ぼちぼちと2

     生活や人生設計に間接的にかかわる防災や地球科学のおはなし

     ・・・でも毒にも薬にもならないお話が中心です。通勤途上の暇つぶしにご利用ください。

     『唯一生き残るのは変化できる者である』 チャールズ・ダーウィン

土砂災害

オプジーボと斜面対策(4)本庶佑先生派か大門未知子先生派か

免疫機能を維持することにより癌と戦うのが本庶佑先生派です。

癌ができたら切り取ってしまうのが大門未知子先生派(ドクターX)です。

斜面で言えば、過剰間隙水圧が発生しないように人工的で頑丈はソイルパイプを作るのが本庶佑先生派的です。

現況安全率を1.00として1.20に上げるまでの抑止工(鉄筋補強土工やアンカー工)をするのが大門未知子先生派的です。

私は「地すべりを左手の小指で止めたい」と若い頃から言っていました。力ずくではなく、一番の要点にちょっとだけ変更を加えることによって、「滑りたくても滑れない」環境を作ることが一番良いことだと思っています。

抑止工は、スベリ土塊の滑動力を減らすわけではなく、「対抗」するだけです。だから、構造物の寿命がきて対抗力が失われたら、一気に滑り落ちます。維持管理分野でそれが問題になる時期が必ず訪れます。

排水補強パイプによる過剰間隙水圧消散は、機能低下が徐々に起きます。メッキがなくなることにより、鉄分が土中に浸透し透水性を下げるなどの効果です。「一気に」ではなく「徐々に」なので、大惨事にはなりません。

排水補強パイプは、中をカメラで見ることもできますし、排水状況を孔口で観察することもできます。機能劣化がどの程度進んでいるかを容易にチェックできます。

鉄筋補強土工、アンカー工、抑止杭工などの抑止工は、全部地中に埋まっていて見ることができません。アンカー工ではリフトオフ試験などで荷重状態をチェックはできますが、テンドンの腐食状態などは見えません。それでも新しいアンカー工は二重防錆構造なのでサビに強くしてあります。抑止杭は注入したセメントミルクだけが防錆をします。サビに対してはちょっと危うい構造です。

私は、斜面対策工は、人間の都合でちょっとの間だけ斜面を動かないようにするためのものだと思っていますので、「耐用年数がわかれば良い」と思っています。土中に埋まっていて点検できないのであれば、暴露試験などで想定して耐用年数を決めておけば良いと思います。見えなければ知らんぷり、というのが一番まずいです。

排水補強パイプの耐用年数は、暴露試験で推定されていますが、環境が異なれば当然違ってくるので、観察も併用したら良いと思います。耐用年数がわかれば、計画的に保全ができます。

オプジーボと斜面対策(3)「恒久」だけど「永遠」ではない

オプジーボが免疫機能を維持することを手助けするといっても、人の命が永遠になるわけではありません。癌以外でも人は老化によって死に近づきます。

斜面も、いくら出口の透水性を確保しても、それを遥かに上回る地下水供給(大雨・長雨)があれば、飽和して過剰間隙水圧を発生させ、斜面を崩壊させます。

ただし、気候の大変動でもない限り、ある地域の最高レベルの降雨パターンはそうそう変わるものではありません(温暖化・異常気象が大好きな人は「変わった」と言うかもしれませんが、まだ『理科年表』にその事実がデータとして出てくるレベルではありません)。

このため、排水補強パイプによってプラスアルファされた「人為的ソイルパイプ」は、相当の効果を発揮します。

高耐食性メッキした鋼管なので、サビにも強いのですが、とはいえ永遠ではありません。

正式名称を「恒久排水補強パイプ」としていますが、土木の常識として50年以上持つものを恒久対策と言うことが多いです(定義はされていません)。それで「恒久」としています。

高耐食性メッキは、無垢の場所では100年以上、穴を開けたりした切断面では犠牲防食作用によるメッキとなりますので、80年程度の耐用年数があります。一応この俗世界基準の50年以上は満たしています。

その間に、亜鉛メッキの亜鉛成分が徐々に溶出し減少してきます。高耐食性メッキは、マグネシウムを含ませることにより亜鉛成分の溶出速度を遅くするので長寿命となるのです。

亜鉛メッキがすべて溶出する80〜100年後には、メッキのない鋼管=「黒皮の鋼管」に戻ります。そこから先は普通の鉄のサビがでてきて、20年位で朽ち果てるでしょう(当社の庭で実験していた結果では、黒皮鋼管は13年後にはかなり朽ちていました。高耐食性メッキの方は、土色が少しついていますが全く腐食・サビがありませんでした)。
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だから「恒久」であっても、「永遠」ではありません。

それは、免疫作用のブレーキをオプジーボで解除しても人間の寿命が永遠にならないのと良く似ています。

人は死ななければなりませんが、オプジーボにより少しだけ生きながらえることができます。斜面は崩れなければなりませんが、排水補強パイプによって、それが機能している間は、それが施工された箇所だけは、とても崩れにくくなります。

いずれも「死ぬ」「崩れる」を無くすわけではなく、少しだけ猶予をいただく、というセンスです。

オプジーボと斜面対策(2)ソイルパイプと過剰間隙水圧が崩壊の根本原因

神戸の崩壊斜面に地下水噴出口 水圧上昇で10カ所 西日本豪雨3カ月
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今年の7月には西日本豪雨災害が起きました。広範囲に大雨が降ったので、大きな被害が出ましたが、だからといって特別な事が起きたとも思いません。

本庶佑先生の研究は、がん細胞を免疫細胞が攻撃して消滅させている正常状態が、がん細胞がPD-1にブレーキをかける機能があり、そのブレーキを解除するというものでした。
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なぜ体の中でそんな事が起きるかと言うと、がんが増えて人が死に至るのが「正しい」からだろうと思います。生き物は生まれたら死ななければなりません。おそらく種の存続のために必要なことなのでしょう。

したがって、がん細胞が免疫細胞にブレーキをかけることが「正しいこと」で、そのブレーキを解除することは「誤ったこと」です。でも、人間は死の恐怖から逃れられないので、それを正当なことと解釈します。自分が癌になったとしたら、たぶんこの薬に助けを求めるでしょうから、人間としてはしょうがないと思います。

でも、生き物が死ぬことは、生物の世界では正しいことです。

それを念頭に、斜面崩壊を考えてみます。

斜面が崩れることは「正しいこと」です。まずそこから入らねばなりません。異常事態でも何でもなく、崩れる=侵食する→運搬して最終的に海に堆積する、、、が自然界では正しいことなのです。これが侵食の神様の仕事です。

