岡本法律事務所のブログ

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2020年05月

栗山茂裁判長名判決 刑訴の伝聞の意義 最高裁昭和30年 強姦致死等被告事件

判例ノート登載 百選は3版まで

最高裁判所第2小法廷判決/昭和29年(あ)第2784号

昭和30年12月9日

【判示事項】       刑訴第411条に当る一事令―事実誤認の場合―

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集9巻13号2699頁

             最高裁判所裁判集刑事111号207頁

             判例タイムズ56号61頁

【評釈論文】       警察研究31巻8号119頁

             別冊ジュリスト1号104頁

             別冊ジュリスト32号150頁

             別冊ジュリスト51号164頁

             別冊ジュリスト74号164頁

             別冊ジュリスト89号178頁

 

       主   文

 

 原判決及び第一審判決を破棄する。

 本件を鳥取地方裁判所に差戻す。

 

       理   由

 

 被告人の上告趣意、弁護人佐藤哲郎、同小野孝徳の上告趣意、同寺坂銀之輔の上告趣意は、末尾添附の同人らの「上告趣意」と各題する書面記載のとおりである。

 被告人の上告趣意は事実誤認、量刑不当の主張であり、弁護人佐藤哲郎、同小野孝徳の上告趣意第一点は判例違反をいうけれども、原審において主張せられず、その判断を経ない第一審の訴訟法違反を主張するに帰し、その余は憲法違反をいう点もあるが、実質は事実誤認、単なる訴訟法違反の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

 また、弁護人寺坂銀之輔の上告趣意第一点は判例違反を主張するにあるところ、原判決は被告人の性格が婦女に対して異常であることを窺わせるような事跡を掲げ、これにより本件強姦致死の刑責が被告人にあることを推断する一資料としているのであるから、(かような証拠の証明力の程度の問題はとにかく)論旨引用の判例が、犯人の性行経歴が犯罪行為と交渉を有する場合には、その交渉する限度においてこれを当該犯罪事実認定の資料とすることを妨げないとするところと、なんら抵触するところはない。同第二点は刑訴三二一条、三二四条は憲法三七条二項に違反すると主張するけれども、原審において主張せられず、その判断を経ないところであり(刑訴三二一条の合憲性については昭和二六年(あ)第二三五七号、同二七年四月九日大法廷判決、集六巻四号五八四頁参照)、同第三点(但し、撤回部分を除く)は事実誤認の主張であつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

 職権により調査すると、第一審判決は罪となるべき事実として「被告人は最初の妻に小供を置いて死なれ、その後二度も妻を娶つたがいずれも生別し、数年来鰥暮をしているものであるが、第一、かねて米子市a番地未亡人AことB(当時数へ年三五才)と情を通じたいとの野心を持つていたところ、昭和二三年五月一日午後七時三〇分頃鳥取県西伯郡b町から自宅への帰途、米子市c地内米川堤防道路上において右Bに出会うや同女を姦淫すべく決意し、同女を道路下の畑や田等のある所に連れ込み同所のC所有の田地(米子市c字d番地)において何かの拍子で倒れた(或は格闘の結果倒れたかも知れない)同女の頸部を手で扼して強いて同女を姦淫しようとして右頸部扼圧の結果同女を間もなくその場で窒息死亡させ(強姦既遂の点についてはその証明が十分でない)」たとの強姦致死の事実を認定し、その証拠として幾多の証拠の標目を挙示しこれを綜合して右事実を認める旨判示している。そして第二審判決は右第一審判決を支持する理由を詳細に説示しているのであるが、「(二)被告人が原判示、日時、場所において、原判示の如く、Bを殺害したとの点」について、「1Bが殺害された当日、被告人がb町に赴いたことは、諸般の証拠によつて明らかである。さて、被告人が、いずれの列車でb町から米子市に帰つたとしても、前叙の如くBが帰途に就き米川堤防道路上に差蒐つた際、偶被告人もBの前方を同一方向に向つて歩行していたことは、原審証人D、E、F、Gの各証言、原裁判所が昭和二七年二月二五日行つた検証の結果、米子鉄道管理局長名義の列車発着時刻に関する回答及び原審裁判官の証人Fに対する尋問調書によつて認められる諸般の事実を通じて容易に窺われる。」と説示している。しかるところ第一審証人Hの証言並びに第一審裁判所が昭和二七年三月一日行つた検証の結果によると、Bが皆生温泉からの帰途、Hと新開橋附近で別れ、そこから一人で同c寺地内米川堤防道路上を、観音寺部落、戸上部落方面に向つて歩行しはじめたのは昭和二三年五月一日午後七時頃であり、同所から徒歩で本件現場附近の道路上にいたる所要時間は約二七分であるから、Bが現場附近に達した時刻は同七時二七分頃となる。一方、被告人が当日午後境駅から乗車し後藤駅で下車したとして、米子鉄道管理局長名義の列車発着時刻に関する回答によれば、右後藤駅着時刻は午後五時三五分頃若しくは同七時九分頃であり、且つ昭和二八年五月一日原審が行つた現場検証の結果によれば後藤駅から本件現場附近の道路上までの徒歩所要時間は約五〇分であるから、被告人が午後七時九分着の列車で後藤駅に到着したとすれば、被告人が現場附近に達する時刻は同八時一分頃となる。従つて、被告人が午後七時九分着の列車で後藤駅に到着したとすれば、右現場附近においてBと出会することは不可能である。されば、原判示のように、被告人がいずれの列車でb町から米子市に帰つたとしても、Bが帰途につき米川堤防道路上に差蒐つた際、偶被告人もBの前方を同一方向に向つて歩行していたことが認められるとすることはできない。しかも第一審証人Fの公判廷の供述並びに第一審裁判官の同証人に対する尋問調書中の供述記載によつては、同証人が米川堤防上で出会つた男が被告人Iによく似ていたと思うというにとどまり、その男が被告人であつたことは同人の確認しないところというのほかなく、その他原判決挙示の証拠をもつては未だ右事実を確認するに足りない。さらに、原判決が理由中(二)の2(イ)ないし(チ)において認定した各事実並びに3、4、5、において認定した各事実がすべて真実であるとしても、かような事実をもつては未だ、Bが米川堤防上に差蒐つた際、被告人も同人の前方を同一方向に向つて歩行していたとの認定事実を肯認するに足りない。

 次に、鑑定人J作成の鑑定書によれば、Bの「死後の経過時間は死後強直発現程度、体温等よりして十時間以上経過せるものと推定さる」とあり、解剖に着手した昭和二三年五月二日午後一一時三〇分より逆算して十時間以上とは二日午後一時三〇分より以前ということであり、また、同鑑定人の第一審公判廷における証言によれば、「被害者が死の転帰を取つたのは二日に入つてからと思いますか」との問に対し「私の頭に残つているのは二日の前日の遅くではないかと思う程度ではなかつたかと思います」とあつて、二日の前日の遅くではないかと思うとは、即ち五月一日午後一〇時以後を指すものと解するのが相当である。されば、他により確実な証拠の存しない限り、Bの死亡時は少くとも五月一日午後一〇時以後と推認するを相当とせざるをえない。従つて、第一審判決認定の死亡時間との間に数時間の齟齬あるものというべきである。

