斜面の安定度を評価しますから、崩壊跡が多い斜面は不安定・危険と評価しますが、崩壊跡が圧力水頭ゼロとなる場所であれば、逆にそのような斜面は大きな崩壊を起こしにくいことになります。

そんなことってあるのでしょうか?

外形的な観察=素因からの危険度評価で行われている道路防災点検結果の正答率を見れば、その真偽がわかります。

土木研究所は、蓄積された道路防災点検結果と、大雨の際に実際に崩壊が発生したかどうかということを集計して公表しています。そして、危険、あるいはカルテ対応とされた「危険なはずの斜面」の崩壊率はとても小さく、逆に安全判定の斜面の崩壊率が高いことがわかっています。土研も、それが防災点検の課題と言っています。

穴が空いた風船は破裂しません。穴がない風船が破裂します。

斜面も、穴が空いた斜面は崩壊せず、穴が空いていない斜面は崩壊していたのです。

水圧で考えれば、過剰間隙水圧が発生しにくい斜面は崩壊せず、過剰間隙水圧が発生しやすい斜面が崩壊するということになります。

地表変状を中心として危険度評価をするのは、正しくなかったのです。

実際にどの程度の過剰間隙水圧が作用して崩壊していたかというのを、崩壊地を調査して確かめてみると、過剰間隙水圧比として最大0.3程度でした。

ただ、この値は標準値ではありません。そもそも標準値などありません。水圧は、斜面を剥ぎ取るまで上昇し続けます。それを可能にする雨さえあれば、ですが。したがって、もっと大きな過剰間隙水圧比が作用することだってあるかもしれません。

このブログの表紙(右側)になっている2mもある爆裂孔で、吹き飛ばされた巨大岩塊の形状から、必要な過剰間隙水圧比を計算したら0.4でした。山頂からの水圧の40%が作用しないと、この現象は起きないということです。実際には山頂ではなく、もう少し低い位置が圧力水頭ゼロの位置だった可能性があります。その場合には、過剰間隙水圧比は0.5や0.7だったりするのかもしれません。

水圧は「壊すまで高まる」のです。流石に侵食の神様のやることは無慈悲です。

「最先端の」斜面安定評価と合理的な対策技術(3)爆裂型崩壊の謎が解けた

土木研究所の佐々木さんが、土層強度検査棒という画期的発明をしました。極めて軽量の装置で、土層深と土層強度を簡易に計測できる代物です。それまでにも簡易貫入試験などがありましたが(これは結構重い)、打撃貫入抵抗からは土の締まり具合しか情報として得られません。一方、土層強度検査棒は、粘着力c、内部摩擦角φという、斜面安定解析に不可欠な地盤強度が得られます。

この装置の出現で、表層崩壊の正体がとても良くわかるようになりました。

1.表層崩壊の深さは、粘着力cで決まる
 →水圧により内部摩擦角起源の抵抗力は失われるので、対抗できるのが粘着力だけになる。通常表層土の粘着力は、実測するとc=7〜12kN/mですが、傾斜角30度程度の斜面なら、崩壊厚1.5m程度になります。がけ崩れ統計の最頻値と合致します。

2.基盤岩が浅いと爆裂型崩壊(Sudden Spreading)が起きる
 →上記の限界崩壊深よりも浅いところに基盤岩(不動層)があると、内部摩擦角φ起源の抵抗力が失われても、安全率Fs=1.00よりも大きくなります。このためそれだけでは崩壊しません。ところが、過剰間隙水圧はどんどん上昇し、土を地表から引き剥がします。これが爆裂型崩壊です。

3.静水圧(いわゆる地下水位)では、大半の斜面は崩壊しない
 →c、φを土検棒で実測し、安定計算すればすぐにわかります。

大雨による災害が起きると、1週間程度の間に調査に入っていました。そうすると、大きな岩を吹き飛ばしていたり、まんまるの爆裂孔ができているのを見ることができました。最初の内は、どういう原因でできたのかがよくわかりませんでした。

それが、土層強度検査棒で強度と土層深を実測することにより、その謎が解けました。

あとは合理的な対策をどうするか、だけです。

「最先端の」斜面安定評価と合理的な対策技術(2)技術開発の経緯

1990年代の終わり頃、斜面のリスクを評価しハザードマップを作成するという委員会が応用地質学会の中にできました。私も委員として参加していました。3年間の委員会活動の最後の2000年に、その可能性についてシンポジウムが開かれました。

