ぼちぼちと2

     生活や人生設計に間接的にかかわる防災や地球科学のおはなし

     ・・・でも毒にも薬にもならないお話が中心です。通勤途上の暇つぶしにご利用ください。

     『唯一生き残るのは変化できる者である』 チャールズ・ダーウィン

「コラプス(構造崩壊)」

最近、土質屋さんの話を聞くと「コラプス」とか「コラプス沈下」という言葉が頻繁に現れます。とはいえ、この現象に関する研究は、古くからあるようですので(『不飽和地盤の挙動と評価』より)、新しい話題ではないようです。

コラプスという日本人が発音しにくい言葉の意味は「倒壊する」というようなものです。ラグビーのスクラムを崩すことが「コラプシング」というペナルティになるので、ラグビーファンなら発音できると思います。(コラプシング:故意にスクラムを崩した。相手ボールのペナルティキックとなる)

先の本では、和訳として「構造崩壊」となっていました。カタカナ4文字、漢字4文字と同じなので、敢えてわかりにくいカタカナを使っている意図はわかりません。

p.108には詳しく解説されています。

「コラプス(浸水に伴う体積圧縮現象)は不飽和度特有の現象である。日本国内においては宅地造成地や道路盛土などの締め固めた土構造物の被害が問題となる場合がある。世界的に見ると、被害の形体は多様である。コラプスは、粒子接点に存在するメニスカスにより生じる粒子間力が浸水により消失することが原因である。」

コラプスの特性としては(p.109)、

「コラプスを生じる条件として、間隙比、載荷圧力が重要である。すなわち、同じ載荷圧力でも、試料が緩い状態にあるほどコラプスは生じやすい。さらに同じ緩い状態であるならば、載荷応力が大きいほどコラプス量は大きくなる傾向を示す。」

全く理にかなった説明です。(神戸層群の大規模造成地で問題になった「水浸沈下」と似ていますが、水浸沈下は地下水位が上がったり下がったりしてスレーキングによる泥岩盛土材の細粒化→体積減少→広域沈下というものなので、ちょっと異なりますね)

不飽和度の研究が始まったころ(1950年代)から、コラプスの研究は行われていた(p.108)とのことなので、最近わかった話ではないということですが、耳にするようになったのは最近のことです。

「飽和土の研究はやり尽くして、あと残っているのは不飽和土だけだ」ということを20年前くらいにコンサルの土質技術者に聞いたことがありますので、日本ではあまり研究されていなかったのでしょうか。

宅地盛土の滑動崩落などは、サクションの減少が原因ではなく、強振動が原因ですが、「構造崩壊」という点では同じです。地下水が少しあれば、地中侵食により緩んだ地山との境界部が構造崩壊によって過剰間隙水圧が発生するということも自明なのですが、宅造法改正時に土質屋さんたちがそれを理解しているようにはあまり思えませんでした。

耶馬渓の無降雨・無地震時の崩壊も、日本地すべり学会の見解で「地中侵食」がキーワードとして上がりましたので、おそらくコラプスまで想定しているのだと思います。

土質のコラプスと、地すべりのコラプスはちょっと違うようですので、別の言葉を使ったほうが良いのかもしれません。

私は、(広義の)地すべりのコラプスは、崩壊の根本原因だと思っています。

「気候変動」は通行手形

古気候学という分野もある地質学を学んだものとして、気候変動など当たり前、日常茶飯事であり、その多くは天体の軌道変化によるもの=ミランコビッチ・サイクルや、太陽活動の周期性によるものという理解をしています。

1970年頃には「氷河期が目前だ!大変なことにになる!」と言い、1990年頃から「温暖化で大変なことになる!」に変わりました。グラフをみれば、その理由がすぐにわかります。見たまんま、なのです。
ondanka98

私は安易に「人間が二酸化炭素を出したから温暖化したんだ」などという感情的な物言いはしないようにしていました。気候変動など地球にとっては日常茶飯事だからです。

それに、、、「温暖化で風水害が凶暴化してきた!」と学者や気象予報士は言いますが、『理科年表』の災害記録を見るだけで、それが嘘だということがわかります。台風などは、「草食化」してきたんじゃないかと思うほどです。