 さらに、第一審判決は、被告人は「かねてBと情を通じたいとの野心を持つていた」ことを本件犯行の動機として掲げ、その証拠として証人Kの証言を対応させていることは明らかである。そして原判決は、同証言は「Bが、同女に対する被告人の野心にもとずく異常な言動に対し、嫌悪の感情を有する旨告白した事実に関するものであり、これを目して伝聞証拠であるとするのは当らない」と説示するけれども、同証言が右要証事実(犯行自体の間接事実たる動機の認定)との関係において伝聞証拠であることは明らかである。従つて右供述に証拠能力を認めるためには刑訴三二四条二項、三二一条一項三号に則り、その必要性並びに信用性の情況保障について調査するを要する。殊に本件にあつては、証人KはBの死の前日まで情交関係があり且つ本件犯罪の被疑者として取調べを受けた事実あるにかんがみ、右供述の信用性については慎重な調査を期すべきもので、これを伝聞証拠でないとして当然証拠能力を認める原判決は伝聞証拠法則を誤り、引いて事実認定に影響を及ぼすものといわなければならない。

 以上要するに、第一審判決が、被告人に本件強姦致死の犯行を認めたことが正当であるかどうかは疑問であり、第一審判決にはその判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認を疑うに足る顕著な事由があつて、同判決及びこれを維持した原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。よつて刑訴四一一条三号、四一三条に則り原判決及び第一審判決を破棄し、本件を第一審裁判所である鳥取地方裁判所に差戻すべきものとし、主文のとおり判決する。

 この判決は全裁判官全員一致の意見である。

 検察官大津民蔵出席

  昭和三〇年一二月九日

     最高裁判所第二小法廷

         裁判長裁判官    栗   山       茂

            裁判官    小   谷   勝   重

            裁判官    藤   田   八   郎

            裁判官    谷   村   唯 一 郎

            裁判官    池   田       克

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宮井よしあき

重加算税を認めた平成31年裁決

事実がわかりにくい 国税不服審判所裁決

平成31年4月23日

当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき、所得税等については過少申告をし、消費税等については期限内に確定申告書を提出しなかったと認定した事例

【判決要旨】       請求人は、外注費に相当する金額は請求人の収入金額を構成しないとの誤解により収入金額を過少に申告したものであるから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」た事実はない旨主張する。

             しかしながら、請求人は3年間にわたり、多額の所得を継続的に過少に申告しており、作成したメモの状況とあいまって、当初から所得を過少に申告する意図があったと認められる。そして、請求人の事業における関係書類の作成及び外注先への支払の状況を踏まえれば、請求人は収入及び外注費のおおよその金額を認識していたと認められるところ、平成26年分においては、当該認識に沿う主要な売上先に係る売上金額及び外注費等の実額が記載されたメモを作成し、また、その後の平成27年分及び平成28年分においては、申告準備段階において事実とは異なる申告すべき金額を記載したメモを作成し、これらを相談会場に持参し、真実の所得を大幅に下回る金額を記載するなど所得金額を少なく偽った収支内訳書を作成し、所得税等の申告をしていたものである。これら一連の行為は、請求人が外部からうかがい得る特段の行動をしたものと評価することができ、重加算税の賦課要件を満たすものである。もっとも、平成25年分はメモの作成は認められず、収支内訳書の記載状況からするとその過少申告の形態がこれ以外の各年分と異なることが認められるから、重加算税の賦課要件を満たすとはいえない。

【参照条文】       国税通則法68-1

             国税通則法68-2

【掲載誌】        裁決事例集No.115

 

1 事実

 (1) 事案の概要

   本件は、鉄骨工事業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき所得税等の修正申告及び消費税等の期限後申告をしたところ、原処分庁が、内容虚偽のメモに基づいて収支内訳書及び確定申告書を作成して提出したことは隠蔽又は仮装の事実に該当するなどとして重加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、隠蔽又は仮装の事実はなかったとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

 (2) 関係法令

  イ 国税通則法(平成29年1月1日前に法定申告期限が到来した国税については、平成28年法律第15号による改正前のもの。以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、同法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

  ロ 通則法第68条第2項は、同法第66条《無申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の40の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

 (3) 基礎事実

   当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  イ 請求人は、平成23年から鉄骨工事業を営む個人事業主である(以下、請求人が営む当該事業を「本件事業」という。)。

    本件事業は、複数の受注先から工事を受注し、指定された建築現場において、鉄骨材などの建築資材の提供を受けて鉄骨を組み上げる工事を行うものである。

  ロ 受注する工事の多くは、複数の職人による作業を要するものであり、請求人は、自ら作業に従事するほか、必要に応じ他の職人に作業を委託し、その対価を支払っていた(以下、平成23年の本件事業開始から請求人の委託により作業を行った者を「本件各外注先」といい、本件各外注先に支払った対価を「本件外注費」という。)。

  ハ 請求人は、本件事業において、日々の工事について、その日付、受注先及び建築現場の略称、作業に従事した者の氏名又は略称、人工の数、請求人が本件各外注先に対して支払う対価の額(外注先別の各月の合計額)などを大学ノートに記載していた(以下、当該大学ノートを「本件出面帳」という。)。

  ニ 請求人は、本件出面帳を基に、作業に従事した日数(人工の数)と1日当たりの単価から受注先に対する各月の請求金額(消費税及び地方消費税に相当する額を記載し上乗せ)を計算して、受注先に対し請求書を発行し、請求人名義のG金庫○○支店の普通預金口座(口座番号○○○○。以下「本件口座」という。)への振込みの方法により、その支払を受けていた。

    なお、請求人が本件事業において使用する預金口座は、本件口座のみであり、請求人は、本件口座の預金通帳を自ら管理し、月に一回程度、その通帳に記帳をしていた。

  ホ H社(以下「本件受注先」という。)は、本件事業における主要な受注先であり、請求人の収入金額(修正申告後のもの。)の約○割を占める。その他、本件事業においては数社の受注先がある。

  へ 請求人は、本件各外注先から、それぞれ作業に従事した日数と1日当たりの単価に基づき作成された各月の請求書を受領し、当該各請求書に基づき、本件各外注先に各月の対価を支払っていた。

  ト 請求人は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)の調査(以下「本件調査」という。)の際、本件調査担当職員に対し、本件口座の預金通帳(平成26年11月27日から平成29年6月12日までのもの)、受注先に対する請求書の控え(平成26年6月から平成27年6月まで及び平成28年2月から同年12月までのもの)、本件外注費に係る領収証(平成26年、平成27年及び平成28年のもの)のほか、確定申告前に必要経費等を集計したとする平成26年分に係るメモ3枚、平成27年分に係るメモ1枚及び平成28年分に係るメモ4枚(以下、順次「平成26年メモ」、「平成27年メモ」及び「平成28年メモ」といい、これらを併せて「本件各メモ」という。)を提示した(以下、当該提示した各書類を「本件各提示書類」という。)。また、平成25年分以前の必要経費の領収証を紙の手提袋に入れて提示した。

