岡本法律事務所のブログ

2019年08月

朝鮮の声 日本語 2019年8月31日 土 0600~0650JST 9650kHz 54444 11865 54444 ICOM IC756PRO3 25mH DP 岡山県岡山市

信号は強い。音質が悪くこもったような声 ビート音もまじっている。

 

0600 第2サイクル

0601 不滅の革命賛歌キムイルソン将軍の歌

0605 不滅の革命賛歌キムジョンイル将軍の歌

 

0608 ニュース

 

敬愛する最高指導者金正恩委員長がヤンドク郡温泉観光地区の建設現場を現地指導しました

 

朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議第14期第2回会議が行われました

 

朝鮮総聯教育活動家代表団が偉大な金日成主席と偉大な金正日総書記の銅像に献花しました

 

全国図書館部門科学技術成果展示会が行われました

 

サムジヨン・ブルーベリー飲料工場で生産が始まりました

 

朝鮮社会民主党中央委員会総会が行われました

 

29日総聯教育活動家代表団が到着しました

 

29日総聯朝鮮大学校学生祖国訪問団が到着しました

 

0622 音楽

 

0652 韓国語アナウンス

ア しかし,仮に,このような説明があったとしても,全体としては債務消滅益に対する課税は回避できるという趣旨の説明にほかならないから,上記1(2)で認定したようなDESに伴う債務消滅益課税のリスクの説明としては,著しく不十分ないし不正確なものといわざるを得ないし,そもそも,上記のような説明さえされていたか,極めて疑わしいといわざるを得ない。

  すなわち,原告代表者は,上記のような説明は全く受けていない旨供述し,被告代表者の上記供述を正面から争っている上,そもそも本件DESの基本的な説明資料という性格の本件提案書2に,債務消滅益課税の可能性,その予想される税額等についての記載が全くないことは上記のとおりであり,このこと自体,債務消滅益課税について何らの説明もされていなかったことを強く推認させるものというべきである。また,本件提案書2に限らず,本件DESを採用した場合に予想される法人税額の増加額とCの相続に係る相続税の減少額とを比較対照して説明したという事実を示すような証拠はない上,数字(試算額)を比較対照するという事柄の性質上,書面もなく専ら口頭での説明がされたとも考えられない。以上の証拠関係に照らすと,そもそも,被告代表者らにおいて,本件DESにより原告に発生する法人税等の額の試算すらしていなかったのではないかと推察される。

  イ 以上の認定判断を総合すれば,被告代表者は,本件DESに係る債務消滅益と欠損金との相殺の可否について,誤った認識に基づく独自の見解を有していたため,債務消滅益に対する課税を看過又は軽視し,本件DESに伴う債務免除益に対する課税の問題について,原告に対して,全く又はほとんど説明をしなかったものと認められる。

  ウ ところで,被告代表者の供述中には,Cらは,三菱東京UFJ銀行から交付を受けた銀行DES資料(乙1。前記2(1)ウ参照)によって,債務免除益(債務消滅益)の課税リスクは承知していたはずであると述べる部分がある。しかし,上記資料は,税務に係る専門家責任を引受ける立場で示されているようなものではなく,「正確な評価ならびに具体的なご対応には,必ず税理士等専門家にご相談ください」と記載されているものにすぎないのであり,DESを提案した顧問税理士である被告から課税リスクの説明がなかった以上,原告を取り巻く具体的な事実関係の下で上記課税リスクは顕在化しないのだと原告が受け取ったとしてもやむを得ないことであり,少なくとも,銀行DES資料の存在は,被告による説明義務を免れさせるようなものとはいえない。

  (3) 以上によれば,被告代表者らは本件DESに係る債務消滅益課税のリスクについての説明義務を怠ったことが明らかであり,被告は,この点について債務不履行責任及び不法行為責任を免れない。

  4 争点2(本件確定申告を行ったことが被告の義務違反行為といえるか)について

 (1) 上記2(5)で認定したとおり,被告代表者は,DES方式が原告の法人税等とCの相続に係る相続税の双方にとってメリットがあるとして自ら提案しこれを採用させたという従前の経緯を覆し,「DESはなかった」ことにして法人税等の申告をするという本件方針を示し,そのような扱いが可能であるか疑問に思った原告が再考を促しても当該方針を変えずに,本件確定申告を行ったものである。

  本件方針がそれ自体支離滅裂であることに加え,原告の登記上,本件DESに係る増資と減資の事実が厳然と公示されている中で,本件DESがなかったという虚偽の事実を押し通して債務消滅益に係る法人税を免れようとする本件確定申告の考え方は,税理士としての基本的な責務を逸脱した違法なものというべきである。

  (2) この点につき,被告は,本件方針に基づく本件確定申告を行ったのは原告の指示に基づくものであると主張し,被告代表者はこれに沿う供述をする。

  ア しかし,まず,被告代表者が本件方針を示すに先立って,原告ないしAの側から本件方針の指示が被告にあったとは到底考えられない。このことは,①DESをなかったことにした場合,Cの相続につき6億円もの相続税が発生することは避けられず,Aもそのような事情は認識していたこと,②Aは,本件DESによる増減資の登記の錯誤抹消などの方法を検討したが,D税理士から困難であるとの回答を得ていたこと等の事実関係から明らかである。本件方針は,被告代表者が,自らが受任している法人税等の申告において巨額の法人税等の課税が発生する事態を取りあえず回避したいというだけの目的で採用されたものと解さざるを得ず,それが相続税の処理と矛盾する結果を来たし,依頼者(A)により重大な不利益を及ぼしかねないことを無視して敢行されたものと考えざるを得ない。