その手段として、侵食の神様は土の中にパイプを造ります。ソイルパイプです。これは普段は浸透した水を効率的に排水することにより斜面の安定を保っています。斜面にとっては免疫細胞のようなものです。

地表で土壌化が起きるとソイルパイプは出口付近の透水性が小さくなります。それでも普段は染み出しなどで排水できますから、免疫機能は健在です。

ところが、そこの地域で最大規模の雨(土壌雨量指数履歴順位第一位相当)が降ると、ソイルパイプが飽和します。出口付近の透水性が相対的に小さくなっている(ブレーキを掛けている!)ので、そういうところほど飽和しやすくなります。崩れたての崩壊面では土壌化が進んでいないのでブレーキがかからず健全に排水が行われます。

飽和すると一瞬で過剰間隙水圧が作用します。静水圧から過剰間隙水圧への水圧シフトが起きます。そして、水を吹き出して崩壊します。

そうならないようにするためには、土壌化というブレーキを解除する必要があります。

排水補強パイプは、高耐食性メッキで強く補強された鋼管なので、土壌化の影響を受けません。地中深くでは土壌化は進まず、逆にソイルパイプは排水補強パイプに向かって新たに形成されてきます(水は出やすいところに道を作る)。

排水補強パイプは、土壌化による出口の透水性低下というブレーキを解除するオプジーボのような働きをする斜面対策工法です。(回りくどい?)

オプジーボと斜面対策(1)「できることばかりやっていると目標を見失う」

今年のノーベル賞医学生理学賞を受賞された本庶佑先生が、インタビューの中でおっしゃっていた言葉です。

多くの人が陥る罠のようなものです。失敗したくない、自分を有能に見せたい、、、等々の潜在意識が、失敗しない=できることばかりを選択するようになります。マウンティングもパワハラも無能がバレる恐怖を隠すための表現なのは皆さんご承知のとおりです。

それとは逆に、やたらと何でも新しいことをしたがる人が、小さい比率ですが、います。どちらかというと組織に調和的でない事が多く、浮く存在になる場合もあると思いますが、貴重な人材です。

「和を以て貴しとなす」というのを多くの人・組織は肯定しますが、私はそうは思わない少数派です。といっても、これも解釈が間違っていると聖徳太子が言っているようですが・・・

「和を以って貴しとなす」を勘違いしている現代人が多いので小生が本当の意味を教えてやるぞよ
小生の名は聖徳太子ぞよ。
小生が制定した憲法に書いてある「和を以って貴しとなす」という言葉。「みんなで仲良くして和を大切にしましょう!」なんて甘い意味じゃないぞよ。

「和」の精神とは、体裁だけ取り繕ったものではなく、自分にも人にも正直に、不満があればお互いにそれをぶつけ合い、理解し合うということが本質。
「お互いの主張を激しくぶつけ合って互いに理解してこそ、本当の”和”は生まれる」
小生はこう言いたかったのじゃ。

それが現代人はどうであろうか。?
「体裁だけ取り繕ってその場しのぎで生きている」
「自分にも人にも本音も見せず、偽りの自分を演じている」
「不満があれば、場末の飲み屋や匿名掲示板で第三者にぶつけ合っている」

ちなみに「和」というのは「足し算の結果」という意味も含むぞよ。
しかし、現代人の「和」はお互い足を引っ張りあって「差」になっていやしねェか?
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なぜ、本庶佑先生のオプジーボとシャメン対策を絡めているのかは、追々説明します。

100年に1度の災害は、毎年17自治体に起きる

100年に1度の災害と聞くと、多くの人は「滅多に起きない災害」と感じられると思います。地質学を学んできた人間は、逆に「発生頻度が著しく高い災害」と感じます。心に染み付いた年代尺度が違うからです。

愛媛豪雨災害100年に1度 愛媛大防災センター調査速報会
「愛媛では1943年7月の台風被害に匹敵する100年に1度レベルの大規模豪雨災害」(→75年前を丸めて100年に1度としているかどうかはわかりません)
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明治21年に71,314あった自治組織は、明治22年に15,859に整理され、昭和31年の「昭和の大合併」で4,668となり、平成の大合併を経て現在は1,718までまとめられてきました。


各自治体に100年に1度の災害が起きるとしたら、1年間に17自治体に100年に一度の災害が起きることになります。100年間で1700自治体にまんべんなく100年に1度の災害が行き渡ります。(自治体の面積はまちまちなので、超大雑把な計算ですが)

「美しい日本の原風景の(侵食)地形がある」というのはそういうことです。「(洪水で埋まった)遺跡を発掘する」ということはそういうことです。

災害をどんな地域単位で数えるのが正しいのかはよくわかりませんが、地形的に区分されたまとまりで集落・地域・地区があったことを考えると、明治当初の71,314で勘定するほうが適切かもしれません。こうなると、細かく見ると毎年700地区に100年に1度の災害が起きることになります。

土砂災害発生件数は、平均的に毎年1000件くらいです。1000件÷17自治体/年≒60件/自治体/年ですから、100年に1度の災害が来たら、平均的にその被災自治体内では60箇所(もちろん小さいものまで含めてでしょう)で土砂災害が起きることになります。センスとしておかしくないでしょうか?いい線いっているような気がしますが。
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もしこの計算が理解できたら、「二度とこういう事が起きないように」という言葉が、いかに空虚なものかも同時に理解できると思います。災害(というか自然の側から言えば単なる土砂移動)は日本中を巡業して回っており、被災する条件を持っているところは、確実に被災していきます。運が良ければ、避難行動で命は助かるでしょうけど、財産はかなり確実に失われます。約束された「さらなる貧困」が待っているわけです。阪神淡路のときに流行り言葉になりましたが「災害は貧困に襲いかかる」のです。

私が「予防しか興味ない」というのは、こういう思考から来ているものです。そして、被災する場所は「被災するのが必然的に決まっている場所」です。わかりやすく言えば、土砂災害警戒区域です。(浸水想定区域も同様です)

そこに家を立てて住んでいい、と最後に言ったのは不動産屋です。その前は、建築確認をおろした機関です。その前は、建築基準法などの法令です。

このうち、具体的に働きかけが可能なのは不動産屋の部分だけです。だから、災害をなくすなら不動産取引にメスを入れるしかありません。役に立つ防災教育をするなら買っちゃだめな土地の見分け方を教えるのが一番です。それを買うタイミングで言うしかありません。

バケツ大の太さもある大量の水が噴出

建通新聞神奈川版に愛媛大学の7月豪雨調査の記事が出ていたそうです(関西版では探せませんでした)。

『岩盤からバケツ大の太さもある大量の水が噴出した』との証言があり,岩盤に雨水が繰り返し浸透することでパイプ状の水筋が形成される,いわゆる『ソイルパイプ』の存在が目視で,複数個所で確認されたことも挙げ,発生メカニズムや形成過程について調査する必要性を示した
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おそらく、これはソイルパイプが満タン(飽和)になったときの過剰間隙水圧によって噴き出したのだと思いますので、記録しておかねばなりません。(このブログは、データベースでもあります)

ソースを探していくと、次の資料が見つかりましたが、バケツ大の水柱のことはかかれていません。講演の中で話されたことなのでしょうか?

