岡本法律事務所のブログ

岡山市北区にある岡本法律事務所のブログです。 1965年創立、現在2代めの岡本哲弁護士が所長をしています。 電話086-225-5881 月~金 0930~1700 電話が話中のときには3分くらいしてかけなおしください。

2021年02月

ラジオタイランド 2021年2月28日 日 2200=~2215JST

9940kHz 24442 ICOM IC756PRO3 25mH DP

 

2200 ニュース

報道教育革新省と保険省でワクチン接種キャンペーンを支援する。

 

CCSAコビット19状況管理センターが非常事態宣言の1月の延長を承認した。規制措置については緩和。

 

タイにとってはじめてとなる外国人観光客がプーケットに到着した。インドネシアより。

 

プライユット首相がタイで最初にコビット19ワクチン接種。シノバック社製ワクチン。

 

2210 ニュース展望

政府がコビット19規制措置を緩和

宮井よしあき

納付者が被告人でない場合の保釈保証金没取の際の考慮要素 東京高裁平成27年

保釈保証金没取決定に対する抗告申立事件

東京高等裁判所決定/平成27年(く)第652号

平成27年12月18日

【判示事項】       被告人以外の者が保釈保証金の納付者等となっている場合において,保釈保証金の没取額を定めるに当たり,考慮すべき事項を示した事例

【判決要旨】       保釈保証金の没取額を定めるには保釈取消事由の内容のほか,もたらされる不利益の程度も考慮すべきであり,被告人以外の者が保釈保証金の納付者等である場合には,さらに,これらの者が有する事情も考慮することが許される。

【参照条文】       刑事訴訟法93-3

             刑事訴訟法96-1

             刑事訴訟法96-2

             刑事訴訟法426-1

【掲載誌】        高等裁判所刑事裁判速報集平成27年184頁

 

       理   由

 

 1 制限住居は,その場所と被告人との関係性等の事情を勘案しながら,被告人の公判期日への出頭を確保するのに適切な場所として定められるものであり,当然その場所に居住することが予定されているから,裁判所からの必要書類が送達されれば足りるというものではない。本件においては,居住実体のない被告人の弟の住居が保釈制限住居とされた上で保釈請求がなされ,保釈後,被告人が,保釈の指定条件である制限住居に全く居住していなかったことは明らかである。のみならず,被告人は,制限住居で居住していないことを弁護人に連絡せず,制限住居の変更や旅行許可を申請することなく他所で生活し,妻に対する傷害事件を起こすと,1か月を超えて所在不明となり,この間,弁護人に居所を伝えることはなく,弁護人から出頭を促されてもこれに応じなかった。判決宣告までの公判審理期間は約2か月遅延した。被告人は,最終的には,自ら神奈川県平塚警察署に出頭したが,所在不明の間,自ら関係機関に自己の所在場所を連絡しなかった上,公判廷では,保釈後は,その所在が確認されていなかったT団地に居住していた旨供述している。そうすると,保釈取消に関する情状は良くなく,保釈決定の指定条件違反の程度は重いものがある。したがって,保釈許可決定を取り消した上で,原決定が,保釈保証金を没取するとしたことは相当であって,裁量を逸脱したものとは認められない。

 2 次に,没取額の相当性を検討すると,保釈保証金を没取することは,被告人が保釈取消事由を作出したことに対する制裁とされるものの,財産的な不利益が生じることは否定できないから,その額を定めるには,保釈取消事由の内容のほか,もたらされる不利益の程度も考慮すべきであり,被告人以外の者が保釈保証金の納付者や出捐者となっている場合には,さらに,これらの者が有する事情も考慮することが許される。