 (4) 審査請求に至る経緯

  イ 請求人は、平成23年分及び平成24年分の所得税並びに平成25年分、平成26年分、平成27年分及び平成28年分の所得税及び復興特別所得税(以下、平成25年分ないし平成28年分を併せて「本件各年分」といい、所得税及び復興特別所得税を併せて「所得税等」という。)について、確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに原処分庁に提出して、確定申告した。

    なお、請求人が平成23年分ないし平成28年分の事業所得に係る各収支内訳書に記載した収入金額及び本件外注費の額は、それぞれ別表2の各「確定申告」欄の「①収入金額」欄記載の各金額及び「③本件外注費の額」欄記載の各金額であった。

  ロ 請求人は、本件調査の結果に基づき、平成29年11月16日に、平成24年分の所得税及び本件各年分の所得税等について、別表1の「修正申告」欄のとおり記載して修正申告(以下「本件各修正申告」という。)するとともに、平成25年1月1日から平成25年12月31日までの課税期間(以下「平成25年課税期間」といい、他の課税期間についても同様に表記する。)、平成26年課税期間、平成27年課税期間及び平成28年課税期間(以下、これらの各課税期間を併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、確定申告書に別表3の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限後に申告した(以下、これらの各期限後申告を併せて「本件各期限後申告」という。)。

    なお、本件各修正申告における収入金額及び本件外注費の額は、それぞれ別表2の各「修正申告」欄の「①収入金額」欄記載の各金額及び「③本件外注費の額」欄記載の各金額である。

  ハ 原処分庁は、本件各修正申告及び本件各期限後申告に対し、平成29年12月21日付で、別表1及び別表3の各「賦課決定処分」欄記載のとおり、所得税、所得税等及び消費税等に係る重加算税(平成27年分の所得税等については、これに加え過少申告加算税)の各賦課決定処分をした。

  ニ 請求人は、平成30年1月28日に、上記ハの各処分のうち、平成24年分の所得税及び本件各年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分並びに本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分を不服として再調査の請求をした。

  ホ また、平成30年1月28日付で、平成24年分の所得税及び本件各年分の所得税等について、いずれも必要経費に算入すべき金額に誤りがあったとして、別表1の「更正の請求」欄のとおり記載して、各更正の請求をした。

  へ 再調査審理庁は、平成30年4月24日付で、平成24年分の所得税及び本件各年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分について、別表1の「再調査決定」欄のとおり、平成24年分はその一部を取り消し、本件各年分はいずれも棄却の再調査決定をした。また、本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分については、別表3の「再調査決定」欄のとおり、いずれもその一部を取り消す再調査決定をした。

  ト 請求人は、再調査決定を経た後の本件各年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分及び本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分に不服があるとして、平成30年5月16日に審査請求をした。

  チ 原処分庁は、平成30年6月28日付で、上記ホの各更正の請求に対し、別表1の「更正処分及び変更決定処分」欄のとおり、いずれもその一部を認め、平成24年分の所得税及び本件各年分の所得税等について減額の更正処分をするとともに、平成24年分の過少申告加算税及び本件各年分の重加算税の各変更決定処分をした。

 

2 争点

  請求人に、通則法第68条第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」た事実があったか否か。

 

3 争点についての主張

 

  原処分庁

  (1) 請求人には、以下のとおり、本件各年分の所得税等について、通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」た事実があった。

   イ 請求人は、平成23年の本件事業の開業以降、本件事業に係る帳簿を作成せず、本件各提示書類以外の必要経費の領収証等を散逸するに任せていた。

   ロ 請求人は、毎月末に、受注先ごとの請求書を作成・交付しており、当該請求書に係る請求金額は、本件口座に振り込まれていたから、本件事業に係る自己の収入金額を正しく認識していたと認められる。

     た、請求人は、本件各外注先の出面を本件出面帳に記載し、これに基づき本件外注費を毎月支払っていたから、本件外注費の額についても正しく認識していたと認められる。

   ハ 請求人は、平成23年分の所得税を正しく計算したところ、税額が大きくなってしまったため、平成24年分以降の確定申告については、何とかして納税額が少なくならないかと考えた。そこで、平成24年分以降の申告に当たっては、請求人の子に作成させたメモの必要経費の額から外注費の額を除いたメモを請求人自身が改めて作成した上、申告相談会場に赴き、請求人が作成したメモに基づき収支内訳書及び確定申告書を作成・提出していた。

     なお、請求人は、本件出面帳に基づき請求書を作成しており、受注先に請求する人工単価が本件各外注先に支払う人工単価を上回っていることを認識していたのであるから、本件各外注先が最終的に受け取るべき金額が請求人の収入金額を構成しないと考えていたとは認められない。

   ニ 請求人は、上記イからハまでのとおり、本件事業に係る帳簿を作成せず必要経費の領収証等を散逸するに任せていたところ、実際の収入金額及び本件外注費の額を認識していながら、過少申告することを意図し、請求人の子に作成させたメモの必要経費の額から外注費の額を除いたメモを請求人自身が改めて作成した上、平成25年分については収入金額を、平成26年分、平成27年分及び平成28年分については、収入金額及び本件外注費の額を、それぞれ収支内訳書に過少に記載し、本件各年分について約340万円から約780万円もの多額の所得を過少に申告していたのであり、これは、当初から過少申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合に該当する。

  (2) 消費税等については、国税庁長官発遣の「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)」(平成12年7月3日付課消2-17ほか)第2Ⅳ2《所得税等に不正事実がある場合》は、所得税等につき通則法第68条第1項又は第2項に規定する課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装していたこと(以下「不正事実」という。)があり、所得税等について重加算税を賦課する場合には、当該不正事実が影響する消費税等の不正事実に係る増差税額については重加算税を課する旨定めているところ、上記(1)のとおり、請求人の本件各年分の所得税等につき不正事実が認められ、重加算税を賦課することとなるから、請求人の本件各課税期間の消費税等については、重加算税を賦課することとなる。

  請求人

  (1) 請求人には、以下のとおり、本件各年分の所得税等について、通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」た事実はなかった。

   イ 請求人は、直近の受注先に係る請求書控え、直近3年分の本件各外注先に係る請求書及び領収証並びに経費の領収証について、ほとんど全てを保管しており散逸させていない

   ロ 請求人は、本件事業に係る収入及び支出について、日々の取引実績を継続的に記録した帳簿を作成しておらず、本件各年分の実際の収入金額及び本件外注費の額を認識できる状況にはなかった。

     なお、請求人は、本件各外注先が外注先であるという認識がなく、本件各外注先が最終的に受け取るべき金額は請求人の収入金額を構成しないと考えていたが、本件出面帳に基づき請求書を作成したのは、請求人が本件各外注先の代表として本件各外注先に代わり、請求人の分も含めた人工賃を請求すると考えていたからである。

