マスコミは、うまくいかなかったものを批判報道することが使命だと勘違いし、予防防災や今後の被害軽減に役立てるための重要なことを報道しません。起きたことを「解説」しても「ふ〜ん」でおしまいです。

今朝がた発生した地震で、東名高速道路は盛土崩壊により通行止めになりました。一方、東海道新幹線は「JR東海によると、この日の午前7時半過ぎに線路の点検を終了。午前8時から速度を時速70キロに落とした上で、運転を再開した。安全が確認でき次第、速度を上げるという。」ということで、点検のために運転を見合わせていたが、点検終了後運転しています。

高速道路の盛土は弱くて、鉄道の盛土は強いのでしょうか?実はそんなことは全くありません。東海道新幹線は、東京オリンピックに間に合わせるために実質2年間の突貫工事で造られたものです。軟弱地盤上の盛土が多く、当初は雨が降ると崩れるということで、斉藤迪孝先生が排水パイプを考案され、新幹線を走らせながらの降雨実験もされています。現在の形状は、さまざまな形を試した末に決まったものです。

その後、地震でも鉄道盛土はひどい被害を受けました。特に昭和43年の十勝沖地震(実際には青森県沖地震)では東北地方の鉄道がひどい被害を受けました。

惨たんたる東北本線  強震・青森県を襲う!!(東奥日報社)
http://www.bousai.pref.aomori.jp/jisinsouran/tokachi/img/pto1_10.htm
(1)鉄道関係
 国鉄の被害は県東部、南部地区に大きな損害をもたらし、各地に路盤陥没・橋梁沈下・線路浸水・道床流失などによる不通箇所が続出した。なかでも地盤軟弱な東北本線尻内野辺地間及び大湊−大畑線の被害は、壊滅的で目をおおうばかりの惨状を呈した。被害の大部分は築堤で、橋梁などの構造物の被害は地震の規模の割合には少ないのが今回の災害の特徴である。地盤軟弱箇所においては、切り取り区間と切り取り区間の間の沢になっている箇所の築堤は、ほとんど被害をうけていた。”

taishin国鉄鉄道技術の技術者たちは、地震にも耐える補強が必要だと考え、十勝沖地震での盛土変状を分類整理し、中型振動台実験によりその被害を再現しました。そして対策工法の検討も行っています。(出典:『盛土の耐震設計に関する研究報告』日本鉄道施設協会)

「間隙水圧の挙動を抜きにして盛土の安定を考察しても意味がない」

昭和47年に出された報告書にははっきりと地震時対策はいかに盛土中に過剰間隙水圧を発生させないか、と指摘されているのです。そのとき、すでに東海道新幹線の盛土には排水パイプがどんどん打設されていました。この排水パイプが最も現実的な対策であるという結論も出されました(『地盤と構造物』池田俊雄著にも書かれています)。

しかし、どういう経緯かわかりませんが、地震対策として使われてはいませんでした。想像ですが、当時はメッキ技術が進んでおらず、地震という長期の防災対策に黒皮の鉄管で対策するということに対して、コンセンサスが得られなかったのかもしれません。

図らずも今回、地震時の有効性が検証されました。東海道新幹線の盛土区間には排水パイプは100万本以上打設されています。もともと軟弱地盤上の突貫工事盛土という条件の悪い盛土でも、きちんと間隙水圧を考慮した予防をしておけば被害が発生しなかったということになります。