岡本法律事務所のブログ

2019年03月

重大事由による解除 保険の法律相談

質問

 わたしがごく短期間のうちに自宅に火災保険をかけたら、保険会社から契約を解除するといってきました。受け入れなければいけないのでしょうか。

回答

 保険法は、保険契約者または被保険者が、保険会社の信頼を裏切る行為をおこない保険契約継続が困難となる場合は保険契約を将来にわたって解除できるようにしています(保険法30条)。重大事由による解除といいますが、以下の場合が認められています。

    保険契約者または被保険者が保険金取得を目的として故意の損害を発生させた(または発生させようとした)場合

     被保険者が保険金の請求について詐欺を行なった(または行おうとした)場合

     その他保険会社の保険契約者または被保険者の対する信頼を損ない、保険契約の存続を困難とする重大な事由がある場合

    についてはかつて保険金不払いに濫用されたことから参議院法務委員会の附帯決議があり「保険金不払いの口実として濫用された実態があることを踏まえ、その運用にあたっては、第30条1項若しくは2号に匹敵する趣旨のものであることを確認すること」(参議院法務委員会平成20年5月29日)。

 同一の保険目的に複数保険があっても通常は③に該当しませんが、ごく短期だと該当します。

 


岡山市 岡本法律事務所 所長 弁護士 岡本哲

中年弁護士が参考文献なしで50分で書いただけなので決して鵜呑みにしないように。

司法試験予備試験 論文式平成29年[刑法] 解答例

以下の事例に基づき,甲及び乙の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く。)。

甲(40歳,男性)は,公務員ではない医師であり,A私立大学附属病院(以下「A病院」という。)の内科部長を務めていたところ,V(35歳,女性)と交際していた。Vの心臓には特異な疾患があり,そのことについて,甲とVは知っていたが,通常の診察では判明し得ないものであった。

甲は,Vの浪費癖に嫌気がさし,某年8月上旬頃から,Vに別れ話を持ち掛けていたが,Vから頑なに拒否されたため,Vを殺害するしかないと考えた。甲は,Vがワイン好きで,気に入ったワインであれば,2時間から3時間でワイン1本(750ミリリットルの瓶入り)を一人で飲み切ることを知っていたことから,劇薬を混入したワインをVに飲ませてVを殺害しようと考えた。甲は,同月22日,Vが飲みたがっていた高級ワイン1本(750ミリリットルの瓶入り)を購入し,同月23日,甲の自宅において,同ワインの入った瓶に劇薬Xを注入し,同瓶を梱包した上,自宅近くのコンビニエンスストアからVが一人で住むV宅宛てに宅配便で送った。劇薬Xの致死量(以下「致死量」とは,それ以上の量を体内に摂取すると,人の生命に危険を及ぼす量をいう。)は10ミリリットルであるが,甲は,劇薬Xの致死量を4ミリリットルと勘違いしていたところ,Vを確実に殺害するため,8ミリリットルの劇薬Xを用意して同瓶に注入した。そのため,甲がV宅宛てに送ったワインに含まれていた劇薬Xの量は致死量に達していなかったが,心臓に特異な疾患があるVが,その全量を数時間以内で摂取した場合,死亡する危険があった。なお,劇薬Xは,体内に摂取してから半日後に効果が現れ,ワインに混入してもワインの味や臭

いに変化を生じさせないものであった。同月25日,宅配業者が同瓶を持ってV宅前まで行ったが,V宅が留守であったため,V宅の郵便受けに不在連絡票を残して同瓶を持ち帰ったところ,Vは,同連絡票に気付かず,同瓶を受け取ることはなかった。