私は、阪神・淡路大震災で顕在化した造成地の盛土地盤に大地震時に発生する地すべり(滑動崩落)のWGに所属しており、その変動予測は盛土形状のみから可能という結論に至っていました。(この話題については、2014年11月の日本技術士会近畿本部防災研究会で話をさせてもらっています)

一方、土砂災害全体の80%を占める表層崩壊については「予測不可能」という結論が出ました。表層土層厚も不明、地盤強度も不明、ではリモートセンシング技術をいかに使おうと予測は不可能であるということでした。表層崩壊には前兆現象(地表変状等)を伴わず、突然発生するものが多いからです。

国土強靭化のため、2015年3月に「道路土工構造物技術基準」が制定されました。2017年8月には「道路土工構造物点検要領」が作られ、公共的な道路土工構造物については地表変状や構造物変状(いずれも前兆現象)に注目した点検方法が定められました。管理者が土工構造物を点検し、責任を持って管理するための要領です。これにより、点検を委託された側は、定められた要領に則って点検を行う限り、現状斜面評価の受託者側のリスクが大きく減少したと言えます。(「前兆現象」とされるものがないところが崩壊した場合には無罪!ということです)

ただし、民間の斜面には管理者の点検要領は無く、方法論も含めて点検を委託された側が提案する必要があります。いくらその提案が認められたとしても、「安全」と評価した斜面が崩壊した場合、結果責任(調査・評価の瑕疵による損害賠償)が問われます。こんな恐ろしいマーケットに理論武装せず飛び込んでいくことは難しくなってきています。

2000年に表層崩壊の予測は不可能と結論を出したWGのメンバーの中に、土木研究所の方がいらっしゃいました。「表層土層厚も不明、地盤強度も不明では予測は不可能」と結論付けられましたが、裏を返せば「表層土層厚がわかり、地盤強度もわかれば予測が可能になるかもしれない」ということです。そこで、それらを簡易にそれらを計測することができる装置を発明されました。

私は、すぐにその装置を入手し、「まだ崩壊していない斜面の安定度評価と対策方法」について、被災地での調査等を通じて技術開発を行い、学会等で発表し、専門家の意見を聞いてきました。数年前に、ほぼその方法論が完成しましたので、今日ご紹介する次第です。

なお、「最先端の」を括弧書きにしているのは、まだ一般に認められた方法ではないということを意味しています。それにはまだかなりの時間がかかると思います。(方法論は2017年に特許取得していますが、一般に広く認められるのは特許が切れる約20年後くらいではないかと想像しています)

「最先端の」斜面安定評価と合理的な対策技術(1)必要とされる訳

日本技術士会近畿本部建設部会の第二回例会で、話題提供せよとのことなので、こういうタイトルでお話をしようと思っています。一つの素材を何度も使うと労力が軽減されるので、ブログにも使います。たぶん、応用理学部会での例会でもこのネタを使うと思います。内容的にはいつも書いている話と大して違いませんが、輪島の漆塗りは何度も塗らないと完成しないので・・・。
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<話の概要>

道路法面など、新設の場合には技術基準に沿って設計・施工しておけば、事故が起きる確率は低くなります。新設から間もない時期に崩壊等が発生した場合には、技術基準を遵守していれば、予見できない地盤状況にあったなどの理由でら、ある程度「不可抗力」として処理されます。この時点でのリスクは必ずしも高くはありません。

新設された法面は、その後長い目で見れば経年劣化し、いずれ崩壊に至ります。自然斜面も、過去に起きた崩壊で現在の地形ができており、それが時間の経過とともに崩壊の準備が整い、大雨等を誘引として崩壊します。

国土強靭化や維持管理が重要となった現在、その劣化過程の途中で適切な調査で斜面の安定度を評価するという極めて難しい課題に直面しています。調査し「安全」と判定した後に崩壊が起きた場合、評価の瑕疵として損害賠償の対象となる場合もあり得ます。

また、土砂災害防止法で土砂災害(特別)警戒区域となった斜面において現状の斜面評価で「安全」と評価した場合でも同様のリスクが伴います。

評価の困難さと、予測が外れた場合のリスクの大きさが不釣り合いなため、今後リスクを避けるために斜面の現状評価をコンサルやゼネコンは避けるようになる可能性が大きいです。

