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2021年06月

糟谷忠男裁判長名判決 熊本し尿処理場事件 熊本地裁昭和50年

環境判例百選2版 22事件

し尿処理施設工事禁止の仮処分申請事件

熊本地方裁判所判決/昭和46年(ヨ)第174号

昭和50年2月27日

【判示事項】        し尿処理施設からの放流水によって附近住民の漁業・健康の被害を発生させ、住民の居住地、住居を生活の場として利用することを困難ならしめる蓋然性が高いとして、し尿処理施設の建設禁止を命じた事例

【参照条文】        民事訴訟法760

              憲法25

【掲載誌】         下級裁判所民事裁判例集26巻1~4号213頁

              判例タイムズ318号200頁

              判例時報772号22頁

【評釈論文】        別冊ジュリスト65号59頁

              別冊ジュリスト126号64頁

              別冊ジュリスト240号40頁

              時の法令907号56頁

              判例タイムズ323号95頁

              判例評論197号32頁

 

       主   文

 

 1 被申請人は、別紙第一目録一ないし二三に記載の申請人らのために、別紙第二目録記載の土地に、現在計画中のし尿処理施設を建設してはならない。

 2 右申請人らのその余の申請ならびに別紙第一目録二四ないし六七に記載の申請人らの申請は、いずれもこれを却下する。

 3 申請費用は、別紙第一目録二四ないし六七に記載の申請人らと被申請人との間においては、被申請人に生じた申請費用の二分の一を同申請人らの負担とし、その余は各自の負担とするが、別紙第一目録一ないし二三に記載の申請人らと被申請人との間においては、全部被申請人の負担とする。

 

       事   実

 

第一 当事者の求めた裁判

 一 申請人ら

  1 被申請人は別紙第二目録記載の土地に、し尿処理施設を建設してはならない。

  2 執行官は前項の趣旨を公示するため適当な方法をとることができる。

 二 被申請人

  1 本件申請を却下する。

  2 申請費用は申請人らの負担とする。

第二 当事者の主張

 一 申請人ら(申請の理由)

  1 被申請人は、別紙第二目録記載の土地(以下、本件予定地という)に、し尿処理施設(以下、本件施設という)を建設することを計画し、昭和四六年五月一二日本件予定地の所有権を取得して、本件施設建設準備中のものである。

  2 別紙第一目録一ないし二三に記載の申請人らは牛深市牛深町米淵部落(本件予定地までの距離約三〇〇メートル)同二四ないし四六に記載の申請人らは同町春這部落(右同約七〇〇メートル)、同四七ないし六七に記載の申請人らは同町小森部落(右同約一二〇〇メートル)の、いずれも海岸に、それぞれ土地、建物を所有もしくは占有して居住し、漁業もしくは水産加工業に従事している。

  3 本件施設は、一日生し尿三〇キロリツトルの処理能力を有し、これが正常に運転されれば生し尿のBOD(生物化学的酸素要求量)の九七%が処理されるけれども、残りの三%は無処理のまま海に放流されるばかりでなく、生し尿の過剰投入、活性汚泥の死等の異常な運転により、投入された生し尿が無処理のまま放流される蓋然性が高く、放流水は潮流にのつて米淵部落の入江(以下、米淵湾という)、春這部落の入江(以下、春這湾という)、小森部落の海岸(以下、小森海岸という)に流れ込み、右各湾および海岸一帯は放流水によつて汚染され、その結果、米淵湾、春這湾、小森海岸一帯における魚介類の忌避、藻場の枯渇、藍藻類の繁茂と有用藻類の生育阻害といつた漁業に対する重大な被害のほか、春這部落における水産加工業に対する被害が予想され、また、本件施設は三次処理施設を欠くため、右各湾一帯に赤潮、有毒プランクトンの発生も予想されるから、右各被害が一層助長される。さらに、申請人らは淡水不足から海水を米や野菜を洗う等の生活用水に使用しているところ、本件施設が建設されると、右のように汚染された海水を生活用水に使用せざるを得ず、また、本件施設から出される悪臭により頭痛、吐気、目まい、不眠等が生じ、健康への被害が予想される。以上の被害は一過性のものでなく永年継続されるため、生活自体の破壊を招き、右被害は金銭賠償をもつて償えないものであつて、申請人らが受忍すべき限度を超えるものであるから、申請人らは漁業権もしくは漁業権類似の権利、所有権もしくは占有権、人格権または環境権に基き、本件施設の建設の差止を求める。

  4 本件施設は右のような公害を発生させ、一たび本件施設が建設されるときは、申請人らの受ける損害は計り知れないものがあるにもかかわらず、被申請人はこれを無視して建設しようとしているから、その建設を差止める必要性がある。

 二 被申請人の答弁

  1 申請の理由1の事実は認める。

  2 申請の理由2の事実のうち、申請人らが各々その主張の部落の住民であることおよび別紙第一目録四、五、六、八、九、一二、一三、一五、一六、二〇、二一、二三、二五、二八、三六、三七、四三、四四、四五、四七、四八、五五、五六、五八、五九、六〇、六二および六四に記載の申請人らが漁業に従事していることは認めるが、その余の事実は争う。

  3 申請の理由3の事実のうち、本件施設が一日生し尿三〇キロリツトルの処理能力を有することは認めるが、その余の事実は争う。

  4 申請の理由4の事実は争う。

  5(一) 本件施設は酸化処理方式を採用した高級処理施設で、生し尿中のBODの九七%を除去し、残り三%のBODを三〇ppm以下にして海に放流する等万全の技術を駆使しており、生し尿の過剰投入、余剰汚泥の処理の問題に対処するため、予備貯留槽、余剰汚泥脱水乾燥設備を追加工事する予定であり、また、本件施設の管理に万全を期するため、管理人予定者を採用したので、申請人らの主張する三%を越えるBODの処理水が放流されることはない。

   (二) 本件施設の放流口は、本件予定地より約二〇〇メートル西方の外海に面する米淵湾入口付近に設けるので、処理水は外海に放流されて希釈拡散されたうえ、海の自浄作用を受けるから海を汚染することはない。

   (三) 本件予定地先海域には魚介類、海藻が豊富に存在するけれども、それは同所に限らず下須島全体のことであるほか、前記のように、放流水による海の汚染はないから、魚介類や海藻に悪影響を与えることはなく、仮に与えるとしても、それは局部的であつて、右程度の損害は申請人らが受忍すべき限度内である。のみならず、本件予定地付近の海域は貧栄養の状態であるので、処理水中のチツソ、アンモニア等は海産動植物の栄養源として有効であるともいえる。

   (四) 前記のように、放流水による海の汚染はなく、また、臭気については、水洗式脱臭器で脱臭のうえ、高温熱分解によりほとんど完全に滅臭するので、申請人らに健康上の悪影響も与えることはない。

   (五) 本件施設は、従前の牛深市のし尿の処理が生し尿の素掘り投棄という不完全な方法によつていたので、これを近代的設備に改めるため計画したもので、すでに久保田鉄工株式会社との請負契約も毎年度延長され、昭和四九年度予算一三四、〇七〇、〇〇〇円(うち国庫補助金四二、七九二、〇〇〇円)を市議会において可決しているのであつて、もし本件差止請求が認められれば、被申請人は多額の損害を受けることは必至である。

第三 疎明(省略)

 

       理   由

 

一1 被申請人が、本件施設を建設するため、本件予定地の所有権を取得していること、申請人らが各々その主張の部落の住民であることおよび別紙第一目録四、五、六、八、九、一二、一三、一五、一六、二〇、二一、二三、二五、二八、三六、三七、四三、四四、四五、四七、四八、五五、五六、五八、五九、六〇、六二および六四に記載の申請人らが漁業に従事していることは当事者間に争いがない。

 2 成立に争いない甲第一一号証の一ないし六六、第四七号証、乙第一号証、証人佐々木金由の証言、申請本人杉山穀造尋問の結果および検証の結果(第一、第三回)によれば、本件予定地は下須島西海岸にある米淵湾(奥行約五〇〇メートル、入口の巾約四〇〇メートル)の入口から約二〇〇メートル東方の同湾北岸に位置し、本件予定地からさらに約三〇〇メートル東方の同湾の奥に米淵部落、同じく山を越して約七〇〇メートル北方の春這湾沿岸に春這部落、同じく約一二〇〇メートル南方の小森海岸沿岸に小森部落があつて、それぞれ申請人らが土地、建物を所有もしくは占有して居住していること、右1記載の申請人ら以外の申請人らも漁業に従事しており、また春這部落に居住する申請人のうち五名が水産加工業に従事していることが一応認められる。

二1 本件施設が一日生し尿三〇キロリツトルの処理能力を有することは当事者間に争いがない。

 2 証人村田清美の証言(第一回)およびこれにより真正に成立したものと認められる乙第一六号証、成立に争いない甲第二ないし第四号証、乙第一、第二号証、第八号証および第四八号証によれば、本件施設は、久保田鉄工株式会社が設計し、かつ製造予定のいわゆる酸化処理方式によるし尿処理施設で、バキユーム車で搬入された生し尿を沈砂槽に投入して砂礫等を除去し、ついで前処理装置によつて夾雑物を除去したのち、第一曝気槽に送り、無希釈で約一九・五日間空気を吹き込んで好気性菌の働きにより有機物を酸化分解し、この段階で生し尿のBOD一三、五〇〇ppmの九〇%を除去して一、三五〇ppmとし、脱水汚泥と分離液にわけたうえ、分離液を第二曝気槽に送り、海水で一六倍希釈(生し尿量の一五倍量の海水を加える)して約八時間曝気し、活性汚泥の働きにより残つた有機物をさらに酸化分解し、この段階で残つたBODの約七〇%を除去して二五・三ppmとしたのち、塩素滅菌をし、最後に海水で約二倍希釈(生し尿量の一五倍量の海水を加える)して放流する予定になつていることが一応認められる。

