岡本法律事務所のブログ

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2019年04月

法律上の親子関係と自然血縁 ――日本とドイツ

                弁護士 岡本 哲

1 日本法での最近の傾向

 実親子関係について、生物学上の親子関係と異なる事態が生じることがある。

 父はわが子かわからないので父子関係が問題になることが多いが、母についても。たとえば子が里親の下で育つときや、赤ん坊のときに産院で取り違えられて間違った母に育てられるような場合もある。不妊治療の夫側不妊の場合にドナー提供精子体外受精にによる出生の場合(日本では非嫡出子になるような対外受精は認められていない)も戸籍上の父と自然血縁との差が生じる。

 日本民法は母子関係については分娩の事実によって発生し、父子関係については、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定され(779条1項)、婚姻前後については2項に規程がある。

 

7721.妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

2.婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

婚姻していない場合は認知によりして父子関係が成立する。

最高裁平成26年7月17日判決 民集68巻6号547頁はDNA鑑定等で夫の子でないことが明らかでなったとしても、その事実のみでは父子関係を否定できないとした。

 また、最高裁平成26年1月14日 民集68巻1号1頁は、父子関係がないことを知りながら認知した場合であっても、認知者はその後、自らがなした認知無効を主張できるとした。

 前者は法的血縁を自然血縁より遠ざけ、後者は近寄らせているわけで、一見矛盾しているようにみえる。婚姻制度を重視したとすれば、説明はつくが。

 

2 ドイツではどうか

 母子関係は、1998年に改正された1591条により、子の母は子を出産した女性であると定めている。それまでは日本と同様に明文はなかった。

 代理母のように遺伝上の母と分娩上の母が異なる者について念頭においた規程であり、ドイツでは第三者の卵子提供は法律上禁止されているが、外国で合法的になしうる場合もあり、分娩者に有利になるように規定された。

 父子関係も、日本と同様に父母が婚姻中か否かで異なっている。

 1592条により、子の父となるためには、出生時に母と婚姻していること、父子関係を認知していること、父子関係が裁判所によって確認されること、のいずれかが必要になる。ローマ法以来の「父は婚姻が示す者である」という原則は生きている。

 ドイツ民法でも日本法と同様離婚時期、婚姻時期、提訴中の死亡等にあわせて細かい規程が存在している。

 認知については母の同意が必要とされる。

 法律上の親子関係と自然血縁が異なる場合、裁判の確定に基づく父子関係以外については否認の訴えが可能になる。

 婚姻関係にあった男女間で生まれた子を嫡出子と言うが、嫡出否認の場合、子の福祉のためにも否認権者及び行使期間「は制限されるのが通常である。日本法では夫のみが出生後1年以内になすことが原則とされる。ドイツ法では父も母も子も可能であり、故意の不実認知でも否認可能である。故意の不実認知でも事後否認可能というのは、前掲の日本の最高裁平成26年1月14日判決と同様である。

 日本との大きな違いは生物学上の父による否認が可能なことである。連邦憲法裁判所の2003年の決定を受けて2004年に法改正がなされた。ドイツの連邦憲法裁判所は地日本と異なり抽象的違憲審査を行っている。生物学上の父による否認を一切認めないことは、保護される親の権利(基本法6条2項)に違反するとした。「子どもの監護及び教育は、親の自然の権利であるとともに、第一に親に課された義務である」と定めている。日本国憲法には、このような規程はない。

 ただし、生物学上の父による否認権行使は、①宣誓に代わる保証をし、②これまでの父と子との間に社会的家族関係が存在せず、③子の血縁上の父であることを証明した場合にできる。否認期間の制限は否認理由を知ったときから2年間である。日本法とは制度設計が異なっている。

 ドイツでは2008年に血縁解明法が制定され、子の遺伝上の父子関係を定める独立の手続が定められた。2007年に連邦憲法裁判所が法律上の子が自身に由来するかどうかを知る権利を男性に認めたことから生じたものである。ただし、遺伝上の父と主張する者について申立権は認められていない。否認ができなくなったあとでも可能であるが、法的影響は乏しい。

