おいしうまいです。

 今回もアニメラブライブ!のμ’sについて政治的視点から考察してみましょう。

 前回の記事で私は、穂乃果達三年組が沖縄へ修学旅行に行っている間、暫定リーダーとして星空凛が指名された真相について述べました。

 そしてそれは、当時μ’s内にあった二つの軸、生徒会長にしてリーダーの穂乃果、そして、アイドル研究部部長にして一年組に大きな影響力のある矢澤にこの両者から見て最も中立的な立場にあるのが星空凛であり、だからこそ、派閥解消を推進して来た綾瀬絵里が彼女を推し、にこも穂乃果もこれに同意する流れがあったのだと結論しました。

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 暫定リーダーとは、事実上の次期リーダーでもあり、もうじき卒業する三年組を除けば、穂乃果・にこ両者から最も影響を受けにくいのが星空凛であり、だからこそ彼女は、様々なコンプレックスや悩みがあったにも関わらず、白羽の矢が立てられ、最終的にはセンターを務める事となったのでした。

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 この人選は成功し、これにより絵里が勧めるμ’s内の派閥解消へ向けて、更なる大きな一歩を踏み出す事が出来たと言えるでしょう。

 その後μ’sは秋葉原のハロウィンイベント出場や、穂乃果達のダイエット兼生徒会予算会議と多忙な日々を過ごしますが、この過程で明らかになった事が二つあります。

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 それが、高坂穂乃果と矢澤にこ、両者におけるリーダー性の違いについてです。

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 二年組三人の関係

 高坂穂乃果・園田海未・南ことりの三人は幼なじみであり、その関係は少なくとも小学生時代から続いています。

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 その絆は強く、私は以前の記事で、彼女達二年組を安定のグループと名付けました。

 その中心にいるのは言うまでもなく穂乃果と言う事になりますが、海未もことりも単に彼女の親友だっただけなのでしょうか?

 言い換えると、単に仲が良いだけで彼女達はここまで付き合いを続けて来たのでしょうか?

 もちろんお互い仲が良い、もしくは相性が合っていたと言う事もあったでしょう。

 ですが、特にμ’sを始めて以来、彼女達の関係性の真相と真価が、如実に表れるようになり、その全貌が明らかになるのが、このハロウィン回とダイエット回であると言えるのです。

 

 

 にこと穂乃果、二つのリーダー像

 九人からなるμ’sメンバーの内、スクールアイドルグループのリーダーを務めている(もしくは勤めていた)のは二人しかいません。

 一年生の時アイドル研究部を立ち上げ、部員達のリーダーとして活動していた矢澤にこ

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 そして、その三年後、音ノ木坂女学院廃校の危機を受け、母校を救うべくμ’sを結成した高坂穂乃果

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 この両者は共に自発的にスクールアイドル活動を目指した、そのためにアイドルグループを結成した、そしてリーダーになった点において共通しています。

 その反面、にこは三年になるまでに全ての部員達を失って孤立し、大きな挫折を味わっている反面、穂乃果は一時はμ’sを脱退する等、こちらも一度ならぬ逆境にさらされていますがその都度蘇り、最終的には第二次ラブライブ!の覇者になります。

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 にこは仲間を失い、穂乃果は仲間を獲得した。

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 そして、にこはスクールアイドル活動を挫折し、ほとんど諦めかける程失敗し、穂乃果はあらゆる困難にくじけず、最後には天下を取るまでに至った。

 これは偶然でしょうか?

 もしくはこの原因を、カリスマや能力、アイドルとしての魅力と言った比較的単純な理由に還元できるのでしょうか?