三1 ところで、申請本人佐々木國康尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる甲第一三号証の一ないし五、申請本人小平留造尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる甲第二九号証、証人本多淳裕の証言(第一回)およびこれにより真正に成立したものと認められる乙第二〇号証、成立に争いない乙第四七号証、証人永田肇、同柏原敏喜および同洞澤勇の各証言によれば、従来各地に機能不良なし尿処理施設が建設され、現に運転されていること、現在でも廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則に定められたBODの基準(日間平均値三〇ppm以下)に合格しないものが多いこと、このため各地でし尿処理施設による被害が生じていることが一応認められるところ、本件施設およびその立地条件の適否を判断するためには、まずこれらの施設のうち、本件施設と設計製造者および構造を同じくする施設の実状について検討することが適当であると思われる。

 2 そこで、右の点について検討するに、申請本人小平留造尋問の結果およびこれにより真正に成立したものと認められる甲第二九号証、成立に争いない甲第二六号証、第三九号証、乙第二一号証の二、第二二号証の二、第四七号証、第四九ないし第五一号証、第五二号証の二、証人柏原敏喜、同村田清美(第一ないし第三回)、同本田淳裕(第一、二回)および同洞澤勇の各証言によれば、久保田鉄工株式会社は、これまで、海水希釈による酸化処理方式のし尿処理施設を、広島県、愛媛県および香川県に、少なくとも五か所建設しているが、これらの施設では、生し尿の恒常的過剰投入のため、必要な処理日数を経ずしてほとんど生し尿に近いまま放流されることがあること、余剰汚泥の脱水が非常に困難なためその処理に困り、時にはこつそり付近の海に投棄する場合もあること、日々変化するし尿の量に応じた活性汚泥、空気、希釈水の量の調節に苦慮し、それができない結果活性汚泥の死、過剰希釈等の弊害が生じることが多いこと、海水を希釈水に使うため、部品が早く腐触したり取水口にカキ等がつまつたりして故障しやすいこと、施設自体に放流水の検査体制が整つていないのみならず、一日数回検査すべきである(前述の施行規則では日間平均値三〇ppm以下となつている)のに、これが行われていないこと、もつとも、各施設は建設当時付近に住居はなく、また漁場もなかつたので、直接的被害はさほど大きくなかつたことが一応認められる。

  また、村田清美の証言(第一回)により真正に成立したものと認められる乙第一〇号証の一、二、成立に争いない乙第二八ないし第四六号証、第四七号証、第四九ないし第五一号証、第五二号証の二および証人本多淳裕の証言(第二回)によれば、右五ケ所のし尿処理施設のうち三ケ所についての水質の検査結果の中には、例えば因島市し尿処理場の昭和四二年八月一〇日付および同四三年一月一七日付の検査結果のように第二曝気槽から出た段階のBODが六五・五ppmおよび四五・三ppm(施設の同段階における設計値は二二・六ppm)、放流水でそれぞれ二九・六ppmおよび一三・七ppmといつたものがあること、右のうちの他のほとんどの検査結果は同じく第二曝気槽を出た段階で三〇ppm以下になつてはいるが、これらの施設は設計上二一倍希釈(第二曝気槽に生し尿量の一五倍量、放流直前に生し尿量の五倍量)になつているのに、生し尿の投入量が過少な場合等には、設計量を大巾に超えた希釈水を入れて運転される結果になつていることが一応認められる。

  右認定の事実関係からすると、前者の各事例についてみれば、第二曝気槽から出た段階でのBOD値が設計値を超えている点に問題があるばかりでなく、そもそも第二曝気槽から出た段階で三〇ppm以下になつていなければ、し尿が適切に処理されたとはいえず、その後の希釈はたんに水増しして薄めることになるに過ぎないというべきところ、第二曝気槽から出た段階のBOD値と放流水のそれとを比較してみると、設計では、放流直前に加えられる希釈水は前認定のように生し尿の五倍量にすぎないのに、これをはるかに超える希釈水が加えられてようやく放流水のBOD値が三〇ppm以下になつていることが容易に推測される。さらに、後者の各事例についてみれば、生し尿の過少投入等の場合には、たとえ第二曝気槽から出た段階でBOD値が三〇ppm以下になつていても、BODは、第二曝気槽で設計どおりの分解除去がなされず、主として薄められて三〇ppm以下になつた可能性が大きいと推測される。

  以上の事実を総合すると、前記五ケ所の各施設では設計どおりの運転ができていない場合が多いと推測せざるを得ない。

四 そこで、本件施設の適否につき検討するに、設計製造者、構造を同じくする前記各施設が右のとおりである以上、本件施設もとうてい設計どおりの運転がなされるものといい難いところ、成立に争いのない乙第六六号証、証人村田清美(第三回)および同吹原茂(第二回)の各証言によれば、被申請人牛深市は、本訴訟中に、一五立方メートルの予備貯留槽、余剰汚泥脱水乾燥設備を追加工事することにし、また最近管理人予定者を採用したことが一応認められるけれども、し尿の過剰投入を防止するためには過剰な生し尿が搬入されても、管理人においてその投入を拒否できる体制を作ることが重要であつて、たんに一五立方メートルの予備貯留槽を一つ設置するだけで、これを防止するに十分とは考えられない(もし十分であれば、予備貯留槽を設置するには費用および場所をそれほど必要としないはずであるから、前述の五ケ所の処理場においても、これを設置して過剰投入を阻止しえたはずである)し、また前認定のとおり余剰汚泥の脱水は非常に困難であり、追加される設備で焼却可能な状態まで乾燥させるだけの技術的開発がなされているとの疎明もない。さらに、同種施設の実情等に鑑みて、採用された管理人予定者が非常にむずかしい運転管理をよくなしうるかどうかの疑問もまた払拭しえないのであつて、右追加工事等がなされればある程度は改善されるものの、なお設計どおりの運転は困難であると予想され、結局、本件施設が完成すると、生し尿に含まれるBODの三%のみならず、これを超える絶対量のBODのし尿処理水が放流される蓋然性が高いということができる。

五 次に立地条件の適否について検討する。

 1 証人村田清美(第一回)、同吹原茂(第二回)の各証言および検証の結果(第一回、第三回)によれば、本件施設の放流口は、当初の計画(本件予定地)を約二〇〇メートル西方の米淵湾の入口北岸にあるビシヤコ瀬に変更し、同所まで放流管を延長させることにしていること、しかしながら、その設計製造者の決定、費用の見積り、議会の議決等はいまだない状態であり、また、付近の地形等に鑑み、右放流管を延長することは必ずしも容易でないことが一応認められ、もし当初の計画どおり放流口を本件予定地に設けた場合は、放流水は米淵湾に直接流れ込むことになるため、後記認定の被害が一層大きくなることが予想される。

 2 次に、放流口の位置が変更後の計画どおり設けられることを前提として検討する。

  (一) 証人井上晃男の証言およびこれにより真正に成立したものと認められる甲第五一号証、成立に争いのない乙第一号証、第四八号証、第六二号証、申請本人杉山穀造尋問の結果および検証の結果(第一回、第三回)によれば、本件施設の放流水は生し尿量の三〇倍の希釈水を含め一日約九三〇立方メートルが予定されていること、放流口は一応外海に面しているとはいえ、沖合ではなく米淵湾の入口北岸付近であり、その付近の潮流は、下潮時に、米淵湾の北岸から東岸、南岸をまわつて小森海岸の方へ、速いときで毎時約五〇〇ないし七〇〇メートル流れ(但し、一部は小森海岸の方へ流れず、南岸から再び北岸の方に流れている)、上潮時には、反対に春這湾の方へ同程度の速度で流れるほか、満干潮時にはほとんど流れないこと、米淵湾はやゝ複雑な地形をした比較的小さな入江で、水の交換が十分でなく、加えて強い西風が吹くことが多いことが一応認められ、右事実から推せば、変更予定の放流口から本件施設の放流水が出された場合でも、放流水の量、本件予定地付近の地形、風向、潮流の状況等に照して、放流水はかならずしも外海に拡散されるとは限らず、常時米淵湾にも流れ込むばかりか、同湾および同湾付近海域に停滞する可能性があるといわざるを得ず、前認定のような放流水がたんに一時的でなく永年にわたり間断なく放流される(さらに、施設の老朽化によりその機能が衰えることも考慮する必要がある)のであるから、米淵湾および同湾付近海域は次第に汚染される蓋然性が高いと認めるのが相当である。これに反する証人新田忠雄の米淵湾の水の交換に関する証言は実測に基づかず憶測の域を出ないものというべく、右に認定した本件予定地付近の地形、風向、潮流の状況等に照して措信し難い。