でも、「最近の気候変動」という言葉は、とても通りがよく、書面作成時の枕詞として受け入れやすいこともわかってきましたので、最近は結構使います。公的申請書類には効果抜群です。私のことをよく知っている人には、私が作成した書類にこれが書いてあると笑われますが、関所を通過する際には手形が必要なので、目的のためにはいいと納得しています。毒にも薬にもならないし。。。

たぶん科研費申請されている方々も、予算獲得のための通行手形だと思われている人が多いと思います。特に地質学系の方々・・・。

余談ですが(全てが余談とも言える)、気候変動のことを言う人は、その背景に人間の奢った生活や、企業の銭儲け主義があるという「正義の憤り」があるように感じます。話している本人がその「外側」にいるような気分は、どうやると獲得できるのだろう?と思います。地上波のどうでもいい情報番組で、エネルギーを浪費する場所で話している「外側気分の解説者」の方々の気分って、どんなだろう?とも思います。(休日の毒吐きです)

土砂災害防止における宅建業者の責務

宅建士になったので、こういう情報にもアクセスできるようになりました。これはメルマガです。

★☆《土砂災害防止における宅建業者の責務−大分県中津市の土砂災害現場から 》★☆ 

 先月4月11日未明に、大分県中津市耶馬渓(やばけい)町の住宅の裏山が、雨が降っていないにも関わらず、約200メートルにわたって崩落し、4世帯6人の安否が不明になるという痛ましい事故が起こりました。4月13日時点で2人の死亡が確認され、残る4人の捜索が続いています。心から関係者の方々のご冥福をお祈り申し上げます。 

 今回、雨も降っていないのに崩壊がなぜ起きたのでしょうか。国土交通省調査団等によりますと、原因は「岩盤風化」と考えられています※1。現場は溶結凝灰岩や安山岩などの岩石の上に土砂の層が載っている構造でした。基礎となる地下の岩石が風化し強度が低くなり、何らかのきっかけによって、上部の土砂とともに一気に崩れたと思われます。こうした土砂災害 「岩盤風化」のリスクが全国各地にあることから、宅建業者としての役割は何か、改めて確認したいと思います。 

※1注記:調査結果を待つ必要がありますが、崖錐層内の地中侵食が原因であるとの考え方のほうがしっくりいきます

 今回の大分県中津市の事故現場で調査した専門家によりますと、雨がなくても土砂崩れは起きると指摘しています。「岩盤に弱い面※1があると、経年劣化によってそこから大きく崩壊することがあり、割れ目の風化が進んでいく過程で、地すべりを起こした可能性がある」とのことで、今回と同じような構造の地形は全国的に見ても珍しくなく、発生頻度は低くても、岩盤風化のリスクは各地にあると警鐘を鳴らしています。 

一般の消費者、住民にとっては、風化して割れ目ができているかどうかは全く分かりません。このため、まずは、行政が定期的に各地の斜面を点検し、崩壊のリスクを伝えるべきですし、住民に対しても防災教育を強化し、住民が自主的に備える体制が求められる※2かと思われます。

※2注記:地下の見えないところで起きている現象を地上の目視点検で発見することは極めて困難です。今回のような現象を住民が自主的に備えるということは、現実的には不可能だったと思います。行政の点検でも、見えないものは見えません。

 また、斜面の近くに住む方、その取引に当たる宅建業者は、「土砂災害警戒区域」(イエローゾーン)や、その中でも大きな被害の恐れがある「土砂災害特別警戒区域」(レッドゾーン)に指定されていないかどうかを確認しておく必要があります。今回の中津市耶馬渓町の被災地も指定されていました。国土交通省の調査によりますと平成30年2月末で、イエローゾーンは約51万カ所、レッドゾーンはそのうち約36万カ所に上っています。