  イ また,原告において,本件方針を前提とする本件確定申告書の提出を了承したこと自体は認められるものの,その経緯は上記2(5)のとおりであり,本件方針には疑問を抱きつつ,法人税等の確定申告の期限が迫る中で,無申告になる事態だけは避ける必要があったこと,追加納付すべき法人税等の資金を急に用立てることは困難であったことから,やむなく,上記申告事務を委任している被告の判断に従うこととしたにすぎないのであって,これをもって「原告の指示」などといえないことは明らかである。

  (3) よって,被告は,DESはなかったものとする事実と異なる本件確定申告を行ったことにつき,債務不履行及び不法行為責任を免れない。

  5 争点3(被告が本件届出給与制度について指導助言すべき義務を怠ったか)について

 (1) 証拠(甲18,26,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件事業年度の前年度までは,毎会計年度ごとに本件届出給与制度について原告の利用意思の有無を確認し,被告側で手続をとることによって原告は同制度を利用して役員給与について損金処理を行ってきたものであり,また,原告は,従前どおり,平成23年6月に開催された株主総会及び取締役会の決議において,本件事業年度の役員給与支給額等を確定させ,被告は,同年度の原告の株主総会議事録の写しを徴求してこれを認識していたことが認められるのであるから,被告は,本件届出給与制度を利用することが原告にとって有利になることについて,役員給与事前確定届出書の提出期限までに認識し,又は容易に認識し得たものといえる。

  (2) 顧問税理事務所としての被告の立場及び上記(1)のとおりの経緯からすれば,被告は,原告から積極的に同制度を利用する旨の意思を伝えられず,明示的に問い合わせや相談を受けていない場合であっても,原告が本件届出給与制度を利用する機会を失することがないように,原告に対し,同制度の利用意思の有無について確認し,又は同制度の利用に関する注意喚起等を行うなどの指導助言をすべき義務を負っていたというべきである。

  ところが,被告は,本件事業年度については,原告に対して同制度の利用意思の有無について確認せず,何らの注意喚起等も行わなかったものであり,上記義務を怠ったものといえる。被告は,この点につき,債務不履行及び不法行為責任を免れない。

  6 争点4(原告の損害及び因果関係)について

 (1) 本件DESに係る説明義務違反による損害

  ア 原告は,清算方式を採用していれば,本件債権に係る相続税だけでなく,DES方式によって発生する約2億9000万円もの法人税等をも免れることができ,かつ,本件提案書1をもってその旨の説明を受けていたのであるから,被告がCらに対し本件提案書2を示してDES方式の提案をした際,DESに伴って原告に債務消滅益が発生すること,これに係る法人税等は約2億9000万円になることを正しく説明していたとすれば,原告は,DES方式を採用することなく,清算方式を採用したものと合理的に推認することができる。

  イ この点につき,被告は,Cらにおいて,清算方式は採用したくないとの意向が既に示されていた旨主張し,被告代表者は,「会社が清算されれば,役員報酬もなくなり雇用されている人も解雇になり,人間で言えば死と同じことを意味するわけで,清算を意図して会社を運営する社長は聞いたことがない」(本人調書5頁)などと,上記主張に沿う供述をする。

  しかし,原告は,顧問税理士の指導によりCの財産管理会社として設立された法人であって,Cらにとって,課税上有利な扱いを受けるための道具にすぎないというのが実態であったと推認されるのであって,少なくとも,2億9000万円もの法人税等の課税を甘受してまで守るべき理由があったとは到底考えられない。被告代表者の上記供述は,長年の事業活動により取引先,得意先の信用を築き上げてきた法人を守ろうとするような場合にはあり得る話だとしても,原告に関する限り,およそ的外れといわざるを得ない。

  かえって,上記2(2)のとおり,Cらは,清算方式が最善の選択肢であるかどうか確信が持てなかったため,清算方式以外にも方法があるのであれば併せて検討してもらいたい旨依頼したにすぎず,これが,清算方式を採用しない旨の確定的な意思を示したものなどといえないことは明らかである。

  ウ 次に,被告は,清算方式は租税回避行為として許されないから選択肢たり得ないとも主張するが,本件提案書1をもって清算方式の提案をしたのは被告自身であり,今更このような主張をすること自体,禁反言の原則に反するものというべきであるし,そもそも上記の主張は,いったん終結した口頭弁論を再開した後の2回目の終結が予定されていた平成28年3月9日の口頭弁論期日が指定された後である同年2月15日に提出されたものであること,この時期までに上記主張を提出することができなかった理由は見いだせないことからすると,時機に後れた攻撃防御方法の提出として許されないというべきである。

  エ 被告は,原告が平成24年4月の時点において本件債務消滅益に対する課税を回避する手段を執ることができたから,被告の説明義務違反と原告が主張する損害との間には因果関係がないとも主張するが,被告の説明義務違反による原告の損害は,平成23年8月に本件DESを実行した時点において発生していると考えられるから,被告の主張はその前提において失当である。

  オ 以上のとおり,被告の説明義務違反がなければ,原告は清算方式を採用したものと合理的に推認され,その場合に納付すべき法人税額は存在しなかったこと(上記1(1)),本件DESに伴って必要となった増資及び減資に係る諸費用を支出することもなかったと認められるから,原告は,以下の合計2億9309万3200円の損害を被ったものと認められる。

 (ア)法人税等相当額 2億8902万8200円

 (イ)増減資に要した登記等費用相当額 406万5000円

  (2) 本件確定申告に係る義務違反による損害

  被告が事実と異なる本件確定申告を行ったために,原告において本件修正申告を行わざるを得なくなったと認められるから,これにより,原告は,以下の合計516万5800円の損害を被ったと認められる。

