2018年06月
貸倒損失の損金算入を否定した平成20年6月26日裁決の不当性
貸倒損失の損金算入を否定した平成20年6月26日裁決の不当性租税訴訟法学会ML 判例・裁決研究会 2018年6月25日1 弁護士 岡本 哲納税者にとって不当な裁決。国税犯則法平成23年改正前であるが、原処分庁の事実認定についても疑問がある。憲法31条の適正な手続認定・適正な内容へのセンスが感じられない。成松編274頁以下ではあまり問題意識はかんじられない。除斥期間経過後の損金算入を認めない点については憲法違反の問題があると思料する。拙稿「倒産法における支払不能と租税法の貸倒の齟齬」租税訴訟11号・2018年・59頁以下参照平成20年6月26日 【判示事項】 請求人が有する売掛債権は、その債権が消滅した事業年度の貸倒損失となるとした事例 【判決要旨】 請求人は、破産法人の破産について疑念を持ち、最後配当がされた後も売掛債権の回収を図ろうとし、最終的に当事業年度において回収不能と判断したことから、当事業年度の貸倒損失である旨主張する。 しかしながら、破産法人に係る破産手続はすべて適法に行われ、法律上、破産手続の終結決定があった日に法人格が消滅したものと認められることから、請求人が有する破産法人に対する売掛債権は当該終結決定の日に消滅したと認められる。そうすると、本件売掛債権は、当該終結決定の日を含む事業年度における貸倒損失であり、当事業年度の貸倒損失とすることはできない。 【掲載誌】 裁決事例集No.75 314頁 1 事実 (1) 事案の概要 本件は、○○製品製造業を営む同族会社である審査請求人(以下「請求人」という。)が売掛債権の全額回収ができなくなったとして損金の額に算入した貸倒損失の金額及び消費税の課税標準額に対する消費税額から控除した貸倒れに係る消費税額について、原処分庁が、当該売掛債権の全額回収ができないことが明らかになったのは当事業年度前の事業年度であるから、当事業年度の損金の額には算入できないなどとして行った法人税並びに消費税及び地方消費税(以下、消費税と併せて「消費税等」という。)の更正処分等に対し、請求人は、当該売掛債権の全額回収ができないことが明らかとなったのは当事業年度であるとして同処分の一部の取消しを求めた事案である。 (2) 審査請求に至る経緯イ 法人税関係 (イ) 請求人は、平成17年10月1日から平成18年9月30日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税について、所得金額を○○○○円及び納付すべき金額を○○○○円と記載した法人税の青色の確定申告書を法定申告期限までに原処分庁に提出した。 (ロ) 原処分庁は、これに対し、平成19年12月25日付で所得金額を○○○○円及び納付すべき税額を○○○○円とする法人税の更正処分(以下「本件法人税更正処分」という。)並びに過少申告加算税の額を○○○○円とする賦課決定処分(以下「本件法人税賦課決定処分」という。)をした。 (ハ) 請求人は、これらの処分を不服として国税通則法(以下「通則法」という。)第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第4項第1号の規定により、平成20年2月15日に審査請求をした。ロ 消費税関係 (イ) 請求人は、平成17年10月1日から平成18年9月30日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税等について、消費税の課税標準額を○○○○円、納付すべき税額を○○○○円及び地方消費税の納付すべき譲渡割額を○○○○円と記載した消費税等の確定申告書を法定申告期限までに原処分庁に提出した。 (ロ) 原処分庁は、これに対し、平成19年12月25日付で消費税の課税標準額を○○○○円、納付すべき税額を○○○○円及び地方消費税の納付すべき譲渡割額を○○○○円とする消費税等の更正処分(以下「本件消費税等更正処分」という。)並びに過少申告加算税の額を○○○○円とする賦課決定処分(以下「本件消費税等賦課決定処分」という。)をした。 (ハ) 請求人は、これらの処分を不服として平成20年2月20日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、当該異議申立てについて、通則法第89条《合意によるみなす審査請求》第1項の規定により審査請求として取り扱うことが適当であると認め、平成20年3月3日付で請求人に同意を求めたところ、請求人は同月6日に同意したので、同日に審査請求がされたものとみなされた。 そこで、上記イの(ロ)の処分と上記(ロ)の処分に対する審査請求を併合審理する。 (3) 関係法令等 関係法令等の要旨は、別紙のとおりである。 (4) 基礎事実イ 請求人は、平成9年5月○日付で○○地方裁判所○○支部から平成9年(○)第○号破産事件(以下「本件破産事件」という。)としてF社が破産宣告を受けたことの通知書を受領したことから、請求人のF社に対する売掛債権を破産債権届出書に一般債権17,288,710円及び劣後債権74,716円と記載して同支部に提出した。ロ 請求人は、本件破産事件の最後配当として平成11年2月16日に644,869円を受領している。ハ 本件破産事件に係る破産管財人の任務終了による計算報告のための債権者集会は、平成11年6月○日○○地方裁判所○○支部において開催されている。ニ F社の閉鎖登記簿の謄本によると、平成11年6月○日付の破産終結により平成11年6月○日に同法人の登記簿が閉鎖された旨登記されている。ホ 上記ハの債権者集会を受けて、平成11年○月○日付官報において、平成11年6月○日付で本件破産事件の破産を終結する旨公告されている。ヘ 請求人の平成18年9月15日付取締役会議事録によると、同日にF社に対する売掛債権16,231,609円(税抜き金額。以下「本件売掛債権」という。)が回収不能となったとして、本件事業年度において貸倒処理することが承認されている。ト 請求人は、本件売掛債権を本件事業年度において貸倒損失として損金の額に算入するとともに、当該売掛債権に係る消費税相当額を本件課税期間の貸倒れに係る消費税額として税額控除をしている。 2 主張 当事者の主張は、次のとおりである。 原処分庁 本件売掛債権が全額回収できないことが明らかとなった日は、以下のことから本件事業年度前の平成11年○月○日である。 したがって、本件事業年度において本件売掛債権の貸倒損失の計上は認められない。また、本件課税期間において当該売掛債権に係る消費税相当額を課税標準額に対する消費税額から貸倒れに係る消費税額として控除することはできない。