同月26日午後1時,Vが熱中症の症状を訴えてA病院を訪れた。公務員ではない医師であり,A病院の内科に勤務する乙(30歳,男性)は,Vを診察し,熱中症と診断した。乙からVの治療方針について相談を受けた甲は,Vが生きていることを知り,Vに劇薬Yを注射してVを殺害しようと考えた。甲は,劇薬Yの致死量が6ミリリットルであること,Vの心臓には特異な疾患があるため,Vに致死量の半分に相当する3ミリリットルの劇薬Yを注射すれば,Vが死亡する危険があることを知っていたが,Vを確実に殺害するため,6ミリリットルの劇薬YをVに注射しようと考えた。そして,甲は,乙のA病院への就職を世話したことがあり,乙が甲に恩義を感じていることを知っていたことから,乙であれば,甲の指示に忠実に従うと思い,乙に対し,劇薬Yを熱中症の治療に効果のあるB薬と偽って渡し,Vに注射させようと考えた。甲は,同日午後1時30分,乙に対し,「VにB薬を6ミリリットル注射してください。私はこれから出掛けるので,後は任せます。」と指示し,6ミリリットルの劇薬Yを入れた容器を渡した。乙は,甲に「分かりました。」と答えた。乙は,甲が出掛けた後,甲から渡された容器を見て,同容器に薬剤名の記載がないことに気付いたが,甲の指示に従い,同容器の中身を確認せずにVに注射することにした。

乙は,同日午後1時40分,A病院において,甲から渡された容器内の劇薬YをVの左腕に注射したが,Vが痛がったため,3ミリリットルを注射したところで注射をやめた。乙がVに注射した劇薬Yの量は,それだけでは致死量に達していなかったが,Vは,心臓に特異な疾患があったため,劇薬Yの影響により心臓発作を起こし,同日午後1時45分,急性心不全により死亡した。乙は,Vの心臓に特異な疾患があることを知らず,内科部長である甲の指示に従って熱中症の治療に効果のあるB薬と信じて注射したものの,甲から渡された容器に薬剤名の記載がないことに気付いたにもかかわらず,その中身を確認しないままVに劇薬Yを注射した点において,Vの死の結果について刑事上の過失があった。

乙は,A病院において,Vの死亡を確認し,その後の検査の結果,Vに劇薬Yを注射したことが原因でVが心臓発作を起こして急性心不全により死亡したことが分かったことから,Vの死亡について,Vに対する劇薬Yの注射を乙に指示した甲にまで刑事責任の追及がなされると考えた。乙は,A病院への就職の際,甲の世話になっていたことから,Vに注射した自分はともかく,甲には刑事責任が及ばないようにしたいと思い,専ら甲のために,Vの親族らがVの死亡届に添付してC市役所に提出する必要があるVの死亡診断書に虚偽の死因を記載しようと考えた。乙は,同月27日午後1時,A病院において,死亡診断書用紙に,Vが熱中症に基づく多臓器不全により死亡した旨の虚偽の死因を記載し,乙の署名押印をしてVの死亡診断書を作成し,同日,同死亡診断書をVの母親Dに渡した。Dは,同月28日,同死亡診断書記載の死因が虚偽であることを知らずに,同死亡診断書をVの死亡届に添付してC市役所に提出した。

 

(※行為無価値か結果無価値かで統一性のある処理をしているかを採点すると思われる。全体のわかる採点者が必要)

1 5月23日の甲の行為の罪責

甲がVに対して某年5月23日に自宅近くのコンビニから劇薬を混入したワイン1本750mlを宅配便で送った行為は殺人罪(刑法199条203条)の実行行為に当たると言えるか。

 実行行為については、行為時において一般人の知り得た事情及び特に行為者の知っていた事情(迷信犯除外のため正しいものに限る)を基礎として一般人からみて結果発生の具体的定型的危険が発生した場合に実行行為と認められるものと解する。日本刑法は、故意の内容によって罪名を分けていることから主観的違法要素を認め行為無価値を無視していないこと、行為は主観と客観の共同であることから結果の無価値のみならず行為の無価値を評価すべきであり、それは行為時の判断であるべきだからである。

 また、本件では宅配業者の配達によりV宅へ劇薬入りワインが配達されるという離隔犯であり、この場合、実行行為時期について行為者を基準とすべきか被利用者を基準とすべきか争いがあるが、行為者を基準とすべきと解する。行為時において規範に直面していて、その後は通常の経過からは危険を減じるものがないからである。