 もちろん、部分的にはそう言った要素もあったのは間違いないでしょう。

 成功者の必須要素に運があるのならば、間違いなく高坂穂乃果は類いまれなる強運を持っていたのは言うまでもありません。

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 ですが、ファン投票等では矢澤にこの人気は一貫して根強く、センター曲も与えられ、アニメ放映後それは衰えるどころかむしろ高まっています。

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 アイドル研究部を創設したにこは、東條希の証言によると、理想が高すぎたため他の部員達の離反を招いたとされています。

 そして彼女は、高坂穂乃果脱退時、にこりんぱなを結成して独自にスクールアイドル活動を継続しており、更には公式でも押されているにこまきのカップリングも含めて、一年組に対し大きな影響力を有し、それはさながら矢澤派と言う事が出来る点についてはこれまでの記事で何度か触れました。

 ですが、にこはアイドル研の旧メンバー達に対しても、現一年組に対しても、彼女達に頼ったり助けを求める描写はほぼ全くありません。

 かつてのアイドル研ではにこはメンバー達に自分の理想を押し付け、現にこりんぱな等でも凛や花陽に自分のスタイルを強要する事はありませんでしたが、逆に彼女達に対し、必要不可欠な役割を求めているかと言えば、そう言った描写は見られません。

 つまり、矢澤にこは完全なワンマン・トップダウン型のリーダーシップを発揮し、そのために旧メンバー達の退部を招き、さらにはにこりんぱなにおいても、指導者・先輩・そしてスクールアイドルのベテランとして凛や花陽達を引っ張る事は出来ても、彼女達の個性や役割、能力に支えられてチームを成長させるタイプでは無かったのです。

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 にこまきにおいてさえ、相性の良いコンビとして上手く回っており、個人的な信頼関係はあったでしょうが、にこが真姫の支えを特別に必要としていたかと言えば、少なくとも表面上そう言う描写は見られません。

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 極論すれば、にこの下では全てのメンバーが彼女に従う形となってしまい、より露骨な言い方をすれば、ただの駒になってしまいかねません。

 

 無論、にこにそこまでの悪意があったわけではないのは確かです。

 ですが、彼女はリーダーとして無意識の内にトップダウンオンリーのスタイルで突っ走ってしまい、だからこそかつてのアイドル研メンバーを失い、また、にこりんぱなやにこまきでも、一年組達に慕われながらも、自身は彼女達を頼りにチームを運営していく姿は(実際はどうであろうと)見えにくかったと言えます。

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 にことりの対話から見るにこのリーダー性


 このエピソードに関して、秋葉原で行われるハロウィンでインパクトを出すべく悪戦苦闘したμ’sでしたが、なかなか良いアイデアが出せず、残り少ない時間で準備をしなければならなくなった結果、にこと花陽は衣装係のことりを手伝います。

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 ですが、衣装係に回されたにこは、不満を口にするのみならず、ことりに対して損な役回りに慣れているのではないかとまで言い放ってしまいます。

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 これに対し、ことりはそんな事は無い、私には私の役割がある、みんながそれぞれの役割を全力で果たせば素敵な未来が待っているのではないかと静かに諭しています。

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 この対話から理解できるのは、にこは恐らくはアイドルとしてステージに立つ事以外の仕事を無意識に低く見ていたのに対し、ことりはそう言う仕事を含めて全ての役割に対し、それらが等しく重要であると認識していた事。

 言い換えると、にこは分業の重要性を全く理解していなかったのに対し、ことりは完全にそれを理解し、自分の言葉で伝える事が出来ていると言う事になるでしょう。

 さらに言えば、ことりの方がにこよりもはるかに合理的な組織運営をマスターしていると考えられます。

 合理的組織

 これはすなわち、それまでのにこと穂乃果のリーダーシップにおけるスタイルの差が如実に反映されていると考えられます。

 ワンマンかつトップダウン型のにこと、周囲のメンバーに何らかの役割を与えてその協力を引き出す穂乃果。

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 これだけで絶対的な優劣を決めるのは早急であり、場合によってはにこのスタイルの方が適切な時もあるでしょう。

 ですが、私たちは矢澤にこはそれによって以前のアイドル研究部の仲間達を失い、高坂穂乃果は9人の仲間で音ノ木坂女学院を廃校から救い、第二回ラブライブ!で優勝を果たすと言う偉業を成し遂げている事を知っています。

 
 

 穂乃果がなぜ成功したのか?