   本件においては,被告人の弟が日本保釈支援協会との間の保釈保証金立替委託契約に基づいて実行された立替金200万円(被告人の弟の自己資金20万円)が弁護人を提出者として納付されている。その契約を通じるなどして,被告人の弟は,被告人が保釈指定条件に違反した場合には,保釈保証金が没取される可能性があることは理解していたと認められるが,同人は,情状証人として出廷した際も,保釈請求の際にも,自身がマンションに居住していないにもかかわらずそこを住居地として偽っている。そして,前記の内容とする身元引受書を提出していたにもかかわらず,自分の下で被告人を生活させず,被告人が逃亡するまでの間,保釈の許可条件を遵守するような監督をしていなかったばかりか,被告人が所在不明となってからは,弁護人に対し,被告人が制限住居に居住している旨虚偽の説明をしている。他方,被告人が所在不明となってからは,被告人に出頭を促し,被告人は,所在不明となってから1か月余で留置施設に収容されることとなり,公判審理期間の遅延は約2か月にとどまっている。

   これらの事情を踏まえると,まず,本件において,被告人の保釈許可決定の指定条件違反の程度が重いことは,前記のとおりであるから,没取額が相当多額となることはやむを得ない。被告人の弟の身柄引受人としての誠実さの点からすると,同人にとって相当程度の不利益がもたらされたとしても不当とはいえない事情がある。そうすると,被告人の出頭に努めた点や所論の主張する被告人の弟が置かれている経済的な状況も勘案すれば,200万円を全額没取してしまうのは酷というべきであるが,原決定が没取額を150万円と定めたことが著しく不当で,その裁量の範囲を逸脱しているとまでは認められない。

 3 したがって,原決定が裁量の範囲を逸脱しているということはできないから,論旨は理由がない。

    【主文は出典に掲載されておりません。】

ラジオタイランド 2021年2月27日 土 2200~2215JST

9940kHz 24442 ICOM IC756PRO3 25mH DP

 

2200 ニュース

4つの県で地雷汚染から解放された。

 

第9回 アクメクス首脳会議でコビット19の治療薬ワクチンの公平化に焦点があげられた。

 

外務省ヨーロッパ局でヨーロッパ各国とタイの地域とでの知識技量交換をおこなっている。

 

 

2210 ニュース展望

3月まで延長されることになった非常事態発令期間

 

 

 

宮井よしあき

 

林泰民裁判長不当判決 従業員でなくても給与所得認定 神戸地裁平成元年

所得税の納税告知処分並びに加算税決定取消請求事件

金子・15版には掲載されていない。伊藤・岩崎・河村『要件事実で構成する所得税法』中央経済社・2019年・97頁 かなり限界に近い事のように思われるが、いかがであろうかとされる(執筆 岩崎政章教授))

納税者側弁護士とするとでたらめ認定であり、国税庁より国税庁的な認定である。

神戸地方裁判所判決/昭和61年(行ウ)第29号

平成元年5月22日

【掲載誌】        税務訴訟資料170号315頁

 

       主   文

 

 一 原告の請求を棄却する。

 二 訴訟費用は、原告の負担とする。

 

       事   実

 

第一 申立

(原告)

  一 被告が原告に対して昭和五七年一二月二五日付でなした源泉徴収に係る所得税の納税告知処分並びに不納付加算税の賦課決定処分は、これを取り消す。

  二 訴訟費用は、被告の負担とする。

   との判決

(被告)

  主文同旨の判決

第二 主張

[請求原因]

 一 原告は、精神科医療の病院を営んでいるところ、昭和五五年五月から同五七年一一月までの間に、大阪医科大学精神科教授堺俊明(以下「堺教授」という。)に対し指導料として八九五万円(以下「本件指導科」という。)を支払つた。

   原告は、本件指導料は所得税法(以下「法」という。)二〇四条一項の報酬に該当するものとして、九二万七四五〇円の源泉徴収をし、被告に支払つた。

 二 被告は、本件指導科は雇用契約に準ずる法律関係に基づき支払われたもので、所得税法二八条一項所定の給与等に該当するとして、昭和五七年一二月二五日付で、原告に対して給与所得に係る源泉徴収税三〇五万〇一五〇円の納税告知処分及び不納付加算税三〇万三六〇〇円の賦課決定処分(以下「本件各処分」という。)をした。

  しかし、本件指導料は、給与ではなく、単なる謝礼であるから、本件各処分は違法である。よつて、原告は、本件各処分の取り消しを求める。

(被告)

[請求原因に対する認否]

  認める。

[被告の主張]