  (二) また、証人井上晃男の証言およびこれにより真正に成立したものと認められる甲第五一号証、証人鯖江芳雄、同畑山鉄七、同石田夏由の各証言、申請本人杉山穀造、同原田数雄各尋問の結果および検証の結果(第一回、第三回)によれば、米淵湾および同湾付近海域は魚介類が豊富に棲息するほか、ワカメ、ヒジキ、テングサ等の有用藻類の宝庫であつて米淵部落の申請人らはこれらを採つて生活していること、本件予定地に炭鉱があつた昭和三九年ころまでは、本件予定地付近の海域では魚介類、海藻がほとんど採れず、現在もその影響により海岸が黒くなつているけれども、廃鉱になつてから、漸く以前のように、魚介類、海藻も豊富に採れるようになつたこと、米淵湾付近に棲息するイセエビ、ウニ、アワビ、サザエ、イシダイ、カワハギ、イサキ、カサゴ等の高級魚介類は汚染に弱く、致死量に至らない軽度の汚染でも魚族はこれを嫌忌して右汚染海域へ入つて来なかつたり、入つて来てもすぐ逃げ出してしまい、早晩姿を消し、そのため米淵湾付近の高級魚介類の漁場としての価値がなくなること、ワカメ、ヒジキ、テングサ等の有用藻類や後述のホンダワラ等も軽度の汚染にも弱く、反対に放流水中にも生存する藍藻類は汚染に強いばかりか、右有用藻類等に付着してこれらを死滅させてしまう(しかも、藍藻類の中には人間の皮膚に炎症を起こさせる有毒なものもある)こと、なかんずく、米淵湾には魚類の産卵、発育場所として極めて重要な意味をもつ藻場が豊富に存在し(最も近いものは予定放流口から約二〇メートルの距離にある)、これらの藻場を形成しているホンダワラ等は、元来透明度の高い場所に生育し、汚染に極めて敏感で、前認定程度の放流水が放流されると藻場は次第に枯渇してしまい、その結果、そこから補給される魚族が絶滅するため、その影響は単に周辺の水域のみならず、相当広範囲に及ぶこと、その他、本件施設には赤潮発生の原因となるチツソやリンを除去する三次処理装置を欠くため、前認定の放流水が放流されると、放流口周辺には赤潮発生の可能性もないではないこと、米淵部落の申請人らは淡水不足のため、米や野菜を海水で洗うことが多く、また、海藻をとるため海に裸で潜つたり、海水浴をすることから健康被害の可能性があることが一応認められ、結局、本件予定地からし尿処理水が放流されれば、米淵湾および同湾付近海域は漁場および生活の場としての価値を失う蓋然性が高いということができる。右認定に反する乙第一九号証の一(洞澤勇の鑑定書)および乙第二〇号証(本多淳裕の鑑定書)は、いずれも現地を十分調査することなく、かつ本件施設が設計どおり運転される(この点に疑問があることは前認定のとおりである)ことを前提にしたものであるのに対し、前記甲第五一号証(井上晃男の鑑定書)は現地で十分実測、見分し、かつ十分とはいえないまでも実験した結果に基いて作成されたものであつて、前記乙第一九号証の一および同第二〇号証に比して信用性が高いといわざるを得ないから、右乙第一九号証の一および同第二〇号証も前記認定を左右するに足りないというべきである。なお、本件放流水が栄養源として魚介類、藻類の増殖に役立つ旨の乙第一二、第一三号証、第六一号証は、いずれも本件予定地付近の海域のように清澄な海水に親和性を有する前記イセエビ、アワビ、イシダイ等の高級魚介類および前記ワカメ、ホンダワラ等の藻類に関するものではないから、前記認定の妨げにはならない。

六 以上の認定事実に徴すると、放流口が本件予定地に設置される場合は勿論、これを延長してビシヤコ瀬に設置される場合においても、本件施設から出る放流水によつて米淵湾および同湾付近海域が汚染される結果、漁業その他生活上の被害を生じる蓋然性が高いと予測されるから、本件し尿処理場の設置は永年漁場および生活の場として米淵湾およびその付近海域とともに生きてきた別紙第一目録一ないし二三に記載の申請人らをして、その居住地、住居を生活の場として利用することを困難とさせるに等しく、このような場合には、たとえ本件予定地に建設されるものが本件施設のように公共性の高いものであつても、その建設を許容すべき特別の事情がない限り、受忍限度を越える違法なものとして建設差止が認められるべきであると解するのが相当である。

七 そこで、被申請人側に右の特別事情があるかどうかについて検討する。

 1 成立に争いのない甲第三、第四号証、乙第一八号証、第六六号証、証人吹原茂(第二回)、同藤木素士(第二回)の各証言および検証の結果(第一回)によれば、被申請人牛深市においては、従前からし尿を素掘り投棄の方法で処理しており、過去においては稲作に対する補償をしたこと等があるけれども、現在は山間の土地を借りてそこへ投棄しているため、被害は生じていないこと、右方法は付近に井戸、川、家等がない土地を選び、適切な管理を行えば被害はそれほど生じないけれども、場所確保の困難なこと等から、いつまでも続けているわけにはいかないこと、そのため牛深市は昭和四六年し尿処理施設を建設することを計画し、同年五月久保田鉄工株式会社と八七、〇〇〇、〇〇〇円で請負い契約を締結したが、本件訴訟のため着工が遅れたまま、昭和四八年三月、予算一三四、〇七〇、〇〇〇円(うち国庫補助金四二、七九二、〇〇〇円)を市議会において可決していることが一応認められ、右事実によれば、現在行つている生し尿の素掘り投棄は市民生活に重大な支障を生じていないけれども、本件施設の建設が差止められた場合、被申請人は現在行つている生し尿の素掘り投棄を当分続けざるを得ないばかりか、前記契約が実行できないことにより相当程度の経済的損失を受けることが推測される。

 2 しかしながら、右のような結果を招来したのは、被申請人側に次のような公害防止ないし回避の対策が真摯に行われなかつたためであると考えられる。すなわち、本件施設の目的は、牛深市民の生活環境の保全、公衆衛生の向上であるから、公共性を有するものであつて、その趣旨はもとより尊重されるべきであるけれども、本件のように、清澄な海に棲息する魚介類を対象とする漁業が現に行われ、かつ住民の健康に悪影響が予想される場所にし尿処理場を設置しようとする場合においては、被申請人において、設置予定の施設が真実海水汚濁の最低基準を守る性能を有するものであるかどうかを精査するほか、少なくとも、本件予定地付近海域の潮流の方向、速度を専門的に調査研究して、放流水の拡散、停滞の状況を的確に予測し、また同所に棲息する魚介類、藻類に対する放流水の影響について生態学的調査を行い、これらによつて本件施設が設置されたときに生ずるであろう被害の有無、程度を明らかにし、その結果により、現在の素掘り投棄の方法よりはたして公害の発生が低いといえるかどうかを厳密に検討し、そのうえで、本件予定地に本件施設を建設する以外適当な方法がないと判明した場合にはじめて、その調査結果に基づき具体的な被害者に対する補償問題等も含めて、住民を説得する等の措置をとるべきである。けだし、申請人らの生活およびその環境の保全、公衆衛生の向上を図ることも、また行政主体たる被申請人の義務であり、さらに、本件施設によつて利益を受けるのは申請人らを除く牛深市民、換言すれば、その行政主体である被申請人であるから、利益を受ける被申請人において前記調査等の措置をなすべきは事理の当然というべきだからである。しかるに、本件においては、被申請人が前記のような当然なすべき調査をしたうえで、その結果を踏まえての交渉をしたとの疎明はないのであつて、このような場合は被申請人に前認定の被害が生じたとしても、それは、いわば被申請人の行政の不手際により生じたと見るべきであり、そのしわよせを申請人らが甘受しなければならないいわれはないというべきである。

  したがつて、以上諸般の事情に鑑みれば、被申請人には米淵部落の申請人らの犠牲において本件施設の建設を許容すべき特別な事情があるとはいえないというべきである。

 3 してみれば、米淵部落の申請人らは、程度の差はあれ本件施設により漁業および健康上の被害を受け、居住地、住居を生活の場として利用することが困難となる蓋然性が高く、その被害は受忍すべき限度を超えるとともに、本件施設の建設計画が実施されようとしている以上、その差止を求める必要があるといわねばならない。

八 次に、春這部落および小森部落の申請人らについて検討する。

  春這部落、小森部落が本件予定地から、それぞれ七〇〇メートル、一二〇〇メートルの距離にある(右は直線距離であつて、海岸沿いの距離はなお長くなる)ことは前認定のとおりであり、本件施設からの放流水が潮流にのつて春這湾、小森海岸に流れて来たとしても、それぞれ到達するまでには相当希釈拡散されることが推測されるから、その汚染の程度は米淵湾に比して相当低いといわざるを得ず、また、本件施設から悪臭が生じたとしても、その影響を強く受けることはまずないと推測される。仮に、春這部落、小森部落の申請人らが本件施設によつて被害を受けたとしても、米淵部落の申請人らが受ける被害に比べてその内容および程度に相当の差異があると考えられるから、損害賠償の問題を生じることは格別、その被害は受忍限度を超えるとまでは認め難い。結局、右申請人らには、本件施設建設の差止を求める被保全権利の疎明がないことに帰する。