平成30年7月豪雨による愛媛県での地盤災害
https://www.ehime-u.ac.jp/wp-content/uploads/2018/07/89f4ac77cdc208d5eed7d29240b6321b.pdf

これと似た記述は、繁藤の災害記録にもあります。

その時わたしは−繁藤災害体験記
山が大きく崩れる直前に、「空高く水柱が上がり」「頂上の方でパーッと水しぶきが上がった」という記述です。

人が土を除去しなければ、どうなるか?

地質学は、頭の中で論理(ロジック)という武器を使って想像・創造する学問です。時間軸を引き伸ばすことと、今にとらわれず普遍的に起きていることを想像できさえすれば、誰でもわかる話になります。

今年は、6月に大阪北部地震があって、7月の西日本豪雨災害があり、7月末に台風12号が来て、8月下旬に台風20号、9月初旬に台風21号が来ました。なんとも賑やかな年です。とはいえ、毎年何がしかの自然現象による災害が起きていますので、珍しいわけではありません。(その後24号も阪神地域直撃でした。)

9月6日には、札幌で日本地質学会が開催されている中で、北海道胆振東部地震がおきました。震度7あったそうです。震度もさることながら、あまり見ることのない崩壊率で山地斜面が崩れていました。
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にわか評論家は、いろいろ評論します。でも、時間軸を伸ばして合理的な説明になっていない場合がほとんどです。

1〜2万年前に堆積した軽石質火山灰は滑りやすかったので滑った・・・。くり返し起きる自然現象起因なのに、1〜2万年間滑らなかった理由は?

そこで詰まってしまうと思います。

今回崩壊した箇所は、本当に堆積後「初めて」崩壊したのか?それとも過去にも崩壊していたのか?それを突き止めるのが地質調査です。
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その後ネット上に投稿された調査速報を見ると、9000年前に火山噴火で堆積したTa-dという火山灰層が滑り落ちているようです。直前の台風21号は12mmほどの雨しか降らせていませんので、原因に直結しないでしょう。

震度6強以上に崩壊の閾値があったようです。

砂防学会の調査速報では、地下水は関与していないような書きぶりでした。15度や18度の斜面で滑っていても、単に揺すられたことだけが原因と考えているようです。今後さらに調査が進むことを期待しましょう。

新井場さんから借用した写真では、Ta-d層の下位の恵庭の火山灰からのパイプが写っています。層相はかなり粗い軽石層のようです。パイプの孔を開けて下位層が噴き出し、流れていますので、何がしかの水が存在したはずです。それが地震動で過剰間隙水圧を発生させたのは間違いないと思います。要するに谷埋め盛り土の滑動崩落とほとんど同じ原理でこの斜面は崩れたのです。過剰間隙水圧を発生するのに「水量」は関係ありません。飽和地下水帯が存在しさえすればよいのです。層厚が薄いことはいくらでもあります。
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厚真町の崩壊面の写真(新井場さん撮影)

表層崩壊深が1.0〜1.5m程度になる理由(4)Slide2018で解くことができる

日本のソフトベンダーが確率解析ができる安定解析ソフトを販売しているかどうか知りません。私はここ20年間はRocscience社のソフトばかりを使っていますが、それでは以前から普通にできていました。

過剰間隙水圧を作用させる方法も、3つくらい前のバージョンからできました(それ以前からできたのかもしれませんが、その方法を知りませんでした。異なる目的のツールで過剰間隙水圧を発生させるので)

確率解析については、安全率1.0を閾値とした崩壊確率が計算でき、とても素人の方でも理解できる論理性になります。いままでたくさん説明しましたので省略します。

過剰間隙水圧の作用のさせ方はマニアックです。
前のとし49

Slideには、上載荷重に伴う過剰間隙水圧を、過剰間隙水圧比B-barを使って作用させることができます。斜面の上に重いものを急速載荷した際に過剰間隙水圧が発生することを表現するためのツールです。

圧力水頭ゼロ地点から三角形分布で上載荷重を地表面に作用させます。そして、その荷重が過剰間隙水圧を発生させるというところにチェックを入れます。

ここからが味噌なのですが、本当の荷重値を入れるとそれがおおきく安定計算に関与してしまうので、工夫をします。比高h×γw×0.001として、1000分の1の三角形荷重を作用させます。そして、過剰間隙水圧比B-barを1000倍させます。こうすると、位置エネルギー起源の過剰間隙水圧を発生させることができます。

PDR等による対策をする際には、その地点で圧力水頭ゼロにして、その下に過剰間隙水圧を発生させます。PDR本数分だけ同じことを繰り返します。
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これで、対策まで過剰間隙水圧を考慮した安定計算ができます。下記は、昨年度の日本地すべり学会でお話ししたスライドです。使用ソフトはすでにバージョンアップしていますが、同じやり方でできます。

一連の流れは、当社から土層強度検査棒を購入していただくと、詳しく説明することができます。たぶんここに書いたことだけでは、いろいろな壁にぶつかられるはずなので・・・。

それに加えて・・・この解析法および対策法は昨年特許取得済みです。とはいえ、解析に特許使用料を取るということはしません。ただし、変なやり方をされても困るので、いろいろマニュアル類は整備したいと思います(もちろん無料で)。

特許を取得している以上は、金儲けを考えているわけですが、それは各種排水パイプにかけます。設計にはかけませんが、契約している排水パイプを設計折込していただきます。当社と契約済の排水パイプであればこの解析法で設計し、施工できます。契約していない排水パイプは、特許侵害となりますので損害賠償の対象となります。

表層崩壊深が1.0〜1.5m程度になる理由(3)式で書くとこうなる

過剰間隙水圧が作用すると内部摩擦角期限の抵抗力(N-U)tanφはマイナスになりますので、ゼロです。すると抵抗力は粘着力成分だけです。(5-6年かけて、「崩壊は爆発だ!」を宣伝してきましたが、崩壊の瞬間の映像等の存在もあって、かなり信じていただけるようになったので、そろそろ斜面崩壊予防対策ビジネス−民需です−を本格稼働したいと思っています)

単位幅1mで考えてみると、安全率1.0のバランス状態は

抵抗力=c/cosθ
滑動力=γZsinθ

これが等しくなるので、式を整理すると

崩壊深 Z=(c/cosθ)/(γ・sinθ)=c/(γ・sinθ・cosθ)=2c/(γ・sin2θ)