 一 本件各処分の経費

  1 原告は、堺教授に、昭和五五年五月から同五七年一一月までの間に、別紙1「医療法人新淡路病院事件課税の経緯」の「支給金額」欄記載の金員を支給するとともに、同表「自主納付税額」欄記載の源泉徴収税を同表「納付年月日」欄記載のとおり、被告に納付した。

    堺教授に対する金員の支給は、昭和五五年五月から同年九月までは指導料のみであつたが、同教授が昭和五五年一〇月一六日原告の顧問に、同五六年五月二八日原告の理事に就任したのに伴い、指導料に加え、顧問・理事報酬が支給されるようになつた。なお、これらに加え、原告は、一回当り一万六五〇〇円(昭和五五年一一月までは八五〇〇円)の通勤手当を堺教授に支給している(その詳細は、別表2「堺教授に対する報酬等の支給明細表」記載のとおりである。)。

    原告は右の顧問・理事報酬については法二八条一項に規定する「給与等」に該当するとして、法一八五条一項に基づき源泉徴収したが、指導料については法二〇四条一項に規定する「報酬等」であるとして、同条一項により源泉徴収した。

  2 しかし、本件指導料は、堺教授が原告に提供した病院経営等についての特別指導役務に対する対価であつて、法二八条一項に規定する「給与等」に該当する。

    そこで、被告は、本件指導料を右顧問・理事報酬と合算し、法一八五条一項二号により源泉徴収すべき税額を再計算し、昭和五七年一二月二五日付で別表1の「差引告知税額」欄記載のとおり、原告が源泉徴収した額との差額についての納税告知処分並びに国税通則法六七条一項に基づき同表「不納付加算税額」欄のとおりの不納付加算税賦課決定処分を行つたのである。

 二 本件指導料の性質について

  1 給与所得の意義・要件

    法二八条一項は「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費、年金(過去の勤務に基づき使用者であつた者から支給されるものに限る。)、恩給(一時恩給を除く。)及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう」と規定し、列挙された所得を通じ、「これらの性質を有する給与」を一応「個人の非独立的な人的役務の対価としての性質をもつた所得」と定義することができるところ、給与所得の典型は、雇用関係に基づいて被用者が雇用主から受ける報酬であるが、右例示からわかるように、これに限らず、雇用契約又はそれに類する関係(例えば法人の理事、取締役等にみられる委任又は準委任等)その他一定の勤務関係に基づいて受ける報酬をも内容としている。

    右の解釈及び従前の裁判例からすると、給与所得の要件は、イ 雇用契約又はそれに類するものが存在していること、ロ 右イに基づき対価支払者の支配に服して行われる非独立的労務の提供の対価であること、ハ 労務の提供が自己の計算と危険を伴わないことであると解される。

    したがつて、提供される役務の内容について高度の専門性が要求され、本人にある程度の自主性が認められる場合であつても、他人との関係において何らかの時間的、空間的な拘束を受け、役務の提供が継続的になされ、それによる成果が他人に直接帰属するような役務の提供の対価として支給されたものである限り、右「給与等」に該当する。

  2 本件指導料の実態

   (一) 原告は、昭和五四年頃、堺教授との間で、同教授が原告の営む病院のために精神科医を斡旋し、派遣した医師に対する医学上、診療上の指導をすること及び原告に病院の運営上の指導をすること等を内容とする準委任契約を締結した。

       この契約に基づき、堺教授は、昭和五五年四月以前に二名の医師を斡旋し、同年五月から同五七年一一月までの間(但し、昭和五五年八月及び一〇月を除く。)に、四名の医師を斡旋するとともに、毎月一ないし三回原告の病院に出勤し、あるいは電話により次のような役務を行つた。

      イ 派遣した医師らに対し、原告の病院における診療に関して指導すること

      ロ 右医師らの雇用条件、勤務期間等の決定等原告の病院の医局の人事管理をすること

      ハ 原告に対して、病院の経営に関する情報の提供、指導ないし決定をすること

      ニ 原告に対して、医薬品の購入等に関する指導をすること

   (二) 本件指導料は、右役務に対して支払われたもので、堺教授が精神科医で大学教授であるため、右役務は高度に専門的で、その性質上ある程度の自主性、裁量性を有するものであるが、同教授は少なくとも月一ないし三回原告の病院に赴き、そこで原告病院のためにこの役務を提供しており、原告との関係で時間的、空間的な拘束を受け、永続して断続的に役務を提供し、その成果は原告に直接に帰属し、仮に不利益があつても同教授が負担するものではなかつた。