 現在のドイツは移民国家であり、ドイツ国籍の未成年者を認知することによって移住資格を得るという濫用的認知の問題が多々生じてきていた。日本でも、偽装婚姻や濫用的認知の問題は生じうるが、ドイツとは100倍のオーダーで異なっている。そのため立法的対処という点では、あわてて対処せんでもいいという判断もありうる。

非嫡出子と嫡出子の相続における区別がないのはドイツも日本も同様であり、結婚の意味は男女間で別居後数年はやしなう必要があるかどうか、死亡時の相続があるかどうか、父子関係の成立がかたいかどうかの差異に縮小されている。

 日本でも専業主婦の40代以上だと結婚は永久就職であり、離婚はなかなかできないし、離婚後も養ってもらえると誤解しているひとがままある。成人した時期の法律感覚で一生を過ごすのが常であるとしても、結婚の効果は薄れており、親の義務は増えてきている。そうなると義務がいやということで、生物学的親子関係に法律的親子関係を近づける方向になろうか。

メガネと医療費控除
            弁護士 岡本 哲
1 問題の所在
2 東京高裁平成2年6月28日判決
3 平成24年段階での妥当性

1 問題の所在 所得税法73条と基本通達の齟齬
 所得税法73条は、医療費控除を規定している。その趣旨は医療費が多額で異常な支出になる場合における担税力の減殺を調整することを制度趣旨としている。

所得税法 (医療費控除)
第七十三条  居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払つた場合において、その年中に支払つた当該医療費の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)の合計額がその居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の五に相当する金額(当該金額が十万円を超える場合には、十万円)を超えるときは、その超える部分の金額(当該金額が二百万円を超える場合には、二百万円)を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。

2  前項に規定する医療費とは、医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとして政令で定めるものをいう。

3  第一項の規定による控除は、医療費控除という。

 法令上は所得税法73条2項により限定列挙されているように読める。しかし、所得税基本通達73-3等により、文言の通常の解釈よりは拡張されている。

73-3(控除の対象となる医療費の範囲)

 次に掲げるもののように、医師、歯科医師、令第207条第4号《医療費の範囲》に規定する施術者又は同条第6号に規定する助産師(以下この項においてこれらを「医師等」という。)による診療、治療、施術又は分べんの介助(以下この項においてこれらを「診療等」という。)を受けるため直接必要な費用は、医療費に含まれるものとする。(平11課所4-25、平14課個2-22、課資3-5、課法8-10、課審3-197、平19課個2-11、課資3-1、課法9-5、課審4-26改正)

(1) 医師等による診療等を受けるための通院費若しくは医師等の送迎費、入院若しくは入所の対価として支払う部屋代、食事代等の費用又は医療用器具等の購入、賃借若しくは使用のための費用で、通常必要なもの

(2) 自己の日常最低限の用をたすために供される義手、義足、松葉づえ、補聴器、義歯等の購入のための費用

(3) 身体障害者福祉法第38条《費用の徴収》、知的障害者福祉法第27条《費用の徴収》若しくは児童福祉法第56条《費用の徴収》又はこれらに類する法律の規定により都道府県知事又は市町村長に納付する費用のうち、医師等による診療等の費用に相当するもの並びに(1)及び(2)の費用に相当するもの

 医療費控除はシャウプ勧告(昭和25年から27年)に基づいて創設されたものであり、医療費性の明確なものに限定されていた。その後の社会保障制度の充実や医療技術の進歩にともない、法令に列挙されている費用よりもそれに付随する費用のほうが重くなる、という事態が生じてきた。そこで税務行政上基本通達73-3などを通じて医療費の範囲を拡大し、医療費控除制度の趣旨を執行面に拡大した。
 それでは近視・乱視矯正用のメガネは医療費控除制度の適用対象になるのであろうか。