となります。

表にするとこうなります。1.0m以上1.5m未満になるのは、傾斜角が30-35゜の場合には、c=7.5kN/m2〜10kN/m2程度なので、土層強度検査棒で崩壊地を計測しに行った時の最頻値と同じくらいです。要するに、がけ崩れの崩壊深は、表層土砂の粘着力で決まっていた、ということです。コロンブスの卵みたいに簡単な話ですね。
表44

グラフにすると下記のようになります。うちの裏山は大丈夫だろうか?どんな崩れ方するんだろう?と問われたら、土検棒で表層土砂の粘着力を調べれば良いということになりますね。土検棒で粘着力が調べられるようになると、いろいろなことがわかります。

なお、崩壊深は粘着力でわかりますが、対策工は内部摩擦角を利用します(過剰間隙水圧消散工は土本来の抵抗力が発揮できるようにします)ので、ますます土検棒の有用性が高まります。

グラフ45

でもこんな簡単に終わると、業務になりませんから、十分な報酬が得られる仕事でやる場合には、土層深をきちんと計測し、土検棒で強度値のばらつきもちゃんと評価し、過剰間隙水圧もきちんと作用させて、対策工の提案まで行いましょう。技術の安売りはだめなので。

表層崩壊深が1.0〜1.5m程度になる理由(2)土が浮くことがわかれば理解できる

今年の日本地すべり学会研究発表会で美馬君が発表したのは、土が水圧によって浮くという実験でした。

土が浸透力で浮くことは土質工学的には特にどうということはない当たり前の現象です。ヒービングやボイリングはその理屈になっています。

ところが斜面屋さんは、間隙のある土は水が素通りするから浮くはずがないと言います。「実際に浮いたら信じてやる」という人が複数人いたので、反証をひとつ提示することにしました。

当然浮くわけですが・・・

これが、表層崩壊を理解するうえで重要となります。
みま46

表層崩壊跡を見ると、土が吹き飛んでいるように見えるところが多々あります。地表面までの静水圧ではこんなことは起きないので、それ以上の過剰間隙水圧が作用していると想像できます。実験室では高さが稼げないので再現できないかもしれませんが、山は高さを持っているので位置のエネルギーを過剰間隙水圧に変えることができます。

ソイルパイプが飽和すればよいだけです。それに見合った雨が降ればよいだけです。見合った雨とは、土壌雨量指数履歴順位第一位(観測期間が短いのでそれ以上の場合も多々ある)の雨のことです。

過剰間隙水圧をノミとして使って、侵食の神様はあらゆる斜面を侵食し、海に運んで、陸地を平らにしようとしています。だから極論を言えば、傾斜地で崩れないところなどひとつもない、ということです。ただし、適切に災害要因を除去しておけば、その機能が維持できている間は、崩壊確率が小さくなります。

つづく

表層崩壊深が1.0〜1.5m程度になる理由(1)斜面傾斜角と粘着力がわかれば崩壊深はわかる

スベリや崩壊の形状に関する統計値が土研などから公表されています。それらの資料を見て「そういうものか」で終わるか、「なぜそういう値になるのだろう」と考えるかは、その後の技術者人生にとって天と地ほどの差が出るんじゃないかと思います。理由がわかることは、とても面白いことだから、興味を力にして仕事ができるので苦痛がなくなります。

幅/深さ比は、底部抵抗力と側部抵抗力の強度比が決定要因であることは、これまでのブログで解説しました。崩壊深については、まだきちんと書いていなかったような気がします。

崖崩れ統計では、崩壊深の最頻値は1.0-1.4m(たぶん1.4m台ということなので1.5m以下ということ)となっています。もう少し幅を持ってみれば、0.5-2.5mくらいが多いとも言えます。
統計42

なぜ、こんなことになるのでしょうか?雨で崩壊するとき、内部摩擦角由来の抵抗力は、過剰間隙水圧で失われます。粘着力由来の抵抗力だけになります。

(土質屋さんの中の多くは、砂質土は飽和すると粘着力が失われて内部摩擦角成分の抵抗力だけになる、と主張されます。「豊浦標準砂病」です。)

斜面の傾斜角θと粘着力cがわかれば崩壊深Zはわかります。

cが小さければ崩壊深は浅く、cが大きければ崩壊深が深くなります。こんなふうに。
グラフ45

表層崩壊深が1.0-1.5mになるのは、表層土砂の粘着力が7.5〜12.5kN/m2となることが多いからです。崩壊深が2.5mで斜面傾斜角が30度なら、cは17.5kN/m2くらいです。

表層崩壊は、木の根などの影響を強く受けるという人がいますが、わざわざ根のあるところをぶった切ってすべり面を作る必要など無いので、それは妄想です。

つづく

危ない土地の地価(4)危ない土地を安全な土地に変える

こういう「花咲かじいさん」的な話はとても魅力的です。

土石流と地すべりではなかなか実現できませんが、崖崩れはできる可能性があります。

イエローゾーンに安全に暮らす、というのは魅力です。レッドでもいいのですが、法規制がかかっていると不自由だろうと思いますので、レッドを外してイエローにした上で安全に暮らす、または利用する、で良いと思います。

その場合、対策費が必要なので、イエロー1割、レッド3割ではビジネスになりません。もっと土地価格が下がらないと対策費用が出ません。対策費を加えても路線価より安くないと魅力がないじゃないですか。

そこでは、「ほんまはどやねん」がわかる技術者が必要になります。なんて素晴らしいことなんだ!

メルヘンのように言っていますが、実はいま力を入れているビジネスはそれです。

崖崩れの真の理由を突き止め、それを除去し、自然現象を確率的に評価するという組合せで、イエロー・レッドの崖を崩れないようにするビジネスです。

これから、イエロー・レッドの崖の被害を受ける場所に住む方々が、その発生源となる土地の占有者または所有者に「安全にしてくれ!」と要求し始めます。詐欺師が「危ない土地」といったわけではなく、公的基準に基づいて、公が指定したのですから「危険にきまっている」と裁判所も判断するはずです。訴訟になれば、「占有者または所有者は安全となる措置をしなさい」となることでしょう。

それがビジネスになるのは、それを解決する方法論が公的基準にないからです。あったらビジネスになりません。

具体的な方法論は、このブログで散々書いてきていますので省略します。

危ない土地の地価(3)実勢価格は大暴落?