社会の要請として避けて通れない一方で、補償リスクの大きさから避けて通りたいのが斜面の現状の安定度評価です。それを解決するための一つの方法論について紹介します。

IPCCの都市化した気温の補正方法

おんだんか10
『「地球温暖化」狂騒曲』
渡辺正著(2018/6/24)、丸善出版を読了しました。地球温暖化については、このブログで何度も書いていますように、データに基づかない変な理屈です。いままでどうしても説明がつかなかった気象庁データとIPCCの言い分の違いの原因が、この本のp40-44の説明(気温値の加工が作る「温暖化」)ですっきりと分かりました。

平均気温算出に都市化の影響を受けたところを組み込んでいるからおかしくなるんじゃないの?と想像していましたが、IPCCは都市化の影響を確かに「補正」していました。

ところが、とても奇妙な補正方法です。都市化の影響を受けた気温データがあれば、「都市化の影響を差し引く」というのが通常の頭で考える方法です。1960年代以降都市化によって大きく出ている温度計測値を、都市化がなかったらどういう気温になるかということで補正するというのであれば良くわかる話です。

IPCCの補正の方法は違いました。都市化のグラフ(1960年代以降都市化の影響で上昇している気温グラフ)の形に、田舎のグラフを補正してフィットさせる、というものでした。
ほせい13

高度経済成長、都市化で急上昇したグラフの形と同じようなグラフの形になるように、その影響のない地域の計測値を「補正」するという方法でした。

実際これを行うと、田舎の過去の気温を低く補正することになります。田舎の昔は「本当は計測値よりもずっと寒かったはず」と補正するわけです。そして都市化の影響を補正する範囲は、1200kmの範囲内にある観測値だそうです。日本だと、殆どの地域が入ってしまいます。南鳥島だけは一番近い観測値から1300km離れているので補正がされていないそうです。それ以外は昔の気温を低く補正されているわけです(相対的に今の気温が高く補正されていることになる)。

ちなみに著者の渡辺正氏は、鳥取県出身と書かれていて、本文中にも境港の話が出てきたりしましたので、ひょっとして高校の先輩?と思って名簿を見たら、、、先輩でした。
62期の先輩でした。私は74期なので12年先輩ということのようです。

先輩が、ちゃんとした科学者で良かった。。。私の母校には用地内に小山があって、そこに生徒によって「英傑ここに学べり」と書かれていたと、当時の先生の誰かから聞きました。その時代の卒業生なのだろうと思います。

googleマップの写真を見たら、ラグビー・サッカーグラウンドが駐車場になっている!校舎の建て替えをしているらしいので、その工事のためでしょうか?ラグビー部も15人いないので、他校との合同チームになっていると聞きましたので心配です。(古い学校は山に作られているので、周辺にシャメンを持っています。これらが土砂災害警戒区域に指定され始めています。管理者は、いますぐ危険度評価をして、対策をせねばなりません。この写真の中にもありそうです)

よなごひがし4

温暖化に異議を唱える渡辺正氏(東京理科大学)取材レポート(2013/11/21)
エコで売ろうしているメーカーや企業がマスコミの広告主だから、彼らの機嫌を損ねるようなことは、口が裂けても言えませんよね?
ひと言で言ってしまえば温暖化問題なんて言うのは「気のせい」ですよ。

あとは、効果のないCO2削減対策費に対して2030年までに80兆円もの血税を使うのをやめて、福祉や若者の生活改善のために投資してもらいたいものです。

環境の宗教に染まっている人は、良いことをしていると信じきっていますが、何十兆円という巨費が何の効果もなく、福祉や教育や防災が手薄になっていることに思いが及んでいません。それこそ家族を見捨ててインチキ宗教に全財産を寄付する行為に似ています。
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ちなみに、豊洲のベンゼンについても書かれていました。ベンゼンが検出されて大騒ぎとなったが、あまりにも微量で全く心配なレベルではないとのことです。実は当社はEVSの宣伝のために、公開されたデータからベンゼンが検出される理由をホームページに書いています。人の健康に影響がある量だとはハナから思っていませんが、汚染物質の3次元可視化にとってとても良いサンプルだったからです。

日本技術士会近畿本部応用理学部会で川浪くんが、これについて話題提供するので、最近のデータをあたったところ、予想通りベンゼンは検出され続けています。水を汲み上げるとどんどん浄化していない部分にあったベンゼンが寄ってくるので、これからも当分の間は検出され続けると予想されます。それが合理的だからです。もちろん微量なので特に問題はないと思います。
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    (独)土木研究所開発
    土木研究所資料 第4176号 平成22年 土層強度検査棒による斜面の土層調査マニュアル

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