イ 破産終結となった事実がすべての債権者に明らかとなるのは、最後配当が終了し破産管財人の任務終了による債権者集会が終結し、裁判所が破産手続終結の決定を行い、これを官報に公告した日であることから、本件売掛債権は、官報に公告した日である平成11年○月○日をもって、法人税基本通達9-6-2にいう、その金銭債権の全額が回収できないことが明らかになったと認めるのが相当である。 なお、請求人は、F社の最後配当があったとする平成11年1月29日以降Gの動向に注意していた旨主張するが、平成18年3月7日の○○税務署の法人税の担当職員からの本件売掛債権に対する質問を受けて、請求人は改めて調査をして回収不能と判断しており、請求人は、同債権の回収を安易に放置していたと考えざるを得ない。ロ 法人税基本通達9-6-2の定めによる貸倒損失の計上に当たっては、回収不能が明確になった限りにおいて、直ちに貸倒処理を行うというのが商法ないし企業会計上の考え方であり、いやしくもこれを利益操作に利用することは、公正妥当な会計処理とは認められないというべきであるから、請求人が資金繰り等大変な経営危機の状態であったからといって貸倒損失の計上を見送ることは企業会計上認められず、法人税法上においても、法人税法第22条第4項に規定する一般に公正妥当と認められる会計処理の規準に従って計算していないこととなる。 また、消費税法第39条では、貸倒れに係る消費税額の控除は債権に係る債務者の財産の状況、支払能力等からみて当該債務者が債務の全額を弁済することができないことが明らかである場合は、その明らかになった日を含む課税期間において貸倒れに係る消費税額の控除ができる旨規定しているから、請求人が資金繰り等大変な経営危機の状態であったからといって貸倒れに係る消費税額の控除の時期を見送ることは消費税法上認められない。 審査請求人 本件売掛債権が全額回収できないことが明らかになった日は、以下のことから本件事業年度の平成18年9月15日である。 したがって、本件事業年度において本件売掛債権の貸倒損失の計上は認められるべきである。また、本件課税期間において当該売掛債権に係る消費税相当額を課税標準額に対する消費税額から貸倒れに係る消費税額として控除すべきである。 イ 請求人は、F社の破産について強い疑義を持ち、最後配当を受領した以後も本件売掛債権の回収を図る意図で経理上も同債権を計上してきたものである。そして、平成18年9月に至って、F社の代表取締役であったGが所在不明で本件売掛債権の回収は困難であると判断し、平成18年9月15日に取締役会を開催し、本件売掛債権は全額回収不能であると認識し、本件事業年度において貸倒処理をしたことから、同日をもってその金銭債権の全額が回収できないことが明らかになったと認めるのが相当である。 ロ F社が破産申立てを行った当時は、請求人の年間売上げは100,000,000円前後で、F社に対する届出債権が17,000,000円余りであり請求人の経営状態からもできる限りの債権回収を行うことが必要不可欠であり債権回収をその時点で放棄することはできなかった。 3 判断 (1) 認定事実 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。イ 本件売掛債権は、平成9年2月24日までにF社との間でされた取引であり、F社が振り出し不渡りとなった約束手形13通額面金額17,285,352円及び売掛金78,074円の合計額である。ロ 請求人が当審判所に対し、平成20年3月25日に提出した「F社・G破産に関する事」との表題の文書には要旨次のことが記載されている。 (イ) F社が経営破綻した平成9年3月初旬に請求人の代表者とGが面接した際、請求人の代表者が少しは返済してほしい旨の要請をGに行ったのに対し、Gは、法的な措置に入ろうと思っているので何ともいえない旨の回答があった。 請求人の代表者は、F社及びGが保有していた高額な資産がなくなっていることからGが同人の妻の実家に高額な資産を隠しているのではないかという疑念が生じた。 (ロ) 請求人に対する破産手続きが開始された前後に請求人の代表者とGが面接したが、雑談のみであった。 (ハ) その後数年間は、様子見に徹しており、そろそろ借金の話をGに話してみようかと考えていたおり、Gが同人の自宅に訪ねてきた人間と借金のことで口論となり、暴行を受けたことが新聞記事に載り、請求人の代表者も財産を隠し、裁判所を騙すことで借金を踏み倒す行為を行うほどGは、卑劣な人間と思えなかったため、もう少し様子を見ることにした。 (ニ) その後数年間経過し、ほぼ忘れかけていた平成18年ころになって、請求人の税務代理行為を委任しているH税理士からF社に対する売掛債権の問い合わせがあり、確認したところ、Gは所在不明となっており、個人的にも返済が受けることができなくなったため、平成18年9月15日に取締役会を開催し、貸倒処理することを決定した。 (2) 貸倒損失が発生した日イ 上記1の(3)のイの(イ)のとおり、法人税法第22条第3項第3号は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額として、当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものと規定し、また、同条第4項は、同条第3項第3号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする旨規定している。 また、法人の有する金銭債権について貸倒れが発生した場合には、その貸倒れによる損失はその法人の損金の額に算入されることとなるが、これは、その貸倒れによって金銭債権の資産価額が消滅すること、つまり、貸倒れによる金銭債権全体の滅失損を意味する。 したがって、法人が所有する金銭債権が貸倒れとなったか否かは、第一次的には、その金銭債権全体が滅失したか否かによって判定され、その債権が滅失している場合には、法人がこれを貸倒れとして損金経理しているか否かにかかわらず、税務上はその債権が滅失した時点において損金の額に算入することとなる。 ところで、法人の破産手続においては、配当されなかった部分の破産債権を法的に消滅させる免責手続はなく、裁判所が破産法人の財産がないことを公証の上、出すところの廃止決定又は終結決定があり、当該法人の登記が閉鎖されることとされており、この決定がなされた時点で当該破産法人は消滅することからすると、この時点において、当然、破産法人に分配可能な財産はないのであり、当該決定等により法人が破産法人に対して有する金銭債権もその全額が滅失したとするのが相当であると解され、この時点が破産債権者にとって貸倒れの時点と考えられる。 