 本件では、甲が医師であること、甲の認識としてVがワイン好きで,気に入ったワインであれば,2時間から3時間でワイン1本(750ミリリットルの瓶入り)を一人で飲み切ること,Vが飲みたがっていた高級ワイン1本(750ミリリットルの瓶入り)に劇薬Xを注入し,同瓶を梱包した上,自分が特に知っている致死量より多くいれており(劇薬Xの致死量は10ミリリットルであるが,甲は,劇薬Xの致死量を4ミリリットルと勘違いしていたところ,Vを確実に殺害するため,8ミリリットルの劇薬Xを用意して同瓶に注入したものであり、客観的に、Vの心臓疾患も認識しており、それを考慮した場合、一般人からみた場合、致死量といえる死亡の具体的危険はあるものと考えられる。

そこで殺人罪の実行行為はあったが、結果が発生しなかったものとして殺人未遂罪(刑法199条203条)が成立する。

2 5月25日の乙の行為の罪責

 共犯従属性説をとる(刑法43条の文言上正犯の実行が要求されているため)、実際に注射をおこなった乙の罪責から先に検討する。

 乙がVに劇薬入りの注射をしてVを心臓発作・心不全で死亡させたことについては業務上過失致死罪(刑法 211条)が成立すると解する。

 乙は,Vの心臓に特異な疾患があることを知らず,内科部長である甲の指示に従って熱中症の治療に効果のあるB薬と信じて注射したものの,甲から渡された容器に薬剤名の記載がないことに気付いたにもかかわらず,その中身を確認しないままVに劇薬Yを注射した点において,Vの死の結果について刑事上の過失がある行為であるが、その結果について因果関係があろうか。

 刑法が一般人へ向けての行為規範であることを考えると因果関係についてもは、条件関係を前提に一般人の認識しえた事情と行為者の特別に認識していた情状(正しいものに限る)を考慮して、その結果発生が相当であれば因果関係を認める折衷的相当因果関係説が妥当である。本件では、乙の行為がなければVの死亡はないので条件関係はあり、心臓病のある人間(一般人の認識しえた事情)に一般人の致死量より少ない劇薬で死亡の結果を生じさせており、相当因果関係ありといえる。

 また、乙は医師であり繰り返し注射を行うのであって業務性も認められる。

3 5月25日の甲の行為の罪責

 甲については殺人の故意で過失ある乙の行為でVを死に至らしめているのであり、殺人罪(刑法199条)の間接正犯が成立するか問題になる。被利用者が過失犯とはいえ規範の問題に直面するので、実行行為としては被利用者の行為時を基準とすべきことになる。結果的には甲の意図した6ミリリットルではなく3ミリリットルのみの注射がなされているが、これは乙がVの様子をみて途中でとめたものであるので注射の際には6ミリリットル投与がなされる位とであったため、甲の認識していたVの心臓病も考慮しうるため致死量の劇薬投与といえ、殺人の間接正犯の実行行為があるといえる。因果関係については乙の場合と同様に認めうる。甲には殺人罪が成立する。

4 5月27日の甲の行為の罪責

医師が公務所に提出する虚偽の診断書を作成しているので虚偽診断書作成罪(刑法160条)、Dを通じてC市役所に提出した行為は虚偽診断書行使罪(形容161条)にあたる。

真実申告の義務に違反して捜査を妨害するものであるが、証拠隠滅罪には自己の犯罪の証拠なのであたらない。犯人隠避についても定型を欠くと解する。

5 結論

甲について殺人未遂罪(刑法199条・203条)、殺人罪(199条)が成立し、同一の法益侵害に向けられたものなので包括一罪となる。

乙について業務上過失医師罪(刑法211)条、虚偽公文書作成罪(刑法160条)同行使罪(刑法161条)が成立し、後二者は牽連犯(刑法54条1項後段)、前者とは併合罪(刑法45条)となる。以上(※ 罪数処理まで要求しているかどうかは疑問)

 

 

出題趣旨

(出題の趣旨)

