土砂法の基礎調査を私はしていませんので詳しくは知らないのですが、レッドゾーンになると、市街化区域から除外されるというような話を聞きます。地価が9割下がったという悲鳴も聞きました。市町村のホームページの固定資産税を調べると、イエローもレッドも減価が適用されているところが多いので、地価が下がると行政も思っているということです。

警戒区域に指定された斜面は、崩れているわけではありません。でも、公的な調査で警戒すべき地域と認定されているわけですから、斜面の所有者に対して地域住民が「どうなの?対策するの?」と聞いてくるでしょう。

所有者はどう答えるのでしょうか?

「勝手に国の基準で杓子定規に決められたのだから関係ない!」と突っぱねられるでしょうか?

これは崖崩れの話ですが、土石流についてはどうでしょうか?警戒区域なのだから砂防ダムを造るように要求するでしょうか?

土砂法の精神は、危険なところを住民に教え、避難する方法を伝えるというようなものだったと思います。国が対策をするのは前提になっていません。数十年から数百年間隔で起きる大雨で、命だけは守りなさい、協力するので、、、ということです。裏を返せば、家や家財などの財産は諦めなさいということです。

「自然がやることなので潔く諦めます」という人がどれだけいるでしょうか?

私はいないように思います。危険と言われる土地を持っている人に、「なんとかしてよ」と言うはずです。お互い近隣の関係にありますので、下手な対応をするとその後の生活環境が悪くなります。

そこで相談されるのが地盤コンサルタント、特に斜面防災を専門としている人になります。

公共事業の現行基準には、今の斜面の危険度を評価する有効な方法はありません。あくまでも造るときと壊れたときの対応が書かれています。仕事も基本的にその2ケースのことばかりです。地盤コンサルタントにも「今を評価できる人」はほとんどいないのです。

私が、こういう警戒区域に住んでいたら、しかも斜面下の「被害を受ける側」にいたら、斜面の所有者に対策を要求するはずです。そして、所有者が対策するという善意の人であっても、同時に現状斜面の安定度評価や対策工案について納得の行く説明を求めるはずです。

ならば、それができる技術屋になっておかねばなりません。私は、この問題は、実測と順算による確率解析でないと解けない問題だと思っています。他の方法がもしあれば教えてもらえたら嬉しいです。私は無いと思いますが。