       また、堺教授が原告の理事に就任した後の指導料、理事報酬は、その全額が理事報酬であることは明らかであるところ、同教授が提供した役務の内容は、理事就任の前後においてまつたく変わらない。そうすると、同教授の理事就任前の顧問報酬、指導料も、その全額が理事就任後の実質的な理事報酬と同一の性質を有するとみるべきである。

       したがつて、本件指導料はすべて、法二八条一項所定の「給与等」に該当する。

(原告)

[被告の主張に対する認否]

   一項1、2の各事実は、認める。ただし、本件指導料の支払が給与等に該当するとの主張は、争う。二項についての反論は、次のとおりである。

「反論」

   堺教授のような地位にある者に、原告が役務の内容、提供方法及び対価の額を示して役務の提供を依頼することは、我が国の慣行として極めて礼を失し、なしえないことであつて、原告の堺教授への依頼は「ご指導をお願いできるのであれば、病院の診療、経営等に関して大所高所からご指導いただければ幸いである」という程度のものであつた。したがつて、原告と堺教授との間に被告主張のような準委任契約はなく、堺教授に事務処理義務が生じたということもない。同教授の高度の知識に基づく指導は、ひとえに同教授の好意にかかつており、同教授の意思と責任において独自性をもつてなされたものである。原告としては、それが有用なので一方的に従つていたに過ぎない。原告の問合わせに対して同教授はなんらかの応答をなすべき義務はなく、他方、堺教授においても、その一連の行為によつて原告に対価を請求することができるものではなかつた。

   医師の派遣についても、契約による医師派遣の権利義務があるわけではなく、堺教授が教え子の研修先として一方的に選び、原告としては医師を受け入れることが病院経営の利益になるのでこれを受け入れていたに過ぎない。原告病院に派遣された医師に対する堺教授の診療指導は原告の依頼によるものではなく、堺教授と医師との個人的な関係でなされたもので、原告はその反射的利益を受けていたに過ぎない。

   また、堺教授の派遣医師の雇用条件、勤務期間の決定、人事管理は原告の立場よりも、医師側の立場で、原告に情報知識を提供するもので、原告としてはその情報知識が病院経営に利益を与えるので、一方的に取り入れていたのである。

   被告は、堺教授が、原告の理事に就任したことをもつて、委任関係、雇用関係が生じた旨主張するようであるが、理事の通常の職務は、理事会の構成員として理事会で意見を述べ、会議体としての理事会の意思決定に参加することであり、そして、理事長、副理事長に事故があるときに備えるもので、個々の理事に常務があるわけではない。

   右のとおり、原告が堺教授を時間的、空間的に拘束したことはなく、本件指導料は役務に対する対価でなく、原告が一方的に提供しているもので、お礼金、お車代に当たるもので、給与に該当しない。交通費も単なるお車代で、雇用関係を前提として支払つたものではない。

第三 証拠

   証拠関係は、本件記録の書証目録欄、証人等目録欄記載のとおりである。

 

       理   由

 

一 原告が堺教授に昭和五五年五月から同五七年一一月までの間別表2記載のとおり、本件指導料及び顧問・理事報酬を支給したこと、原告は、顧問・理事報酬については法二八条一項所定の給与として法一八五条一項に基づき計算した額の所得税を源泉徴収したが、本件指導料については法二〇四条一項所定の報酬に該当するものとして源泉徴収したこと、被告は、本件指導料も法二八条一項所定の給与等に該当するとして、これを顧問・理事報酬に合算して再計算し、別表1の「差引告知税額」欄記載の所得税の納税告知処分並びに「不納付加算税額」欄記載のとおりの不納付加算税賦課決定処分をしたことは、当事者間に争いがない。