本問は,⑴医師甲が,劇薬Xを混入したワインをVに飲ませてVを殺害しようと

考え,劇薬Xをワインの入った瓶に注入し,同瓶をV宅宛に宅配便で送ったが,V

宅が留守であったため,Vが同瓶を受け取ることはなかったこと(Vの心臓には特

異な疾患があり,そのことを甲は知っていた。また,劇薬Xの致死量は10ミリリ

ットルであり,甲は致死量を4ミリリットルと勘違いしていたところ,Vを確実に

殺害するため,8ミリリットルの劇薬Xを同瓶に注入したが,Vがその全量を摂取

した場合,死亡する危険があった。),⑵甲が,Vに劇薬Yを注射してVを殺害しよ

うと考え,医師乙に6ミリリットルの劇薬Yを渡してVに注射させたところ,Vが

痛がったため,3ミリリットルを注射したところで注射をやめたが,Vは劇薬Yの

影響により心臓発作を起こし,急性心不全により死亡したこと(乙は,甲から渡さ

れた容器に薬剤名の記載がないことに気付いたが,その中身を確認せずにVに劇薬

Yを注射した。また,甲は,劇薬Yの致死量が6ミリリットルであること,心臓に

特異な疾患があるVに3ミリリットルの劇薬Yを注射すれば,Vが死亡する危険が

あることを知っていたが,乙は,Vの心臓に特異な疾患があることを知らなかった。),

⑶公務員ではない医師乙が,専ら甲のために虚偽の死因を記載したVの死亡診断書

を作成し,Vの母親Dを介して,同死亡診断書をC市役所に提出したことを内容と

する事例について,甲及び乙の罪責に関する論述を求めるものである。

甲の罪責については,殺人未遂罪又は殺人予備罪,殺人罪の成否を,乙の罪責に

ついては,業務上過失致死罪,虚偽診断書作成罪及び同行使罪,証拠隠滅罪,犯人

隠避罪の成否を検討する必要があるところ,事実を的確に分析するとともに,各罪

の構成要件,離隔犯における実行の着手時期,未遂犯と不能犯の区別又は予備行為

の危険性,間接正犯の成否,因果関係の有無等に関する基本的理解と事例への当て

はめが論理的一貫性を保って行われていることが求められる。

 

もともとは2018年にjかいたものです。

在日韓国人の法律相談

韓国に住む義父の扶養について義弟と協議したい  日本人夫以外は韓国人

 


質問

わたしは在日韓国人と結婚した日本人男性です。在日韓国人である妻とともに日本の倉敷市に住んでいます。

妻の父は在日1世の韓国人ですが、義母がなくなったあとは、現在は韓国にもどって生活しています。

義父は身体に故障をきたしており、老後の蓄えもなくなってきているようです。

妻には弟が倉敷市にいますが、韓国語は夫も義弟も話すことができません。

しかたなく私と妻が交替で義父の面倒をみるために韓国へいっています。交通費や生活費の援助がばかになりません。義弟にすこしは、お金をだしてもらうことはできないのでしょうか。

わたしや妻が義弟になにか言っても裕福なくせに話に応じてくれません。

 


回答

倉敷の家庭裁判所で調停等の協議が可能と思われます。

韓国という外国要素がありますので、どこの国の法律を適用すべきか、国際私法により準拠法を決める必要があります。日本の場合、国際私法という法令はなく法適用通則法が国際私法の主要な部分をしめますが、扶養に関しては「扶養義務の準拠法に関する法律」(略称、扶養義務法)によることになります。親族関係から生じる扶養義務一切について扶養義務法によります。契約による場合は法適用通則法によります。扶養義務の存否、扶養義務者の順位、扶養権利者の範囲、扶養義務の方法、扶養請求権の行使期間などが、決まることになります。扶養義務法は段階的連結主義をとっており、扶養権利者の常居所地法、その準拠法によって権利者が扶養されない場合は当事者の共通本国法、共通本国法がなかったり共通本国法でも権利者が扶養されない場合は日本法によることになります(扶養義務法2条)。

 扶養義務の前提問題である親族関係の存否については法適用通則法に定める準拠法によることになります。本件では義父・妻・義弟については実親子関係ですので、法適用通則法により親子に共通本国法がある場合には本国法、共通本国法なき場合は子の常居所地法によります。相談者と妻の間については法適用通則法24条により相談者については日本法によることになります。