なお、破産の手続の終結前であっても破産管財人から配当金額が零円であることの証明がある場合や、その証明が受けられない場合であっても債務者の資産の処分が終了し、今後の回収が見込まれないまま破産終結までに相当な期間がかかるときは、破産終結決定前であっても配当がないことが明らかな場合は、法人税基本通達9-6-2を適用し、貸倒損失として損金経理を行い、損金の額に算入することも認められる。ロ これを本件についてみると、以下のとおりである。 請求人は、F社に係る破産手続に関して、上記1の(4)のイのとおり、破産法(平成16年6月2日法律第75号附則第2条の規定による廃止前のもの。以下同じ。)第101条《破産債権の届出》の規定に基づき、本件売掛債権を破産債権届出書に記載し○○地方裁判所○○支部に届出をし、また、上記1の(4)のロのとおり、同法第195条《最後配当》の規定に基づき平成11年2月16日に最後配当を受領している。そして、上記1の(4)のハのとおり、同法第88条《破産管財人の任務終了の場合の報告義務等》第4項に規定する本件破産事件の債権者集会が同支部において開催され、上記1の(4)のホのとおり、同法第220条《破産手続終結の決定》の規定に基づき、本件破産事件が平成11年6月○日に終結したとして同年○月○日付の官報に公告されており、これら手続はすべて破産法に基づき適法に行われている。 この破産法における債権者集会が有する権限は、破産手続上の問題につき破産管財人に同意を与えること、破産の経過、計算等につき報告を受けることとされており、破産の手続によって債権の額が法律的に切り捨てられるものではないとされており、請求人が有するF社に対する売掛債権は、F社が破産した後も引き続き存在しているとも考えられる。 しかしながら、上記イのとおり、法人の破産手続においては、自然人の破産手続とは異なり、配当されなかった部分の破産債権を法的に消滅させる免責手続はないが、裁判所が破産法人の財産がないことを公証の上、出すところの廃止決定又は終結決定がなされた時点で当該破産法人は消滅することとなり、当該破産法人が消滅することにより、法人が破産法人に対して有する金銭債権も滅失することとなる。したがって、F社の破産手続終結の決定がされた時点において貸倒損失が発生したとするのが相当である。ハ 請求人は、F社が破産申立てを行った当時は請求人の経営状態から本件売掛債権の回収を放棄することはできず、最後配当を受領した以後も本件売掛債権の回収を図ろうとし、平成18年9月に至って、F社の代表取締役であったGが所在不明で本件売掛債権の回収は困難であると判断し、平成18年9月15日に取締役会を開催し、本件売掛債権は全額回収不能であると認識したことから、同日をもって本件売掛債権の全額が回収できないことが明らかになったと認めるのが相当である旨主張する。 しかしながら、請求人は、上記(1)のロのとおり、債権者集会が開催され法人の破産手続が終結した日(平成11年6月○日)以後、何らGに対して法的な回収手続を講じていないことからすれば、G個人が請求人が有するF社に対する売掛債権の法的な弁済義務を負っていたとは認められず、また、本件売掛債権は、上記ロのとおり、当該破産手続終結の決定があった日に滅失したと認められるから、仮に請求人が本件破産事件の終結以後もF社の破産について疑念を持ち、G個人から同債権を回収しようとする意思が存在していたとしても、個人保証等により法的にG個人が弁済義務を負わない以上、当該売掛債権は、F社が消滅した時点で滅失するのであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。 (3) 本件法人税更正処分について 上記(2)のとおり、本件売掛債権の全額が回収できないことが明らかとなった日は、F社の破産手続終結の決定がされた平成11年6月○日であるから、原処分庁が本件売掛債権の貸倒損失について本件事業年度の損金の額に算入できないとして行った本件法人税更正処分は適法である。 (4) 本件法人税賦課決定処分について 本件法人税更正処分は、上記(3)のとおり適法であり、また、同更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が同更正処分前の税額の計算の基礎とされなかったことについて、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定により過少申告加算税の賦課決定処分をした本件法人税賦課決定処分は適法である。 (5) 本件消費税等更正処分について イ 消費税法第39条第1項は、課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権について貸倒れの事実が生じたため、その課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収をすることができなくなった場合は、その領収をすることができないこととなった日の属する課税期間の課税標準に対する消費税額から、その領収をすることができなくなった課税資産の譲渡等の税込価額に係る消費税額の合計額を控除する旨規定し、消費税法施行令第59条では、債務に係る債務者の財産の状況、支払能力等からみると当該債務者が債務の全額を弁済できないことが明らかである場合には消費税法第39条第1項に規定する貸倒れの事実が生じたことに該当する旨規定している。ロ これを本件売掛債権についてみると、上記(2)のロのとおり、F社は、破産手続終結の決定があった日に消滅し、請求人が有する同社に対する売掛債権も滅失したと認められるのであるから、同日、F社が当該債務の全額について弁済することができないことが明らかになったと認められる。 そうすると、本件課税期間においては、課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権について貸倒れの事実が生じてはいないことから、本件売掛債権に係る消費税相当額を本件課税期間の課税標準額に対する消費税額から貸倒れに係る消費税額として控除できないとして行った本件消費税等更正処分は適法である。 (6) 本件消費税等賦課決定処分について 本件消費税等更正処分は、上記(5)のとおり適法であり、また、同更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が同更正処分前の税額の計算の基礎とされなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び地方税法附則第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定により過少申告加算税の賦課決定処分をした本件消費税等賦課決定処分は適法である。 (7) その他 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。 別紙 関係法令等イ 法人税法関係 (イ) 法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第3項第3号は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額として、「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの」と規定し、また、同条第4項は、同条第3項第3号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする旨規定している。 (ロ) 法人税基本通達(昭和44年5月1日付直審(法)25国税庁長官通達。平成19年3月13日付課法2-3による改正前のものをいう。以下同じ。)9-6-1《金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ》は、法人の有する金銭債権について次に掲げる事実が発生した場合には、その金銭債権の額のうち次に掲げる金額は、その事実が発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する旨定めている。 A 会社更生法の規定による更生計画の認可の決定があった場合において、その決定により切り捨てられることとなった部分の金額 B 商法の規定による特別清算に係る協定の認可若しくは整理計画の決定又は和議法の規定による和議(強制和議を含む。)の決定があった場合において、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額 C 法令の規定による整理手続によらないで関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額 (A) 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの(B) 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容が(A)に準ずるものD 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額 (ハ) 法人税基本通達9-6-2《回収不能の金銭債権の貸倒れ》は、法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該貸金等について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする旨定めている。 (ニ) 法人税基本通達9-6-3《一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ》は、債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権について法人が当該債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理したときは、これを認める旨定めている。 A 債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合(当該売掛債権について担保物のある場合を除く。) B 法人が同一地域の債務者について有する当該売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき ロ 消費税法関係 (イ) 消費税法第39条《貸倒れに係る消費税額の控除等》第1項は、事業者が、国内において課税資産の譲渡等を行った場合において、当該課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権につき会社更生法の規定による更生計画認可の決定により債権の切捨てがあったことその他これに準ずるものとして政令で定める事実が生じたため、当該課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収をすることができなくなったときは、当該領収をすることができないこととなった日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該領収をすることができなくなった課税資産の譲渡等の税込価額に係る消費税額の合計額を控除する旨規定している。 (ロ) 消費税法施行令第59条《貸倒れの範囲等》では、上記(イ)の政令で定める事実は、次に掲げる事実とする旨規定している。 A 民事再生法(平成11年法律第225号)の規定による再生計画認可の決定により債権の切捨てがあったこと。 B 会社法(平成17年法律第86号)の規定による特別清算に係る協定の認可の決定により債権の切捨てがあったこと。 C 金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(平成8年法律第95号)の規定による更生計画認可の決定により債権の切捨てがあったこと。 D 債権に係る債務者の財産の状況、支払能力等からみて当該債務者が債務の全額を弁済できないことが明らかであること。以下略
戸波古稀 「憲法学の創造的展開」上 2017年
後に欠損金額が生じていたことが判明した場合においては、更正により当該事業
後に欠損金額が生じていたことが判明した場合においては、更正により当該事業
年度の欠損金額として確定することができる場合に限り、当該欠損金額を控除事
業年度の所得金額の計算上損金の額に算入できるとした平成17年12月19日
裁決の不当性
租税訴訟法学会ML 判例・裁決研究会 2018年6月25日2
弁護士 岡本 哲
納税者にとって不利な裁決。
国税犯則法平成23年改正前であるが、原処分庁の事実認定についても疑問があ
る。
憲法31条の適正な手続認定・適正な内容へのセンスが感じられない。成松編2
79頁以下ではあまり問題意識はかんじられない。
除斥期間経過後の損金算入を認めない点については憲法違反の問題があると思料
する。
平成17年12月19日
【判示事項】 過去の事業年度について、その後に欠損金額が生じていたことが
判明した場合においては、更正により当該事業年度の欠損金額として確定するこ
とができる場合に限り、当該欠損金額を控除事業年度の所得金額の計算上損金の
額に算入できるとした事例
【判決要旨】 東京高等裁判所昭和63年9月28日判決(昭和62年(行コ)
第68号法人税更正処分取消請求控訴事件、最高裁判所平成元年4月13日判決