路線価などは大本営発表の土地評価額ですが、実際に売買する際には、実勢価格になります。土地の売買では重要事項説明というのがあって、土砂災害警戒区域であることは言わなければなりません。特に土砂災害特別警戒区域になっているところは地価が大暴落するかもしれません。

なんといっても、「できれば移転してください」というのがレッドゾーンです。

構造的に強固なものであれば建てることはできますが、それは人が死なないというだけであって、土石流が避けて通ってくれるわけではありません。そんな土地が高く売れるでしょうか?

実事例では9割減となったところもありました。

レッドゾーンと言っても、地すべり・土石流・崖崩れでは感じが違います。私は土石流はオールレッドゾーンでいいと思います。なんたって怖い災害です。

崖崩れは、対策のしようがあるのでだいぶ趣が違います。

地すべりは、逃げる時間が十分ある場合が多いのでオールイエローでもいいと思いますが、でも財産は全滅です。

先日、ある自治体の建築関係の方と話をしました。

「この土地は危ないよ」というと、営業妨害だと訴えられかねないので、「その土地はうちでは仲介・媒介できません」「こちらの土地なら良いと思いますよ」という土地取引をすれば、そのうち「あの不動産屋はこの土地は決して扱えないと言ったぞ!」という評判となり、土地の安全性について考えるようになるんじゃないか。

というメルヘンを話しました。

危ない土地の地価(2)イエロー1割減、レッド3割減

どれだけ下がるかというと、路線価は下がりませんので表向きはゼロです(当初の説明に嘘がないことになります!)。ただ固定資産税評価のときには、イエロー1割、レッド3割の減価というところが多いようです。
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4割超の減価がイエローでも発生すると考える自治体もあるようです。

固定資産税の評価としての地価=路線価×補正率です。

路線価=路線価×補正率(プログラムの表記的)のほうがわかりやすいのですが、そうはなっていません。

路線価そのものを減価すると、特に都市部では問題が起きるからではないでしょうか(妄想モード)。以前、谷埋め盛土の地震時滑動崩落の危険箇所(造成宅地防災区域)の際に、ある自治体の方が「そんなもんに指定したらどうなるかわかっとるやろな」と脅されるようなことを言っていました。

都市では不動産は借金の担保になっていることが多く、地価が下がると担保価値が下がることになるため、追加担保を差し出すか、借金を返すかしなければなりません。事業をやっているものの立場では、「勝手に役所が変なものに指定して事業が不利益を被った」ということになります。

土砂災害警戒区域でも路線価が下がらないのは、対銀行対策ではないかと妄想しています。でも銀行ともあろうものが、そんなこともわからないのかなぁとも思います。

危ない土地の地価(1)土砂災害警戒区域になっても地価が下がらない?

2018年の7月は豪雨災害と台風災害がありました。8月9日に開催された平成30年7月豪雨災害関西調査団速報会で釜井先生が発表された資料です。

平成30年7月豪雨による都市域の斜面災害(釜井先生)

釜井先生は、「固定資産税は自治体からの重要なメッセージ」だと言われます。固定資産税算定のもととなる路線価はリスクに応じて変動すべきだということです。全くそのとおりだと思います。

「安物買いの銭失い」という良い諺が日本にはあります。これは強いメッセージですが、土砂災害警戒区域の路線価は安くなっていません。

もともと、この指定が始まる頃(10年位前)に、「土砂災害(特別)警戒区域に指定されたからといって地価は下がりません」という話を聞いたことがあります。「そんなバカな!」と思いましたが、そう言わないと指定が進まないと考えたからかもしれません。

地元説明に行くと「そんなの指定されたら地価が下がるじゃないか!」ということで合意に至らず公表が遅れたということがありました(法律上地域の合意はもともと不要なのですが、地元自治体が説明するので理解をしてもらうことが重要だったのだろうと思います)。

広島の土砂災害(2014年の)後に、地元合意は不要と改めて強く指導が入ったので、指定・公表が速やかに進むようになりました。

さて、地価は本当に下がらないのでしょうか?

路線価は下がらないようです。ただし、固定資産税を算定する際に補正率によって安く評価する方法を取る自治体はあるようです。少し古いですが、次の資料にそれが書かれています。

災害想定区域指定に伴う固定資産税評価〜土砂災害警戒区域指定に伴う土地評価のありかた〜市町村課税政グループ森野英三・大黒雄幸平成27年1月

イエローでは8割強の自治体で「減価なし」ですが、レッドだと36%しか「減価なし」はありません(その比率は驚くほど多いですが)。

イエローだと地価は下がらないが、レッドだと下がるよね〜、というのが多いようです。

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崩壊の瞬間映像(2)あなたならどうしますか?

MBSがこの崩壊現場の空撮映像を出していました。このブログ掲載日にはすでにリンク切れとなっている恐れがあります(7/9に現地で遠方から写真を撮りにいきましたので私はリンク切れでも構いませんが)。昨日チェックしたら案の定、リンク切れでした。

近畿各地の土砂崩れの「共通点」は? 被害現場から見えてくるもの

この映像の中で、県立鈴蘭台高校側から写したものに、水路と集水桝が写っていました。その横から崩れています。ひょっとしたら・・・(以下自粛)。
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どこから水が供給されようと、圧力水頭ゼロ地点からの比高で過剰間隙水圧は作用します。圧力水頭ゼロ地点は、斜面最上部であったり、斜面途中の崩壊跡だったりします。外に対して開放されている場所が圧力水頭ゼロ地点です。

この崩壊では、けが人等は出なかったようです。ただ、家には被害があったようです。斜面とこういう位置関係にある家は日本中に山ほどあります。どうしますか?
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もっとも賢明な選択肢は、次の建て替え時・引っ越し時に、安全な場所に移転することです。次善の選択肢は、斜面が相対的に崩壊しにくいように(意味:隣の斜面が先に崩れるように)対策をしておくことです。対策は、過剰間隙水圧消散工です。排水補強パイプなどで実現できます。

この崩壊の映像の凶暴さを見ると、どんな対策でも防ぎきれないような感じを受けます。ところが昭和40年代初頭に、国鉄技術研究所では東海道新幹線を走らせながら、排水パイプを打って人工降雨実験をやっています。どんな自信があったのでしょうか?
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相当の自信がないとできないことだし、それを管理者に納得してもらわなければできない実験です。その両者がうまくいったからこそ大胆な実験が行われたわけです。

私は当時の国鉄の技術者が、表層崩壊の本質を見抜いていたのだろうと思います。排水パイプが施工されていれば、人工降雨実験ごときで崩壊するわけがないという確信があったのでしょう。その自信は、「力のバランス上大丈夫」ではなく「崩壊に必要な要因を完全除去している」ことだったと思います。そうでないと、崩壊すれば大惨事を招くような実験はできませんから。

崩壊の瞬間映像(1)過剰間隙水圧だ!