扶養義務については共通本国法があるため義父・妻・義弟については韓国法、義父と相談者については扶養権利者の本国法としての韓国法によることになります。

 韓国民法974条は直系血族及びその配偶者間、生計を同一にする親族間に互いに扶養義務を認めています。

日本民法が直系血族間および兄弟姉妹間にしか扶養義務を認めていない(日本民法877条1項)に比べて扶養義務を認められる範囲が広くなっています。

 本件では相談者・妻・義弟が扶養義務者となります。

扶養義務は扶養権利者が自己の資力又は勤労により生活を維持できない場合に限り履行責任が認められます(韓国民法975条)。扶養の順位については現在の韓国民法では長男優先というようなことはなく、扶養義務者が数人いるときは、当事者が扶養順位を協議して合意できれば、合意内容に従い、合意できなければ裁判所に決めてもらいます(韓国民法976条)。扶養の程度・方法については当事者が協議して合意できれば合意内容に従い、協議がまとまらなければ裁判所が扶養権利者の生活程度と扶養義務者の資力その他初版の事情を斟酌して定めます(韓国民法977条)。この場合は相談者・夫・義弟が扶養義務者として協議をし、まとまらなければ裁判所で決めてもらうことになります。

 韓国の裁判所か日本の裁判所か、いずれに管轄が認められるべきか、ですが扶養義務者が全員日本に居住していますから日本でも国際裁判管轄が認められると思われます;。日本のなかでは全員倉敷市に居住しているので倉敷市の家庭裁判所に管轄が認められることになります。

 


嫁の舅に対する扶養義務がある、というのが日本に住んでいるひとにとっては抵抗があるかもしれませんが、扶養権利者が韓国法が本国法である場合はこのようになります。

すこし前の山陽新聞に書いたものです。

解雇権濫用法理 弁護士 岡本 哲

Q 先日、会社の社長と口論となった際に、社長から「自分に口応えするとは何様のつもりか。お前みたいなもんは、もう明日から来んでいい、クビだ」と言われてしまい、私は「そうですか、クブですか」と言って、そのまま帰ってしまいました。もう、会社に行っても私の席はないのでしょうか。

 

A 二言目には「やめちまえ」とどなる親方は昭和の時代にはよくいましたが、いまの若いひとには免疫がないようです。それほどおおげさなものではなく翌日わびをいれればおさまるかもしれません。そうでなければ法律の出番となります。通常は口答えだけでは解雇理由にはなりません。それ以外に相談者に多額の使い込みがあるなどと懲戒解雇の要件を満たしているとか、会社が赤字で整理解雇ができる、とかの事情があれば別論ですが、解雇の場合も告知と聴聞の機会を与えるなど手続・要件との経営者がきっちり守る必要があります。あくまで社長が解雇を維持するようなことがあれば、労働基準監督署への不当解雇の調査申入れ、従業員としての地位確認の仮処分、労働審判申立て等さまざまな労働者保護の手続があります。くわしい事情をきく必要がありますので、まずは弁護士会等に電話して、無料の法律相談もご利用ください。

問題文だけで2000字超えていますから、要点をみつけることも大変でしょう。


司法試験予備試験 論文式平成29年[刑法]

以下の事例に基づき,甲及び乙の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く。)。

甲(40歳,男性)は,公務員ではない医師であり,A私立大学附属病院(以下「A病院」という。)の内科部長を務めていたところ,V(35歳,女性)と交際していた。Vの心臓には特異な疾患があり,そのことについて,甲とVは知っていたが,通常の診察では判明し得ないものであった。

甲は,Vの浪費癖に嫌気がさし,某年8月上旬頃から,Vに別れ話を持ち掛けていたが,Vから頑なに拒否されたため,Vを殺害するしかないと考えた。甲は,Vがワイン好きで,気に入ったワインであれば,2時間から3時間でワイン1本(750ミリリットルの瓶入り)を一人で飲み切ることを知っていたことから,劇薬を混入したワインをVに飲ませてVを殺害しようと考えた。甲は,同月22日,Vが飲みたがっていた高級ワイン1本(750ミリリットルの瓶入り)を購入し,同月23日,甲の自宅において,同ワインの入った瓶に劇薬Xを注入し,同瓶を梱包した上,自宅近くのコンビニエンスストアからVが一人で住むV宅宛てに宅配便で送った。劇薬Xの致死量(以下「致死量」とは,それ以上の量を体内に摂取すると,人の生命に危険を及ぼす量をいう。)は10ミリリットルであるが,甲は,劇薬Xの致死量を4ミリリットルと勘違いしていたところ,Vを確実に殺害するため,8ミリリットルの劇薬Xを用意して同瓶に注入した。そのため,甲がV宅宛てに送ったワインに含まれていた劇薬Xの量は致死量に達していなかったが,心臓に特異な疾患があるVが,その全量を数時間以内で摂取した場合,死亡する危険があった。なお,劇薬Xは,体内に摂取してから半日後に効果が現れ,ワインに混入してもワインの味や臭

