2009年10月29日

自力で谷埋め盛土評価

いろいろ相談を受けて谷埋め盛土の地震時安定性を検討することがあります。そこでぶち当たるのは公開の壁です。自ら望んで自分の土地の素性を明かそうとする人はいません。ましてや、周辺の他人の土地のことなど「調べた」などとは言えない、、、というのが2009年10月時点での一般的な感覚のようです。

情報公開に関する感覚は、年々大きく変化していますので、いまそうだからといって今後もそのままとは限りません。いまや各種ハザードマップがHPで公開される時代ですが、阪神淡路大震災が発生した15年前には「そんなこととんでもない」という時代だったのですから。

そうはいっても自分の土地は気になるものです。特に目の前が開けて景色が良いところというのは一般に谷を埋めているケースが多いです。谷を埋めたところはその先に障害となる元地形(尾根)がありませんので景色が良く立地条件抜群なのです。中越地震ではそういう景色のよい立地条件の宅地が選択的に崩れました。条件の悪い谷埋め盛土だったからです。

新旧地形図とにらめっこすれば、自分の宅地が盛土なのか切土なのかは案外簡単に分かりますし、同じ位置で断面図を切ってみるだけの知識があれば、谷の形状も読み取ることができますので、すぐに(3)のステップに進み無料で自己診断ができます。自治会単位などで、もう少し周辺部も見てみたいとなると、グリッドデータを作る必要があります。その場合には、下記のような市販ソフトを使うことをお勧めします(ただし、英語版しかありません。ただし、ソフトに使われている英語ですから中学生程度の知識と辞書があれば問題ありません)。

(1)Didger4・・・$389(36,000円)
http://www.goldensoftware.com/products/didger/digitizingoptions.shtml

まず、地形図をスキャンしてDidger4に読み込み、座標合わせをします。図面が良ければ全体をベクトルデータに変換しますが、悪ければ等高線をなぞっていきます。高さをつけて、X,Y,Zのテキストデータを作り保存します。

(2)Surfer9・・・$699(65,000円)
http://www.goldensoftware.com/products/surfer/surfer.shtml

sufer次に、Surfer9で、XYZデータをグリッドデータにします。造成前と造成後の範囲、グリッド数を同一にしておくことがコツです。そうしないと差分の計算ができません。Mathコマンドから、造成後のグリッドファイル(A)と造成前のグリッドファイル(B)を選択し、差分のファイル(C)の名前を設定し(なんでもかまいません)、C=A-Bという計算式にしておきます。そうすると盛土厚のグリッドデータができます。

あとは、現在の造成地の図面と重ね合わせるなりなんなりして、盛土部分の情報を読み取ります。ただし、地山勾配は造成前のグリッドデータからでないと読み取れませんので注意してください。

(3)Taniume・・・無料・フリーソフト
http://www.ohta-geo.co.jp/software/taniume/taniume01.xls

面積・幅・長さ・深さ・地山勾配という形状データのみから、谷埋め盛土の安全率を算出します。一応斜面安定計算なのですが、土質強度というパラメータは用いません(厳密に言えばキャリブレーションした値を用いていますが、パラメーターではなく「定数」と考えてください)。

これで谷埋め盛土の安全率が算出できます。1.00を下回っていたら、阪神淡路大震災のときの阪神地区丘陵地と同様の揺れがあった時に変動する可能性が高い、と評価されます。具体的には震度6弱以上の揺れがあった場合、というふうに理解していただいて結構です。1.20を上回っていたら、まず大丈夫でしょう。

これから盛土地に家を建てる方へのアドバイスですが、安全率に関わらず、更地の状態で基礎杭を打ってください。細径の鋼管杭でもかまいません。そうしておけば、かなり安全になります。盛土は平常時には安全なものなのですが、封印された地下水があると(たいていある)地震時にはやばいものなのです。



ohta_geo at 08:00│この記事をクリップ!宅地耐震化