1.土砂災害防止法の仕組み

 土砂災害は毎年のように全国各地で発生しており、私たちの暮らしに大きな影響を与えています。また、その一方で、新たな宅地開発が進み、それに伴って土砂災害の発生するおそれのある危険な箇所も年々増加し続けています。そのような全ての危険箇所を対策工事により安全な状態にしていくには、膨大な時間と費用が必要となってしまいます。土砂災害から人命や財産を守るためには、土砂災害防止工事等のハード対策と併せて、危険性のある区域を明らかにし、その中で警戒避難体制の整備や危険箇所への新規住宅等の立地抑制等のソフト対策を充実させていくことが大切です。 

 土砂災害防止法※は、土砂災害から国民の生命を守るため、土砂災害のおそれのある区域について危険の周知、警戒避難態勢の整備、住宅等の新規立地の抑制、既存住宅の移転促進等のソフト対策を推進しようとするもので、宅建業者の方々には十分な理解が必要な法律です。

※正式名称「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」 

 まず、国の責務ですが、国土交通省には、土砂災害防止対策基本指針の作成を行う役割があります。土砂災害防止対策の基本的事項、基礎調査の実施指針、土砂災害警戒区域等の指定指針等を示しています。

 また、都道府県は、基礎調査の実施を行います。区域指定及び土砂災害防止対策に必要な調査を実施するほか、渓流や斜面など土砂災害により被害を受けるおそれのある区域の地形、地質、土地利用状況について調査します。その上で、都道府県が、基礎調査に基づき、土砂災害のおそれのある区域等を指定します。

 市町村等の責務は、情報伝達、警戒避難体制等の整備です。市町村地域防災計画(災害対策基本法)において、危険個所の情報を明記するほか、ハザードマップの整備・配布を行っています。

2.土砂災害警戒区域(通称:イエローゾーン)について

 警戒区域は、急傾斜地の崩壊等が発生した場合に住民等の生命又は身体に危害が生じるおそれがあると認められる区域であり、危険の周知、警戒避難体制の整備が行われます。 

(1)市町村地域防災計画への記載(土砂災害防止法第七条一項)

 土砂災害が生じるおそれのある区域において土砂災害に関する情報の収集・伝達、予警報の発令及び伝達、避難、救助等の警戒避難体制を確立しておくことが大切です。このため、土砂災害に関する警戒避難体制について、その中心的役割を担うことが期待される市町村防災会議が策定する市町村地域防災計画において、警戒区域ごとに警戒避難体制に関する事項を定めることとされています。

(2)災害時要援護者関連施設の警戒避難体制(土砂災害防止法第七条二項)

 高齢者、障害者、乳幼児等、自力避難が困難なため土砂災害の犠牲者となりやすい災害時要援護者の利用する施設が警戒区域内にある場合には、市町村地域防砂計画において災害時要援護者の円滑な警戒避難を実施するため、土砂災害に関する情報等の伝達方法を定めることとされています。

(3)土砂災害ハザードマップによる周知の徹底(土砂災害防止法第七条三項)

 土砂災害による人的被害を防止するためには、住居や利用する施設に存する土地が土砂災害の危険性がある地域かどうか、緊急時にはどのような避難を行うべきか、といった情報が住民等に正しく伝達されていることが大切です。このため、市町村長は市町村地域防災計画に基づいて区域ごとの特色を踏まえた土砂災害に関する情報伝達、土砂災害のおそれがある場合の避難地に必要な情報住民に趣致(たぶん周知の誤植)させるため、これらの事項を記載した印刷物(ハザードマップ等)を配布し、その他必要な措置を講じることとなっています。

(4)宅地建物取引における措置(宅地建物取引業法第三十五条(同法施行規則第十六条の四の三))

 警戒区域では、宅地建物取引業者は、当該宅地又は建物の売買等にあたり、警戒区域内である旨について重要事項の説明を行うことが義務付けられています。

 宅建業者の皆様は、取引に当たる際に、警戒区域に関する最新情報をリアルタイムで常に確認し、重要事項説明の際に相手方にお伝えいただくようご注意下さい。 

3.土砂災害特別警戒区域(通称:レッドゾーン)について

 特別警戒区域は、急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域で、特定の開発行為に対する許可制、建築物の構造規制等が行われます。 