二 弁論の全趣旨により成立を認める甲第一号証の一ないし六、成立に争いのない乙第一ないし第四号証、証人木下敬の証言並びに当事者間に争いのない事実を総合すると、原告の堺教授に対する本件指導料を含む金員支給の経緯につき、原告は、精神科医療の病院を営んでいるが、精神科医は一般的に不足しているうえ、原告の病院がやゝ交通不便な所にあるため、かねがね医師の確保に苦慮していたところ、昭和五四年頃、人を通じて大阪医科大学精神科の教授である堺を紹介され、医師の斡旋方を要請したこと、その後、同教授は、教え子の医師を原告の病院に派遣することを了承し、昭和五五年五月から同五七年一一月までの間に医師四名を原告の病院に派遣したこと、この派遣には若い医師に臨床を経験させる趣旨も含まれており、同教授は、毎月一ないし三回原告の病院を訪れ、派遣した医師らの診療に関しての相談に応じ、あるいは医学上の指導をし、さらに原告の事務長とこれら医師の勤務期間等雇用条件の決定についての交渉もしたこと、これに加え、同教授は、原告に病院の経営、医薬品の購入等に関して情報の提供、指導をし、また原告からの相談に応じたこと、これらの指導等は電話によつてもなされたこと、なお、同教授は昭和五五年一〇月一六日原告の顧問に、同五六年五月二八日原告の理事に就任したこと、原告は、堺教授に昭和五四年一〇月頃から金員の支払をしていたが、昭和五五年五月からの支払は別表2記載のとおりで、指導料として昭和五五年一一月までは同教授が原告の病院を訪れた回数一回当たり一〇万円、翌五六年二月からは同じく一五万円、交通費は昭和五五年一一月まで一回当たり八五〇〇円、翌五六年二月からは同じく一万六五〇〇円を基準としたものであつたこと、この金額は原告が一方的に決定したもので、原告はこれを堺教授の口座に振込んで支払つていたこと、なお本件指導料とは別に顧問・理事報酬が支払われていたことが認められる。

  右事実からすると、原告と堺教授との間に明確な契約が締結されたわけではないけれども、原告は堺教授に医師の斡旋をはじめとする病院経営上の指導を依頼し、この原告の依頼に応ずるかたちで、同教授は原告に医師を紹介、派遣し、それに応じて原告から同教授に本件指導料が支払われてきたのであるから、遅くとも、本件指導料、交通費が同教授が原告病院を訪れた回数に応じて支払われるようになつた昭和五五年五月には、堺教授において、原告の病院にその教え子の医師を派遣し、その指導等に当たること及び原告の病院の経営等につき指導し、相談に応じ、これに対して原告が指導料の名目で金員を支払うとの準委任類似の関係が成立したというべきである。

  法二八条一項は「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費、年金(過去の勤務に基づき使用者であつた者から支給されるものに限る。)恩給(一時恩給を除く。)及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。」と規定し、この「これらの性質を有する給与」とは、雇用契約又はそれに類する関係(例えば法人の理事、取締役等にみられる委任又は準委任等)に基づき、非独立的に提供される役務の対価として、他人から受ける報酬及び実質的にこれに準ずべき給付(例えば、各種の経済的利益等)をいうと解されるところ、同教授が提供した役務は高度に専門的なもので且つ多種にわたるものと推認されるが、少なくとも派遣した医師に対する指導、病院経営に関しての指導、情報の提供については、その成果は原告に直接に帰属し、仮に不利益があつても同教授が負担する性質のものではなかつたことは明らかで、そのうえ同教授が月に何回か原告の病院に赴き、その交通費が支給されていたことからすると、その役務は非独立的役務と認めるのが相当である。したがつて、このような非独立的役務の対価として原告が支払つた本件指導料はすべて、法二八条一項所定の「給与等」に該当することになる。

三 原告は、本件指導料は謝礼であつて、法二〇四条一項所定の報酬又は料金に該当すると主張するが、同条同項及びこれを受けた所得税法施行令三二〇条は、右報酬又は料金に該当する場合を限定的に列挙しており、本件のような医師のする指導、助言といつた行為に対する謝礼がこれに該当しないことは明らかである。

