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想定外 想定外と 言い訳す 人智の限界 糊塗する言い訳

+++++「巨大地震=人工地震?」説を考える(1)
インターネットでは、日を重ねるにつれ深刻さを増す福島原子力発電所事故への不安と怒りの声で満ちています。「まったくその通り」と憤りの声に共感する日々です。一方で、この事故の直接の引き金となった巨大地震について、あの地震が「世界の闇勢力によって人為的に引き起こされた地震(人工地震)」であるとの「流言」をまことしやかに言いふらす仁も少なくありません。大地震の引き金とすべく、三陸沖に爆弾を仕掛けた、あるいは、電磁波を使って何がしかの爆破をしたというのです。これを「地震兵器」と言うそうです。世界支配をもくろむ闇勢力はこの「地震兵器」を以って、彼らの標的国を服従させる脅しの手段としているのだと言います(たとえば、元フォルブス誌アジア支局長フルフォード氏等)。こうした主張をする人たちは、この闇の勢力を「イルミナティ」であるとか、他の「何とか」であると訳知り風にネット上のあちらこちらで書きなぐっています。いわゆる「陰謀論」愛好家達です。

こうした無責任な「陰謀論」は、数万にも達すると思われるこの地震の犠牲者そしてそのご家族に対して誠に酷い「物言い」であると私は思います。
 今回の巨大な震災をすべて「闇勢力」に帰するならば、犠牲になられた方々の無念を思い、生き残った我々がこの災害から教訓を学び、この災難を繰り返させないための行動には、いかなる意味も無いことになります。何故なら、陰謀論に拠って立つ限りでは、無力な庶民には、それに抗う術がないと宣告しているも同然だからです。
 今回の大震災は、「闇勢力」がしかけた「人工地震」ではありません。人間の限られた人智への自然からの警告であったと思っています。言い換えれば人の智慧を超えた大規模な地学的変動であったと考えています。とすれば、誠に酷い表現ですが、津波災害は避けがたい悲しい事件であったと考えます。したがって、今回の災害から我々が学ぶべきことは無数にあります。その第一が、思い上がった傲慢な「自然を支配する」との妄想から脱却し、「自然との共生」へ私たちの思考行動を転ずることであろうと思います。
そのための具体的な行動をチャートするために、今回の災害は厳密に検証されるべきです。災害直後の原子力発電所の深刻な事故とその拡大、そして放射性物質の際限のない環境への漏出は明らかに人災です。また被災地への救援の稚拙、遅延も被災者の苦痛を拡大しました。これも人災と考えるべきです。さらには、いまだに復興の道筋が明確にされない、したがっていまだに行き当たりばったりの菅内閣の無策は最大級の人災です。
そうした検証はさておき、今日のブログでは、今回の巨大地震が、陰謀論(愛好)者が言うところの「人工地震」であったとの主張を考えてみたいと思います。
 以下のような投稿を見ました:「人工地震を見分ける科学的方法
http://www.asyura2.com/09/jisin16/msg/786.html
投稿者 my.test.done 日時 2011 年 4 月 01 日 10:41:41: nh3G/e53Vu8.Q」
 投稿者は、この地震が「人工地震」であるとの前提に立ちいろいろと検索し、地震学分野の学術誌に辿り着いたと想像されます。この論文は、地下核実験と自然地震の識別技術を述べたものです。多分、「包括的核実験禁止条約機構」(CTBTO)から委託された仕事を論文著者たちが研究論文としてまとめたものでしょう。
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 地震の波の振幅から地震の大きさ(マグニチュード)を推定するに当たって、二つの方法があります。一つは地震の波の最初の部分を計測する方法です(mb)。もう一つは、後続する振幅の大きい波を計測するやり方です(Ms).そこで、膨大な数の自然地震とこれまでに米ソなどで行われた核実験について、Ms、 mbを算出し、横軸にmb、縦軸にMsとって、個々の計算値を上図のようなグラフにプロットします。本来どちらも同一の地震の大きさを測定しているのですから、それぞれから算出される地震のマグニチュードは同一であるべきです(図で点線周辺に分布するべき)。実際は、上図に見るように自然地震はグラフの左上に、地下核爆発は右下に固まって分布するのです。この分布の違いは物理的に説明が可能ですが、ここでは、それは省略します。この分布の違いをもっと顕著にしようという試みが上のmy.test.done 氏が紹介する論文です。CTBTOでは自然地震と地下核実験の自動識別を精度良く行うための技術開発をしています。この論文はその技術開発の一環と思われます。そして、my.test.done氏が上記投稿の中で「爆発」ではないかと示唆する「前震」を上のグラフにプロットするとそれは、間違いなく「自然地震」の群に収まります。