の原審)によれば、過去の事業年度における欠損金額を繰越欠損金の額として控
除事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入するためには、その過去の事業年
度において所得金額の計算上欠損金額が認められる場合でなければならないとさ
れている。すなわち、過去の事業年度について、その後に欠損金額が生じたこと
が判明した場合においては、更正により当該事業年度の欠損金額として確定する
ことができる場合に限り、当該欠損金額を控除事業年度の所得金額の計算上損金
の額に算入できると解すべきである。
これを本件についてみると、既に法定申告期限から5年を経過し
ていることから、原処分庁は、国税通則法第70条第2項の規定により、請求人
の平成8年7月1日から平成9年6月30日まで、平成9年7月1日から平成1
0年6月30日まで及び平成10年7月1日から平成11年6月30日までの各
事業年度(以下「平成11年6月期以前の各事業年度」という。)について、本
件使用料の額を所得金額から減算する更正をすることができなかったことが認め
られる。
そうすると、平成11年6月期以前の各事業年度については、当
該各事業年度の所得金額の計算上、いずれも本件使用料の額を所得金額から減算
することによる欠損金額は生じなかったことが確定したのであるから、これを平
成14年7月1日から平成15年6月30日までの事業年度の所得金額の計算上
損金の額に算入することはできない。
【掲載誌】 裁決事例集No.70 249頁
1 事実
(1)事案の概要
本件は、空気清浄機販売業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)に
おいて、8事業年度にわたる特許権の使用料に係る収益の帰属誤りから生じた欠
損金額のうち、国税通則法(平成16年法律第14号による改正前のものをいい
、以下「通則法」という。)第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第2項
の規定により更正することができる期間を経過した事業年度に係る欠損金額につ
いて、法人税法(平成16年法律第14号による改正前のもの。)第57条《青
色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し》の規定の適用があるか否かを争
点とする事案である。
(2)審査請求に至る経緯
イ 請求人は、平成11年7月1日から平成12年6月30日まで、平成12年
7月1日から平成13年6月30日まで、平成13年7月1日から平成14年6
月30日まで、平成14年7月1日から平成15年6月30日まで及び平成15
年7月1日から平成16年6月30日までの各事業年度(以下、順次「平成12
年6月期」、「平成13年6月期」、「平成14年6月期」、「平成15年6月
期」及び「平成16年6月期」といい、これらの事業年度を併せて「本件各事業
年度」という。)の法人税について、確定申告書に別表の「確定申告」欄のとお
り記載して、いずれも提出期限(法人税法第75条の2《確定申告書の提出期限
の延長の特例》第1項の規定により1月間延長されたもの。)までに提出した。
ロ A税務署長は、原処分庁所属の調査担当職員の調査(以下「本件調査」とい
う。)に基づき、平成17年5月31日付で、本件各事業年度の法人税について
、別表の「更正処分等」欄のとおりの各更正処分(以下「本件各更正処分」とい
う。)及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
ハ 請求人は、これらの処分の一部を不服として、平成17年6月29日に審査
請求をした。
(3)関係法令等
イ 通則法第70条第2項第2号は、純損失等の金額で当該事業年度において生
じたものを増加させる更正は、その更正に係る国税の法定申告期限から5年を経
過する日まですることができる旨規定している。
ロ 法人税法第57条第1項は、確定申告書を提出する内国法人の各事業年度開
始の日前5年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額がある場合には、
当該欠損金額に相当する金額は、当該各事業年度の所得金額の計算上、損金の額
に算入する旨規定し、同条第10項では、第1項の規定は、欠損金額の生じた事
業年度について青色申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書
を提出している場合に限り、適用する旨規定している。
(4)基礎事実
以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査に
よってもその事実が認められる。
イ 請求人はB社から、同社が製造販売する空気清浄機に係る特許権の使用料(
以下「本件使用料」という。)を次表のとおり、平成8年7月1日から平成9年
6月30日まで、平成9年7月1日から平成10年6月30日まで及び平成10
年7月1日から平成11年6月30日までの各事業年度(以下、順次「平成9年
6月期」、「平成10年6月期」及び「平成11年6月期」という。)並びに本
件各事業年度において、その支払を受け、当該各事業年度の受取手数料として益
金の額に算入して、法人税の確定申告を行っていた。
事業年度 本件使用料の額 事業年度 本
件使用料の額
平成9年6月期 24,429,332円 平成13年6月期 27,77
6,125円
平成10年6月期 22,959,877 平成14年6月期 25,43
0,460
平成11年6月期 21,100,287 平成15年6月期 21,48
4,532
平成12年6月期 24,052,293 平成16年6月期 13,22
0,481
ロ A税務署長は、本件調査に基づき、上記イの空気清浄機に係る特許権は、請
求人の代表取締役であるCに帰属するものであることから、本件使用料の額は請
求人の益金の額に算入すべきものではないなどの理由により、本件各事業年度の
法人税について、本件各更正処分をした。
ハ Cは、本件使用料の額(ただし、暦年での支払額)を雑所得とする平成11
年分ないし平成15年分の所得税の各確定申告書を、平成16年12月21日に
A税務署長に提出した。
ニ 請求人の平成9年6月期ないし平成11年6月期の法人税の申告状況は、別
表の「確定申告」欄のとおりである。
ホ 請求人は、欠損金額のある平成9年6月期ないし平成14年6月期において
、青色申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出してい
