日本地すべり学会関西支部のシンポジウムが4月中旬にありました。テーマは「施設長寿命化の方法と限界」です。関西支部のシンポジウムのテーマのコンセプトは「東京ではできないこと」です。今回「限界」という言葉を入れているのは、それがないと東京でも簡単にできることになってしまうから、、、というだけの理由で、深い意味があったわけではありません。

平成30年度(公社)日本地すべり学会関西支部シンポジウム
「施設長寿命化の方法と限界」

でも、最後のパネルディスカッションでは、この「限界」がキーワードになり、学会以外ではとても口に出せない結論が出ました。(もったいつけておきます)

京大の杉山先生に基調講演していただきました。杉山先生は、鉄道総研にながくおられ、鉄道の土構造物の維持管理に精通しておられます。鉄道は、明治時代の構造物が非常に多く、歴史が他のものとは相当異なります。新幹線という高規格のものも昭和39年にはできていました。

次に、NEXCOの藤原さんに高速道路の施設長寿命化について話題提供していただきました。高速道路は、名神高速から始まっていますが、鉄道にくられべば歴史が浅いです。それでも30年以上経過したものが40%以上となっていますので、決して新しいとは言えません。

「コンクリートが土砂化している」というショッキングな表現がありました。

NEXCOは平成24年度から更新計画をたて始め、平成27年度に事業許可がおり、「高速道路リニューアルプロジェクト」が始まりました。切土・盛土は「大規模修繕」という考え方です。盛土の関しては排水施設で対応するとなっています。

(排水補強パイプは、盛土の特定更新のマニュアルの中に工法が書かれているそうですので、今後本土の高速道路でもたくさん使ってもらえそうです)

アンカー工は12万本以上あるが、二重防錆前の旧タイプが62000本、二重防錆の新タイプが68000本だそうです(合計13万本になりますが・・・)。

鈴木さんはコンクリート橋のお話でした。コンクリートは早め早めの検査が重要であることを話されました。印象に残ったのは、橋には相当長寿命のものがあり、その特徴は「アーチ構造」だということでした。コンクリートではなく石造りのものもたくさんあるのですが、アーチ造です。

アーチ構造は、圧縮応力のみで対応するので長寿命なのだろうと思います。裏返せば、鉄筋で曲げ応力に対抗する鉄筋コンクリートは、その思想故に短い寿命なのかもしれません。無筋コンクリートで、アーチ橋をつくれば、中性化や塩害といったコンクリートの劣化による問題は避けられます。

島田さんは林野庁の施設に関する話題提供でした。林野庁の治山施設の目標は明確です。「治山事業は森林の機能を回復させることを目的とする」、、、なので、森林機能が回復すれば施設が壊れようがどうなろうがどうでも良いのです。一時的な絆創膏という感じです。自然の回復力を信頼している林野庁のスタンスがうかがえます。

北原さんの話題提供は、地すべり防止施設の機能回復でした。水抜きボーリングの話が中止でしたが、その維持管理の不十分さを嘆いておられました。地すべり防止施設は、機能が維持されることが担保されて初めて「対策」と言えるわけですが、そうなっていない現状を憂いておられました。

この憂いが最後の衝撃的な結論へとつながっていきます。

つづく