2009年02月26日

<特集ワイド>円高差益、実感したい! 荻原博子さんと銀座を歩いた

昨秋の米金融危機に端を発した世界同時不況は、日本経済を直撃した。為替市場では円高が急激に進むなか、不景気風が吹き荒れる。ひたひたと忍び寄る家計の危機。ならばせめて「円高差益」の恩恵にあずかるにはどうすればいいのか――。日曜の昼下がり、経済ジャーナリストの荻原博子さんと一緒に、東京・銀座を歩いた。【鈴木梢】

 ◇表示ないけど、相次ぎブランド品1割↓/ワイン、チーズ…スーパーは安売り合戦/原油価格急落…豚・鶏肉、野菜も値下げ

 銀座といえば、高級ブランド品。ユーロ安などの影響で、仏革製品のルイ・ヴィトンや仏宝飾のカルティエなどがこぞって1割前後、値下げしてあるという。ドル安で輸入コストが下がったなどとして、米宝飾のティファニーも昨年11月に指輪やネックレス、時計を平均約6%値下げ、今月からは平均約9%まで引き下げた。といっても、店先に「円高値下げ」などと張り紙がしてあるわけではない。分かる人が見れば分かる、といったところがイメージを重視するブランドたるゆえんか。

 ティファニーの広報担当によると、全世界売り上げは昨年末、前年より21%下がったなか、日本での売り上げは5%も増えた。世界でも「日本のブランド市場」だけは不景気とは無縁のようだ。

 ウインドーショッピングをしながら荻原さんは話した。

 「ブランド業界の知り合いから聞いた話ですけど、最近の売れ筋は超高級なものではなく、2万〜3万円の手ごろな価格商品になったみたい」

 昨年10月に1ドル=100円を割り込み、一時は13年ぶりに87円台をつけ、その後90円台という円高基調が続く。最大の打撃を受けたのが自動車などの輸出産業だ。輸出をすればするほど赤字となる構図となってしまった。でも裏を返せば、先のブランド品のように、輸入品は安くなる。円高差益だ。食料品など多くを輸入に頼っているだけに、恩恵は少なくないはず。銀座の老舗デパートに足を向けた。

 ところが……。数軒のデパートを歩いたが「円高セール」の札は見当たらない。デパ地下へ。ひな祭りも近づき、和菓子売り場には桜餅が並ぶ。2個470円! 荻原さんと思わず顔を見合わせる。買い物はもっぱら地元のスーパーという荻原さん。「昨日は近所で桜餅を一つ98円で買いました。魚も、今はタラよりサバ。高いものは買わない。庶民はそうやって、節約しているんです」

 やっとのことで「恩恵」の話を耳にした。三越銀座店の英老舗店「ハロッズ」では、3月から輸入商品を2割前後値下げする予定だ。缶入りの紅茶葉の価格は、2年前に円安で400円値上げするより以前の1500円になるという。

 07年に1ポンド=250円だった為替相場は、今年は120円前後まで下落、最安値を更新している。今秋開かれるはずだった大相撲ロンドン公演が取りやめとなったのも、ポンド安が原因だった。

 荻原さんは「為替相場が半分の値になったのは韓国のウォンだけではないんです。欧州通貨のユーロに加盟しなかった英国は、経済の後退が著しい。単純に言うと、輸入品は半額になってもおかしくない」と話した。けれども、半額にならないのはなぜ?

     ■

 もう一つ円高の恩恵が感じられなかった銀座だが、郊外の大手スーパーでは食料品の安売り合戦が激化している。荻原さんは「スーパーはかなり安くなっています。海外から直接仕入れするスーパーでは、ワインやチーズ、ハムといった輸入食品が値下がりしてますね」。

 イオンは「生活応援」として、円高還元やコスト削減などで最大2000品目の商品を値下げした。西友は低価格キャンペーン「KY(カカク・ヤスク)でいこう」を展開、より安い他店チラシを提示すればその広告価格で買える。荻原さんは「消費者の低価格志向は進み、高い店と思われるのは致命傷です。店側は安いという意識を早い段階から植え付け、消費者の囲い込みを始めています」と指摘。

 また、イトーヨーカドーなどはインターネットで注文すると指定時間に自宅に商品が届く「ネットスーパー」部門も強化している。荻原さんは「かつての御用聞きのように、自ら売りに出る攻めの姿勢なのでしょう」と見る。

 値下げが期待できるのは、輸入商品だけとは限らない。昨年、ビールやパン、乳製品の値上がりをもたらした穀物や原油の高騰は、米金融危機以降一変し、急落の様相を見せている。飼料価格が下がれば、豚や鶏肉、卵も安くなる。ガソリン価格が下がれば輸送コストのほか、遠洋や養殖の魚、ハウス栽培の野菜の価格も下がる――というわけだ。

 けれども、円高効果が表れるまで「時間差」がある。例えば、小麦。荻原さんはこう説明してくれた。

 「小麦の9割は輸入で、政府が一括して買い付けて製粉会社に売り渡しています。卸売価格は毎年2回見直されるため、今年4月には1割程度値下げされる見通しです」

 つまり今、食べている小麦は、まだ値下げされる前のものというわけだ。

 「次の10月まで我慢すれば、うどんやパンがもう少し安く食べられるかもしれません」

     ■

 「100年に1度」の経済危機といわれるなか、本質的な問題に突き当たる。円高の恩恵をわずかに受けたとしても、景気悪化を食い止めなければ家計は好転しない。

 荻原さんは話す。

 「輸出依存型の日本経済が一番いけない。この10年、企業は減税されたが、個人は増税となっています。その事実一つ見ても、輸出頼みのあまり、いかに企業が優遇されてきたかが分かる。不況を脱するには、日本の経済構造を外需から内需にシフトしていけるかにかかっています」

 麻生太郎首相が消費拡大の切り札として掲げる定額給付金。国民みんなで1万2000円分の買い物をしようと呼び掛けたいというわけだが、荻原さんは「給料が減っているんだもの、無駄遣いはできない。みんな貯金にまわすでしょう」とバッサリ。

 荻原さんによると、中川昭一前財務・金融担当相の「もうろう会見」では、「為替相場で3円安、株は300円安の衝撃度があった」とか。

 政治の劣化が日本経済の足をひっぱっている、ということだろう。

 麻生首相の昨秋の答弁にあった「カップめんは400円」では、私どもやっていけません!

oiuneuy at 18:30│Comments(0)TrackBack(0)clip!

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