   ハ 一般に、ある年分の所得税が高額になった場合に、その翌年分以降について、法令の規定に従ってできるだけ税額が少なくなるよう節税対策を行うことは通常である。

     請求人が請求人の子に作成させたメモの必要経費の額から外注費の額を除いたメモを作成したのは、請求人は、本件外注費は本件各外注先が受注先から受け取るべきもので、請求人の必要経費ではないと考えていたからであり、当該メモを改めて作成したことは、原処分庁が主張する特段の行動に該当しない。

     なお、請求人は、本件各外注先が最終的に受け取るべき金額を収入金額に計上せず、請求人が受け取るべき金額のみを計上するという税務処理を行うことは、適法な節税対策であると考えていた。

     また、請求人は、本件調査に当たり、本件調査担当職員の質問に何ら事実を秘匿せず、その記憶に基づき素直に回答しており、税務調査に対する非協力、虚偽の答弁及び虚偽資料の提出を行った事実はない。

   ニ 請求人は、上記ロのとおり、本件各年分の実際の収入金額及び外注費の額を認識していないことから、過少申告の意図を有していなかった。

     仮に請求人が収入金額及び必要経費の額を正確に把握しており、それとは異なる金額を収支内訳書に記載して申告したとしても、それとは別に隠蔽又は仮装と評価すべき行為の存在が必要であるところ、上記イ及びハのとおり、当該行為は存在しない。

  (2) 消費税等についても、上記(1)のとおり、請求人には所得税等につき不正事実がなく、また、原処分庁が主張する請求人の行為をもって過少申告の意図を「外部からもうかがい得る特段の行動」と評価することはできない。

 

4 当審判所の判断

 (1) 法令解釈

   重加算税の制度は、納税者が過少申告をするにつき、又は法定申告期限までに納税申告書を提出しなかったことにつき隠蔽又は仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税又は無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。

   したがって、重加算税を課すためには、納税者のした過少申告行為又は法定申告期限までに納税申告書を提出しなかったことそのものが隠蔽、仮装に当たるというだけでは足りず、それらとは別に、隠蔽、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたこと、又は法定申告期限までに納税申告書が提出されなかったことを要するものである。

   しかし、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から所得を過少に申告すること、又は法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をし、又は法定申告期限までに申告をしなかったような場合には、上記重加算税の賦課要件が満たされるものと解すべきである。

 (2) 本件各メモの記載の要旨

  イ 平成26年メモ

   (イ) 平成26年メモのうち1枚には、1月から12月までの各月の右部に「1,156,000」から「3,187,000」までの各金額が、その下部に「計 22,410,000-」が、それぞれ記載され、さらにその下部には「12067164」と記載されている。

   (ロ) また、平成26年メモのうち1枚には、「接待代」、「工具代」、「ガソリン代」、「飲食」、「駐車場代」及び「ETC代」と記載の上、それぞれ金額が記載され、さらに上記各金額の合計額を矢印で示して「¥1905,618」(メモに記載のとおり)と記載されている。その下部には「支払い合計 ¥(11,173,300)」と記載され、その左部には「11,173,300」にその8%相当額を加えた金額である「¥12,067,164 税込」と記載された後に抹消された痕跡がある。そして、上記「¥1905,618」及び「支払い合計 ¥(11,173,300)」がプラス記号により合算され、その結果が矢印の先に「¥13,078,918」と記載されている。

  ロ 平成27年メモ

   (イ) 「年間のきゅうりょう ○○○○」と記載されている。

   (ロ) 「飲食代」、「燃料代」、「接待代」、「ETC代」及び「道具代」と記載の上、それぞれ金額が記載されている。

  ハ 平成28年メモ

   (イ) 平成28年メモのうち1枚には、「合 ○○○○」と記載されている。

   (ロ) 平成28年メモのうち2枚には、「飲食代」、「駐車・タクシー」、「ガソリン代」、「接待代」、「工具、部品代」、「J(水)」などと記載の上、それぞれ金額が記載されている。

 (3) 認定事実

   請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  イ 請求人は、本件各年分の所得税等の確定申告に当たり、自ら又は請求人の子に指示して、申告の準備として収入金額や必要経費に関するメモを作成していた。

    請求人は、本件各メモのうちその年分のメモを持参して、K税務署が開設した申告相談会場へ赴き、当該メモに記載された金額を収支内訳書のどの科目に記載するかなどを申告相談会場の担当職員に相談しながら、収支内訳書を作成して確定申告した。

    上記(2)の本件各メモに記載された各支出に係るメモの金額(同イ(ロ)、ロ(ロ)及びハ(ロ)の各金額)は、平成26年分ないし平成28年分の各収支内訳書の「経費」欄の各科目にそれぞれ振り分けて記載されている。

    また、上記(2)ロ(イ)及びハ(イ)の金額(平成27年分は、千円未満の端数切捨て)は、平成27年分及び平成28年分の各収支内訳書の「売上(収入)金額」欄にそれぞれ記載されている。

  ロ 平成25年分の本件受注先に係る収入金額は、○○○○円であった。

    また、平成26年分における請求人の収入金額のうち、本件受注先からの各月の入金額の状況は、別表4の「入金額」欄のとおりであり、その他同年中に本件受注先以外の複数の受注先からの約○○○○円の収入金額があった。

 (4) 検討

  イ 所得税等について

   (イ) 平成26年分、平成27年分及び平成28年分について

    A 請求人は、平成26年分、平成27年分及び平成28年分の3年分にわたり、収入金額について、別表2の「②割合」欄のとおり、修正申告に係る収入金額の約22.2%から約35.3%までしか申告せず、また、収入金額から本件外注費の額を差し引いた金額(同表「④差引金額」欄)をみた場合であっても、同表の「⑤割合」欄のとおり、修正申告に係る差引金額の約43.6%から約66.6%までの申告にとどまるものであり、多額の所得を継続的に過少に申告していたことが認められる。

      このことは、次に述べる本件各メモの記載の状況とあいまって、当初から所得を過少に申告する意図があったと認められるものである。

    B すなわち、請求人は、上記1(3)ニのとおり、自ら本件出面帳を基に受注先に対する各月の請求金額を計算して請求書を発行し、また、収入金額が振り込まれる唯一の口座である本件口座の預金通帳を自ら管理し、かつ、月に一回程度はその通帳に記帳をしていたこと、他方、上記1(3)ハ及びヘのとおり、請求人は、本件出面帳に、作業に従事した者の氏名又は略称、人工の数、請求人が本件各外注先に対して支払う対価の額(外注先別の各月の合計額)などを記載するとともに、本件各外注先から受領した請求書に基づいて本件外注費を支払っていたことが認められ、これらの事実からすると、請求人は、本件事業に係る収入金額及び本件外注費のおおよその金額を認識していたものと認められる。