  ア 延滞税(法人税)相当額 308万8300円

  イ 延滞金(地方税)相当額 167万8500円

  ウ 本件修正申告に係る税理士費用 39万9000円

  (3) 本件届出給与制度についての指導助言義務違反による損害

  被告が本件届出給与制度についての指導助言義務を怠ったことにより,原告は,本件事業年度の役員給与について損金算入をすることができず,以下の合計85万7200円の損害を被ったと認められる。

  ア 法人税等の追加納税額 75万7200円

  イ 本件再修正申告に係る税理士費用 10万円

  (4) 弁護士費用

  本件の事案の性質及び本件訴訟の困難性の程度からすれば,被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用の額は2991万1620円と認められる。

  7 争点5(損益相殺の可否)について

 被告は,本件DESによって原告が消滅することを免れたことで,原告の企業価値に相当する3億4970万6158円の利益を受けているとして,損益相殺を主張する。

  しかし,仮に,被告が主張するような損益相殺を観念することができるとしても,原告が清算を免れたことによる利益というのは,原告の継続企業価値と清算企業価値との差額にすぎないと解するのが相当である。

  そして,原告は,前述のとおり,基本的にCの資産管理会社という性格の法人であって,事業の継続の有無により評価が大きく異なるような資産(のれん等)を保有しているわけではなく,むしろ,DCF法による企業価値評価額が時価純資産法による企業価値評価額を相当に下回るとされているような会社なのである(乙7~9)。こうした点を勘案すれば,清算企業価値を上回る継続企業価値があるとは認められず,原告が清算を免れたことによる利益を認めることはできない。

  よって,損益相殺をいう被告の主張は理由がない。

  第4 結論

  以上によれば,原告の請求は全部理由があるからこれを認容し,主文のとおり判決する。

 (裁判長裁判官宮坂昌利,裁判官家原尚秀,裁判官谷田部峻)

【被告の主張】

  原告は,本件DESを実行した結果,清算により原告そのものが消滅することを免れ,本件DESを実行した会計年度末の企業価値相当額3億4970万6158円(乙7)の利益を受けたのであるから,損益相殺として,同額を損害額から控除すべきである。

  【原告の主張】

  ア 原告の企業価値を保有しているのは原告の株主であって原告そのものではないのであるから,原告が企業価値相当額の利益を受けたとはいえず,損益相殺はされるべきではない。

  イ 原告がDES方式を採用していなければ,清算方式を採用していたのであり,その場合,原告の株主が新会社の株主となり,新会社が原告の事業を事実上承継するのであるから,原告が存続することによる利益は新会社に帰属することになる。そうすると,原告が存続することによる利益はDES方式と清算方式とで異ならないのであるから,原告が本件DESの実行によって企業価値相当額の利益を受けたとはいえない。

  第3 当裁判所の判断

  1 清算方式とDES方式の課税関係について

 (1) 原告が清算方式を採用した場合の課税関係

  仮に,原告が,DES方式を実行した時期と同じ時期に清算方式を採用し,これを実行していた場合には,債務免除益に対する法人税及び本件債権に関する相続税のいずれについても,課税が生ずることはなかった。このこと自体は,被告も特に争っていないが,若干補足して説明する。

  ア 清算確定事業年度において,清算法人に残余財産がないと見込まれるときは(残余財産がないかどうかの判定は,清算確定事業年度の終了時の現況によるが〔法人税基本通達12-3-7〕,解散した法人が当該事業年度の終了時において債務超過状態にあるときは,残余財産がないと見込まれるときに該当すると判定される〔法人税基本通達12-3-8〕),清算確定事業年度前の各事業年度において生じた欠損金額(以下「期限切れ欠損金」という。)に相当する金額は適用年度の所得金額の計算上,損金の額に算入される(同法59条3項,同法施行令118条)。なお,期限切れ欠損金は,通常の事業年度においては損金の額に算入することができないものである。

  イ 原告は,平成24年4月末の時点において,9億6711万7425円の債務超過状態となっており(甲27の貸借対照表),Cによる債務免除額を同額以下とすれば,債務超過は解消せずに残余財産がないと見込まれるから,上記欠損金額の控除規定の適用要件を充足する。そして,原告は,同期末時点において,9億8300万7337円の期限切れ欠損金(甲27に記載された,当該事業年度の当初法人税申告書別表五(一)④31欄の9億8709万6625円から同別表七(一)の408万9288円を控除した額)を有していたことから,Cによる債務免除額から上記期限切れ欠損金を控除することができる。これにより原告の所得金額は0円となり,原告が清算確定事業年度において納付すべき法人税額は存在しないこととなる。

  ウ また,原告が本件DESを実行した時期と同時期に清算方式を採用し,これを実行していた場合には,Cの原告に対する債務免除により,相続税の課税対象となる本件債権は存在しないことになるから,本件債権に係る相続税も発生することはなかった。

  (2) 原告がDES方式を採用した場合の課税関係(甲47)

  ア DES(デット・エクイティ・スワップ)とは,企業の債務(デット)を企業の資本(エクイティ)に交換する(スワップ)ことをいい,債権放棄などと同様に,企業の財務再構築の一手法として利用される。その具体的な方法としては,債権者が債務者企業に現金を払い込んで募集株式の割当を受ける方法(現金払込型)と,現金ではなく債務者に対する債権を現物出資して同様に募集株式の割当を受ける方法(現物出資型)がある。本件DESは後者の方法を想定したものである。