(1)特定開発行為に対する許可制(土砂災害防止法第九条)

 特別警戒区域では、住宅地分譲や社会福祉施設、学校及び医療施設といった災害時要援護者施設の建築のための開発行為については、土砂災害を防止するための自ら施行しようとする対策工の計画が、安全を確保するために必要な技術基準に従っているものと都道府県知事が判断した場合に限って許可されることになります。

※十分な対策工がなされない限り新たな開発行為=土地の造成工事はできません

(2)建築物の構造の規制(土砂災害防止法第二十三、二十四条)

 特別警戒区域では、住民等の生命体又は身体に著しい危害が生じるおそれある建築物の損壊を防ぐために、急傾斜地の崩壊等に伴う土石等の建築物に及ぼす力に対して、建築物の構造が安全なものとなるようにするために、居室を有する建築物については建築確認の制度が適用されます。すなわち区域内の建築物の建築等に着手する前に、建築物の構造が土砂災害を防止・軽減するための基準を満たすものとなっているかについて、確認の申請書を提出し、建築主事の確認を受けることが必要になります。

※強い構造物(鉄筋コンクリート造)や、土砂防止壁がなければ、新たな建築(建て替えも含む)はできません

(3)建築物の移転等の勧告及び支援措置(土砂災害防止法第二十五条)

 急傾斜地の崩壊等が発生した場合にその住民の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれのある建築物の所有者、管理者又は占有者に対し、特別警戒区域から安全な区域に移転する等の土砂災害の防止・軽減のための措置について都道府県知事が勧告することができることになっています。特別警戒区域内の施設設備にかかる防災工事や区域外への移転等に対しては、以下のような支援措置があります。

ア 独立行政法人住宅金融支援機構の融資(独立行政法人住宅金融支援機構法第十三条)
 地すべり等関連住宅融資は、特別警戒区域からの移転勧告に基づく家屋の移転、代替住宅の建設、土地の取得等に必要な資金の融資を受けられます。

イ 住宅・建築物安全ストック形成事業による補助(社会資本整備総合交付金)
 特別警戒区域内にある構造基準に適合していない住宅(既存不適格住宅)を特別警戒区域から移転し、代替家屋の建設を行うものに対し、危険住宅の除去等に要する費用及び危険住宅に変わる住宅の建設に要する費用の一部が補助されます。

※援助するからレッドゾーンからは出ていってください、ということです。曾祖父ちゃんの代から住んでいるが、災害など一度もなかったという話が出てくると思いますが、「じゃあそろそろ危ない」ということに過ぎません。

(4)宅地建物取引における措置(宅地建物取引業法第三十三条(同法施行令第二条の五)、第三十五条(同法施行令第三条)、第三十六条(同法施行令第二条の五))
 特別警戒区域では、宅地建物取引業者は、特別の開発行為において、都道府県知事の許可を受け取った後でなければ当該宅地の広告、売買契約の締結が行えず、当該宅地又は建物の売買等にあたり、特定の開発の許可について重要事項説明を行うことが義務付けられています。

 宅建業者の皆様は、特別警戒区域に指定された場合は、そもそも、都道府県知事の許可を受け取った後でなければ当該宅地の広告、売買契約の締結が行えませんし、当該宅地又は建物の売買等にあたり、特定の開発の許可について重要事項説明を行うことが義務付けられていますので、ご注意下さい。 

4.おわりに

 現在、土砂災害警戒区域及び土砂災害特別警戒区域の指定が完了した都道府県は、全国でも、青森県・山梨県・福岡県・群馬県・栃木県・石川県・山形県・岐阜県・福井県・大阪府・山口県・長野県・茨城県の13府県にとどまっています。また、土砂災害警戒区域の指定が完了した都道府県は島根県・鳥取県・奈良県の3県のみという現状です。 