 高坂穂乃果は、例えば生徒会長の仕事をギリギリまで怠る、海未が口を酸っぱくしていくら注意しようと、健康診断で明確な数値が出るまではロクにダイエットをしようとしない等、アニメが進むに連れて、だらしない面が描写されるようになっています。

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 特に、第一期終盤においては、親友のことりを失ったショックから自暴自棄になり、自分が立ち上げたμ’sを勝手に離脱すると言い出したり、そもそもここまでの挫折を味わう原因の一つには、彼女自身が暴走し、ことりの変化に気づけなかった等、とても完璧とは言えない欠点をボロボロと見せています。

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 家で妹たちの面倒を見、家事を取り仕切っているにこの方が個人レベルでは明らかにしっかりしていたでしょう。

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 ですが、穂乃果の場合、だからこそ海未が叱り、ことりが宥める関係が自然と成立し、特に海未は、穂乃果がしっかりしていたら私の役目は無くなると発言しています。

 欠点まみれのリーダーだからこそ、自然と人の支えを得られ、支えを得られるからこそ、一方的なトップダウンではなく、多くのメンバーの力を引き出す利点を、穂乃果は早い内から理解していたのではないか?

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 力を引き出すと言う事は、メンバー達の個性や特徴、そして長所を見極め、それぞれの扱い方を覚え、それに相応しい役割を与えると言う事になります。

 これ全て、正に組織としてあるべき姿ではないでしょうか。



 
 
 平凡の非凡


 例えばにこは旧アイドル研メンバー達が退部届を出した時、黙ってそれを受け取っただけでした。

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 これに対し、穂乃果はことりが海外留学に行く直前、空港まで追いかけ、ことりに抱き着いて行かないでくれと懇願しています。

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 更にそれは、一時穂乃果と喧嘩していた海未の勧めによるものでした。

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 全てのメンバーを失った後も、にこは恐らくは意地とプライドでたった一人になってもスクールアイドル活動を続けました。

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 まさに孤軍奮闘ですが、それ故に孤立を招き、最後にはその活動も先細りになり、穂乃果達がアイドル研の門をたたいた時、それは事実上開店休業状態にありました。

 これに対し、穂乃果はことりを連れ戻すと、μ’sメンバー達とよりを戻し、その復活を内外に宣言。

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 アニメ第二期では綾瀬絵里から生徒会長職を引き継ぎましたが、これも一時弱含んだ穂乃果に絵里が手を差し伸べたのだろうと以前の記事で考察しました。

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 穂乃果が大勢の人達からかくも助けを得られたのは、間違いなく彼女が自分の力の限界を理解し、大きな業績を挙げるためには仲間やメンバー達の力を生かす重要性をよく理解していたからでしょう。

 しかも、ただ仲間に頼るだけではなく、その特徴や性格、長所等をよく理解し、それをうまく引き出す才能に恵まれている事は上で述べた通りです。

 まさに、高坂穂乃果は天性のリーダーであり、ライバルであるアライズリーダー綺羅ツバサから、早い段階でそのカリスマ性を認められ、大きな脅威と見なされていたのも、ひとえに己の力量よりも大勢の力を活かすそのスタイルにこそあったのは間違いありません。

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 この威力を前にしては、かりににこの方が個人的欠点が少なくとも、μ’s内において最大派閥を誇っていたとしても、勝てる道理が無かったのです。

 なぜなら、強烈な個性を持つにこ相手にでさえ、穂乃果はいち早く本質を見抜き、その扱い方と長所の引き出し方、働きかけたり宥めたりするポイントを理解し、μ’sのかけがえのないメンバーとしてベストポジションを与えてしまうからです。

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 十代半ばでこの力量はまさに恐るべしと言うべきで、彼女がスクールアイドルの天下を取れたのも、決して奇跡や幸運だけではなかったのです。


 

 にこの力量とは

 ここまで見て来ると、穂乃果の圧倒的なカリスマと力量が光る反面、まるで矢澤にこの方が小物に見え、リーダーの資質において大きく劣っているような印象すら受けるかも知れません。