  イ 現物出資型のDESにおいて,資本の増加額を出資する債権の券面額とするか,評価額とするかという議論があったが,平成12年に東京地方裁判所商事部が券面学説を採用することを明らかにして以来,実務は券面額説でほぼ定着するようになったと言われている。この券面額説の考え方を,仮に税務・会計上の処理にそのまま当てはめると,債務者法人において,現物出資を受ける債権(これとの混同により消滅する債務)の券面額が資本等の額にそのまま組み入れられるから債務消滅益は生じないことになるが,そのような取扱いの当否については,必ずしも定説が形成されるに至らないまま推移していた。

  ウ このような中,会社法の施行を受けた平成18年度税制改正において,①法人が現物出資を受けた場合の税務上の取扱いは債権の券面額ではなく時価によるものとされ(法人税法2条16号,同法施行令8条1項),この結果,現物出資する債権の券面額と時価の差額は債務消滅益として認識する必要があるものとされたが,他方,②経営不振企業の再建を目的として行われるDESの趣旨が没却されないよう,会社更生,民事再生等の法的整理においてDESが行われる場合,DESにより発生する債務消滅益を期限切れ欠損金と相殺することを可能とした(法人税法59条1項1号,2項1号)。なお,その後,法的整理に準ずる一定の私的整理(私的整理ガイドライン,中小企業再生支援協議会の支援,RCC企業再生スキーム,事業再生ADR手続によるもの等)についても,期限切れ欠損金との相殺を認める旨の国税庁の取扱いが示されるに至っている(平成22年2月15日付け「企業再生税制適用場面においてDESが行われた場合の債権等の評価に係る税務上の取扱いについて(照会)」に対する同月22日国税庁回答)。

  なお,グループ内部での現物出資等については,税務上の適格現物出資とされ,上記①の例外として簿価取引が認められることがあるが,本件DESに係る本件債権の現物出資は,適格現物出資には当たらない(争いがない。)。

  エ 以上のとおり,現物出資型のDESにおいて,債務者に債務消滅益課税が発生するリスクがあるということは,平成18年度税制改正以降,税務の常識に属する事項となっており,DESに関する基本的な文献等でも,現物出資型DESのデメリットとして,この課税問題を第一に挙げるのが通例となっていた。

  オ ところで,被告代表者の供述中には,原告は債務超過会社であるから,債務消滅益は欠損金と相殺できるという認識であったと述べる部分(本人調書11~12頁)がある。これは,上記のような一般的な文献の記載と明らかに異なる認識を述べる内容であったことから,当裁判所は,被告に対し,債務消滅益を欠損金と相殺することが税法上可能であることについて文献上の根拠を示して説明するよう求める求釈明をしたが(平成27年9月28日付け求釈明書面),被告からは,「運用上の取扱いが可能という意味」であって,文献上の根拠はないという回答がされるにとどまった(同年11月4日付け「釈明事項に対する回答」)。

  上記のとおり,本件DESは税法上の適格現物出資ではないし,法的整理又はそれに準ずる私的整理において行われたものでもないのであるから,「運用上の取扱い」によって債務消滅益を欠損金と相殺しようという期待は,何ら合理的な根拠に基づくものとはいえず,被告代表者の上記供述は,誤った認識に基づく独自の見解を述べるにすぎないものというべきである。

  カ なお,債権者に相続が発生した場合の相続税の課税関係という観点からいうと,DESにより現物出資した債権(相続税法上は原則として額面額として評価される。)は相続財産から既に逸出している一方,取得した株式については,相続税評価の一般原則に従って評価されることになる(通常は上記額面額よりも大幅に圧縮された金額となる。)。

  2 認定事実

  前提事実(前記第2の1)に加え,証拠(後掲のもののほか,原告・被告各代表者)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の各事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。

  (1) 相続税に係る税務相談

  ア 原告は,Cの顧問税理士の指導により,Cの財産管理会社として,昭和61年11月に設立された会社である。平成20年1月頃,上記顧問税理士が死亡したことから,原告は,同年2月1日,被告との間で税務顧問契約を締結した。

  イ Cは,原告に対して多額の貸金等債権(本件債権)を有していたことから,高額の相続税が発生することを懸念し,被告担当者のE(以下「E」という。)に対し,相続税対策の必要性等について相談したところ,Eは,平成21年6月頃,Cらに対し,Cの平成20年1月11日時点の借入金残額と資産評価額,平成21年5月31日時点の借入金残額を記載したメモ(甲23)を示し,Cの資産評価額は借入金残高を上回っているものの基礎控除の範囲内であるから相続税は発生しない旨を説明した。

  ウ Cらは,その後,取引銀行である三菱東京UFJ銀行の担当者に対しても,上記と同趣旨の相続税対策の必要性等について相談したところ,同担当者は,平成23年2月23日付けの書面(甲4)をCらに示し,Cが死亡した場合の一次相続,その後Cの妻が死亡した場合の二次相続を併せて7億5000万円を超える相続税が発生する可能性がある旨を説明するとともに,「相続税試算(現時点)」と題する50枚程度の資料が綴じられたファイルを交付した。なお,Cらは,上記ファイルをそのままEに交付した。

  上記ファイル中には,「対策案1 デット・エクイティ・スワップの活用」という表題の資料(乙1。以下「銀行DES資料」という。)も含まれており,その中には「現物出資方式の場合は,相当額の債務免除益が計上されると思われますので,ご注意下さい」,「正確な評価ならびに具体的なご対応には,必ず税理士等専門家にご相談ください」との記載がある。

