2021年6月27日21:00現在の原因推定

昨日(6/26)に現地に行ってきました。その後いろいろな情報を聞いて、現時点での原因推定です。当然、証拠を持っているわけではないので、また修正することもありえます。

だい1
第1段階は、崩壊前のモデルです。斜面に向かって左端では根固め工が行われていました。工事会社が擁壁の「開き」を確認して補修したものです。土留矢板か杭を打設し、コンクリートを打設しています。現地を見ると、擁壁がはらみだしていたような形跡があります。

倒壊した箇所にはこの根固め工はされていません。倒壊箇所にはそのような変状がなかったということだと思います。

だい2
第2段階は石積み擁壁上部の背面の土が流失して空洞化した段階です。老朽化でもなりますし、水道管からの漏水など水の影響で侵食を受ける場合もあります。これはまだわかりませんが、集水地形でもないところで擁壁から水が出ていたとの情報もありますので、水道漏水がひょっとしたらあったのかもしれません。

だい3
第3段階は、擁壁上部の背面の土がなくなっているか、緩んでいるため、空積擁壁は支えを失っています。そして家屋荷重や、工事振動などで空積み擁壁が座屈し、家屋の谷側が沈下し、家屋が傾きます。傾くときに水道管が外れ、水がさらに沢山供給された可能性があります(通報は「水が出ている」、でした)。

もう一つの仮説として、水道漏水で裏込土が不安定化し、滑り土圧で擁壁上部を倒壊させた、、、という可能性ももちろんあります。ただし、土圧が作用していたとすると、先行して変状が発生したはずです。工事会社は毎日この擁壁を目視点検していたと言っていますので、それが見つからなかったとは思えません。6/25に急に進展した現象と考えるには、土圧の理由は少し弱いです。

だい4
第4段階は、擁壁上部の倒壊と、背面土砂の崩壊、そしてそれに引き続く家屋の倒壊です。崩壊時に水がたくさん出ていたという証言があるようなので、背面土砂にはたくさん水があったようです。

空積み擁壁は全面透水構造なので、排水は良いです。水抜き孔は不要です。さらにここは集水地形ではありません。多量の水がある理由が自然現象の中にはありません。それで水道漏水を疑っています。

この推論があたっているかどうかはわかりません。

タイムスタンプ付きで記録しておくことで、情報の組み合わせで思考・推論がどうなるのかというメモです。

基本的に、空積擁壁(に限らず、他のタイプの擁壁も、モルタル吹付け工も)は表面から見てもほとんど何もわかりません。1次元表面波探査していれば背面が緩んでいることはわかったと思います。察知する方法はありました。調べてなかっただけです。最後のトリガーは、工事振動とか水道漏水とかいくつか考えられますが、本質問題は空積み擁壁背面の土砂が流失して、背面土の支えなしに、間知石のケルンみたいな状態で、不安定になっていたことだと思います。最後のトリガーが重要ではなく、そこに至るまで放置されたことが根本原因です。

ケルンって登山すると時々見ますよね。背面土の支えのない空積み擁壁は、ケルンみたいな感じです。
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練積み擁壁が標準になったのは、1960年頃(宅造法;ただし宅造法を使うかどうかは知事の裁量なので、普及には時間がかかっています)以降です。それまでは、すべて空積み擁壁です。明治時代も江戸時代も、更にその前も。その間に同様の土砂流出や不安定化は、全てが空積擁壁ではあったはずですから、当然あったはずです。昔の人は補修・メンテナンスしながら擁壁を利用していたと思います。

現代は、「造ったら壊れるまで知らんぷり」です。だから、こういう場所では家屋倒壊してはじめて、メンテナンスしていなかったことが原因だと気づきます。逆に言えば、家が倒壊するまで、誰も気づかないし、誰も調べない、ということです。土構造物や擁壁もメンテナンスしなければこういう事態になるということを肝に銘じておく必要があるのでしょう。

擁壁もモルタル吹付けも、背後が全く見えないので、崩れるまで気が付かないということです(気づかない幸せを謳歌している)。個人でも公共インフラでも、同じです。変状が先行して発生し、補修する時間的余裕があるはずだ、という思考は、、、妄想です。コレで国土強靭化と言われても、説得力が、、、、。

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情報ソースの一部です。

「水漏れがある」と通報、同じのり面上の民家2棟が倒壊…住民避難してけが人なし
・最初の倒壊がある寸前の画像
・一番南側の家の擁壁はすでに倒壊している
・倒壊する寸前の家の下から小さな崩壊が起きて、それをきっかけに家が倒壊した。擁壁の中部から下部は壊れていない。→擁壁上部の崩壊と裏込め土砂の崩壊が家屋倒壊の直接的な原因

読売テレビニュースTEN・・・6/28夜に非公開になってました
・水道管が切れて水が出る映像あり
・工事振動が常時あったという証言あり
・施工会社の取材あり。1月に工事に入ったが、大阪市に許可をもらっている。毎日石垣を観察していた。4月に石垣に開きがあったので工事を中断して補修工事を行った。6月中旬から工事を再開していた
・南側の道路下法面もは鉄筋補強土工のヘッドが見える(?)

速報!大阪市西成区の住宅地で崖下へ住宅1棟が倒壊!住宅が崩落!場所はどこ?
・北側のコンクリート補強の下の「コンパネ」のように見えたのは、親杭横矢板土留工のようにみえるので、これからその手前を掘削する計画だったと思う。
・その延長線上には鋼矢板で土留がされているように見える。
・一回目の崩壊後の映像を見ると、擁壁の下部は残っているので、擁壁上部の(座屈?)倒壊を起因として、宅盤の谷側が沈下し、裏込め土砂が抜け落ちることによって家が倒壊したように見える。