      そして、平成26年メモの記載事項をみると、上記(2)イ(イ)の月ごとに記載された金額(別表4の「平成26年メモ」欄)が、本件受注先からの各月の入金額(別表4の「入金額」欄)とほぼ合致しているから、平成26年メモに記載された各月の金額及びその下部に記載された金額は、複数ある受注先のうち、本件受注先からの各月の入金額及び集計金額を記載したものと認められる。

      また、上記(2)イ(ロ)のとおり、平成26年メモに「支払い合計 ¥(11,173,300)」として記載されている金額は、上記(3)イのとおり、これが平成26年分の必要経費として申告された各科目とともにその合計額が記載され、また、平成26年分の本件外注費の額(11,657,800円)に近似していることからすれば、請求人が当該メモの作成当時において、同年分の本件外注費の額として算出していた金額であると認められる。請求人は、申告の準備段階において、上記のような集計金額及び算出金額を記載したメモを作成しつつ、平成26年分の収支内訳書の「売上(収入)金額」欄には、修正申告に係る収入金額である○○○○円を大幅に下回る「○○○○円」と記載し(上記1(4)イ、ロ、別表2の「平成26年分」の「①収入金額」欄の「確定申告」欄及び「修正申告」欄)、「経費」の各欄に本件外注費を含まない必要経費の額を記載して、所得金額を少なく偽った当該収支内訳書を作成した上、それに基づく確定申告をしたことが認められる。

    C さらに、請求人は、上記Bのとおり、本件事業に係る収入金額及び本件外注費の額を認識しつつも、その後の平成27年分及び平成28年分の申告の準備段階において、本件外注費以外の各支出の額及び修正申告に係る収入金額とは全く異なる「年間のきゅうりょう ○○○○」及び「合 ○○○○」を申告すべき収入金額であるとして平成27年メモ及び平成28年メモに記載した上(上記(2)ロ(イ)及びハ(イ))、これらのメモに基づいて平成27年分及び平成28年分の各収支内訳書の「売上(収入)金額」及び「経費」の各欄にそれぞれ金額を記載し(上記(3)イ)、所得金額を大幅に少なく偽った収支内訳書を作成して、各確定申告をしたことが認められる。

    D 以上のとおり、請求人は、正当に申告すべき収入金額及び本件外注費の額を認識した上で、少なくとも3年間にわたり、真実の所得金額よりも大幅に少なく偽った所得金額を申告する目的で、そのためのメモを作成した上で申告相談会場に赴き、そのメモに基づいて所得金額を大幅に偽った収支内訳書を作成して過少申告行為を継続的に行っていたものである。これらの一連の行為は、請求人が、当初から所得を過少に申告する意図を有し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動と評価することができる。

   (ロ) 平成25年分について

     請求人は、上記(3)イのとおり、平成25年分の確定申告に当たり、申告のために収入金額や必要経費に関するメモを作成していたと認められるものの、当該メモが把握されていないためその記載内容は明らかでない。そして、別表2のとおり、平成25年分において確定申告された収入金額(○○○○円)をみると、上記(3)ロのとおり、その金額が本件受注先からの収入金額(○○○○円)に近似するものの、それであるとは明らかでなく、また、修正申告に係る収入金額と申告金額との差額も平成26年分ないし平成28年分に比べると大きいとはいえない。また、本件外注費の額については、平成26年分ないし平成28年分と異なり、平成25年分の収支内訳書の「給料賃金」欄に記載されていることからすると、その過少申告の形態がそれ以後の年分と同様であったとまではいえない。

     そうすると、平成25年分は、請求人が、過少申告する意図を有し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったとまで認めることはできない。

     また、その他に、請求人に重加算税の賦課要件を満たす隠蔽又は仮装の行為と評価される行為があったとは認められない(なお、原処分庁は、本件各提示書類以外の必要経費の領収証等を散逸するに任せていた旨を隠蔽又は仮装の事実として主張しているが、上記1(3)トのとおり、請求人は、本件調査において平成25年分以前の必要経費に関する資料を提示しているから、散逸するに任せていたとはいえない。)。

   (ハ) 小括

     以上のとおり、請求人の平成26年分、平成27年分及び平成28年分の所得税等について、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たし、平成25年分の所得税等については、これを満たさないというべきである。

  ロ 消費税等について

    請求人は、平成26年課税期間、平成27年課税期間及び平成28年課税期間の各課税期間の期限後申告による消費税等の額のうち、平成26年分、平成27年分及び平成28年分の所得税等の各確定申告における収入金額及び必要経費の額に基づき計算した消費税等の額を超える部分については、上記イ(イ)のとおり、正当に申告すべき収入金額及び本件外注費の額を認識した上で、連年にわたり真実の所得金額を過少に申告し、申告の準備段階においてそのためのメモを作成していることから、当初から法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき法定申告期限までに申告しなかったといえるから、当該部分については、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たしているというべきである。

    一方、平成25年課税期間については、上記イ(ロ)のとおり、作成されたメモの記載内容は明らかではないところ、当初から法定申告期限までに申告しないことの意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったとまで認めることはできず、その他に、請求人に重加算税の賦課要件を満たす隠蔽又は仮装の行為と評価される行為があったとは認められないことから、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない。

  ハ 請求人の主張について

    請求人は、本件各外注先が外注先であるという認識がなく、本件外注費の額に相当する金額が請求人の収入金額を構成しないと考えていたのであるから、「隠蔽し、又は仮装し」た事実はない旨主張する。

    しかしながら、請求人は、上記(2)イ(ロ)のとおり、平成26年メモにおいて、外注費の額として算出した「11,173,300」とその他の必要経費の額として算出した「1905,618」とを合算して「¥13,078,918」と記載しているところ、本件外注費の額に相当する金額が自己の収入金額を構成しないとする請求人の主張に立てば、このように、平成26年分の必要経費について本件外注費の額を含む総額を認識した上で請求人の収入金額を構成することを前提とする計算は不要であり、逆に、当該メモの記載内容からすると、請求人は本件外注費の額に相当する収入金額及び本件外注費を自己の収入金額及び必要経費と認識していたものと解される。したがって、請求人の主張には理由がない。

    なお、請求人の平成26年分ないし平成28年分の各申告をみると、請求人の上記主張のとおり本件外注費の額に相当する金額が請求人の収入金額を構成しないと考えたとしても別表2の各「修正申告」欄の「④差引金額」欄の金額を収入金額として申告するはずであるところ、請求人は、各年分とも、当該各金額を大幅に下回る金額を収入金額として申告していることに加え、そのうち平成26年分については、平成26年メモのうち1枚において、上記(3)ロのとおり、本件受注先以外の複数の受注先からの約○○○○円の収入金額があるにもかかわらず、これを含めずに本件受注先からの入金額のみを集計した金額を記載した上で、別表2の平成26年分の「確定申告」欄の「①収入金額」欄のとおり、当該金額とも異なる金額を収支内訳書に記載している。これらのことからすると、本件外注費の額に相当する金額が自己の収入金額を構成するか否かにかかわらず、過少申告の意図を有し、その意図に基づき本件各メモ及び各収支内訳書を作成したものといえる。