四 そうすると、本件指導料が法二八条一項所定の給与に該当するとして被告が本件各処分をしたことに違法な点はなく、ほかに本件各処分を違法とするに足る事由の主張立証はないから、本訴請求は理由がない。よつて、これを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用し、主文のとおり判決する。

    神戸地方裁判所第二民事部

        裁判長裁判官  林 泰民

           裁判官  岡部崇明

  裁判官植野聡は転勤のため署名、押印することができない。

        裁判長裁判官  林 泰民

執行証書における債権額の特定 福岡高裁平成2年

民亊執行・保全判例百選 第3版 2020年 3-2

請求異議等控訴事件

福岡高等裁判所判決/平成元年(ネ)第208号

平成2年4月26日

【判示事項】      保証人の事後求償債権を事実到来執行文によって取り立てるための執行証書の要件

【参照条文】      民法459

            民事執行法22

            民事執行法27-1

【掲載誌】       判例時報1394号90頁

【評釈論文】      別冊ジュリスト127号18頁

            判例タイムズ臨時増刊790号208頁

 

       主   文

 

 一 一審原告の控訴を棄却する。

 二 原判決中、一審被告敗訴部分を取り消す。

 三 右取消しにかかる一審原告の請求及び当審において拡張した一審原告の請求を棄却する。

 四 訴訟費用は一、二審とも一審原告の負担とする。

 

       事   実

 

第一 当事者の求める裁判

 一 一審原告

 1 原判決中、一審原告敗訴部分を取り消す。

 2 一審原告、一審被告間の昭和五六年三月二七日付連帯保証契約に基づく一審原告の一審被告に対する元本二五三五万三九二六円及びこれに対する昭和五八年五月一〇日から支払いずみまで年一四パーセントの割合による遅延損害金を支払う債務のないことを確認する(当審において請求を拡張)。

 3 一審被告は一審原告に対し三八七万五七七九円及びこれに対する昭和六〇年一二月一三日から支払いずみまで年六分の割合による金員を支払え。

 4 一審被告の控訴を棄却する。

 5 第三項について仮執行宣言。

 6 訴訟費用は一、二審とも一審被告の負担とする。

 二 一審被告

 主文同旨の判決

第二 主張

 一 請求原因

 1 一審原告・一審被告間には一審被告を債権者、一審原告を連帯保証人とする熊本地方法務局所属公証人岩隈政照作成昭和五六年第二六九五号保証委託並びに求償債務履行に関する契約公正証書(以下「本件公正証書」という)が存在し、右公正証書には左記の記載がある。

  イ 山下満子(以下「山下」という)は、昭和五五年六月二五日一審被告との間に締結した別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という)の売買契約による売買代金の支払資金として、株式会社住宅ローンサービス(以下「訴外会社」という)から昭和五六年三月二七日二四六〇万円を、利息年九・六パーセント、第一回弁済期同年五月八日、最終弁済期同七六年四月八日とする二〇年間の月賦払、債務者が一回でも割賦金の支払いを怠ったときは期限の利益を失い、残金を一時に支払う、遅延損害金は年一四パーセントとするとの約定で借り受けるにあたり、一審被告に対し右消費貸借による債務につき連帯保証人となることを委託し、一審被告はこれを受託した。

  ロ 一審被告が右保証債務を履行したときは、一審被告は山下に対する求償権(右消費貸借契約に基づく債務額及びこれに対する一審被告が訴外会社に弁済した翌日から山下が求償債務の履行を完了する日まで年一四パーセントの遅延損害金)を取得し、山下は直ちにその求償債務を弁済する。

  ハ 一審原告は山下の連帯保証人として本契約上の債務履行の責に任ずる(以下「本件連帯保証」という)。

  ニ 山下または一審原告は本契約上の一定金額の金銭債務を履行しないときは直ちに強制執行を受けても異議はないものとする。

 2 本件公正証書には次のとおり請求権の存在及び成立に瑕疵がある。

  (一) 一審原告は本件連帯保証契約を締結する際、三年間保証責任があるのみでその後は責任が免除されるものと誤信し、一審被告にもその旨言明した。したがって、本件連帯保証契約は要素の錯誤により無効である。

