fukuiti02本日届いた砂防学会誌最新号に、下記の論文がありました。大変興味深かったし、重要でもありますのでご紹介します。

鈴木雅一;”東北地方太平洋沖地震で福島第一原子力発電所の送電線鉄塔倒壊をもたらした盛土斜面崩壊について”,砂防学会誌Vol.64,No.5,p38-42,2012

報道で、送電線が盛土崩壊で送電不能になって全電源消失に繋がったという話は知っていましたが、それ以上の情報が無かったのでよくわかっていませんでした。

倒壊した鉄塔は原発のすぐそばだったようです。これではなかなか調査にもいけないでしょう。ご紹介した論文は、資料を収集して書かれたものです。

fukuiti一般に、送電線は良質地盤に建設されるものと認識されています。送電線ルートを決定する仕事をしたこともありますが、斜面変動の可能性が一番小さいところを地形・地質要因から選択します。盛土上に鉄塔を建てるというのは本来常識外なので、当然杭基礎で地山に支持されていたものと思います(確認していません)。

図をみると鉄塔の位置そのものはひょっとすると地山かもしれません。その場合には滑動してきた盛土土塊に壊されたのかもしれません。

杭基礎だったとして、、、盛土が地震で滑動する場合には、基礎杭は滑りの抑止杭とは違いますので、それほど大きな抑止効果はありません。住宅地などの盛土では、地山傾斜角が小さいため滑動力も小さく、杭基礎の構造物があると滑動しにくいということはありましたが、地山傾斜角と地震動の組み合わせではそうならない場合もあるはずです。原理的にはそれほど効くはずは無いのですから。

旧地形と重ね合わせた図をみると、崩壊したのは谷埋め盛土です。4つの谷埋め盛土があって、崩壊したのは1箇所だけです。論文では、この盛土が厚かった(25m以上)のが原因ではないかと書かれています。私は、谷の奥行きが短く、腹付け盛土的だったことが原因ではないかと思います(緑ヶ丘4丁目的)。他の3つの谷埋め盛土が滑動していないからです。この旧地形図で想像できるのはこれくらいです。

論文では、宅地耐震化を引き合いに出して、「ここに扱った事例は宅地ではないが、重要なライフラインに近接する盛土については、同様かさらにそれ以上の対策が必要であろう」と書かれています。たぶん、「それ以上」だと思います。こういう超重要構造物の場合には、「盛土という盛土は全て必ず滑る」ことを前提に設計する必要があるでしょう。土質強度もクソもありません。

参考

福島原発の鉄塔倒壊、土砂崩れが原因 震災の揺れで 2011年5月17日
http://www.asahi.com/national/update/0516/TKY201105160568.html

鉄塔倒壊 盛り土の崩落が原因(5月24日 15:00更新)
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20110524/1500_tettou.html

福島第一原発が全電源喪失に陥ってしまったワケ 2011-05-15
http://d.hatena.ne.jp/gundam_gundam/20110515/1305457686