  (2) 被告による清算方式の提案

  Eは,平成23年6月14日,Cらに対し,本件提案書1(甲5)を交付し,これに沿って,清算方式による相続税対策を提案する説明をした。

  その概要は,①上記(1)イのメモを作成した平成21年当時の状況では相続税は発生しないものと見込まれていたが,その後の借入金額の変動等により,現時点では,本件債権に係る相続税は約6億円になる,②対応策として,現物出資をして新会社を設立後,原告を清算するという方法が考えられる,③そのメリットは,原告が債務免除を受けると収益となるが法人を解散することで税額はなく,本件債権が消滅するのでCの相続に係る相続税の課税もないことである,④そのデメリットは,役員の勤続年数がリセットされること,口座の閉鎖,開設をやり直す必要があること,法人住民税が高くなること等であるなどというものであった。

  Cらは,上記デメリットが強調されているように感じたことから,清算方式が最善の選択肢であるかどうか分からず,清算方式以外にも方法があるのであれば併せて検討してもらいたい旨依頼し,Eはこれを了承した。

  (3) 被告によるDES方式の提案

  ア 平成23年6月頃,Eが被告を退社したため,被告代表者及びF税理士(以下,被告代表者とF税理士を併せて「被告代表者ら」という。)が原告の税務顧問に関する担当者となり,Cらの上記相続税対策案件も引き継ぐこととなった。

  イ 被告代表者らは,平成23年7月13日,Cらに対し,本件提案書2(甲6)を交付し,これに沿って,DES方式による相続税対策を提案する説明をした。

  本件提案書2には,①「現物出資の件(清算以外)」との見出しの下に,原告には繰越利益剰余金がマイナス約10億円あるため,Cが本件債権を10億円まで出資しても株価の評価は0円であるとした上,②メリットとして,有利子負債の減少に伴う利息支払の軽減,資本金増額における取引先との格付けアップ,債権に係る相続税の軽減の3項目が,③デメリットとして,交際費全額損金不算入,中小法人の特例が不適用,外形標準課税の導入,法人住民税均等割の増加の4項目が記載され,④「以上を踏まえまして,現物出資が○○様にとって最も有利と考えられます」という結論が示されているが,債務消滅益に対する課税の可能性や課税がされた場合の具体的な税額の試算等についての記載はない。

  ウ Cらは,上記説明を受けて,DES方式によっても清算方式と同様に法人税課税がされる心配はなく,総合的にみて清算方式よりも有利であると考え,DES方式を採用することとした。

  (4) 本件DESの実行等

  原告は,平成23年8月9日,本件DESを実行するための臨時株主総会を開催し,Cの原告に対する長期貸付債権の全額9億9000万円の現物出資の受入れをすること,これを引当てにして普通株式4億9500万株を第三者割当発行すること,これに伴い資本金を4億9500万円,資本準備金を4億9500万円それぞれ増加させることについての決議を得た。こうして,同日をもって,本件DESは実行された。

  なお,原告の資本金額を従前の2000万円から5億1500万円とする増資の登記は同月11日にされたが,原告が大会社となることのデメリットを回避するため,同月30日,資本金の額を2000万円に減資する旨の臨時株主総会決議をし(甲8),同年10月3日にその旨の登記がされた(甲1)。

  (5) 本件確定申告に至るまでの経緯

  ア 平成23年11月28日にCが死亡したため,その相続人であるAは,平成24年3月頃,Z税理士法人に対して相続税の申告を依頼した。Aは,同法人の代表社員であるD税理士から相続税対策の有無について尋ねられたため,本件DESを実行したことを告げたところ,D税理士は,原告には債務消滅益に係る法人税が確実に課税されるはずであるとの指摘をした。

  イ A及びD税理士は,本件債権に係る税務処理について確認するため,平成24年3月1日,被告の事務所を訪問した。そこでD税理士は,被告代表者から,相続税の申告のために必要な資料の交付を受け,事実関係の説明を受け,本件DESが実際に実行されていることを確認した。D税理士は,被告代表者に対し,債務消滅益に係る法人税が確実に課税されるはずであると警告するとともに,自身が受任している相続税申告においては,本件債権は本件DESにより消滅している前提で申告するつもりであると告げた。

  ウ Aは,被告とZ税理士法人の見解が食い違っていることに困惑し,被告代表者に対応を確認すると,被告代表者は,「本件DESはなかった」ことにして法人税等の申告をするつもりであるという方針(以下「本件方針」という。)を示した。これは,DES方式が原告の法人税等とCの相続に係る相続税の双方にとってメリットがあるとして被告が提案し,採用させたという従前の経緯を覆すものであるばかりでなく,現実に本件DESによる増資と減資の登記が経由していることを無視するものであり,そのような強弁が通用するのか疑問を抱かざるを得ない対応であった。

  それでも,Aは,多額の法人税等の課税を回避することができるのであれば,その方法を模索してみようと考え,増資及び減資の登記を錯誤抹消することはできないかをD税理士に照会するなどしたが,登記の錯誤抹消は困難であるとの回答であり,他に適当な善後策も見当たらない状況となった。しかし,被告代表者は,D税理士の上記見解を伝えられても,本件方針を前提に法人税等の確定申告を行うという考えを変えることはなかった。(甲30,31)

  エ こうした状態のまま,法人税等の確定申告の期限が迫り,Aとしては,納得できない思いではあったが,無申告になる事態だけは避ける必要があったこと,債務消滅益の発生を前提とする法人税等の納税資金を急に用立てることは困難であったことから,やむなく,上記申告事務を委任している被告の判断に従って,平成24年6月29日,本件方針を前提とする本件確定申告書の提出を了承した。