る。
2 主張
(1)原処分庁
原処分は、次の理由によりいずれも適法であるので、審査請求を棄却すると
の裁決を求める。
イ 過去の事業年度に係る減額更正処分を行うことによって控除事業年度に控除
される繰越欠損金が増額されるという場合には、過去の事業年度の減額更正が通
則法第70条第2項の規定に抵触しない場合にはじめて控除事業年度の繰越欠損
金の額を更正できると解されている(最高裁判所第一小法廷平成元年4月13日
判決)。
ロ 請求人は、平成9年6月期ないし平成11年6月期においても、本件使用料
の額を過大に益金の額に算入していたところ、平成11年6月期以前の各事業年
度は、既に法定申告期限から5年を経過しており、通則法第70条第2項に規定
する更正の期間制限により更正することはできず、当該各事業年度については法
人税法の適用上、本件使用料の額に係る欠損金額が生じなかったことが確定する
のであるから、平成15年6月期の法人税の所得金額の計算上、請求人の主張す
る金額を繰越欠損金として損金の額に算入することはできない。
(2)請求人
原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
イ 請求人は、B社から支払を受けた本件使用料の額について、平成9年6月期
ないし平成11年6月期においても益金の額に算入しているところ、当該各事業
年度については更正の除斥期間は徒過しているものの、当該各事業年度の青色申
告書を提出した事業年度の欠損金額として繰り越すべき金額は、本件使用料の額
を益金の額に算入しないとして計算される欠損金額とすべきである。
ロ 原処分庁は、平成10年6月期及び平成11年6月期において本件使用料の
額を減算することに伴って生じる繰越欠損金の額を、法人税法第57条第1項に
規定する各事業年度開始の日前5年以内に開始した事業年度において生じた欠損
金額に含めておらず、その結果、平成15年6月期の更正処分に係る損金の額に
算入すべき金額を過少に計算している。
ハ また、原処分庁が引用する最高裁判所の判例は、仮装経理に伴う減額更正に
係るものであるところ、請求人は仮装経理を行っていないのであるから、当該判
例を引用する原処分庁の主張には理由がない。
ニ なお、請求人は、本件各更正処分のうち上記以外については争わない。
3 判断
本件は、本件各事業年度における法人税法第57条の規定に基づく繰越欠損
金の額及び当該金額に基づく損金算入額の適否について争いがあるので、審理し
たところ、次のとおりである。
(1)東京高等裁判所昭和63年9月28日判決(昭和62年(行コ)第68
号法人税更正処分取消請求控訴事件。最高裁判所平成元年4月13日判決の原審
である。)によれば、過去の事業年度における欠損金額を繰越欠損金の額として
控除事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入するためには、その過去の事業
年度において所得金額の計算上欠損金額が認められる場合でなければならないと
されている。すなわち、過去の事業年度について、その後に欠損金額が生じてい
たことが判明した場合においては、更正により当該事業年度の欠損金額として確
定することができる場合に限り、当該欠損金額を控除事業年度の所得金額の計算
上損金の額に算入することができると解するのが相当である。
(2)これを本件についてみると、以下のとおりである。
イ Cは、上記1の(4)のハのとおり、本件使用料を自らに帰属する収益とし
て、平成16年12月21日に平成11年分ないし平成15年分の所得税の各確
定申告書をA税務署長に提出しているところ、当該提出日は、請求人の平成11
年6月期の法人税の確定申告書の法定申告期限である平成11年9月30日から
5年を経過していることから、原処分庁は、通則法第70条第2項の規定により
、請求人の平成11年6月期以前の各事業年度について、本件使用料の額を所得
金額から減算する更正をすることができなかったことが認められる。
ロ そうすると、平成9年6月期ないし平成11年6月期の各事業年度の欠損金
額については、当該各事業年度の所得金額の計算上、いずれも本件使用料の額を
所得金額から減算することによる欠損金額は生じなかったことが確定したのであ
るから、これを平成15年6月期の所得金額の計算上損金の額に算入することは
できない。
(3)請求人は、原処分庁が引用する最高裁判所の判例は、仮装経理に伴う減
額更正に係るものであって、請求人は仮装経理を行っていない旨主張するが、上
記(1)のとおり、過去の事業年度について生じた欠損金額については、仮にそ
の生じた理由が仮装経理に基づくものではなかったとしても、更正により当該事
業年度の欠損金額として確定することができなければ、当該欠損金額を控除事業
年度の所得金額の計算上損金の額に算入することはできないと解するのが相当で
あるから、請求人の主張には理由がない。
(4)ところで、更正処分が不利益処分に当たるか否かは、当該更正処分によ
り納付すべき税額が増加したか否かにより判断すべきところ、平成12年6月期
、平成13年6月期及び平成16年6月期の法人税の各更正処分は、いずれも所
得金額を減少させるもので、確定申告の納付すべき税額を増加させる更正処分で
ないことは明らかであり、請求人の権利又は利益を侵害するものとはいえない。
したがって、請求人には、平成12年6月期、平成13年6月期及び平成1
6年6月期の法人税の各更正処分の取消しを求める利益はなく、当該各更正処分
に対する審査請求は、請求の利益を欠く不適法なものである。
(5)以上のとおり、本件争点について原処分に違法はない。
また、過少申告加算税の賦課決定処分を含め、原処分のその他の部分につい
ては、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は
認められない。
別表 法人税の申告状況等
年度の欠損金額として確定することができる場合に限り、当該欠損金額を控除事
業年度の所得金額の計算上損金の額に算入できるとした平成17年12月19日
裁決の不当性
租税訴訟法学会ML 判例・裁決研究会 2018年6月25日2
弁護士 岡本 哲
納税者にとって不利な裁決。
国税犯則法平成23年改正前であるが、原処分庁の事実認定についても疑問があ
る。
憲法31条の適正な手続認定・適正な内容へのセンスが感じられない。成松編2
79頁以下ではあまり問題意識はかんじられない。
除斥期間経過後の損金算入を認めない点については憲法違反の問題があると思料
する。
平成17年12月19日
【判示事項】 過去の事業年度について、その後に欠損金額が生じていたことが