 まずは、行政における基礎調査の実施、区域指定、情報伝達等の取組みを強化していただくことが重要かと思われます。

 同時に、宅建業者の皆様におかれましては、常に、土砂災害防止法の指定区域情報については最新情報を把握いただき、取引における重要事項説明の際に十分な注意を払っていただき、土砂災害防止にご協力をお願い申し上げます。 

 今回の大分県中津市の土砂災害事故は降雨を伴わない非常に珍しいケースでした。同じようなリスクが全国各地で潜んでいることを理解していただいた上で、不動産取引に当たることが、国民の生命・財産を守ることにつながるかと思います。 

 宅建業者の皆様の役割、社会からの期待は大きいと言える※3かと思います。改めて最新の土砂災害防止法の区域指定情報をご確認いただき、実務に当たっていただければ幸いです。ご対応をどうぞよろしくお願い申し上げます。

※3注記:土砂災害の危険性を宅建業者に期待するのは、荷が重いと思います。日本の宅建取引は、売ってしまえば責任は所有者に移転しますので、宅建業者は売り逃げ可能な仕組みになっています。売り逃げを許さない、遡って責任が追求されるということにでもならないと、専門家に評価を依頼しようという動機は起きませんし、専門家もニーズがなく利益が得にくいと思えば宅建業者からの依頼は断ると思います。マーケットとして成立させる仕組みを考えないと絵空事になってしまいます。 

(参考情報)

 1.土砂災害防止法(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律)や関連情報

 2.全国における土砂災害警戒区域等の指定状況

 3.全国における土砂災害警戒区域等の指定状況(H30.2.28時点)

 4.各都道府県問い合わせ先

社会インフラの長寿命化(4)続・銀座地すべり

TVネタになるような大崩壊・大地すべりがあると、多くの場合その斜面の不安定物質は除去されているため、かつて無いほどの安定状態となっています。しかし、災害が衝撃だったために巨費を投じて対策が行われることが多いのも事実です。

民生の安定という目的も公的防災事業にはあるので、すべてを否定はしませんが、ちょっとやりすぎじゃないか?と思うところもあります。

この話題は第一級のタブーなので、野外巡検などでは100%全員が大声で言っていても、公の場所で言う人は民間企業人にはほとんどいません。大人なんです・・・。大人が技術の進歩を停滞させます。

崩壊があると不安定だった土塊が斜面から除去されるわけですから、その裏にすべり面などありません。ところが、崩壊と同規模の土塊となるような「すべり面」が図面には描かれて対策が設計され、施工されます。(そういう報告書を数え切れないほど見てきました)

無いはずのところにある「すべり面」がどうして引かれたのか、というとボーリング調査結果です。ボーリングコアの中の「コア状態が悪い」箇所で、一次崩壊と同規模の土塊量が確保できる「すべり面」に都合の良いものがあると、強いバイアスが作用して「すべり面」の通過ポイントとなります。

地表のクラックなど、その「すべり面」に都合の良い情報は総動員されます。

「個別の評価だけでなく全体の評価が重要」ということではなく、全体の評価よりも全体のストーリーに都合の良い個別の評価に軍配が上がります。

そういう「すべり面」を引く技術者に、面と向かって「本当にそんなすべり面あると信じているの?」と聞いてみたこともありますが、「まあそういわんと・・・」という反応です。

法面崩壊などの比較的浅いものでも、風化物質が落ちたあと、新鮮な地盤の背後に新たなすべり面が描かれています。いずれ同様に風化するだろうから・・・、という理由ですので、間違いではないかもしれませんが、それならまだ落ちていないところのほうが先に崩れるだろうに・・・、と思います。対策工の寿命より、風化して不安定化するほうが何倍も長い期間かかるだろうに・・・。とも。

このブログでは、安定計算なども逆算法で行われ、真正面から土質工学と向き合っていないと批判していますが、「すべり面」はそれ以上に超法規的措置のような伝家の宝刀です。「えい!」とばかりに線を入れてしまえば、その上盤は滑ることになってしまうからです。逆算法を併用すれば、一気に不安定な状態(計画安全率未満)にすることができてしまいます。