九 以上の次第であつて、結局、別紙第一目録一ないし二三の申請人らについては、被申請人が現在計画中の本件施設の建設差止の申請部分につき、申請を一応理由あるものと認めて、これを認容するが、建設差止公示の申請部分については、被申請人が地方自治体であることからして、その必要性があるとは認められないから却下し、別紙第一目録二四ないし六七の申請人らについては、申請を理由なしとして却下することとし、申請費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

 (裁判官 糟谷忠男 中野辰二 平 弘行)

 

(別紙)

       第一目録(省略)

 

(別紙)

       第二目録

 

伊藤正巳裁判長不当判決 田子の浦ヘドロ事件 最高裁昭和57年

環境判例百選第2版 23事件        住民訴訟事件

最高裁判所第3小法廷判決/昭和52年(行ツ)第128号

昭和57年7月13日

【判示事項】        地方公共団体による河川港湾等の汚染ないしヘドロ堆積等の除去に要する費用の支出と汚水排出者に対する地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づく損害賠償代位請求の範囲

【判決要旨】        地方公共団体による河川港湾等の汚染ないしヘドロ堆積等の除去に要する費用の支出については、住民は、右費用のうち、当該地方公共団体が行政上当然に支出すべき部分とその行政裁量により特別の支出措置を講ずるのを相当とする部分とを除いた汚水排出者の不法行為等による損害の填補に該当し終局的には当該汚水排出者に負担させるのを相当とする部分に限り、地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づき当該地方公共団体に代位して汚水排出者に対し損害賠償請求をすることができる。

【参照条文】        地方自治法242の2-1

              民法709

【掲載誌】         最高裁判所民事判例集36巻6号970頁

              最高裁判所裁判集民事136号463頁

              裁判所時報845号1頁

              判例タイムズ478号141頁

              判例時報1054号52頁

【評釈論文】        環境法研究18号97頁

              季刊実務民事法1号214頁

              ジュリスト779号57頁

              ジュリスト臨時増刊792号58頁

              別冊ジュリスト125号214頁

              別冊ジュリスト126号72頁

              別冊ジュリスト240号42頁

              時の法令155号54頁

              判例評論1067号172頁

              法曹時報35巻6号126頁

              民商法雑誌88巻4号504頁

              竜谷法学16巻3号65頁

 

       主   文

 

 原判決中被上告人Aの請求に関する部分及び同被上告人を除くその余の被上告人らの請求に関する上告人ら敗訴部分を破棄する。

 被上告人Aを除くその余の被上告人らの請求に関する右部分につき、本件を東京高等裁判所に差し戻す。

 本件訴訟のうち被上告人Aの請求に関する部分は、昭和五一年八月二四日同被上告人の死亡により終了した。

 

       理   由

 

 上告人大昭和製紙株式会社代理人荻野定一郎名義、同満園勝美、同満園武尚の上告理由第一ないし第三点、上告人大興製紙株式会社代理人河野富一、同河野光男の上告理由第一点、上告人興亜工業株式会社代理人井口賢明の上告理由第一点、上告人本州製紙株式会社代理人山根篤名義、同下飯坂常世、同海老原元彦、同廣田寿徳、同竹内洋、同馬瀬隆之の上告理由第一点について

 論旨は、要するに、住民訴訟においては、訴訟の対象となるべき具体的事項につき地方自治法(以下「法」という。)二四二条の住民監査請求を経由した旨の主張をしなければならないのであつて、これを本件についていえば、被上告人らの本件監査請求の要旨3(3)に記載された内容の住民監査請求を経由したという主張だけでは足りず、本件監査請求は、静岡県知事が上告会社四社に対してヘドロ浚渫に関する不法行為による損害賠償請求権を行使しなかつたことが違法に財産の管理を怠る事実に該ることの請求を含む旨の主張をしなければ、静岡県に代位して上告会社四社に損害賠償の請求をすることはできない、というのである。

 しかしながら、法二四二条一項は、同項にいう当該行為又は怠る事実によつて普通地方公共団体(以下「地方公共団体」という。)の被つた損害を補填するために必要な措置を講ずべきことにつき住民監査請求をすることができる旨規定するにとどまるのであつて、同規定を解釈して、住民監査請求においては、所論のように、より具体的に損害賠償請求権の不行使が怠る事実に当たるとまで主張しなければならないと解することはできない。記録によれば、本件監査請求における請求の要旨3(3)には、「大昭和製紙株式会社等の大製紙企業に浚渫費用を負担せしめること」という記載があり、これと同(1)に記載されている「Bが違法不当に支出した昭和四四年度の田子の浦港の浚渫費一億五〇〇〇万円」とあるのとをあわせ考えると、右請求の要旨3(3)には、静岡県が昭和四四年度に支出したヘドロ浚渫費一億五〇〇〇万円について、これを原因者に何らかの形で負担させるべきであるという主張が含まれているものと解するのを相当とし、その限りにおいて、右監査請求の趣旨は明確であり、法二四二条の二所定の住民訴訟の前提としての法二四二条所定の住民監査請求の要件を充足しているものと見るべきである。右と同旨の原判決は正当であり、論旨は理由がない。

 上告人大昭和製紙株式会社代理人荻野定一郎名義、同満園勝美、同満園武尚の上告理由第六ないし第八、第一〇、第一五点、上告人大興製紙株式会社代理人河野富一、同河野光男の上告理由第二、第四、第五点、上告人興亜工業株式会社代理人井口賢明の上告理由第二、第三、第五点、上告人本州製紙株式会社代理人山根篤名義、同下飯坂常世、同海老原元彦、同廣田寿徳、同竹内洋、同馬瀬隆之の上告理由第三、第四、第六点について

 論旨は、要するに、本件ヘドロ浚渫費は静岡県の被つた損害に当たらず、したがつてこれを上告会社四社に負担させなかつたことは、違法に怠る事実とならない、というのである。

 ところで、法二四二条の二第一項四号の規定に基づくいわゆる代位請求に係る住民訴訟は、法二四二条一項所定の地方公共団体の執行機関又は職員による同項所定の一定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実によつて地方公共団体が被つた損害の回復又は被るおそれのある損害の予防を目的とするものであり、地方公共団体が、右目的のため、当該職員又は当該違法な行為若しくは怠る事実に係る相手方に対し、法二四二条の二第一項四号に掲げられた請求権を実体法上有するにもかかわらず、これを積極的に行使しようとしない場合に、住民が地方公共団体に代位し右請求権に基づいて提起するものである(最高裁昭和四六年(行ツ)第九〇号同五〇年五月二七日第三小法廷判決・裁判集民事一一五号一五頁、同昭和五二年(行ツ)第八四号同五三年六月二三日第三小法廷判決・裁判集民事一二四号一四五頁参照)。

 これを本件のような損害賠償請求の場合についてみると、地方公共団体の有する損害賠償請求権は、法二三七条一項及び二四〇条一項にいう地方公共団体の財産ないし債権に当たるものとみるべきであるが、右請求権の不行使につき必要な措置を講ずべきことを法二四二条の二所定の住民訴訟の方式により求めることができるのは、当該地方公共団体が右請求権の行使を違法に怠る事実により当該地方公共団体の被つた損害を補填することを目的とする場合に限られるものと解すべきである。

 ところで一般に、河川港湾等いわゆる自然公物に対する汚水の排出は、社会通念上一定の限度までは許容されているものと解され、右限度を超えない汚水排出の結果生じた汚染ないしヘドロ堆積等は、当該自然公物の管理権者である地方公共団体の行政作用により処理されるべきものである。また、右汚水の排出が社会通念上右一定の限度を超えた結果汚染ないしヘドロ堆積等が生じた場合であつても、そのような状態に至つた原因の中に行政上の対策の不備等があつて、汚水排出者にすべての責任を負わせることが必ずしも適当でない場合もありうるのであるから、右汚染ないしヘドロ堆積等の除去又は予防のために講ずべき浚渫作業又は施設の設置・改善等の措置、そのために支出すべき費用及びその分担についてはなお公物管理権者の合理的かつ合目的的な行政裁量に委ねられている部分があるものというべく、したがつて、汚染ないしヘドロ堆積等の除去に要する費用の支出中に、本来的には当該地方公共団体の負担すべきものとされない部分がある場合であつても、公物管理権者において、行政上の見地から、諸般の具体的事情を検討し、行政裁量により特別の支出措置を講ずることが許されることもあると解するのが相当である。

 このように見てくると、汚染ないしヘドロ堆積等の除去に要する費用の支出についても、(一) 当該地方公共団体が行政上当然に支出すべき部分、(二) 当該地方公共団体がその行政裁量により特別の支出措置を講ずるのを相当とする部分、(三) 汚水排出者の不法行為等による損害の填補に該当し終局的には当該汚水排出者に負担させるのを相当とする部分、に区分して考えなければならない。そして、住民が当該地方公共団体に代位して汚水排出者に対し損害賠償請求権を行使しうるのは、右(三)の部分に限られるものというべきである。これを、本件についてみると、法二四二条の二第一項四号の規定に基づく被上告人らの損害賠償請求の裁判においては、本件ヘドロ浚渫費のうち右(三)の部分の有無及びその金額について認定判断をしなければならないのであつて、ヘドロ浚渫費支出の原因に汚水排出者の不法行為が存するという一事のみで、右浚渫費の全額を、当然に、被上告人が静岡県に代位して汚水排出者に請求することのできる金額と認めることはできないものといわなければならない。右の次第であるから、原審が、工場廃水による本件河川の汚染が極めて著しく、そのため田子の浦港に堆積したヘドロの浚渫を余儀なくされた静岡県が、港湾管理者として上告会社四社ほか工場廃水を違法に排出した者に対し損害賠償請求権を有するにかかわらずこれを行使しないのは違法である、とのみ判示して、たやすく、昭和四四年度のヘドロ浚渫費一億二一八〇万三〇〇〇円の全部を共同不法行為による損害と認めたことは、たとえ本訴における認容額がそのうち一〇〇〇万円の限度にとどまるとしても、法二四二条及び二四二条の二の解釈適用を誤り、ひいて理由不備の違法をおかしたものといわざるをえない。論旨は理由があり、原判決中上告会社四社敗訴部分は、その余の論旨に判断を加えるまでもなく破棄を免れず、更に審理を尽くさせるため、右部分を東京高等裁判所に差し戻すこととする。