神戸新聞のHP(2018/7/6)に崩壊の瞬間映像が掲載されていました。これはまさしく過剰間隙水圧のなせる崩壊です。土質工学の教科書に載っているような円弧スベリなどではありません。(そういえば、以前土木学会の講演会で、著名な土質研究者が「私は学校では教えているが、実際には一度も円弧スベリの跡をみたことがない」と言っていました)

私は円弧スベリ跡を見たことがあります。四国の三波川帯で、かつて海底堆積物中で起きた円弧スベリの化石みたいなものをです。地上では見たことがありません。たぶん、そんなのは絵空事だからでしょう。

2018/7/6 20:27神戸新聞NEXT
土砂崩れの瞬間 住宅地近くで発生 神戸
dosyakuzurenosyunkann 5

この映像は、近くの住民の方が異変に気付き(1回目の崩壊で気が付いたのだろうと思います。映像は最初の崩壊をとらえてはいません)、スマホで撮影されたものです。

水と泥が噴き出しています。

私の考えている過剰間隙水圧悪玉説はこのイメージそのものです。

ということで、神戸新聞に連絡して撮影された方とコンタクトを取り、この映像のファイルを送っていただきました。これから土砂災害警戒区域の管理者の方々が、管理地の安全性を高めたいという場合にも説明資料として使えると思います。もちろん学術学会や防災講習会でも使えます。

この崩壊を予防するためには何をしたらよかったのか?

これを考えればよいだけです。

私は、土検棒を使って計測したc・φで安定計算してみると、静水圧(いわゆる地下水位)だけでは安全率が1.0を下回らない(すなわち、崩れるはずがない!)ということにばかりなるし、実際の崩壊現場に行ってみると土質工学の教科書のような円弧スベリがないことなどから、位置エネルギー起源の過剰間隙水圧が犯人だろうと思っていました。

高知の繁藤で起きた災害の記録誌や、和歌山県花園村の有田川水害の記録誌などに書かれている「山の上に水柱が立った」も過剰間隙水圧の吹き出しだろうと思っていました。

対策は、水圧が高まる前に圧力を抜いてやれば良いだけです。風船にあらかじめ穴をあけておけば破裂することはない、の理屈です。

土砂災害の80%は表層崩壊、それを退治するPDR

深層崩壊や大規模地すべりなどが注目されやすいですが、土砂災害の80%は表層崩壊です。表層崩壊は厚さ2m未満の規模が大半で、最頻値は1.0〜1.4mです。どこにでもある崩壊ですね。いま西日本に降っている大雨で、これがたくさん起きると、甚大な被害を発生させます。

昭和39年の東京オリンピックに間に合わせるように造られた東海道新幹線は、雨が降ると盛土法面が崩れていたそうです。それを回避するために、様々な工法が研究され、鋼製排水パイプができました。毎日ラッシュアワー並みに走っている東海道新幹線が、こういう技術で表層崩壊を回避していたということを知る人は、JR関係者以外にはあまり多くありません。
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東海道新幹線の盛土区間にはほとんど入っています。その総量は100万本を超えています。そして、驚くことに、表層崩壊は無くなりました。最近は、道路(盛土が多いが切土も)や造成地で活用されています。土砂災害警戒区域に指定された箇所では自然斜面にも活用されようとしています。

これを考案されたのが、斎藤迪孝先生らの偉大な先人たちです。

当時の形と今の排水補強パイプはほとんど変わっていません。高耐食性メッキになったことと、プイレスネジ継手ができたことくらいです。形を頑なに変えなかったのは、偉大な先人たちの文字化されていないノウハウがこの形の中にあると思っていたからです。
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この排水補強パイプ(PDR工法)があまりにも効きが良いことがむしろ疑問でした。単に地下水位を下げるだけで、こんなに効くものか?と思ったわけです。
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その原因の一つは、鋼材による地盤補強効果、そしてもう一つは過剰間隙水圧消散効果だと思っています。現在は、後者の効果のほうが大きいと確信が持てるようになりました。

当然自然斜面の表層崩壊も同じ理屈なので、崩れたら困る斜面に施工しておけば、その下の家だけは守られます。日本中の、「守りたいものだけ」を排水補強パイプで守っておけば、記録的豪雨がやってきても、地盤の排水能力が自然が行使できる大雨を超えるので、パイプが機能している限り崩れたくても崩れられなくなります。

特徴1:施工スペースが狭くても良い

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特徴2:崩れる土には何でも効果がある。堤防でも、擁壁でも

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特徴3:水圧消散ならタテ打ちでも下打ちでも効果がある
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特徴4:なめらかな外周なので砂が入りにくい(工夫をこらした排水パイプ-たとえばスパイラル管などは地盤を乱してしまうためストレーナーから大量の砂が入ってしまいます)

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【臨時ニュース!】耶馬渓崩壊地の地下構造

2018年4月11日に発生した耶馬渓崩壊を、約1ヶ月後の5月12日に調査を行いました(土木学会斜面工学研究小委員会の調査団として美馬くんが実施しました)。微動アレイ探査は、地下深部のS波速度構造を、地表の微動の計測により解き明かす非破壊の物理探査法の1つです。
Vs構造断面図

通常は、正三角形アレイを組みますが、今回のような現場でその形状でアレイを組むのは困難なので、直線状のリニアアレイとしています。また、本来は同じ標高の平坦地で、地質構造が水平構造と仮定できる場合に用いるものですが、一定勾配の傾斜地でも適用は可能です。とはいえ、こういう山岳地の崩壊現場で適用する事例は、これまでほとんどありませんでした。表層部に非常に硬質な地盤があると、表面波が出にくく解析が難しい面はありましたが、なんとか解析しきれたようです。
微動アレイ探査計測状況

耶馬渓は、上部に大規模火砕流起源の硬質な高溶結凝灰岩が分布し、下部には低溶結または非溶結の火砕流堆積物が分布します。その下位にはかなり古い時代の中新世火山砕屑岩類(安山岩溶岩や凝灰角礫岩)が分布します。
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微動アレイ探査で得られた速度構造は、その地質学的分類や、滑落崖の露頭状況から推定されるものと整合的でした。尾根上から行ったものの最深部に低速度の箇所があります。この情報だけから言い切ることはできませんが、大規模火砕流は水の中に流入した際には「水つき」と呼ばれる非溶結部を作りますので、下位の中新世火山砕屑岩類がつくる、「その当時の水の存在する地形」だった可能性もあります。(溶結凝灰岩は陸上堆積物なので、その当時の陸上地形を埋めています。その埋没地形が地下水の流動方向や量を決めています。)