私が、「現況安全率と逆算法と計画安全率が技術の進歩を止めた」と言うのは、この「銀座地すべり面」がそれによって正当化されるからです。技術者が、災害の予防ではなく、被災した結果、斜面の安定性が高まっている箇所の裏の安定地盤内に、崩壊と同程度のすべり面を引いて対策工を設計する、、、そしてそれを主たる生業にするコンサルが居る・・・。根深い問題です。それを支えているのが逆算法を用いた一連の手法です。そのエネルギーを予防に振り向けられないものか。

土や岩盤が相手だから、それほど問題にはなりませんが、人が相手だと冤罪だらけになります。

社会インフラの長寿命化(3)銀座地すべりをつくらない

シンポジウムの中では「銀座地すべり」とういう用語は出ていません。出ていたのは「行政地すべり」という超刺激的なものでした(学会外の日常ビジネス会話ではNGワードです)。ブログのタイトルをオブラートに包むために、同様の意味で過去に高野先生が論文を書かれた言葉をお借りしました。

銀座地すべり(1980)、地すべりVol.17,No.1

次は、悩ましい次の設問です。

(2)「地すべり移動土塊」には永遠の寿命があるが施設は限られた寿命しか無い
、、、にもかかわらず、、、地すべりを止めることは生産活動でもなく経済に寄与するものでもないので、施設管理はあまりなされていない。なされたとしても、(パネラー談)「土砂災害基礎調査が終わり仕事が少なくなった測量屋さんがやっている」ような状態で、点検員の質が適正でない。測量の能力と、地すべり施設点検の能力は異なる、ということでしょう。

これに対しては、「動いてもいない地すべりを対策しているからではないか?そもそも地すべり対策が数が多すぎる。」

という問題提起がありました。

地すべり防止工事は、地すべり防止区域内で行われますが、防止区域が指定された際には「動いているもの」が少なくとも1ブロックあったはずです。その全体計画を立てるときに、動いているブロックが1つしかないのに、それ以外に10個位のブロックを地形判読から「創り出し」、動いていないブロックに対してもせっせと対策を行っているのではないか。動いていないところの住民は当然無関心なので維持管理もいいかげんになる。

ならば、動きが確認されたものだけを対策するというフィルターを噛ましたら良いのではないか?伸縮計を1年間設置して、ある一定量以上の動きが確認された場合のみ対策工の工事に着手するというフィルターです。地すべりに「対策を計画・施工できる地すべり地の資格制度」を設けるということです。

そうやって工事量を絞っていけば、維持管理にまわるお金も確保できるようになり、ちゃんと管理された地すべり対策施設になるのではないか。ということでした。

「動いていない地すべりは動くのを確認するまで対策工事をしない」という挑戦的なアイデアでした。オーストリア巡検で見た対策センスもこうでした。水抜きも高価で特別な対策だったのでよほど動くところでないと採用されないそうでした。

表層崩壊のような、予兆なく突然起き、被害が甚大になるようなものは「予防」が重要ですが、地すべりのような年間1cm前後の動きのものは、動きを確認してからのみ対策をするということで十分な箇所が多いと思います。

そういう動かない地すべり対策が生業になっているコンサルの存在の問題かもしれません(控えめに言っています)。動いていない地すべりを止めるのはとても簡単です。動きを誘発しない対策をすれば良いからです。もともと止まってるので止める必要はありません。(以前動いていなかった地すべり地で、杭工事のハンマー打撃をきっかけとして動き始めた地すべりがありました。動かない地すべりを対策して動く地すべりにしてしまった、という本末転倒な事例です)

記録的な雨が降ったときにだけ動く地すべりは、表層崩壊と同様のパターンなので、水圧を消散することで「滑ることが不能」にできるはずです。規模が小さければ、日常的な井戸利用などをしておけば、それが対策になります。

つづく
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