  本件確定申告書の添付資料中,資本金等について,当期の増減はないものとされ(甲9の1の6丁目),借入金及び支払利子の内訳書には,Cの本件債権8億07190800円が計上されたままになっている(同8丁目)など,本件確定申告は,本件DESの存在自体を否定する内容になっており,その結果として,本件DESに係る債務消滅益も記載されていない。

  (6) 本件修正申告に至る経緯

  ア その後,Cの相続に係る相続税申告手続はD税理士において進められることになったが,D税理士は,上記のとおり,本件DESによって本件債権は消滅しているという前提で相続税の申告をした。

  イ 原告は,法人税等の申告と相続税の申告が全く矛盾した内容になってしまったままにすることはできないと考え,本件DESに伴う債務消滅益の発生を前提とする納税額2億8902万8200円の資金手当てが完了するのを待って,平成24年11月19日,同額を納付し,同月20日,本件修正申告を行った。しかし,原告は,延滞税(法人税)308万8300円及び延滞金(地方税)167万8500円の納付並びに本件修正申告に係る税理士費用39万9000円の支払を余儀なくされた。

  3 争点1(被告が本件DESに係る説明義務を怠ったか)について

 (1) 被告は税務の専門家として原告と税務顧問契約を締結していたことを踏まえて考えれば,被告は,原告に対し,DES方式を提案するに当たり,本件DESにより生じ得る課税リスク,具体的には,前記1(2)のとおり,本件DESに伴い発生することが見込まれる債務消滅益課税について,課税される可能性,予想される課税額等を含めた具体的な説明をすべき義務があったというべきである。

  なお,上記2(1)~(3)の認定事実によれば,DES方式の提案がされるに至ったそもそもの発端は,Cの相続を想定した相続税対策にあり,その依頼の直接的な主体は原告ではなく,C及びAであったと解される。しかし,DESが,債務者法人による現物出資の受入れ,募集株式の発行等を伴うものである以上,被告によるDES方式の提案は,債務者法人たる原告に対する提案という意味も持つというべきであり,このことは,本件提案書2に記載されているメリット,デメリットのほとんど(相続の軽減以外の全部)が原告に関する事項であることからも明らかである。

  (2) これを前提に,被告の説明義務違反の有無を検討するに,被告代表者の供述中には,要旨「本件DESの実行により債務消滅益の課税を指摘される可能性はあるが,そうだとしても3億円程度の法人税であり,相続税6億円程度を免れるのであればその方がいいと思うし,税務調査が行われても交渉等により税額を減少させることは実務的に可能である」という趣旨の説明をしたとの部分がある(本人調書6頁,乙3~5の陳述書も同旨)。

税理士法人に約3・3億の損害賠償義務を認めた東京地裁平成28年判決

東京高裁判決があったというネットでのはなしはありましたがまだ判例雑誌等にはのっていないようです。

長いので3分割して掲載します。

 

 

億損害賠償請求事件

【事件番号】 東京地方裁判所判決/平成25年(ワ)第26327号

【判決日付】 平成28年5月30日

【判示事項】 相続税対策としてデット・エクイティ・スワップを実施することによって課税を受けるリスクが生ずることについて税理士法人の説明義務違反等が認められた事例

【参照条文】 民法415

       民法709

       法人税法2

       法人税法34-1

       法人税法59

       法人税法施行令69-2

       法人税法施行令8-1

       法人税法施行令118

       法人税法施行規則22の3

【掲載誌】  判例タイムズ1439号233頁

【評釈論文】 ジュリスト1499号10頁

       法律のひろば71巻5号57頁

 

       主   文

  1 被告は,原告に対し,3億2902万7820円及びうち2億9825万9000円に対する平成25年2月20日から,うち3076万8820円に対する平成25年10月26日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

  2 訴訟費用は被告の負担とする。

  3 この判決は,仮に執行することができる。

 

        事実及び理由

 

  第1 請求

  主文と同旨

  第2 事案の概要

  本件は,原告が,原告の顧問税理士であった被告に対し,①被告は,原告の前代表者C(以下「C」という。)の相続税対策としてデット・エクイティ・スワップ(Cが原告に対して有する貸金等債権を原告に現物出資してCに原告の株式の割当てを行うもの。以下「DES」という。)を提案するに際し,当該DESにより原告に多額の債務消滅益が生じることを説明せず,このため原告は課税リスクを認識することなくDESを実行したが,多額の法人税等の納付義務を生じ,本来支払う必要のなかった法人税等相当額計2億9309万3200円の損害を被った,②被告は,税務代理人として原告の税務申告書を作成,提出した際,事実と異なりDESはなかったとする前提の申告をしたため,原告はその後修正申告を余儀なくされ,延滞税等計516万5800円の損害を被った,③被告は,役員事前確定届出給与制度(以下「本件届出給与制度」という。)についての助言指導を怠ったために,原告は役員給与について同制度を利用できず,不要な納税義務が生じ,計85万7200円の損害を被った,④以上の被告の不法行為により本件訴訟に係る弁護士費用2991万1620円の支出を余儀なくされたと主張して,税務顧問契約の債務不履行又は不法行為に基づき,上記損害額合計3億2902万7820円及びその内金である上記①,②の小計2億9825万9000円に対する催告の日の翌日である平成25年2月20日から,同じく上記③,④の小計3076万8820円に対する訴状送達の日の翌日である平成25年10月26日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

  1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠〔書証は枝番を含む。以下同じ。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)