崩壊土砂内で実施したNo.2地点での計測結果からは、明瞭な低速度位置が抽出できており、たぶんここがすべり面でしょう(これからボーリング調査が実施されるでしょうから答え合わせができます)。

微動アレイで得られる速度層は、アレイの中心部の鉛直下方向の速度層なので、ボーリング調査と同様の1次元情報です。3箇所で実施した1次元構造を、EVSというソフトウエアのクリギング(方向性のバイアスをもたせることができる機能付き)で断面図にしました。もともとEVSは、空間の3軸と、時間の1軸を加えた4次元可視化ソフトウエアです(当社が日本の販売代理店になっています)。

地質調査にはボーリング調査ももちろん必要ですが、物理探査でボーリング調査以上の成果を、安価に出すことが可能です。物理探査が専門業者化し、地質コンサルの収益がボーリング調査の手配マージンに依存するのは、地質調査業界全体にとってあまり好ましいことだとは思いません。いろいろ新しい技術を組み合わせて良い結論を、依頼者にとっては安価に、事業者にとっては高収益に出すことが発展の肝だと思います。

物理探査は、機器やソフトウエアは購入すればよいだけですが、やはり良い成果を出すためには背景となる知識が不可欠です。当社はもともと物理探査をしていなかったので、TK海陸調査事務所の北さんを物理探査技術顧問として迎えて、いろいろ指導していただいています。そうすると、ますます物理探査で問題解決できる、、、というかボーリング調査よりもずっと優れているケースが多いことがわかります。例えば、土工事の設計に必要な土軟硬区分などは、ボーリング1本から推定するより、弾性波探査で行ったほうが精度が高くなります(両方あればいいんでしょうけど)。
弾性波41

崩壊には広域の水が関与している

資料を探していたら、北海道建設新聞社の写真集が見つかりました。2016年8月の台風災害の記録です。知床公園羅臼線で間欠泉のように水が噴き出し土砂を崩した映像を昨年の地すべり学会研究発表会で見せていただきましたが、その現場の写真です。
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その年に出された文献も見つかりました。

2016年8月の豪雨斜面災害と周氷河性斜面堆積物 -知床半島の調査と日高山脈の地すべり学会・地盤工学会合同調査の概報-(石丸  聡)
崩壊の発生が,雨が降り止んで 1 日半後であったにも関わらず,大量の水を含む崩壊であったことは,地中水の供給源が崩壊源周辺のみの地表からの浸透によるものではなく,さらに広域の水の関与を考える必要があるかもしれません

私は、これまでいろいろなところで発生した崩壊写真を見てきて、「その場所の地下水だけが崩壊に関与しているわけではない」と考えています。土検棒でc・φ計測し安定計算しても、その場所の地下水位が地表まで達しても安全率が1.0を下回ることは稀だということもその背景にあります。

山の上から水(水圧)が来なければ崩壊は発生しません。その水圧が何者か?どう評価したらよいか?というのは崩壊対策の本丸です。基準書の「一般的な値」を無批判に引用する人には永遠に解けない謎です。

学会で見せていただいた(個人の方が撮られた)映像は圧巻でした。山からすさまじい水圧の水が何度も何度も噴き出しているのです。ただ、この映像は非公開らしいので、別の映像しか公開されていません。

羅臼土砂崩れ2016 08 24
崩壊後30分経過した映像ですが、まだ水を噴き出しているようです。

羅臼の土砂崩れ 760人孤立 船で救出開始 (2016/08/25)北海道新聞
これはだいぶ経ってからの映像のようです。

すべての斜面は崩れるが、見方を変えるとまったく崩れないとも言える

平成29年の土砂災害、降雨・融雪によるものは過去10年で最多

災害は、人との関わりがあって初めて災害と認識されるので、災害数が斜面崩壊数とは限りません。平成29年は、約1500箇所で土砂災害が起き、ここ10年で最大だったと言われています。

1箇所あたりの平均崩壊面積を1ha(100m×100m=0.01km2)とすると、1500箇所×0.01km2÷0.1(捕捉率を大胆に仮定)=150km2となります。

日本の国土の中の山地・丘陵地の面積はそれぞれ230,000km2、44,000km2、合計274,000km2ですから、日本の傾斜地の0.05%が毎年崩壊するということになります。

毎年、個別の斜面が崩壊する確率は0%と言っていいということです。ただ、100年単位で見ると5%だし、1万年単位で見ると500%です。日本海拡大によって今の日本列島の姿に近くなった時が、1500万年前くらいですから、それ以降、日本の斜面はどこでも1500×5=7500回≒1万回は崩れたことになります。少しずつしか削られなくても、これだけの回数あると、山は、「おむすび地形」になれそうな気がします。

命題1:すべての斜面は崩れる(崩壊確率100%)

命題2:すべての斜面はほとんど崩れない(崩壊確率0%)

というのは、実は両方共正しいのです。タイムスケールをどのように捉えるかによって違ってきます。

そして、どこが崩れるかを支配しているのは雨です(地震も関係しているでしょうけど、頻度で言えば雨が圧倒的です)。雨は、長い年月をかけて、斜面を崩すレベルのものを日本中に等しく巡回します。だから、自然美となる山の地形ができるのです。(「地球温暖化で雨が少し多くなった」程度のことは誤差程度の影響しかありません)

このようなものに対して、生きている人間はどう対処していけば良いのでしょうか?

私は、基本は何もしなくていい(崩壊確率0%/年なのだから)が、守るべき命や財産にとって重要なところはすべて対策をした方がいい(すべての斜面は崩れるのだから)と考えています。ただ、巨費を投じて対策するのは不可能だし不合理なので、ちょっとの間だけ(一生の時間程度)、自然のバランスを変えて局所的に崩れにくくすれば良いのです。

土砂災害の8割を占めるのは表層崩壊(がけ崩れ)なのだから、表層土砂のバランスを一時的に変える=崩壊できるような高い水圧がかからないようにする、だけで良いのです。それで、一生安泰に暮らせます。人間は、崩壊確率100%の自然の中に間借りして住んでいるだけで、その間借りした場所を生きている間だけ「限りなく崩れにくく」しておけばよいだけです。

排水パイプによる過剰間隙水圧消散対策は、これを実現させるものです。

(種の保存という観点から考えれば、土砂災害の影響はほとんどないので、何もしなくて良いということになります。むしろ、将来の卓越種−人間とは限らない−が過去を研究するために土砂に閉じ込められた「化石」となるのも、ひょっとすると自然の神様の意志かもしれません)

死者が出ない土砂災害に焦点を絞る

土砂災害の犠牲者、過半数が高齢者 国交省が対策強化へ
過去20年間に土砂災害で犠牲になった556人のうち、高齢者が281人で過半数を占めることが国土交通省のまとめでわかった。
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中山間地で土砂災害が起きることが多く、中山間地の高齢者率が高いことから、土砂災害の犠牲者の中で高齢者が占める割合が多いというのは、当然そうなるだろうと思います。