 一審原告が右のように誤信したのは、一審被告が本件連帯保証契約締結の際一審原告に対し、右連帯保証期間が真実は二〇年間であるのに三年間であるように告げて欺罔したことによるのであるから、一審原告は平成元年九月四日の当審口頭弁論期日において連帯保証の意思表示を取り消す旨の意思表示をした。

  (二) 本件公正証書における一審原告の執行認諾の意思表示は代理人文屋隆夫によってされているが、一審原告は同人に対し右意思表示の代理権を授与していない。

  (三) 本件公正証書は一審被告の事後求償権の範囲について金銭の一定額の記載を欠き、民事執行法二二条五号所定の執行証書に該当せず、執行力を有しない。

 3 ところが、一審被告は、昭和五八年五月九日前記消費貸借契約による残元金二三九四万二三六九円、利息一九万一五三八円及び遅延損害金一二二万〇〇一九円の合計二五三五万三九二六円を代位弁済したとして、本件公正証書に基づき、第三債務者を田淵海運株式会社とする給与差押命令(熊本地方裁判所三角支部昭和五八年(ル)第九号)を申し立てて一審原告の給料を差押え、別紙給料差押目録記載のとおり同社から合計三八七万五七七九円を取り立てた(以下「本件執行行為」という)。しかし、前記第二、2、(一)ないし(三)のとおり本件連帯保証契約は無効であるか、取り消されており、したがって一審被告は右取立額を法律上の原因なく不当に利得し、一審原告は同額の損害を受けた。

 4 よって、一審原告は、本件連帯保証契約による二五三五万三九二六円及びこれに対する昭和五八年五月一〇日から支払いずみまで年一四パーセントの割合による遅延損害金を支払う債務の存在しないことの確認及び本件公正証書の執行力の排除を求め、かつ一審被告に対し、右不当利得金三八七万五七七九円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である昭和六〇年一二月一三日から支払いずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

 二 請求原因に対する認否及び一審被告の主張

 1 請求原因1の事実は認める。同2は否認する。同3のうち本件執行行為があったことは認め、その余は否認する。

 2(一) 一審被告は、昭和五五年六月二五日山下から、本件建物の建築工事を代金三二八〇万円で請け負った。右代金のうち二四六〇万円は山下が昭和五六年三月二七日前記一、1、イ記載の約定で訴外会社から借入し、一審被告は山下の委託を受けて右消費貸借による債務について連帯保証した。

  (二ニ) その際、一審被告が右保証債務の求償権の履行を担保するため保証人を求めたところ、山下は一審原告を連帯保証人とすることを申し出たので、一審被告はこれを了承し、昭和五六年三月一四日、五日頃、一審原告、一審被告の担当者福田禮次郎(以下「福田」という)及び山下同席のもとに、山下、一審被告間で前記保証委託等の契約が、一審原告、一審被告間で本件連帯保証契約が各締結されるとともに、右各契約について公正証書を作成することになり、本件連帯保証契約による求償債務についての執行認諾を含む公正証書作成嘱託のための代理委任状(乙第五号証の三)が作成された。なお、右の時点では委任状に代理人の記載はなかったが、一審被告に代理人の選任が一任されたので、一審被告は後日右代理人として文屋隆夫を選任した。

 3 一審被告は、山下が訴外会社への支払を怠ったので、昭和五八年五月九日同会社に対し、残元金二三九四万二三六九円と利息、遅延損害金との合計二五三五万三九二六円を代位弁済し、山下及び一審原告に対する求償権を取得した。

第三 証拠《略》

 

       理   由

 

 一 請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

 二 《証拠略》によると、一審被告主張の二、2の(一)、(二)の各事実が認められ(る。)《証拠判断略》 したがって一審原告の一、2、(二)の主張は採用できない。

 三 一審原告は本件連帯保証契約による責任が三年間に限られ、その後は責任が免除されるものと誤信していた旨主張し、原審・当審におけるその本人尋問において同旨の供述をし、原審証人山下もこれに沿う証言をするので判断する。