  (1) 当事者等

  ア 原告は,不動産の賃貸及び管理等を目的とする株式会社である(甲1)。

  原告の代表取締役はCが務めていたが,平成23年8月9日にその子であるA(以下「A」という。)も代表取締役に就任した(以下,C及びAの両名を「Cら」ということがある。)。なお,Cは同年11月28日に死亡した。

  イ 被告は,他人の求めに応じ,租税に関し,税理士法第2条第1項に定める税務代理,税務書類の作成及び税務相談に関する事務を行うこと等を目的とする税理士法人である(甲2)。

  (2) 税務顧問契約の締結

  原告は,平成20年2月1日,被告との間で,被告が原告の法人税確定申告業務及び税務相談等を含む税理士業務並びに記帳代行業務等の付随業務を行うことを内容とする税務顧問契約を締結し,平成24年4月までの毎年度,被告に対し,法人税,消費税及び地方税の確定申告手続を委任した。

  (3) Cの原告に対する貸金等債権

  Cは,平成22年4月末の時点で,原告に対し,約11億円の貸金等債権(以下「本件債権」といい,原告からみたその債務を「本件債務」という。)を有していた(甲5,弁論の全趣旨)。

  (4) 相続税対策の提案

  Cらは,Cの本件債権に係る相続税対策を被告に相談したところ,被告は,まず,平成23年6月14日に甲5の書面(以下「本件提案書1」という。)をもって下記アの方法(以下「清算方式」という。)を,次いで,同年7月13日に甲6の書面(以下「本件提案書2」という。)をもって下記イの方法(以下「DES方式」という。)を,それぞれ提案した。

  ア 原告が所有する建物及び車両を現物出資して新会社を設立し,新会社の株式を本件債務の一部に対する代物弁済に充てた上で,本件債務の残部についてはCが原告に対する債務免除を行い,その後原告を解散して清算するという方法

  イ Cの原告に対する本件債権を原告に現物出資して,Cに対して原告の株式の割当てを行うという方法

  (5) DESの実行

  原告及びCは,被告の上記提案のうちDES方式を採用することとし,平成23年8月9日,本件債権9億9000万円をCが原告に現物出資し原告はこれを額面額で受け入れて株式を発行する旨のDESを実行した(以下「本件DES」という。)。

  本件DESの実行により,同日,原告の資本金は2000万円から5億1500万円になったが,その後再び2000万円とする減資を行った。以上の手続に関し,原告は,同年8月11日及び同年9月30日,司法書士に対し,登記費用等合計406万5000円を支払った。(甲1,7,8,13,15)

  (6) 法人税の確定申告等

  ア 被告は,原告の税務代理人として,平成23年5月1日から平成24年4月30日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)に係る原告の法人税及び地方税(以下「法人税等」という。)の確定申告書(甲9。以下「本件確定申告書」という。)を作成し,同年6月29日,大森税務署長及び品川都税事務所長宛てにこれを提出した(以下「本件確定申告」という。)。本件確定申告書は,DESはなかったという前提で作成されており,本件DESに係る債務消滅益も計上されていなかった。

  イ 平成23年11月28日にCが死亡した。その相続人であるAは,Z税理士法人に相続税申告を委任し,その代表社員であるD税理士(以下「D税理士」という。)の助言の下,本件DESにより本件債権は消滅したことを前提とする相続税申告を行うこととした。原告はこれを踏まえ,法人税等についても,本件DESに係る債務消滅益の発生を前提とする修正申告を行うこととし,平成24年11月19日,当初確定申告に係る法人税等の税額との差額2億8902万8200円を納付し(甲14),同月20日,D税理士の作成に係る法人税等の修正申告書(甲10)を大森税務署長及び品川都税事務所長宛てに提出した(以下「本件修正申告」という。)。

  原告は,同月29日,Z税理士法人に対し,本件修正申告に係る税理士報酬39万9000円を支払い(甲12),同年12月27日,本件修正申告に伴う延滞税(法人税)308万8300円及び延滞金(地方税)167万8500円を納付した(甲11)。

  (7) 本件届出給与制度

  ア 法人の役員給与は原則として損金に算入されないが(法人税法34条1項本文),役員に対して所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する一定の給与のうち,届出期限までに納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をする等の一定の要件を満たした場合のその給与については,当該法人の所得の計算上,損金の額に算入することができるとされている(同法34条1項2号)。ただし,上記届出は,各事業年度ごとに届け出る必要があるとされている(同法施行令69条2項,同法施行規則22条の3)。

  イ 原告は,平成23年7月31日及び同年12月27日,役員給与として計163万6450円を支払い,被告は,当該役員給与の全額を原告の本件事業年度の損金として処理した。しかし,原告は同期の役員給与について役員給与事前確定届出書の提出をしていなかったため,上記給与は損金として処理することができないものであった。

  そのため,原告は,平成25年6月18日,Z税理士法人に依頼して,大森税務署長に対し修正申告書(甲19)を提出し(以下「本件再修正申告」という。),役員給与に係る法人税等合計75万7200円の追加納税を行い,Z税理士法人に対し,当該申告業務の報酬として10万円を支払った。(甲9,18~21)

  (8) 原告の被告に対する催告

  原告は,被告に対する平成25年2月18日付けの書面(同月19日到達)をもって,現実に納付した税額と適正納税額との差額,本件DESの実行に伴う増資等に係る登記等費用相当額,本件修正申告に伴う延滞税及び延滞金並びに税理士報酬について,損害賠償を求める旨の通知をした(甲22)。

  2 争点及びこれに関する当事者の主張

  (1) 被告が本件DESに係る説明義務を怠ったか(争点1)