昨年の福岡水害では東峰村などが大きな被害を受けました。「未来カルテ」でみると、2015年現在で東峰村の65歳以上人口比は40.5%です。土砂災害が起きる場所(山間部)に近づけば近づくほど、この比率が高くなることが予想されますので、人口構成がそのまま犠牲者の年齢比率となっていると見ても、大外れはしないように思います。

私は、それよりも20年間で556人という「総数」に興味があります。これは平均すると、年間27.8人の犠牲者ということになります。127百万人の日本の人口をベースに考えると、450万人に1人/年の割合です。

年間28人程度の犠牲者数というのは、正直言ってとても少ないです。多いものを少なくするのは案外簡単ですが、少ないものをさらに少なくするのはけっこう大変です。

となると、今後注目すべきは、死者が出ない土砂災害ではないかと思います。

不幸にして土砂災害でなくなると天国や極楽浄土に行かれますが、被災して生き残ると、場合によっては生き地獄です。マスコミは、死者が出ないとあまり報道しません。行政も死者が出たものには手厚く対策しますが、そうでない場合には、結構手薄で、冷たいことがあります。

記事にもあったように、死者が出る災害については国が本腰を入れるそうなので、民間コンサルは、死者が出ない土砂災害に焦点を絞っていくということが重要だと思います。

死者が出ない土砂災害というのは、資産が奪われる土砂災害ということです。資産管理・資産保全のビジネスになります。人間が生きるためのエンジンは欲ですので、上手に説明して宣伝すれば、ビジネスになりそうな気がしています。

土砂災害の危険性を「知った後」はどうなる?(3)対策はどうするのか?

対策工まで含めた一連の方法論を一昨年特許申請し、昨年特許取得できました。

具体的な対策方法は、これまで何度も書いているので省略します。

特許があると言っても、コンサルが技術的検討することに課金管理できるわけではないので、無償で使えます。課金は、数量管理できる対策工にのみ行う仕組みです。ただ、変な解析が横行するのも問題なので、e-ラーニングで最低限の技術レベルをクリアした方に限ろうと思っています。その手続きの費用はこちらが負担する予定なので、ユーザーのコンサルさんには一切の費用は発生しません(あくまでも予定です)。

ユーザーの制約事項は、正しい検討方法を使うことと、対策工は当社と特許使用契約したもののみを提案することだけです。契約外の材料を使うと侵害行為となります(そうしないと当社のビジネスモデルが壊れます)。

これがビジネスとしてうまくいくのかどうかは未知数です。ただ、当社のようなOBコネクションを使えない零細企業には合った方法だと思います。逆に言えば、大手・中堅コンサルのような公共事業受注ができないので、こういう方法に至ったのだろうと思います。(公共事業で使うには、なが〜い道のりがあるので、考えていません。民事訴訟の際に裁判所が認めるというところを目指します。裁判ではわかりやすさが一番物を言います)

OBがいなくても頼りになるのは法律、この場合は特許法です。

いままで、対策をするかしないかは技術とは別の理由で決まることが多かったと思います。それは現状評価方法がなかったことと、対策費用がとても民間事業者や個人が負担できる額でない高規格のものに偏っていたからです。

土砂災害警戒区域という「公が認めた危険区域」によって、事態は大きく変わります。

土砂災害の危険性を「知った後」はどうなる?(2)方法論はあるのか?

足らずを造り、壊れたら直す、というのがこれまでの斜面防災でした。特に公共事業ではそうでした。

現状の斜面の安定性評価というマーケットは、道路防災点検などでわずかにありましたが、評価法は技術者の経験と勘に頼ったもので、合理的な方法論はありませんでした。しかも、実際に大雨の後で答え合わせができてしまうわけですが、その正答率はとても低いものでした。

公共事業以外の斜面では、この危険性の評価という仕事は前々からありました。防災に使うお金など、たらふく持っている民間事業者や個人はほとんどいませんので、対策すべきほど危険なのかどうかという「判断」を彼らが行う必要があり、対策工が必要となった後で実施する対策工も、公共事業規格では高価すぎてできないので、最小限を求めます。

評価の仕事を引き受けるコンサル側も、公共事業ではマニュアルや基準に従って仕事をしていれば、安全と判定した箇所が崩れたところで「不可抗力」という逃げ道がありますが、民間からの依頼の場合にはその言い訳は通用しません。

そのうえ、委託費用は公共事業に比べてとても安価なので、利益がないのにリスクはでかいわけですから、敬遠するコンサルが大半でした。

皆がやりたがらない仕事というのは、営業的には一番楽な仕事なので、当社はそこを解決できるようにすることを目標にいろいろやっていました。それには、安価で、かつ合理的で、かつリスクを回避する方法論までもが必要でした。

「合理的」に関しては、斜面問題は教科書的には安定計算で解決することになっていますので、それに乗っかるのが大前提です。愚直にそれに乗っかるのです。

そのためには、地盤モデルと物性値の実測が不可欠でした。土木研究所で作られた土層強度検査棒は、それができる装置でした。それも簡便に。これを使えば、「安価」も同時に実現できました。

実際に実測値で安定計算してみると、静水圧をいくら最大にしても崩れない斜面が大半でした。普通の大雨で崩れるような斜面だったら、とっくに侵食されつくしているのだから、これはある意味合理的な結果でした。

安定計算式の中で変化要因は水圧しかないので、別の水圧を考えることが合理的でした。(数値解析屋さんなどは、土の強度変化を考えるというウルトラCを言われる人もいましたが、私はそれは邪道だと思っています。)

斜面の安定計算で安全性や危険性を評価する際の閾値は、安全率Fs=1.00以外には存在しません。答えは、二値問題になってしまいます。これではコンサルにとってリスク回避ができません。回避するとすれば、すべての斜面を危険と評価する以外になくなります(ある意味で、それは正しいのですが)。

「私は決して事故では死なない」と断言できる人は、損害保険に入る必要はありません。掛け金が無駄ですから。でも、ある確率で人は事故にあいます。だから少ない掛け金で大きな補償が得られる損害保険に入るわけです。

同様に、ほとんどの斜面が、ひとりの人が生きている間に崩壊することはありません。損害保険でカバーするのが最適な感じなのです。

要するに、危険性は「確率評価」するしかないということです。安定計算でFs=1.00を閾値として確率評価すれば、コンサルが仕事できる方法論になります。
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    (独)土木研究所開発
    土木研究所資料 第4176号 平成22年 土層強度検査棒による斜面の土層調査マニュアル

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