 《証拠略》によると、訴外会社に対する山下の前記消費貸借による債務についての一審被告の連帯保証の期間は昭和五六年三月二七日から昭和五九年三月二七日までの三年間と定められていることが認められ、したがって一審被告が右期間経過により訴外会社に対する連帯保証債務の履行を免れるときは、一審被告の山下に対する求償債権も発生せず、山下の右求償債務の連帯保証人である一審原告の債務も発生しないことになるが、山下が右期間経過前に右消費貸借による債務を遅滞して期限の利益を喪失したときは、一審被告は訴外会社に対し山下の右消費貸借による債務の連帯保証人として右債務を弁済すべき義務があり、一審被告がこれを履行したときは山下に対して求償権を取得し、一審原告は山下の右求償債務の連帯保証人として責任を免れないのであって、右のように山下が三年の期間経過前に右消費貸借による債務を遅滞して期限の利益を喪失したときでも、一審原告と一審被告の本件連帯保証契約締結後三年を経過すれば一審原告の山下の求償債務の連帯保証人としての責任が免れるというのは余りにも不合理である。前記証人山下及び一審原告本人の各供述は、それ自体曖昧であるばかりか、一審原告本人の当審における尋問の結果中には、山下が三年間遅滞なく支払い続ければ一審原告の責任はないと思っていたと供述する部分があり、また、同人の原審・当審における尋問の結果中には山下が三年で倒産ないし支払遅滞をするとは思ってもいなかったと供述する部分があって、これらによると一審原告はむしろ前記の事理を正確に認識していたと受取られるのであり、このほか前記証人福田の証言に照らして、到底信用できない。

 次に、本件全証拠によるも、一審被告が一審原告を欺罔して右のように誤信させたことを認めるに足りる証拠はない。

 四 一審原告は本件公正証書には執行証書の要件である金銭の一定額の記載がないから執行力がない旨主張するが、もともと民事執行法三五条の請求異議の訴は形式上債務名義たり得るものについて債務名義上表示された請求権の存在を争ってその執行力の排除を求めるものであって、一審原告の右主張は執行文の付与に対する異議(同法三二条)の事由としてはともかく、請求異議の訴の異議事由としては許されず、主張自体失当である(付言するに、民事執行法二二条五号が金銭の一定額の記載を執行証書の要件としている趣旨は執行機関に請求の範囲を的確に知らしめ、執行の迅速確実を期するとともに、その範囲を越えて執行を受けることがないように債務者の保護を図ったものである。したがって委託を受けた保証人の事後求償権のように保証人の代位弁済によって発生し、その額が具体化する請求権について作成された公正証書であっても、証書上その基本たる法律関係が確定し、請求権の最高額が明示されている以上、その具体的な金額は同法二七条の類推適用により、保証人に代位弁済の事実及びその額を証明させ、その額を執行文に記入することによって右規定の執行証書としての要件をみたすものと解する余地がある。しかして前記認定にかかる本件公正証書における請求原因1のイないしニの記載及び《証拠略》よると、一案原告は本件公正証書において前記消費貸借契約に基づく債務全額を最高額とする限度内の金銭支払いについて執行を認諾し、右債務について付与された執行文にはその具体的な金額が一番被告提出にかかる訴外会社の代位弁済証明書を引用する形で明記されていることが認められるところ、一審原告としては右の最高額について執行を認諾している以上、その具体的な金額は一審被告の証明によるとしても証書上特定された既存の契約による債務の範囲内で定まるのであるから、債務者の保護に欠けるところはなく、執行文にもその金額が明記されているのであるから、執行の確実性の観点からも問題はないというべきであり、本件公正証書は執行法二二条五号にいう執行証書として形式的執行力があると認めるのが相当である。)。

 五 不当利得返還請求についての判断は原判決の理由説示(原判決五枚目裏五行目から一三行目まで)と同一であるから、これを引用する。

 六 以上によると、一審原告の本訴請求は、当審における拡張部分を含め全部失当として棄却すべきである。

 よって、一審原告の控訴は理由がないからこれを棄却し、原判決中一審被告敗訴部分を取り消し、右取消しにかかる一審原告の請求及び当審で拡張された一審原告の請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐藤安弘 裁判官 川畑耕平 簑田孝行)

 

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