 職権をもつて調査するに、記録によれば、被上告人Aは昭和五一年八月二四日死亡していることが明らかである。地方自治法二四二条の二に規定する住民訴訟は、原告が死亡した場合においては、その訴訟を承継するに由なく、当然に終了するものと解すべきであるから、本件訴訟中同被上告人の請求に関する部分は、その死亡により当然に終了しており、原判決は破棄を免れない。

 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

     最高裁判所第三小法廷

         裁判長裁判官  伊藤正己

            裁判官  横井大三

            裁判官  寺田治郎

 

 2週間ほど前に日本語放送終了のおしらせがあったが、30日の終了アナウンスは通常のものでした。」
ほんとに終了したのか7月1日の放送をきいてみないとわかりません、

去年までは1月ほで英語放送をしてから復活していましtが。

谷敏行裁判長名判決 選挙違反12人全員無罪 鹿児島地裁 公職選挙法違反被告事件

鹿児島地方裁判所判決/平成15年(わ)第217号

平成19年2月23日

【判示事項】      鹿児島県議会議員選挙(平成15年4月施行)の公職選挙法違反(供与罪等)の事案につき,自白調書の信用性を否定して被告人12人全員に対し無罪が言い渡された事例

【参照条文】      公職選挙法221-1

            公職選挙法239-1

            公職選挙法129

【掲載誌】       判例タイムズ1313号285頁

            LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      季刊刑事弁護52号138頁

            法学セミナー52巻6号118頁

 

       主   文

 

 被告人12名はいずれも無罪。

 

       理   由

 

(公訴事実)

 本件各公訴事実は,各起訴状及び訴因の変更・追加請求書記載のとおりであるが,要するに,被告人Kは,平成15年4月13日(以下,特に断りのない限り,判決中に記載されている月日の年は,平成15年である。)施行の鹿児島県議会議員選挙(以下「本件選挙」という。)に際し,曽於郡区から本件選挙に立候補する決意を有していた者であり,被告人Lは,被告人Kの妻でかつ本件選挙に関する被告人Kの選挙運動者であり,被告人Aは,曽於郡区の選挙人でかつ本件選挙に関する被告人Kの選挙運動者であり,その余の被告人及び亡Eは,いずれも曽於郡区の選挙人であるところ,いずれも被告人Kに当選を得しめる目的をもって,①被告人K及び同Aが,共謀の上,2月上旬ころ(なお,検察官は,第42回公判において,「2月8日」と釈明した。),被告人G方(同人方は被告人A方でもあり,以下,「被告人A方」という。)において,被告人B,同C,同D,亡E,被告人F及び同Mに対し,被告人Kへの投票及び投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬として,それぞれ6万円ずつ供与するとともに立候補届出前の選挙運動をし,被告人Bら5名は前記各供与を受けたというもの(第217号,266号,394号,395号,396号。以下,この件を「1回目会合」という。),②被告人K,同L及び同Aが,共謀の上,2月下旬ころ,被告人A方において,被告人B,同C,同D,同J,亡E及び被告人Fに対し,被告人Kへの投票及び投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬として,それぞれ5万円ずつ供与するとともに立候補届出前の選挙運動をし,被告人Bら5名は前記各供与を受けたというもの(第292号,293号,295号,320号,321号。以下,この件を「2回目会合」という。),③被告人K,同L及び同Aが,共謀の上,3月中旬ころ,被告人A方において,被告人B,同C,同D,同J及び亡Eに対し,被告人Kへの投票及び投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬として,それぞれ5万円ずつ供与するとともに立候補届出前の選挙運動をし,被告人Bら4名は前記各供与を受けたというもの(第292号,293号,95号。以下,この件を「3回目会合」という。),④被告人K及び同Lが,共謀の上,3月下旬ころ(なお,検察官は,第42回公判において,「3月24日」と釈明した。),被告人A方において,被告人A,同B,同C,同D,亡E,被告人F,同G,同H,同I及び同Jに対し,被告人Kへの投票及び投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬として,それぞれ10万円ずつ供与するとともに立候補届出前の選挙運動をし,被告人Aら9名は前記各供与を受けたというもの(第266号,269号。以下,この件を「4回目会合」という。)である。

(弁護人らの主張)

 各被告人の弁護人らは,前記4回の会合はいずれも開かれておらず,1回目会合での被告人A及び同Kから関係被告人への供与及びこれに対応する関係各被告人の受供与,2・3回目各会合での被告人A,同K及び同Lから関係被告人への供与及びこれに対応する関係各被告人の受供与,さらに4回目会合での被告人K及び同Lから関係被告人への供与及びこれに対応する関係各被告人の受供与はいずれもなかったのが真相であり,これらがあったことに沿う被告人A,同J,同D,同B,同C及び亡Eの捜査官に対する自白を内容とする各供述調書はいずれも全て信用することができず,被告人12名はいずれも無罪であると主張する。

(当裁判所の判断)

 当裁判所は,本件各公訴事実については,いずれも犯罪の証明がないことに帰するから,被告人らはいずれも無罪であると判断した。以下,その理由について詳述する。

第1 前提事実

   関係証拠によれば,以下の事実を認めることができる。

 1 被告人らの身上関係等について

 (1)被告人Kは,4月13日に実施された本件選挙につき,4月4日,曽於郡区から立候補し,当選した者である。

 (2)被告人Lは,被告人Kの妻である。

 (3)被告人Aは,本件選挙当時,鹿児島県曽於郡志布志町(現在の志布志市志布志町)の(a)小校区(b)集落(以下「(b)集落」という。)に在住し,被告人Kが経営する有限会社K商店に勤務しており,本件選挙につき選挙権を有していた者である。

 (4)被告人Gは,本件選挙当時,(b)集落に居住していた被告人Aの夫であり,本件選挙につき選挙権を有していた者である。

 (5)被告人Dと被告人Jは,本件選挙当時,(b)集落に居住していた夫婦であり,いずれも本件選挙につき選挙権を有していた者である。

 (6)被告人Bと被告人Iは,本件選挙当時,(b)集落に居住していた夫婦であり,いずれも本件選挙につき選挙権を有していた者である。

 (7)亡Eは,本件選挙当時,(b)集落に居住しており,本件選挙につき選挙権を有していた者であるが,本件の審理が係属している平成17年5月24日に死亡した。

 (8)被告人F,同Mは,本件選挙当時,(b)集落に居住しており,本件選挙につき選挙権を有していた者である。

 (9)被告人Hは,本件選挙当時,(a)小校区の(c)集落に居住しており,本件選挙について選挙権を有していた者である。

 (10)被告人Cは,本件選挙当時,(a)小校区の(d)集落に居住しており,本件選挙について選挙権を有していた者である。

 2 捜査・公判の経過について

 (1)鹿児島県警察は,4月12日ころ,本件選挙につき,被告人Kの選挙運動を行っていたaが,建設会社の役員らに対し,缶ビール1箱を贈り,被告人Kへの投票依頼を行ったとの情報,及びaが,同じく本件選挙に関連し,亡Eらに対し,焼酎や現金を贈り,被告人Kへの投票依頼を行ったとの情報を入手し,4月14日から16日にかけてa,亡Eらを任意同行の上取り調べたものの,aが4月17日に入院したこともあり,十分な供述を得ることができず,捜査は中止された。

 (2)また,鹿児島県警察は,内偵捜査の結果,(a)小校区において,本件選挙につき被告人Kを支援する者として,被告人G,同C,同B,同D,亡Eらがおり,これらの者が本件選挙に関連して物品等を受け取っているとの情報を得たため,4月17日から19日にかけて,これらの者を任意で取り調べたところ,新たに,被告人Aが,本件選挙に関し,被告人Jと亡Eに対し,焼酎と現金を渡した(以下,この件を含め,被告人Aらが,本件選挙において被告人Kへの投票を依頼する趣旨で,(b)集落の者らに対して焼酎と現金を配った事件を「焼酎口事件」という。)という供述を得たため,4月22日,被告人Jに対する1万円の供与並びに亡Eに対する1万円及び焼酎の供与を被疑事実として,被告人Aを通常逮捕した。

 (3)焼酎口事件については起訴されるに至らなかったが,4月30日に,被告人Jから,被告人A方で買収会合が開かれたとの供述がされ,これを端緒として被告人らの取調べが行われた結果,概ね5月7日ころまでの間に,被告人A,同B,同D,同J及び亡Eが,それぞれ,1回目会合ないし4回目会合について自白するに至り,被告人Cも,5月19日に1回目会合について自白を始め,以後,1回目会合ないし4回目会合について自白した(以下,この自白を総称して「被告人らの自白」ということがある。)。