 (5) 原処分の適法性について

  イ 平成25年分の所得税等に係る重加算税の賦課決定処分(上記1(4)チの変更決定処分後のもの)

    上記(4)イ(ロ)のとおり、平成25年分の所得税等については、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない。

    他方、標記の賦課決定処分は、通則法第65条第1項所定の要件を充足するところ、同年分の修正申告に基づき納付すべき税額(上記1(4)チの更正処分後のもの)の計算の基礎となった事実が、修正申告前の税額の基礎とされなかったことについて、同条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。

    そして、平成25年分の所得税等に係る過少申告加算税の額については、その計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争わず、当審判所において同年分の所得税等に係る過少申告加算税の額を計算すると、○○○○円となる。

    したがって、標記の賦課決定処分のうち過少申告加算税相当額○○○○円を超える部分は違法である。

  ロ 平成26年分、平成27年分及び平成28年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分(いずれも上記1(4)チの変更決定処分後のもの)

    上記(4)イ(イ)のとおり、標記の各年分の所得税等については、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たす。

    そして、標記の各年分の所得税等に係る重加算税の額については、その計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争わず、当審判所において標記の各年分の重加算税の額を計算すると、標記の各賦課決定処分の額といずれも同額であると認められる。

    したがって、標記の各賦課決定処分は、いずれも適法である。

  ハ 平成25年課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分(上記1(4)ヘの再調査決定後のもの)

    上記(4)ロのとおり、平成25年課税期間の消費税等については、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない。

    他方、標記の賦課決定処分は、通則法第66条第1項所定の要件を充足するところ、期限内申告書の提出がなかったことについて、同項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。

    そして、平成25年課税期間の消費税等に係る無申告加算税の額については、その計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争わず、当審判所において平成25年課税期間の消費税等に係る無申告加算税の額を計算すると、○○○○円となる。

    したがって、標記の賦課決定処分のうち無申告加算税相当額○○○○円を超える部分は違法である。

  ニ 平成26年課税期間、平成27年課税期間及び平成28年課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分(いずれも上記1(4)への再調査決定後のもの)

    上記(4)ロのとおり、標記の各課税期間の消費税等については、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たす。

    そして、標記の各課税期間の消費税等に係る重加算税の額については、その計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争わず、当審判所において標記の各課税期間の重加算税の額を計算すると、標記の各賦課決定処分の額といずれも同額であると認められる。

    したがって、標記の各賦課決定処分は、いずれも適法である。

 (6) 結論

   よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

 

別表1 審査請求に至る経緯(所得税及び所得税等)(省略)

別表2 収入金額及び本件外注費の額(省略)

別表3 審査請求に至る経緯(消費税等)(省略)

別表4 本件受注先からの平成26年の各月の入金額等の状況(省略)

別紙1 取消額等計算書(省略)

別紙2 取消額等計算書(省略)

岡本健裁判長名決定 大阪南港事件 大阪地決昭和59年       証拠調請求

刑事訴訟法判例ノート254頁

大阪地方裁判所決定/昭和56年(わ)第1014号

昭和59年3月9日

【判示事項】       自白の任意性に疑いがあるとして、被告人の司法警察員及び検察官に対する各供述調書の証拠能力が否定された事例

【参照条文】       刑事訴訟法319-1

             刑事訴訟法322

【掲載誌】        刑事裁判月報16巻3~4号344頁

 

       主   文

 

 別紙一覧表(一)記載の各証拠のうち、番号1、2(但し第一項を除く。)、8、15、29ないし33の各証拠を採用し、同(一)記載の各証拠のうち番号2(但し第一項のみ)、3ないし7、9ないし14、16、17の各証拠並びに同(二)記載の各証拠(番号34、35)を却下する。

 

       理   由

 

一 被告人は、昭和五六年二月二二日本件殺人の被疑事実により逮捕(同月二四日勾留、同年四月二七日大阪拘置所に移監されるまで大阪府住吉警察署に留置)され、同年三月一四日同事実で公訴を提起されるまでの間の捜査段階で、当初は南港の現場における殺害行為を否認していたが、同年三月二日以降この点を自白するに至り(その後三月一一日になつて再度否認したが、その翌日からまた自白を維持した。)、司法警察員及び検察官により数通の供述調書を作成されるなどし、またその後余罪である本件傷害の事実についても取調べを受け、同年三月二四日以降右同様数通の供述調書を作成されている。これらの経過に関する詳細は別紙一に記載するとおりである。

二 被告人は、前記逮捕後間もなくのころから留置中の住吉警察署において捜査担当の警察官から暴行を加えられ、また脅迫ないし利益誘導を受けるなどした結果前記殺人の実行行為(南港現場での殺害行為)を自白するに至つたものであるとし、当公判廷においてその点を詳しく供述しているが、その供述内容の概要は別紙二に記載するとおりである。

 なお右供述中に出てくる清水慶豊は、山口組系の暴力団の組長とみられる男であつて、傷害、恐喝未遂等による前科を重ねる一方、被告人を被害者とする傷害及び暴行の各罪その他の罪により、昭和五三年一一月八日津地方裁判所上野支部で懲役一〇月の刑に処せられ、昭和五五年三月ころ仮出獄していたが、被告人が本件で逮捕された後債権取立等と称して被告人方に出没していたことが認められる。

三 被告人が暴行等を受けたと供述する警察官らのうち、本件公判で取調べた証人小塩三郎、同菅沼俊雄、同若林友光、同阪井弘らはいずれも暴行の事実を否定している。また証人児島利明は、三月二日午後一〇時ころから被告人を取調べた際、被告人に素直に供述するように説得する一つの材料として清水慶豊の件を持ち出したことはあつたが、その件も後で被告人に聞いたところによれば、清水のことはもう何でもないんだ、あんなものは関係ないんだということであつたし、その他に利益誘導となるようなことを話したことはなく、警察官による暴行の事実もない、と証言する。

 しかしながら

1 被告人は二月二五日の取調にさいし、夕食のため一時房に帰され、再び取調のため房から出されようとしたとき、自ら円柱にぶつかつて自傷行為に出ている(三月四日中村紘毅検察官から取調を受けたさい、前額部のこぶのほかに両眼のほうまでも赤紫色のアザができたようになつているのが同人によつて確認されている)が、それは警察官の暴行、自白強要に耐えかねての行動であるとする被告人の供述はそれなりに十分了解できるものであること

2 三月二日になつて二度目のポリグラフ検査が行なわれたいきさつについては、被告人がその数日前から自発的にかけてくれと希望していた旨の児島証言等よりも、むしろ被告人の供述するところの方が了解できること。そして同検査に従事した荒砂技官は、定型の承諾書以外にもう一通被告人自筆の書面を検査前にみせられており、ただその内容については、同人の証言によれば「自分の方から進んで受けたい、という趣旨のものであつて、結果が黒と出れば私の方で認める、というものではなかつた。」というのであるが、右もう一通の書面の提出がなく、被告人の述べるようなものであつたことを否定できないこと

