私は、社会人になって3年間、トンネル建設に関わる水文調査をやっておりました。その時に水問題にいろいろ触れたわけですが、最後には透水係数という魔物が怖くなってしまいました。

自然は「桁違い」と表現されるように、桁で効いてきます。1の次は10で、その次は100という具合にです。透水性も、体感できるのは「桁」です。k=1×10^-2cm/secと、k=1×10^-3cm/secの違いが大事だということです。

ダルシーの法則というのがあります。

v = ki
v:見かけの浸透流速 [cm/sec]、k:透水係数 [cm/sec]、i:動水勾配

流量Qは、断面積Aに流速を掛け合わせればよいので

Q = A*v = A*k*i

です。流量は桁ではなく透水係数の数字そのものにかかってきます。k=1×10^-3cm/secとk=2×10^-3cm/secの土は、見掛け上あまり違いはありません。透水試験をやっても、これくらいの誤差は平気で出ます。しかし、流量は2倍違います。毎分1tのポンプを準備するのと2tのポンプを準備するのでは大違いです。エンジニアは、この違いをきちんと設計に織り込まねばなりません。現場で得られない違いの数字なのに・・・・です。

だから水ものは、簡単に大外れします。だから怖いのです。計算は、そういった現場事情を考えず、理論だけで精密化していきます。だから怖いのです。透水係数は、実務上は指数表現してはならない数値です。