2 東京高裁平成2年6月28日判決
 東京高裁平成2年6月28日 行集41巻6=7号1248頁、税資176号1340頁の事案の概要は以下のとおりである。
 Xは昭和58年に近視・乱視矯正用のメガネ及びコンタクトレンズを購入した。その代金について所得税法73条の医療費控除の適用があるものとして確定申告をしたところ、Y(税務署長)が医療費控除を否定して更正処分を行った。また、Xは昭和60年分確定申告において、昭和60年中に購入した近視・乱視矯正用のメガネの代金及び診療費用について医療費控除の適用あるものとして記載していたが、Yはこれを否定して更正処分を行った。
 Xが処分取り消しを求めて提訴した。 X側の主張としては、通達の2項 2) 自己の日常最低限の用をたすために供される義手、義足、松葉づえ、補聴器、義歯等の購入のための費用にメガネ・コンタクトレンズは含まれるというものである。
 
 Y側の主張は、法令の解釈として近視乱視の屈折異常にメガネを用いることは異常な支出ではない、メガネ着用は治療行為と考えられていない、検眼は医師の診療・治療を目的とする行為とは本質的に異なる、と主張した。通達については、この通達は医師等による診療や治療のために直接必要な費用に限定して例示しているのであるから、義手等の購入のための費用であっても医師等の診療にかかわりえないものについては医療費控除の対象たりえないと主張した。
 
 1審2審ともX敗訴となった。

3 平成24年段階での妥当性
「医療費」控除という文言から、症状が固定し、治療の必要がなくなったメガネ等の購入費用は所得税法73条の医療費控除の対象とならない、という定式がみちびかれている。 しかし、租税法の規定として担税力現在をおぎなう趣旨とするなら、この定式は疑問がある。症状固定までは医療を奨励するが、そこからさきは放置ということになる。担税力の減殺を補うためには、日常生活を支障なくおくることができる程度に回復させるための支出に対しては控除をすることが合理的ではある。
 平成2年当時だと、経済的自由と精神的自由について二重の基準があり、経済的自由については幅広い立法裁量が認められていた。また、大島訴訟(最高裁大法廷昭和60年3月27日 民集39巻2号247頁)の影響も大きく、一見不合理でも裁判所賀なかなか違憲や違法の判断を下しにくい状態であった。
 しかし、政策判断の合理性重視ということを考慮した平成24年段階では最高裁判決もない現状においてメガネの所得税法73条は認められるべきと思料される。




 参考文献 租税法判例百選 第5版2011年 54事件 奥谷健解説
金子宏「租税法」17版・2012年・56頁、シャウプ勧告からの医療費控除創設、188頁 制度趣旨、191頁 憲法14条違反でないとした判例として紹介

http://www.honzuki.jp/book/138546/review/195934/

あわすお酒に関しては記載がないのがちょっと残念。

保険法以前 保険の基礎知識

質問

 保険法はいつできた法律なのですか。それ以前はどのような法律で保険は規定されていたのですか。

回答

 保険法は2008年に制定された法律です。2010年4月1日に施行されています。

 それまでは、保険契約の成立・効力・履行及び終了については商法に規定されていました。商法については1997年に制定100年の記念切手が発行されています。制定以来100年を経過しており、実情にあわなくなった部分があることから2006年11月から法制審議会保険法部会で改正案の検討が開始され、2007年8月中間試案、2008年2月要綱試案、2008年5月30日に制定、同年6月6日に公布となりました。

岡山市 岡本法律事務所 所長 弁護士 岡本哲

 


遺留分と寄与分 相続法の法律相談

質問

父の遺産は,借金を控除しても実質1億9000万円ありますが,私が父の店を手伝い始めたころ,父の財産はせいぜい自宅の土地を評価した2000万円くらいではないかと思います。ですから,私は本来なら1億9000万円と2000万円の差額である1億7000万円の寄与分を主張したいのですが,そうすると,母と弟の遺留分が侵害されるとのことで,母と弟は反対しています。私が家庭裁判所に寄与分の申立てをすれば,私の希望どおり,寄与分を認めてもらえるでしょうか。

回答

 相談者の希望どおりの寄与分が認められる可能性は低いと思われます。

 遺留分を侵害するような寄与分は審判では通常認められません。相続人全員が合意するのであれば遺留分を侵害するような寄与分認定は可能です。

岡山市 岡本法律事務所 所長 弁護士 岡本哲

 

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