 (4)被告人A,同C及び同Dは,当裁判所における第2回ないし第4回公判(第217号,266号事件)の罪状認否の手続においても,1回目会合及び4回目会合の事実を認める陳述をしたものの,その後,保釈により身柄拘束を解かれた後に開かれた第5回及び第6回公判において,否認に転じ,以降,すべての被告人が本件各公訴事実を全面的に争っている。

第2 被告人らの自白内容

   被告人A,同B,同D,同J,同C及び亡Eの捜査段階における自白の内容は,多少の食い違いはあるものの,概ね相互に符合しており,その内容は,大要,以下のとおりである。

 1 1回目会合について

   2月8日の晩,被告人A方において会合が開催され,被告人K,同A,同B,同C,同D,亡E,被告人F及び同Mらが参加した。会合では,被告人Kらが,本件選挙について応援を依頼する旨のあいさつをするなどしたが,会合の途中,被告人Aが,被告人Kから3万円入りの封筒を数通受け取り,その場において,本件選挙につき被告人Kへの投票を依頼する趣旨で,前記参加者らに対し,その封筒を2通ずつ渡した。

 2 2回目会合について

   2月下旬ころの晩,被告人A方において会合が開催され,被告人K,同L,同A,同B,同C,同D,同J,亡E及び被告人Fが参加した。会合では,被告人Kらが,本件選挙について応援を依頼する旨のあいさつをするなどしたが,会合の途中,被告人Aが,被告人Kから5万円入りの封筒を数通受け取り,その場において,本件選挙につき被告人Kへの投票を依頼する趣旨で,前記参加者らに対し,その封筒を1通ずつ渡した。

 3 3回目会合について

   3月中旬ころの晩,被告人A方において会合が開催され,被告人K,同L,同A,同B,同C,同D,同J及び亡Eが参加した。会合では,被告人Kらが,本件選挙について応援を依頼する旨のあいさつをするなどしたが,会合の途中,被告人Aが,被告人Kから5万円入りの封筒を数通受け取り,その場において,本件選挙につき被告人Kへの投票を依頼する趣旨で,前記参加者らに対し,その封筒を1通ずつ渡した。

 4 4回目会合について

   3月24日の晩,被告人A方において会合が開催され,被告人K,同L,同A,同B,同C,同D,亡E,被告人F,同G,同H,同I及び同Jが参加した。会合では,被告人Kらが,本件選挙について応援を依頼する旨のあいさつをするなどしたが,会合の途中,被告人Kが,被告人Lから10万円入りの封筒を数通受け取り,その場において,本件選挙につき自らへの投票を依頼する趣旨で,前記参加者らに対し,その封筒を1通ずつ渡した。

第3 被告人らの自白の信用性の全体的検討

 1 被告人Kのアリバイについて

   弁護人らは,1回目会合及び4回目会合について,被告人Kにアリバイが成立する旨主張しており,後記のとおり,被告人Kもこれに沿う供述をしているので,以下検討する。

 (1)1回目会合及び4回目会合が開かれたとされる日時の特定について

    アリバイの成否を検討する前提として,被告人らの自白に基づき,1回目会合及び4回目会合が開かれたとされる日時を特定する必要がある。そこで,まず,この点について検討する。

   ア 買収会合の日付について

   (ア)1回目会合について

      まず,被告人Aの検察官調書によれば,1回目会合が開かれたのは2月8日であるとされている。なお,第30回公判調書中の証人甲(本件の捜査指揮を執った警察官。以下「甲」という。)の供述部分(以下「甲供述」という。)によれば,被告人Aから,1回目会合の日は会合のために早退したとの供述が得られ,裏付け捜査の結果,被告人Aの2月上旬の早退日は2月1日と2月8日であったとのことである。

      次に,被告人Cの検察官調書によると,1回目会合が開かれたのは2月8日(又は2月8日ころ)であるとされている。このように,日付を特定した経緯について,前記検察官調書及び被告人Cの警察官調書によると,1回目会合が開かれたのは,地元の祭りが行われた2月2日以降で,被告人Kが経営する農場で売り渡したサツマイモの代金を受け取った2月14日より前であり,かつ,妻のbが踊りの練習に参加していた土曜日であるとされている。この点に関しては,被告人Cの妻であるbの検察官調書によると,被告人Cから,2月8日の晩に集まりがあるから来ないかと誘われたが,踊りの練習があるので断ったとされており,被告人Cの前記供述と符合している。そして,捜査報告書によって,2月2日から2月14日までの間で,bの踊りの練習があったのは2月8日のみであることが判明している。

      次に,被告人Bの警察官調書によると,1回目会合が開かれたのは長女が入院した2月7日の前後ころであるとされている。また,甲供述によれば,被告人Bが2月1日に釣りクラブの新年会に出席していたことについては,裏付けが取れており,2月1日に1回目会合が開かれた可能性はないとのことである。

      さらに,亡Eについては,甲供述によれば,2月9日に別の会合に出ていることについては,裏付けが取れているため,2月9日に1回目会合が開かれた可能性はないとのことである。

      加えて,被告人Dの供述調書によれば,被告人Dは,1回目会合の後,その日のうちにコンビニエンスストアで,受け取った6万円の中から携帯電話料金2万6000円を支払ったとされているところ,その支払が2月8日午後10時55分になされていることが判明している。

      このように,1回目会合が2月8日に開かれたことが複数の根拠によって裏付けられており,逆に,1回目会合が2月8日以外の日に行われたことを示すような証拠はない。

      したがって,1回目会合が開かれたのは2月8日であると特定することができる。

   (イ)4回目会合について

      まず,被告人Aの検察官調書によると,4回目会合が開かれたのは,自分が職場を早退した日であり,かつ,同僚であるyが出勤していた日であるとされ,被告人Aが3月下旬に早退したのは3月24日と3月27日であること,yが3月25日から3月27日まで欠勤していたことを職場のタイムカードの記録で確認の上で,4回目会合の日が3月24日であると特定されている。

      次に,被告人Jの検察官調書によると,4回目会合のあった日が夫である被告人Dの給料日であったとし,さらに,当日会合に行く直前に見たテレビ番組の内容や印象的な場面について具体的に言及した上,当日のテレビの番組表も参照して,4回目会合の日が3月24日であると特定されている。

      さらに,被告人Cの検察官調書によると,4回目会合があった日にシルバー人材センターで年会費を納めた後,メロンの苗を買ったとされているところ,その年会費を納付した際の領収証により,その日が3月24日であることが判明している。

      なお,被告人Dの検察官調書によると,4回目会合があったのは,3月下旬ころで,残業で帰宅が遅くなった日だったと思うとされ,被告人Dの勤務状況を調べたところ,3月下旬の残業日は3月24日と3月28日であるとのことである。また,同調書によれば,3月22日は亡E方での祝いの席,3月25日は送別会,3月29日は花見,3月30日と3月31日は地域の会合があったとされており,これらの日に4回目会合があった可能性は排除できる。他方,被告人Bの検察官調書によると,4回目会合があったのは,孫(長女の長男)の入院中であった,その入院期間は3月16日ころから3月25日ころまでであり,4回目会合は3月25日より前のことだった,3月21日は春分の日,3月23日は日曜日であり,両日は4回目会合のあった日ではなかったとされている。したがって,被告人D及び被告人Bの供述調書の内容によっても,4回目会合のあった可能性のある日が3月24日に絞られることになる。

      このように,4回目会合が3月24日に開かれたことが複数の根拠によって裏付けられていると同時に,3月下旬のそれ以外の日については,4回目会合が開かれた可能性を排斥できる。逆に,4回目会合が3月24日以外の日に行われたことを示すような証拠はない。

      したがって,4回目会合が開かれたのは3月24日であると特定することができる。

   (ウ)検察官の釈明について

      本件においては,審理の初期の段階から,1回目会合及び4回目会合における被告人Kのアリバイの成否が重要な争点の一つとされ,その関係で,弁護人側から,再三にわたって,各会合の開催日に関する検察官の主張を特定するよう,求釈明の申立てがなされてきた。そして,これを受けて,検察官は,本件の審理の終盤に近い第42回公判において,1回目会合が開かれたのは2月8日であり,4回目会合が開かれたのは3月24日であると釈明するに至っている。本件においては,アリバイの成否との関係で,会合の日時の特定が極めて重要な意味を持つところ,検察官は,そのことを認識し,本件の証拠関係を十分検討した上で,前記のとおり釈明したものと考えられる。

      このような訴訟経過にかんがみれば,検察官の釈明により特定された日以外の日に会合が行われた可能性があることを理由に,アリバイの主張を排斥することは不意打ち認定として許されないというべきであるが,前述した証拠関係からいっても,検察官の釈明により特定された日以外の日に会合が行われた可能性は否定できると考えられる。