 ですが、高坂穂乃果が天才的なリーダーである事をもって、矢澤にこの能力なり人間性を否定する根拠にはならない事は言うまでもありません。

 まず、穂乃果がスクールアイドルを始めた時、にこは既にアイドル活動を始め、挫折した後もアイドル研究部を守りつつ、恐らくは研究と情報収集に明け暮れていたと考えられます。

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 にこは三年生に上がるまでに二年間に渡ってスクールアイドルとしての経験やノウハウ・それに膨大な知識やデーターを蓄積していた筈であり、穂乃果達の仲間に加わってからは、彼女はその情報と独自に築き上げたアイドル理論を提供し、μ’sの勝利に貢献したのは間違いないでしょう。

 つまり、にこが一からスクールアイドルを始めなければならなかったのに対し、穂乃果はμ’s立ち上げ後、失敗談を含めてにこと言う先行者が持つ貴重なデーターを利用する事が出来、それが大きなアドバンテージになったのです。

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 また、私は上の方で、にこはかつての仲間達に対し徹底的なトップダウンの姿勢で臨み、穂乃果の様に彼女達に頼る事や、特別な役割を与える事が出来なかったと述べましたが、同時ににこはスクールアイドルに対して極めて高い理想と情熱の持ち主であった事は異論の余地が無いと思います。

 それ故にアイドル研究部の旧メンバー達は、その理想について行けないと次々と抜けてしまいましたが、にこりんぱなやにこまきの様に、彼女と同じ夢を共有する仲間達と出会った時は、強い絆を作る事が出来、一年組の内、凛が暫定リーダー、花陽は次期部長を務める事になります。

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 凛も花陽もスクールアイドル初心者であった事を考えれば、彼女達の成長ににこが一役買った事は間違いなく、理想を共有する仲間を育てると言う点においては、高坂穂乃果に匹敵するか、もしくは上回る実績を上げているとさえ言えます。

 また、μ’s加入後の彼女は、リーダーの穂乃果と最も衝突し、またその座を狙った事もありますが、同時に穂乃果がスクールアイドルに対し本気で取り組んでる事、並々ならぬ情熱と強靭な意思の持ち主である事を認めており、第二回ラブライブ!開催決定時には、μ’sを率いて大舞台に連れて行ってくれるのは穂乃果しかいないと確信するまでになっていました。

 にこはその後もアイドル研究部部長として、そして先輩として、穂乃果達の生徒会をフォローしたり、一年組の面倒を見たりとリーダーに相応しい行動を取っており、決して彼女がその資格が無いとは言えません。

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 μ’s内にはもう一人綾瀬絵里と言う元リーダーがおり、彼女も生徒会長時代、母校を廃校から救うべく悪戦苦闘しつつも、視野狭窄に陥り、本来なら手を組むべき穂乃果達μ’sと敵対すると言う大きな過ちを犯してしまいます。

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 この時点で彼女は既に三年生でしたから、恐らくは一年時に同じような失敗をしたにこの方がリーダー性に劣るとは決して言えないわけです。

 その絵里は穂乃果達と和解してμ’sに加入すると、メンバー達のまとめ役を率先して買って出ており、チームのムードを良くしようと常に配慮を示すなど、かつての失敗から学んで成長しています。

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 これは矢澤にこも同様であるのは言うまでもありません。

 こうして見ると、にこや絵里が劣っているわけではなく、高坂穂乃果が稀有な資質を有し、最初から海未やことりの様な仲間に恵まれていたと言う極めて大きなアドバンテージのを持っていたからであると言えるでしょう。

 園田海未は、穂乃果が一方的にμ’s脱退を表明し、後に和解した時、穂乃果の凄い所は、私達ではいけない所に連れて行ってくれる所にあると述べていますが、彼女達はその夢を見たさに、恐らくは欠点だらけの穂乃果に投資して来たと言う見方も出来ます。

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 同時に彼女は、私が怒ったのは、穂乃果が心にもない事を言って自分に嘘をついたからだとも告げていますが、自分の過ちを全力でいさめてくれる得難い仲間がいたからこそ、穂乃果は立ち直り、スクールアイドルの天下を取れたのだから、やはり強運においては並ぶものなしと言うのも間違いありません。