いに変化を生じさせないものであった。同月25日,宅配業者が同瓶を持ってV宅前まで行ったが,V宅が留守であったため,V宅の郵便受けに不在連絡票を残して同瓶を持ち帰ったところ,Vは,同連絡票に気付かず,同瓶を受け取ることはなかった。

同月26日午後1時,Vが熱中症の症状を訴えてA病院を訪れた。公務員ではない医師であり,A病院の内科に勤務する乙(30歳,男性)は,Vを診察し,熱中症と診断した。乙からVの治療方針について相談を受けた甲は,Vが生きていることを知り,Vに劇薬Yを注射してVを殺害しようと考えた。甲は,劇薬Yの致死量が6ミリリットルであること,Vの心臓には特異な疾患があるため,Vに致死量の半分に相当する3ミリリットルの劇薬Yを注射すれば,Vが死亡する危険があることを知っていたが,Vを確実に殺害するため,6ミリリットルの劇薬YをVに注射しようと考えた。そして,甲は,乙のA病院への就職を世話したことがあり,乙が甲に恩義を感じていることを知っていたことから,乙であれば,甲の指示に忠実に従うと思い,乙に対し,劇薬Yを熱中症の治療に効果のあるB薬と偽って渡し,Vに注射させようと考えた。甲は,同日午後1時30分,乙に対し,「VにB薬を6ミリリットル注射してください。私はこれから出掛けるので,後は任せます。」と指示し,6ミリリットルの劇薬Yを入れた容器を渡した。乙は,甲に「分かりました。」と答えた。乙は,甲が出掛けた後,甲から渡された容器を見て,同容器に薬剤名の記載がないことに気付いたが,甲の指示に従い,同容器の中身を確認せずにVに注射することにした。

乙は,同日午後1時40分,A病院において,甲から渡された容器内の劇薬YをVの左腕に注射したが,Vが痛がったため,3ミリリットルを注射したところで注射をやめた。乙がVに注射した劇薬Yの量は,それだけでは致死量に達していなかったが,Vは,心臓に特異な疾患があったため,劇薬Yの影響により心臓発作を起こし,同日午後1時45分,急性心不全により死亡した。乙は,Vの心臓に特異な疾患があることを知らず,内科部長である甲の指示に従って熱中症の治療に効果のあるB薬と信じて注射したものの,甲から渡された容器に薬剤名の記載がないことに気付いたにもかかわらず,その中身を確認しないままVに劇薬Yを注射した点において,Vの死の結果について刑事上の過失があった。

乙は,A病院において,Vの死亡を確認し,その後の検査の結果,Vに劇薬Yを注射したことが原因でVが心臓発作を起こして急性心不全により死亡したことが分かったことから,Vの死亡について,Vに対する劇薬Yの注射を乙に指示した甲にまで刑事責任の追及がなされると考えた。乙は,A病院への就職の際,甲の世話になっていたことから,Vに注射した自分はともかく,甲には刑事責任が及ばないようにしたいと思い,専ら甲のために,Vの親族らがVの死亡届に添付してC市役所に提出する必要があるVの死亡診断書に虚偽の死因を記載しようと考えた。乙は,同月27日午後1時,A病院において,死亡診断書用紙に,Vが熱中症に基づく多臓器不全により死亡した旨の虚偽の死因を記載し,乙の署名押印をしてVの死亡診断書を作成し,同日,同死亡診断書をVの母親Dに渡した。Dは,同月28日,同死亡診断書記載の死因が虚偽であることを知らずに,同死亡診断書をVの死亡届に添付してC市役所に提出した。

 

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