判明した場合においては、更正により当該事業年度の欠損金額として確定するこ
とができる場合に限り、当該欠損金額を控除事業年度の所得金額の計算上損金の
額に算入できるとした事例
【判決要旨】 東京高等裁判所昭和63年9月28日判決(昭和62年(行コ)
第68号法人税更正処分取消請求控訴事件、最高裁判所平成元年4月13日判決
の原審)によれば、過去の事業年度における欠損金額を繰越欠損金の額として控
除事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入するためには、その過去の事業年
度において所得金額の計算上欠損金額が認められる場合でなければならないとさ
れている。すなわち、過去の事業年度について、その後に欠損金額が生じたこと
が判明した場合においては、更正により当該事業年度の欠損金額として確定する
ことができる場合に限り、当該欠損金額を控除事業年度の所得金額の計算上損金
の額に算入できると解すべきである。
これを本件についてみると、既に法定申告期限から5年を経過し
ていることから、原処分庁は、国税通則法第70条第2項の規定により、請求人
の平成8年7月1日から平成9年6月30日まで、平成9年7月1日から平成1
0年6月30日まで及び平成10年7月1日から平成11年6月30日までの各
事業年度(以下「平成11年6月期以前の各事業年度」という。)について、本
件使用料の額を所得金額から減算する更正をすることができなかったことが認め
られる。
そうすると、平成11年6月期以前の各事業年度については、当
該各事業年度の所得金額の計算上、いずれも本件使用料の額を所得金額から減算
することによる欠損金額は生じなかったことが確定したのであるから、これを平
成14年7月1日から平成15年6月30日までの事業年度の所得金額の計算上
損金の額に算入することはできない。
【掲載誌】 裁決事例集No.70 249頁
1 事実
(1)事案の概要
本件は、空気清浄機販売業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)に
おいて、8事業年度にわたる特許権の使用料に係る収益の帰属誤りから生じた欠
損金額のうち、国税通則法(平成16年法律第14号による改正前のものをいい
、以下「通則法」という。)第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第2項
の規定により更正することができる期間を経過した事業年度に係る欠損金額につ
いて、法人税法(平成16年法律第14号による改正前のもの。)第57条《青
色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し》の規定の適用があるか否かを争
点とする事案である。
(2)審査請求に至る経緯
イ 請求人は、平成11年7月1日から平成12年6月30日まで、平成12年
7月1日から平成13年6月30日まで、平成13年7月1日から平成14年6
月30日まで、平成14年7月1日から平成15年6月30日まで及び平成15
年7月1日から平成16年6月30日までの各事業年度(以下、順次「平成12
年6月期」、「平成13年6月期」、「平成14年6月期」、「平成15年6月
期」及び「平成16年6月期」といい、これらの事業年度を併せて「本件各事業
年度」という。)の法人税について、確定申告書に別表の「確定申告」欄のとお
り記載して、いずれも提出期限(法人税法第75条の2《確定申告書の提出期限
の延長の特例》第1項の規定により1月間延長されたもの。)までに提出した。
ロ A税務署長は、原処分庁所属の調査担当職員の調査(以下「本件調査」とい
う。)に基づき、平成17年5月31日付で、本件各事業年度の法人税について
、別表の「更正処分等」欄のとおりの各更正処分(以下「本件各更正処分」とい
う。)及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
ハ 請求人は、これらの処分の一部を不服として、平成17年6月29日に審査
請求をした。
(3)関係法令等
イ 通則法第70条第2項第2号は、純損失等の金額で当該事業年度において生
じたものを増加させる更正は、その更正に係る国税の法定申告期限から5年を経
過する日まですることができる旨規定している。
ロ 法人税法第57条第1項は、確定申告書を提出する内国法人の各事業年度開
始の日前5年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額がある場合には、
当該欠損金額に相当する金額は、当該各事業年度の所得金額の計算上、損金の額
に算入する旨規定し、同条第10項では、第1項の規定は、欠損金額の生じた事
業年度について青色申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書
を提出している場合に限り、適用する旨規定している。
(4)基礎事実
以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査に
よってもその事実が認められる。
イ 請求人はB社から、同社が製造販売する空気清浄機に係る特許権の使用料(
以下「本件使用料」という。)を次表のとおり、平成8年7月1日から平成9年
6月30日まで、平成9年7月1日から平成10年6月30日まで及び平成10
年7月1日から平成11年6月30日までの各事業年度(以下、順次「平成9年
6月期」、「平成10年6月期」及び「平成11年6月期」という。)並びに本
件各事業年度において、その支払を受け、当該各事業年度の受取手数料として益
金の額に算入して、法人税の確定申告を行っていた。
事業年度 本件使用料の額 事業年度 本
件使用料の額
平成9年6月期 24,429,332円 平成13年6月期 27,77
6,125円
平成10年6月期 22,959,877 平成14年6月期 25,43
0,460
平成11年6月期 21,100,287 平成15年6月期 21,48
4,532
平成12年6月期 24,052,293 平成16年6月期 13,22
0,481
ロ A税務署長は、本件調査に基づき、上記イの空気清浄機に係る特許権は、請
求人の代表取締役であるCに帰属するものであることから、本件使用料の額は請
求人の益金の額に算入すべきものではないなどの理由により、本件各事業年度の
法人税について、本件各更正処分をした。
ハ Cは、本件使用料の額(ただし、暦年での支払額)を雑所得とする平成11
年分ないし平成15年分の所得税の各確定申告書を、平成16年12月21日に