 実は、もっと直接的な証拠があります。地震波記録上での最初の運動(上か下か)を世界中の地震観測点で調べることです。下の図に示したように、もし地下爆発であれば、どの記録上でも「上」になるのですが、今般の地震では、どんなに小さい地震でも、その運動は「上」と「下」が系統的に分布します(地震メカニズムと呼ばれる)。
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この手法を使うと、今回の地震のすべて、つまり前震、本震、余震、どれも地学的変動、つまり「プレート運動」に帰せられることわかります。より正確に言うならば、地球内部での「岩盤の横ずれ(剪断、せんだん)破壊」として理解できます(2009年10月5日記事 http://blog.livedoor.jp/oibore_oobora/archives/51302007.html)。

実際、気象庁そして防災科学技術研究所のHPで掲載されている地震のほとんどすべてが地球内部の岩盤の剪断破壊であり爆発型ではないことがわかります。4月2日の午後5時直前、関東地方に住む人たちは突然地下から突き上げるような地震動を感じたはずです。その数秒後、大きく水平に揺さぶる振動を感じました。これはS波が貴方のいる場所に到来したからです。この大きく私たちを横に揺さぶるS波を爆発源は励起しないのです(月刊雑誌「地球」、No.45,2004年)。そして、今回の巨大地震の前震、本震、余震のどれもが、大きなS 波を生じています。関東に住む私もそのつど大きなs波に震え上がっています。S 波を生じないような地震については、気象庁、防災科学技術研究所は、今回のおびただしい数の地震野精密な分析にもかかわらず捉えていないのです。言い換えれば、そうした地震は極少数又は皆無というのが科学的判断です。

気象庁、防災科学技術研究所が記録する地震の中には、いくつかの爆発型の例外的地震があります。それらは採石場での「発破」であり、それらは地上表面に起き、海底では見つかりません。地震の波を精査する限りでは、海底での爆発に由来すると思われる爆発事象は皆無なのです。

 ここで、陰謀論愛好家が好みそうな簡単な見積もりを示しておきます。ウイキペデャによれば、1トンの核兵器の最大出力はTNT火薬に換算して600kt相当だそうです。ただし、これは理論値で、実際には一桁ー一桁半ほど小さいようです。そこで、1トンの核兵器が30kt・TNT相当の破壊力であると仮定します。2009年6月5日の記事で私は
 http://blog.livedoor.jp/oibore_oobora/archives/51301956.html 
地下核実験の放出するエネルギについて書きました。この記事に付した図表を参照するとマグニチュード3の自然地震が放出する波のエネルギはTNT400トンに相当します。これだけのエネルギは20kg弱の核爆弾で放出できます。つまり、20kgほどの核爆弾を海底に設置し、リモートスイッチで点火するとそこにマグニチュード3相当の地震風の破壊を生ぜしむることができるというわけです。比較的手軽に核爆弾を爆発させることができそうだというわけです。

しかし、ここから発射される弾性波(地震波)は、日本列島に稠密に張られた地震観測網で完璧に捕捉されます。そして、どの地震計記録でも上の図のように上向きの運動が観測されるのであれば、陰謀論者の指摘どおりということになります。しかし、繰り返しますが、そうした事象、つまり、爆発型の地震はまったく観測されていません。世界に誇る日本の稠密な地震観測網と、精密な世界一の地震観測分析技術からは、海底での爆破があったとの証拠は見つからないのです。蛇足ですが、当然、これらの膨大な数の地震記録のどれにも、顕著なS波が検出されています。当然それらは爆発源ではないのです。 
次回は、これまでも繰り返し書いてきましたがHAARP地震生起説について書きます。