  【原告の主張】

  被告は,平成18年度税制改正により,DESを実行した場合に,債権の額面金額と時価との差額が債務消滅益として計上され,課税の対象とされることとなったことについての知識を欠いており,本件DESにより,債務消滅益が益金の額に計上され,これに約3億円もの法人税が課税されることについての認識がなく,原告に対し何らの説明もしなかった。

  【被告の主張】

  原告の主張は否認する。

  被告代表者は,Cらに対し,本件DESにより相当額の債務消滅益が発生し,税務調査の上で課税される可能性は相当程度存在するが,原告が債務超過の状態にあることから,債務消滅益が顕在化していないと判断されて課税されない可能性もなくはない旨の説明をした。

  (2) 本件確定申告を行ったことが被告の義務違反行為といえるか(争点2)

  【原告の主張】

  ア 被告は,本件DESが実行されていることを知りながら,本件DESに伴う課税を免れようとして,DESはなかったものとする事実と異なる内容の本件確定申告をした。その結果,原告は,後述の延滞税等の支払及び本件修正申告を余儀なくされたものである。

  イ 原告代表者のAは,本件確定申告書提出時においては,その提出を了解していたが,それは,被告に対して事実に合致した内容での正しい申告をするよう求めたのに被告がこれを拒絶して本件確定申告に固執したこと,法定の申告期限までに正しい申告をする時間的余裕がなかったことから後日修正申告をすることを前提に本件確定申告を行うよう依頼したことによるものである。また,被告は本件DESが実行されたことを知っていたのであるから,仮に,原告が事実に反する申告をしたいとの意向を示した場合には,それを制止する義務があるはずであり,それにもかかわらず,事実に反する申告をしたというのであれば,それは被告の義務違反である。

  【被告の主張】

  原告の主張は否認する。

  被告が本件確定申告を行ったのは,原告からの指示に基づくものであり,依頼者である原告からの指示がある以上,それに従わざるを得ないから,被告の義務違反ではない。

  (3) 被告が本件届出給与制度について指導助言すべき義務を怠ったか(争点3)

  【原告の主張】

  被告は,原告から積極的に本件届出給与制度の利用意思を伝えられていなくとも,原告が役員給与について損金に算入できるように,原告に対し,本件届出給与制度の利用の有無についての意思確認を行い,役員給与事前確定届出書を提出すべき義務があるにもかかわらず,上記確認を怠り,同届出書の提出を失念したものである。

  【被告の主張】

  原告の主張は争う。

  本件届出給与制度を利用するか否かは依頼者である原告の意向次第であり,被告は,原告から同制度の利用意思を伝えられない限り,同制度について助言指導すべき義務を負うものではない。

  (4) 原告の損害及び因果関係(争点4)

  【原告の主張】

  ア 原告は,被告から,本件DESによって債務消滅益が発生し,これに多額の法人税が課せられることについての適切な説明を受けていれば,本件DESを実行することはなく,それに伴う増減資を行うこともなかった。したがって,被告がこの点の説明義務に違反したことにより,原告は,以下の合計2億9309万3200円の損害を被ったといえる。

 (ア)法人税等相当額 2億8902万8200円

 (イ)増減資に要した登記等費用相当額 406万5000円

  イ 原告は,被告がDESはなかったものとする不実の内容の本件確定申告を行ったことにより,修正申告を余儀なくされ,以下の合計516万5800円の損害を被った。

 (ア)延滞税(法人税)相当額 308万8300円

 (イ)延滞金(地方税)相当額 167万8500円

 (ウ)本件修正申告に係る税理士費用 39万9000円

  ウ 原告は,被告が本件届出給与制度について指導助言すべき義務を怠ったことにより,本件事業年度の役員給与を損金に算入することができず,以下の合計85万7200円の損害を被った。

 (ア)法人税等の追加納税額 75万7200円

 (イ)本件再修正申告に係る税理士費用 10万円

  エ 原告は,本件訴訟に係る弁護士費用2991万1620円の損害を被った。

  【被告の主張】

  ア 原告の主張は全て否認し,争う。

  イ そもそも,本件において,原告及びAは,①本件債権をそのままにして,C死亡後の相続税(一次相続,二次相続併せて約7億5000万円)を甘受するか,②本件DESを実行して上記相続税を回避するか,③原告会社を清算するかのいずれかの選択肢しかなかったところ,Cらは,清算方式は採用したくない旨の意向を既に示しており,その可能性は排除されていた。そうでないとしても,そもそも清算方式は租税回避行為として許されないというべきであるから,選択肢たり得ない。残された選択は①か②しかなかったのであるが,Aらは,7億5000万円の相続税を支払うよりも2億8902万8200円の法人税等を支払うことが割安であると考えて②を選択しただけのことである。

  すなわち,本件で被告が本件DESによって原告に対する多額の法人税が課税されることについての説明義務を尽くし,原告が本件DESによって多額の法人税が課税されることを認識していたとしても,原告の主張する損害との間に因果関係はない。

  ウ 原告は,平成24年3月の時点において,Z税理士法人から本件DESに係る債務消滅益に対する課税がされることを聞き,これを認識していたのであるから,本件確定申告及び本件修正申告をすることなく,①本件DESの実行に係る株主総会決議を取消して発行可能株式総数の変更登記をするか,②改めて清算方式を採用してこれを実行することによって,本件債務消滅益に対する課税を回避することができた。したがって,仮に被告に義務違反があったとしても,被告の義務違反と原告が上記ア及びイにおいて主張する損害との間には因果関係がない。

  (5) 損益相殺の可否(争点5)

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