   イ 被告人Kが買収会合に参加していた時間帯について

     次に,アリバイの成否を検討する前提として,被告人らの自白に基づき,被告人Kが買収会合の際に被告人A方にいたとされる時間帯を特定することとする。

   (ア)1回目会合について

      まず,1回目会合が始まった時間については,午後7時ころとする供述もあるが,遅くとも午後7時半ころには始まったとされている。また,1回目会合が始まった時点で被告人Kが被告人A方にいたことについては,被告人らの自白の内容が一致しており,被告人Aの警察官調書によれば,1回目会合の際,午後7時半の集合時間より少し前に被告人Kが到着し,その後,私が声をかけた人が集まってきて午後7時半ころから会合が始まったとされている。したがって,1回目会合の開始時間に多少の誤差があり得ることを考慮に入れても,被告人らの自白に基づけば,被告人Kは遅くとも午後7時半には被告人A方に到着していたことになる。

      また,1回目会合の際に被告人Kが被告人A方を出た時間については,午後8時半ころとする供述もあるが,少なくとも,午後8時ころまでは被告人A方にいたとされている。

      以上からすれば,被告人Kが1回目会合の際に被告人A方にいた時間帯は,最も短くみたとしても,午後7時半から午後8時ころまでとなる。

   (イ)4回目会合について

      4回目会合の際も,会合が始まった時点で被告人Kが被告人A方にいたことについては,被告人らの自白の内容が一致している。そして,4回目会合が始まった時間については,午後7時ころないし午後7時過ぎとする供述や,午後7時半過ぎころとする供述もあるが,遅くとも午後8時ころには始まったとされている。

      また,4回目会合の際に被告人Kが被告人A方を出た時間については,午後9時ころということでほぼ一致している。

      以上からすれば,被告人Kが4回目会合の際に被告人A方にいたとされる時間帯は,最も短くみたとしても,午後8時ころから午後9時ころまでとなる。

 (2)1回目会合についてのアリバイ

    被告人Kは,2月8日の自らの行動について,次のとおり供述している。「2月8日午後6時40分ころ,(e)中学校の同窓新年会に出席するため,自ら軽自動車を運転してホテル(f)に行った。午後7時ころから同窓新年会が始まり,自分は,本件選挙に関して皆の前であいさつをした後,出席者らにあいさつをして回った。1時間近く経ったころ,カラオケが始まり,自分も歌った。午後10時ころ,同窓新年会が終了し,同窓生のc(以下「c」という。)とともに,運転代行業者の運転でホテル(f)を出発し,cを家まで送ってから帰宅した。なお,同窓新年会の途中で,ホテル(f)を抜け出したことはない。」(第42回及び第44回公判調書中の被告人Kの供述部分)

    そして,これを裏付ける証拠として,後記アの客観的証拠のほか,第44回公判調書中の証人d及び証人eの各供述部分並びに第43回公判調書中の証人fの供述部分(以下,それぞれ「d供述」,「e供述」及び「f供述」という。)が存在するので,以下,検討する。

   ア 客観的証拠

     まず,2月8日午後7時ころから,ホテル(f)において,(e)中学校昭和36年卒業生同窓新年会が開催されたという事実を裏付けるものとして,ホテル(f)の予約台帳(写し),同窓新年会名簿及び領収証が存在する。これらの証拠は,いずれも客観的なものであり,特に,ホテル(f)の予約台帳(写し)及び領収証については,通常の業務遂行過程において機械的,定型的に作成される書面であるから,恣意的な作為が入る余地に乏しく,その信用性は極めて高いというべきである。

     そして,ホテル(f)の予約台帳(写し)には,日付として「平成15年2月8日」,時間として「7:00」,団体名として「36年卒同窓新年会」,幹事として「d」,「g」との記載がある。また,同窓新年会名簿には,タイトルとして「(e)中学校三十六年卒業生同窓新年会」,日時として「平成15年2月8日午後7時」,会場として「ホテル(f)」,同窓会代表として「d,g」との記載があるほか,参加予定者として,被告人Kの氏名が記載されている。さらに,領収書は,ホテル(f)が発行したものであるが,これには,「15年2月8日」,「36年卒同窓会様」との記載がある。このように,これらの証拠の記載内容は,相互によく符合し,何らの矛盾も認められない。

     以上からすれば,2月8日午後7時ころから,ホテル(f)において,(e)中学校昭和36年卒業生同窓新年会が開催されたことは揺るがす余地がなく,また,被告人Kがこれに参加したことが十分にうかがえる。

訴因変更義務に関する最高裁昭和58年判決

刑事訴訟法判例ノート 刑事訴訟法判例百選10版 47事件

公務執行妨害、傷害、同致死被告事件

最高裁判所第3小法廷判決/昭和55年(あ)第629号

昭和58年9月6日

【判示事項】       訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務がないとされた事例

【判決要旨】       第1審において被告人らが無罪とされた公訴事実が警察官1名に対する傷害致死を含む重大な罪にかかるものであり、また、同事実に関する現場共謀の訴因を事前共謀に変更することにより同事実につき被告人らに対し共謀共同正犯として罪責を問いうる余地がある場合であつても、検察官が、約8年半に及ぶ第1審の審理の全過程を通じ一貫して右公訴事実はいわゆる現場共謀に基づく犯行であつて右現場共謀に先立つ事前共謀に基づく犯行とは別個のものであるとの主張をしていたのみならず、審理の最終段階における裁判長の求釈明に対しても従前の主張を変更する意志はない旨明確かつ断定的な釈明をしていたこと、第1審における被告人らの防禦活動は検察官の右主張を前提としてなされたことなど判示の事情があるときは、第1審裁判所としては、検察官に対し右のような求釈明によつて事実上訴因変更を促したことによりその訴訟法上の義務を尽くしたものというべきであり、さらに進んで、検察官に対し、訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務を有するものではない。

【参照条文】       刑事訴訟法312

             刑事訴訟規則208

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集37巻7号930頁

             最高裁判所裁判集刑事232号19頁

             裁判所時報871号2頁

             判例タイムズ512号88頁

             判例時報1097号11頁

【評釈論文】       ジュリスト臨時増刊815号175頁

             別冊ジュリスト89号100頁

             別冊ジュリスト119号96頁

             判例評論304号201頁

             法学新報92巻5~6号281頁

             法曹時報38巻7号217頁

             法律時報56巻3号132頁

 

       主   文

 

 原判決を破棄する。

 本件を東京高等裁判所に差し戻す。

 

       理   由

 

 弁護人後藤昌次郎、同兼田俊男、同平賀睦夫、同安岡清夫、同伊藤まゆ、同田賀秀一の上告趣意のうち、最高裁昭和三〇年(あ)第三三七六号同三三年五月二〇日第三小法廷判決・刑集一二巻七号一四一六頁及び昭和四二年(あ)第一一九二号同四三年一一月二六日第三小法廷決定・刑集二二巻一二号一三五二頁を引用して判例違反をいう点は、原判決はなんら所論引用の各判例と相反するものではないから、所論は理由がなく、最高裁昭和三七年(あ)第三〇一一号同四〇年四月二八日大法廷判決・刑集一九巻三号二七〇頁を引用して判例違反をいう点は、所論引用の判例は所論の点につきなんら判断を示していないから、所論は前提を欠き、最高裁昭和四五年(あ)第一七〇〇号同四七年一二月二〇日大法廷判決・刑集二六巻一〇号六三一頁を引用して判例違反をいう点は、所論引用の判例は本件と事案を異にして適切でなく、憲法三七条一項の迅速な裁判の保障条項違反をいう点は、記録を検討しても、本件において右保障条項に反する異常な事態が生じているとは認められないうえ、本件第一審判決を破棄し事件を東京地方裁判所に差し戻すべきものとした原判決が右の異常な事態をもたらすべきものとも認められないから、所論は前提を欠き、その余は、憲法三一条、三三条、三七条一項、三九条違反をいう点を含め、すべてその実質は単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

 しかしながら、所論にかんがみ職権をもつて調査すると、原判決は以下に述べる理由により破棄を免れない。

 記録により明らかな本件審理の経過は次のとおりである。

 被告人Aは、「(一)被告人は、昭和四三年九月二日東京地方裁判所民事第九部が債権者学校法人B大学の申請により行つた、債務者たるB大学全学共斗会議、B大学経済学部斗争委員会等所属の学生らに占拠されていた東京都千代田区a町b丁目c番所在同大学経済学部一号館等につき、債務者らの右建物等に対する占有を解いて債権者の申立をうけた東京地方裁判所執行官にその保管を命じ、執行官は債権者にその使用を許さなければならない等四項目の仮処分決定に基づき、同月四日、同地方裁判所執行官C外三名及び同職務代行者Dが、民事訴訟法第五三六条第二項の規定により援助を要請した警視庁機動隊所属の警視Eら約六七〇名の警察官の援助のもとに、補助者F外七名を使用して前記経済学部一号館に対する右仮処分の執行を行つた際、同建物を占拠していたほか数十名の学生らと共謀のうえ、同日午前五時二〇分ころから同六時一五分ころまでの間、右経済学部一号館周辺において前記各職務に従事中の執行官及び警察官らに対し、同建物内二階ベランダ、三・四階窓及び五階屋上等から石塊、コンクリート破片、牛乳空びん、椅子等を投げつけ、あるいは放水するなどして暴行を加え、もつて右執行官及び警察官らの前記各職務の執行を妨害した(本判決においては、以下、甲事実という。)、(二)被告人は、昭和四三年九月四日早朝、さきにB大学の申請により東京地方裁判所民事第九部がなした前記仮処分決定の執行のため同大学経済学部一号館に赴いた同地方裁判所執行官一行のうち、Fらが同館北側一階エレベーターホール窓から右仮処分の執行を開始した際、右執行官よりの援助要請に基づき出動中の警視庁第五機動隊長警視G指揮下の同機動隊第四・三・二中隊所属の警察官約一三〇名が、右執行を援助するため同館北側幅約八〇糎の路地内から右一階エレベーターホール窓を破壊して同館内に進入しつつあるのを認めるや、同館五階北側窓付近に来合わせたほか数名の学生らと共謀のうえ、前記警察官らの右職務の執行を妨害しようと企て、同日午前五時三〇分ころから同五時五〇分過ぎころまでの間、同館五階エレベーターホール北側窓から、かねて同所付近に準備してあつた重さ数キログラムから一〇数キログラムに及ぶレンガ・コンクリート塊、コンクリートブロツク塊等数十個を、同館内に逐次進入するため右路地内に密集していた前記警察官らめがけて激しく投下し、もつて前記警察官らの職務の執行を妨害し、その際、同機動隊巡査Hら一八名に対し、加療約一週間乃至一〇か月間を要する(ただしIについては完治不能)頸椎骨折・同捻挫等の傷害を負わせ、巡査部長J(当時三四年)に対しては左前頭部頭蓋骨骨折・脳挫傷の傷害を負わせたうえ、同人をして同月二九日午前一一時ころ同区a丁目b番c号K病院において、右傷害に基づく外傷性脳機能障害により死亡するに至らしめた(本判決においては、以下、乙事実という。)」との二個の事実について、被告人Aを除くその余の被告人五名(被告人L、同M―旧姓N―、同O、同P及び同Q)は、右乙事実のみについて、それぞれ公訴を提起されたものである。