A税務署長に提出した。
ニ 請求人の平成9年6月期ないし平成11年6月期の法人税の申告状況は、別
表の「確定申告」欄のとおりである。
ホ 請求人は、欠損金額のある平成9年6月期ないし平成14年6月期において
、青色申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出してい
る。
2 主張
(1)原処分庁
原処分は、次の理由によりいずれも適法であるので、審査請求を棄却すると
の裁決を求める。
イ 過去の事業年度に係る減額更正処分を行うことによって控除事業年度に控除
される繰越欠損金が増額されるという場合には、過去の事業年度の減額更正が通
則法第70条第2項の規定に抵触しない場合にはじめて控除事業年度の繰越欠損
金の額を更正できると解されている(最高裁判所第一小法廷平成元年4月13日
判決)。
ロ 請求人は、平成9年6月期ないし平成11年6月期においても、本件使用料
の額を過大に益金の額に算入していたところ、平成11年6月期以前の各事業年
度は、既に法定申告期限から5年を経過しており、通則法第70条第2項に規定
する更正の期間制限により更正することはできず、当該各事業年度については法
人税法の適用上、本件使用料の額に係る欠損金額が生じなかったことが確定する
のであるから、平成15年6月期の法人税の所得金額の計算上、請求人の主張す
る金額を繰越欠損金として損金の額に算入することはできない。
(2)請求人
原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
イ 請求人は、B社から支払を受けた本件使用料の額について、平成9年6月期
ないし平成11年6月期においても益金の額に算入しているところ、当該各事業
年度については更正の除斥期間は徒過しているものの、当該各事業年度の青色申
告書を提出した事業年度の欠損金額として繰り越すべき金額は、本件使用料の額
を益金の額に算入しないとして計算される欠損金額とすべきである。
ロ 原処分庁は、平成10年6月期及び平成11年6月期において本件使用料の
額を減算することに伴って生じる繰越欠損金の額を、法人税法第57条第1項に
規定する各事業年度開始の日前5年以内に開始した事業年度において生じた欠損
金額に含めておらず、その結果、平成15年6月期の更正処分に係る損金の額に
算入すべき金額を過少に計算している。
ハ また、原処分庁が引用する最高裁判所の判例は、仮装経理に伴う減額更正に
係るものであるところ、請求人は仮装経理を行っていないのであるから、当該判
例を引用する原処分庁の主張には理由がない。
ニ なお、請求人は、本件各更正処分のうち上記以外については争わない。
3 判断
本件は、本件各事業年度における法人税法第57条の規定に基づく繰越欠損
金の額及び当該金額に基づく損金算入額の適否について争いがあるので、審理し
たところ、次のとおりである。
(1)東京高等裁判所昭和63年9月28日判決(昭和62年(行コ)第68
号法人税更正処分取消請求控訴事件。最高裁判所平成元年4月13日判決の原審
である。)によれば、過去の事業年度における欠損金額を繰越欠損金の額として
控除事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入するためには、その過去の事業
年度において所得金額の計算上欠損金額が認められる場合でなければならないと
されている。すなわち、過去の事業年度について、その後に欠損金額が生じてい
たことが判明した場合においては、更正により当該事業年度の欠損金額として確
定することができる場合に限り、当該欠損金額を控除事業年度の所得金額の計算
上損金の額に算入することができると解するのが相当である。
(2)これを本件についてみると、以下のとおりである。
イ Cは、上記1の(4)のハのとおり、本件使用料を自らに帰属する収益とし
て、平成16年12月21日に平成11年分ないし平成15年分の所得税の各確
定申告書をA税務署長に提出しているところ、当該提出日は、請求人の平成11
年6月期の法人税の確定申告書の法定申告期限である平成11年9月30日から
5年を経過していることから、原処分庁は、通則法第70条第2項の規定により
、請求人の平成11年6月期以前の各事業年度について、本件使用料の額を所得
金額から減算する更正をすることができなかったことが認められる。
ロ そうすると、平成9年6月期ないし平成11年6月期の各事業年度の欠損金
額については、当該各事業年度の所得金額の計算上、いずれも本件使用料の額を
所得金額から減算することによる欠損金額は生じなかったことが確定したのであ
るから、これを平成15年6月期の所得金額の計算上損金の額に算入することは
できない。
(3)請求人は、原処分庁が引用する最高裁判所の判例は、仮装経理に伴う減
額更正に係るものであって、請求人は仮装経理を行っていない旨主張するが、上
記(1)のとおり、過去の事業年度について生じた欠損金額については、仮にそ
の生じた理由が仮装経理に基づくものではなかったとしても、更正により当該事
業年度の欠損金額として確定することができなければ、当該欠損金額を控除事業
年度の所得金額の計算上損金の額に算入することはできないと解するのが相当で
あるから、請求人の主張には理由がない。
(4)ところで、更正処分が不利益処分に当たるか否かは、当該更正処分によ
り納付すべき税額が増加したか否かにより判断すべきところ、平成12年6月期
、平成13年6月期及び平成16年6月期の法人税の各更正処分は、いずれも所
得金額を減少させるもので、確定申告の納付すべき税額を増加させる更正処分で
ないことは明らかであり、請求人の権利又は利益を侵害するものとはいえない。
したがって、請求人には、平成12年6月期、平成13年6月期及び平成1
6年6月期の法人税の各更正処分の取消しを求める利益はなく、当該各更正処分
に対する審査請求は、請求の利益を欠く不適法なものである。
(5)以上のとおり、本件争点について原処分に違法はない。
また、過少申告加算税の賦課決定処分を含め、原処分のその他の部分につい
ては、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は
認められない。
別表 法人税の申告状況等
会社法判例百選第3版 A6 新株発行無効判決と再審事由
会社法判例百選第3版 A6 新株発行無効判決と再審事由 最高裁平成25年11月21日 解説は三宅北海道大学准教授です。民事訴訟法の再審の応用問題です。司法試験用会社法の学習としては不要でしょう。神田秀樹「会社法 第十八版」弘文堂・2016年・161頁。