3 清水慶豊の名をあげて誘導したとの点は児島班長自身がその証言で事実の一部を認めていること。すなわち同証言によれば、三月二日夜同班長が被告人に対し素直に自白するよう説得したさい、いろいろ述べたなかで「君自身も警察官に対していろいろしてほしいこともあるんではないか。もしそういうことがあるんなら何もかも素直にしやべつた上で初めて頼むことだ。わたしは清水慶豊のことについても少し知つてるけれども、このことについても君は気になつているんではないか。」とも述べたということであること

4 三月九日石橋弁護人が被告人と接見したさい、被告人は同弁護人に対し警察官の暴行について訴えていること。またそのさい被告人は同弁護人に右足すねの腫れや手指の皮のめくれなどを見せ、同弁護人においてこれを確認したものと認められること。さらに本件殺人事件の起訴後本件傷害事件の起訴前の間に、被告人は同弁護人に対し右傷害事件等の余罪については起訴しない旨警察官に言われたことのあることを告げているものと認められること。

5 三月一一日被告人は検察官中村紘毅の取調べを受けたさい、同検察官に対して警察官による暴行、脅迫、利益誘導等及び自白に至つた理由等についてかなり詳細に訴えていること。

6 ことに右4及び5の諸点に関しては、右検察官中村紘毅は概ね次のとおり証言していること。すなわち同人は、「本件殺人被疑事件の捜査担当検察官として三月四日、一一日、一二日、一三日に被告人の取調をしたが、三月一〇日参考人として仲昭夫を取調べた際、同人から『実はきのう親方が弁護士と接見したとき、おれはやつていないんだということを弁護士に話したときいている』という話があり、またその日ころ石橋弁護人から『被告人はやつていないらしいからよく聞いてやつてほしい。』とか『被告人が警察で乱暴されたと言つているので警察のほうに注意してもらいたい』旨の申し出があり、その際『被告人が丸いすを横にしてその上に正座させられたりしており、弁護人自身も被告人のすねのあたりに傷ができているのをみた』という話も聞いていたことから、三月一一日被告人を取調べたとき、昼前ころに弁護人との接見時の状況について尋ねたところ、『実はやつてないということを弁護士さんに話をしました』と言い出し、警察官から受けた乱暴について話し出した。人差指と中指の間にボールペンのような物をはさまれて、その指をねじ曲げられたとか、それから丸いすを横にされて、イスの脚の上に正座させられたとか、あるいは、肩の上に警察官に乗つかかられ首をグイグイ押しつけられたとか、あるいは、自分で円柱にぶつけてできたたんこぶの上を殴られたとか、そういうふうな話をしていた。」、「暴力債権者が家のほうに押しかけているらしいと、困つておるんだけど警察のほうがその暴力債権者を押えてやるというふうにも言つていた。それがやつていないのにやつたと認めた理由だと。乱暴されたというのも理由だし、暴力債権者を押えてやるというたことも認めた理由だという説明でした。」、「三月一一日の段階で被疑者が警察で乱暴されたということを申したのと暴力債権者云々という話とそれからもう一つがその妹の結婚の話でした。で、そのときは、警察のほうが妹の勤め先に押しかけて、兄貴が人殺しをしたことをバラすぞというふうに警察に言われたということも本人が申しておりました。ですから、自白をしたのは、その三つの理由があるんだということを申しておりました。ただ、まあ、三つあるけれども、自分は土方の親方なので自分自身が乱暴されるというようなことは全然こたえないと。だけどその妹のことを言われたのが一番こたえたということを本人は申しておりました。」などと証言し、さらに、弁護人から「殺人の起訴が終わつた後に、弁護人の私のほうから、余罪を起訴するのは約束違反だと、被告人と警察との間で余罪を起訴しないということで被告人が殺人を認めたんだと、だからせめて余罪は起訴しないでくれという趣旨の電話を私がしまして。検察官のほうが、いやそれは余罪の捜査は続けるし追起訴もするということを言われたのを覚えているんですが。今のような私とあなたのやりとりがあつたのは覚えておられますか。」と質問されたのに対し、「・・・・・・そう言われれば、うつすらと思い出しますね。」と答えていること

7 被告人が逮捕当時はいていたコールテンズボンにはひざのあたりにカギ裂き穴があるところ、その任意提出書の日付(被告人の筆跡ではない)は逮捕当日である二月二二日になつており、所有権放棄書の日付(被告人の自筆)も同日になつている(ちなみに同ズボンについての鑑定嘱託書の日付は同月二七日であり、鑑定結果回答書における鑑定従事期間は同月二七日から三月一七日までとなつている)が、右任意提出書の被告人の年齢の記載(被告人の自筆)が三二歳になつている(被告人は昭和二四年二月二三日生れである)ことや、留置人名簿、留置人接見簿等をみても逮捕当日ころに着替用ズボンの携帯、差入れのあつた形跡は認められないこと等からすれば、右二月二二日との各日付の正確性については疑義の余地があり、「右ズボンを実際に提出したのはそれより後のことであつて、この間留置中このズボンをはいており、右カギ裂き穴は、取調室の板の間に正座を強制されたときに床の釘にひつかかつて生じたものである」との被告人の供述はにわかに否定しがたいこと

 その他被告人の供述は詳細かつ具体的であり、前後とくに矛盾するところがなく、留置人出入簿の記載その他から認められる客観的事実とも符合し、部分的に了解できるところも多く、全体として整合性があること(なお、取調中説得にさいして被害者の死談の写真を被告人に見せたことは警察官らもその証言で認めるところである。)などに照らし、被告人の前記二の供述は、部分的には多少の誇張や記憶違いその他判断の誤り(誤解)のあり得ることは当然であるとしても、検察官の取調べ態度(供述を聴く態度)に関する点を除き、その大筋において真実に近いように考えられるのである。

 なお、被告人は三月九日弁護人と接見したさい弁護人から「検察官にはよく言つておくのでちやんともう一度本当のことを話すように。」と言われ、同月一一日検察官の取調べを受けたさい、南港の現場における殺害行為を否認するとともに、少なくとも右6の証言にあるように訴えたが、検察官は、その前日ころに弁護人から同証言にあるように告げられ、また三月一一日に被告人から右のように訴えられたのにもかかわらず、警察に電話をして「そういう事実はない。」との返事を聞いた後、被告人に「やつてないのなら警察ではつきり言いなさい。遠慮することはない。」というようなことを申しただけで被告人を警察に帰してしまつていること、一方、児島班長は検察官から被告人が否認した旨の電話連絡を受け、検察庁へ同行した取調担当の松本刑事も直接検察官から被告人の否認したことを聞いて帰つており、同日検察庁での取調べから帰り午後七時四〇分に帰房した被告人は、その後午後八時九分から一〇時五五分までの間再び房を出されて警察官の取調を受けるところとなり、翌一二日午前中も検察庁の取調に向う前に警察官から取調を受けたこと、この間、三月二日の夜に一時被告人を取調べ自白するよう説得にあたつた児島班長も再度被告人の取調に従事しており、かくして被告人は三月一二日午前中に再び自白に転じた供述調書(司法警察員による)を作成され、同日午後の検察官による取調以降においても右自白を維持したことが証拠上明白である。