 ところで、右乙事実に関する訴因がいわゆる現場共謀に基づく犯行の趣旨であることは起訴状における公訴事実の記載から明らかであるうえ、検察官は、第一審審理の冒頭において、右訴因が現場共謀による実行正犯の趣旨である旨及び乙事実は甲事実とは別個の犯罪である旨の釈明をし、その後約八年半に及ぶ審理の全過程を通じて右主張を維持したので、乙事実に関する第一審における当事者の攻撃防禦は、検察官の右主張を前提とし、その犯行の現場に被告人らがいたかどうかの事実問題を中心として行われた。

 第一審裁判所は、審理の最終段階において、被告人M、同Qの両名については、乙事実の被害者である警察官一九名が負傷した時間帯である昭和四三年九月四日午前五時三〇分ころから五時四五分ころまでの間に同事実の犯行現場である五階エレベーターホールにいて犯行に加担したと認めるに足る証拠がなく、また、その余の被告人らについては、同日午前五時四〇分以前に右現場にいて犯行に加担したと認めるに足る証拠がないとの心証に達し、前記訴因を前提とする限り被告人らを無罪又は一部無罪とするほかないものの、乙事実の訴因を右現場共謀に先立つ事前共謀に基づく犯行の訴因に変更するならばこれらの点についても犯罪の成立を肯定する余地がありうると考えて、裁判長から検察官に対し、第五四回公判において、甲・乙両事実の関係及び乙事実の共謀の時期・場所に関する検察官の従前の主張を変更する意思はないかとの求釈明をしたところ、検察官がその意思はない旨明確かつ断定的な釈明をしたので、第一審裁判所は、それ以上進んで検察官に対し訴因変更を命じたり積極的にこれを促したりすることなく、現場共謀に基づく犯行の訴因の範囲内において被告人らの罪責を判断し、被告人M、同Qに対しては乙事実について無罪の、その余の被告人らに対しては前記五時四〇分過ぎ以降に生じた傷害、公務執行妨害についてのみ有罪(ただし、被告人Aに対しては甲事実についても有罪)の各言渡しをした。

 これに対し、原判決は、被告人Aを除くその余の被告人らに対する関係では、乙事実の訴因につき訴因変更の手続を経ることなく事前共謀に基づく犯行を認定してその罪責を問うことは許されないものの、本件においては、右訴因変更をしさえすれば右被告人らに対し第一審において無罪とされた部分についても共謀共同正犯としての罪責を問いうることが証拠上明らかであり、しかも右無罪とされた部分は警察官一名に対する傷害致死を含む重大な犯罪にかかるものであるから、第一審裁判所としては、検察官に対し、訴因変更の意思があるか否かの意向を打診するにとどまらず、進んで訴因変更を命じ、あるいは少なくともこれを積極的に促すべき義務があつたとし、右義務を尽くさず、右被告人らについて乙事実又はその一部を無罪とした第一審の訴訟手続には審理を尽くさなかつた違法があるとして、右被告人らに関する第一審判決を破棄し、被告人Aに対する関係では、同被告人については事前共謀に基づく一連の抵抗行為のすべてが訴因とされているとみるべきであるから、同被告人は、右抵抗行為中に含まれる乙事実につき仮にその実行行為の一部に加わつていなかつたとしても共謀共同正犯としての責任を免れないとし、第一審判決が同被告人の事前共謀に基づく本件建物における一連の犯行を認めながら乙事実の一部を有罪としなかつたのは共同正犯に関する刑法六〇条の解釈ないし適用を誤つた違法があるとして、同被告人に関する第一審判決を破棄し、全被告人につき事件を東京地方裁判所に差し戻す旨の判決を言い渡したものである。

 思うに、まず、被告人Aを除くその余の被告人らに対する関係では、前記のような審理の経過にかんがみ、乙事実の現場共謀に基づく犯行の訴因につき事前共謀に基づく犯行を認定するには訴因変更の手続が必要であるとした原判断は相当である。そこで、進んで、第一審裁判所には検察官に対し訴因変更を命ずる等の原判示の義務があつたか否かの点につき検討すると、第一審において右被告人らが無罪とされた乙事実又はその一部が警察官一名に対する傷害致死を含む重大な罪にかかるものであり、また、同事実に関する現場共謀の訴因を事前共謀の訴因に変更することにより右被告人らに対し右無罪とされた事実について共謀共同正犯としての罪責を問いうる余地のあることは原判示のとおりであるにしても、記録に現われた前示の経緯、とくに、本件においては、検察官は、約八年半に及ぶ第一審の審理の全過程を通じ一貫して乙事実はいわゆる現場共謀に基づく犯行であつて事前共謀に基づく甲事実の犯行とは別個のものであるとの主張をしていたのみならず、審理の最終段階における裁判長の求釈明に対しても従前の主張を変更する意思はない旨明確かつ断定的な釈明をしていたこと、第一審における右被告人らの防禦活動は右検察官の主張を前提としてなされたことなどのほか、本件においては、乙事実の犯行の現場にいたことの証拠がない者に対しては、甲事実における主謀者と目される者を含め、いずれも乙事実につき公訴を提起されておらず、右被告人らに対してのみ乙事実全部につき共謀共同正犯としての罪責を問うときは右被告人らと他の者との間で著しい処分上の不均衡が生ずることが明らかであること、本件事案の性質・内容及び右被告人らの本件犯行への関与の程度など記録上明らかな諸般の事情に照らして考察すると、第一審裁判所としては、検察官に対し前記のような求釈明によつて事実上訴因変更を促したことによりその訴訟法上の義務を尽くしたものというべきであり、さらに進んで、検察官に対し、訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すなどの措置に出るまでの義務を有するものではないと解するのが相当である。

 そうすると、これと異り、第一審裁判所に右のような訴因変更を命じ又はこれを積極的に促す義務があることを前提として第一審の訴訟手続には審理を尽くさなかつた違法があると認めた原判決には、訴因変更命令義務に関する法律の解釈適用を誤つた違法があるというべきであり、右違法は判決に影響を及ぼし、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。

 次に、被告人Aに対する関係では、乙事実の訴因は、その余の被告人らの場合と同じく現場共謀に基づく犯行の訴因であり、甲事実の訴因は、右乙事実の訴因とされている犯行部分を除くその余の部分に関する、右現場共謀に先立つ事前共謀に基づく犯行の訴因であるところ(なお、乙事実の訴因とされている犯行部分が右事前共謀に基づくものとして予備的ないし択一的関係において主張されているという事実は認められない。)、右乙事実の訴因につき右事前共謀に基づく犯行を認定する場合に訴因変更の手続を必要とすることはその余の被告人らの場合と同様であつて、右訴因変更手続を経ない限り、乙事実の訴因中被告人Aが同事実の犯行現場である本件五階エレベーターホールにいて犯行に加担したと認めるに足る証拠のない部分について事前共謀に基づく罪責を認めることは許されないと解されるから、右訴因変更手続を経ないまま、同被告人につき事前共謀に基づく一連の抵抗行為のすべてが訴因とされていることを前提として第一審判決には共同正犯に関する刑法六〇条の解釈ないし適用を誤つた違法があると認めた原判決には、訴因の範囲に関する判断を誤つた違法があるというべきであり、右違法は判決に影響を及ぼし、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。

 よつて、刑訴法四一一条一号により、全被告人に関する原判決を破棄し、さらに審理を尽くさせるため、同法四一三条本文により、本件を原裁判所である東京高等裁判所に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 検察官 俵谷利幸 公判出席

  昭和五八年九月六日

     最高裁判所第三小法廷

         裁判長裁判官    安   岡   滿   彦

            裁判官    横   井   大   三

            裁判官    伊   藤   正   己

            裁判官    木 戸 口   久   治

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