四 そこで各供述調書及び供述書の証拠能力について検討すれば以下のとおりである。

(一)司法警察員に対する二月二二日付供述調書

 主として身上関係についての供述を内容とするもので、逮捕当日に作成され、被告人自身任意に供述したことを認めているのであるから、任意性には何らの疑いもない。その供述事項に徴しても特に信用すべき情況のもとにされた供述であると認められるから刑訴法一干三条一項の要件を満たし、証拠能力がある。

(二)司法警察員に対する二月二五日付供述調書

 第一項は、その記載内容からして当時の被告人の供述を正しく録取したものとは認められないが、その余は、中沢組飯場の模様や中西清美を雇い入れたいきさつ等に関するもので、その供述内容からすれば任意性はあるものと考えられ、刑訴法三二二条一項に従い証拠能力を認めることができる。

(三)上申書と題する三月二日付供述書、司法警察員に対する三月三日付、同月四日付、同月五日付、同月六日付、同月七日付、同月九日付(番号9、一三枚綴りのもの)、同月一〇日付、同月一二日付、同月一三日付及び同月一四日付各供述調書ならびに「今の私しの気持」と題する同月一四日付供述書三で判断したところによればこれら各書面の供述にはその任意性に疑いがある。すなわち、被告人は留置中の住吉警察署において、本件殺人被疑事件の捜査(ことに被告人の取調)を担当した警察官らから大要被告人が述べるような暴行(拷問)、脅迫ないし利益誘導を受け、その影響下において右供述(自白ないし不利益事実の承認)をした疑いが濃厚であつて、右各書面は、その供述の任意性に疑いがあり、記述内容の真否にかかわらず証拠能力を認めることができない。

(四)司法警察員に対する三月九日付供述調書(請求番号8、本文四枚綴りのもの)

 中沢組飯場で働いていた人夫数名についての説明、写真割りについての供述を内容とするものであつて、その供述事項及び当時はすでに暴行のなかつたことに徴し任意性を認めて差支えないと解され、刑訴法三二二条一項に従い証拠能力があると考えられる。

(五)検察官に対する三月四日付供述調書

 検察庁において検察官が取調べたときの供述を内容とするものであるが、検察官の取調は被告人の身柄が住吉警察に留置され警察官による取調が進行している状況下においてこれと平行してなされたものであり、しかも検察庁へ護送される自動車の中で取調担当の警察官から「絶対に殴つたんをひつくり返すなよ。ひつくり返したらどないなるか分つとるな。」と釘をさされていた疑いがあり、さらに検察官の取調時、取調担当の警察官が取調室に滞留したままであつたから、右供述調書は、警察官による不当な取調(強制)の影響力の存続する状況下で作成されたものと考えざるをえず、やはり供述の任意性に疑いがあって証拠能力を認めることができない。

(六)検察官に対する三月一一日付供述調書

 中沢組飯場における中西清美に対する暴行等に関する供述を内容とするものであつて、南港の現場における殺害行為についてはなんら触れられておらず、同日の取調では、検察官のほうでも取調の当初のころから警察官を取調室の外に出すなどの配慮をし、被告人も前々日の弁護人の助言のもとに南港での殺害行為を否認し、かつ前記三の6のとおり訴えているのであつて、当日のこのような取調べの雰囲気を考えると右供述調書中の供述についても任意性を認めて差支えがなく、刑訴法三二二条一項により証拠能力を認めることができる。

(七)検察官に対する三月一二日付及び三月一三日付各供述調書

 検察庁において検察官が取調べたときの供述を内容とするものであり、これら両日の取調べにおいて検察官は初めから警察官を取調室外に出すなどの配慮をしているが、三で判断したところ(ことに末段で認定した経過参照。被告人は三月一一日以後も拘置所に移監されたりすることなく警察への留置を続けられており、ことに三月一一日検察庁で否認して警察に戻された後翌日再自白に転じるまでの間に、右否認をしたことを理由に取調担当の警察官らから従前と同じような暴行(拷問)、脅迫ないし利益誘導を受けた疑いが強い。)によれば、これら供述調書もまた警察官による不当な取調(強制)の影響力がなんら遮断、排除されていない状況のもとで作成されたと言わざるを得ない。

 取調べにあたった検察官は、前日否認した被告人が三月一二日になつて再び自白するまでの間に警察官による取調べがあったか否か、そのさいのことについて被告人は前日と同じような訴えをしないかにつき格別関心を払つた形跡はないが、その証言することによれば、「三月一二日の取調では、最初の段階で南港で被害者を殴つたのかどうか確認したところ、きつぱり認めていた。(三月一一日に否認し、三月一二日に認め、そのように一日で供述が)変わつた理由については、結局自分が警察で乱暴されたのは間違いない、しかしそれはそれとして自分が角材で殴つて殺したのも間違いない。被害者のことを考えて罪の償いをしたいという気持から、やつたことは素直に認めたほうがいいだろうということで話するようになつたと。乱暴されたのは事実だけど、また自分が角材で殴つたのも事実だということをきつぱり話していた。」というのであり、また右各供述調書には、南港に向う途中や南港における被告人の心理の動き、バタ角の持ち方についてなぜそのような持ち方をしたかの説明等につき、司法警察員に対する供述調書にはない供述記載が若干存し、さらに三月一三日付供述調書には、「検察庁では自分の言いたいことを全部話したのか」との問に対するものとして「検察庁では四回調べてもらつたが、最初のときはうしろに刑事さんが座つていたのでちょつと話しにくいこともあつたが、後の三回は刑事を部屋の外に出してもらつていたので、私としては遠慮せず本当の気持ちを話した」旨の供述記載があるが、これらの諸点を考慮しても右の判断には変るところがない。

 してみれば、これら各供述調書についてもその供述の任意性には疑いがあり、記述内容の真否にかかわらず証拠能力を認めることができない。

(八)司法警察員(同年三月二四日付、同月二五日付、同月二六日付、同月三一日付)及び検察官(同年四月四日付)に対する各供述調書

 いずれも松本隆夫に対する傷害事件に関する供述を内容とするが、この件についての取調では無理な取調がなかつたことを被告人自身が認めている。なお、被告人は本件殺人で起訴された後家族と面会して清水慶豊の件で警察が全く面倒をみてくれていないことを聞いており、また児島警部からは、三月一五日か一六日ころ、被告人が検事調べで否認したから本件傷害の件等を追起訴すると告げられたというのであるから、右傷害事件の供述時には警察官の利益誘導等による強制の影響もすでになかつたものと考えられる。したがつて右各供述調書には供述の任意性があり、刑訴法三二二条一項に従い証拠能力があるものと認められる。

五 よつて主文のとおり決定する。

(裁判官 岡本 健 松本芳希 永野厚郎)

ラジオタイランド 2020年5月28日 木 2200~2215JST

9390kHz 54444 ICOM IC756

 

 

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宮井よしあき

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