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2025年02月

井嶋一友裁判長名判決 相続財産法人の法的地位に関する最高裁平成11年

民法判例百選Ⅲ56事件 第2版 56事件            根抵当権設定仮登記本登記手続請求事件

破産財団の法的地位があたまにはいっているひとなら難しくない論点です。

最高裁判所第1小法廷判決/平成10年(受)第5号

平成11年1月21日

【判示事項】      被相続人から抵当権の設定を受けた相続債権者が相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求することの可否

【判決要旨】      相続債権者は、被相続人から抵当権の設定を受けていても、被相続人の死亡前に仮登記がされていた場合を除き、相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求することができない。

【参照条文】      民法929

            民法951

            民法957

【掲載誌】       最高裁判所民事判例集53巻1号128頁

            家庭裁判月報51巻6号47頁

            最高裁判所裁判集民事191号197頁

            裁判所時報1236号22頁

            判例タイムズ994号117頁

            金融・商事判例1064号15頁

            判例時報1665号58頁

            金融法務事情1542号55頁

【評釈論文】      ジュリスト1161号177頁

            別冊ジュリスト162号110頁

            判例タイムズ994号117頁

            判例タイムズ臨時増刊1036号194頁

            法学教室227号104頁

            法曹時報52巻2号322頁

            民商法雑誌121巻4~5号594頁

            NBL696号64頁

 

       主   文

 

 原判決を破棄する。

 被上告人の控訴を棄却する。

 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告人の上告受理申立て理由について

 一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。

 1 亡Dは、平成元年九月二五日、被上告人に対する四億円の債務を担保するため、原判決別紙物件目録記載の不動産に、極度額四億四〇〇〇万円の根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)を設定したが、その設定登記手続はされなかった。

 2 Dは、平成七年一月三〇日に死亡した。

 3 被上告人は、本件根抵当権について、仮登記を命ずる仮処分命令を得て、平成七年三月二〇日、平成元年九月二五日設定を原因とする根抵当権設定仮登記(以下「本件仮登記」という。)を了した。

 4 その後、Dの法定相続人全員が相続の放棄をし、平成八年四月一五日、被上告人の申立てにより、Aが亡D相続財産(上告人)の相続財産管理人に選任された。

 二 本件は、被上告人が、本件根抵当権につき、上告人に対し、本件仮登記に基づく本登記手続を請求するものである。原審は、大要次のように判示して、被上告人の請求を棄却した第一審判決を取り消し、被上告人の請求を認容した。

 相続財産法人は、被相続人の権利義務を承継した相続人と同様の地位にあるから、被上告人と亡Dとの間に根抵当権設定契約がされている以上、被上告人の請求には理由がある。民法九五七条二項において準用する九二九条ただし書の「優先権を有する債権者」とは相続開始時までに対抗要件を備えている債権者を指すと解すべきであるから、これに当たらない被上告人が登記手続を求める実益はないといえなくもないが、実益がないというのも、飽くまで相続財産法人が存続し、右ただし書が適用される限りにおいてのことにすぎないばかりでなく、抵当権者が抵当権設定者に対して設定登記手続を請求する権利の実現を図ることができるのは当然のことである。

 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

 1 相続人が存在しない場合(法定相続人の全員が相続の放棄をした場合を含む。)には、利害関係人等の請求によって選任される相続財産の管理人が相続財産の清算を行う。管理人は、債権申出期間の公告をした上で(民法九五七条一項)、相続財産をもって、各相続債権者に、その債権額の割合に応じて弁済をしなければならない(同条二項において準用する九二九条本文)。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することができない(同条ただし書)。この「優先権を有する債権者の権利」に当たるというためには、対抗要件を必要とする権利については、被相続人の死亡の時までに対抗要件を具備していることを要すると解するのが相当である。相続債権者間の優劣は、相続開始の時点である被相続人の死亡の時を基準として決するのが当然だからである。この理は、所論の引用する判例(大審院昭和一三年(オ)第二三八五号同一四年一二月二一日判決・民集一八巻一六二一頁)が、限定承認がされた場合について、現在の民法九二九条に相当する旧民法一〇三一条の解釈として判示するところであって、相続人が存在しない場合についてこれと別異に解すべき根拠を見いだすことができない。

 したがって、相続人が存在しない場合には(限定承認がされた場合も同じ。)、相続債権者は、被相続人からその生前に抵当権の設定を受けていたとしても、被相続人の死亡の時点において設定登記がされていなければ、他の相続債権者及び受遺者に対して抵当権に基づく優先権を対抗することができないし、被相続人の死亡後に設定登記がされたとしても、これによって優先権を取得することはない(被相続人の死亡前にされた抵当権設定の仮登記に基づいて被相続人の死亡後に本登記がされた場合を除く。)。

 2 相続財産の管理人は、すべての相続債権者及び受遺者のために法律に従って弁済を行うのであるから、弁済に際して、他の相続債権者及び受遺者に対して対抗することができない抵当権の優先権を承認することは許されない。そして、優先権の承認されない抵当権の設定登記がされると、そのことがその相続財産の換価(民法九五七条二項において準用する九三二条本文)をするのに障害となり、管理人による相続財産の清算に著しい支障を来すことが明らかである。したがって、管理人は、被相続人から抵当権の設定を受けた者からの設定登記手続請求を拒絶することができるし、また、これを拒絶する義務を他の相続債権者及び受遺者に対して負うものというべきである。

 以上の理由により、相続債権者は、被相続人から抵当権の設定を受けていても、被相続人の死亡前に仮登記がされていた場合を除き、相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求することができないと解するのが相当である。限定承認がされた場合における限定承認者に対する設定登記手続請求も、これと同様である(前掲大審院判例を参照)。なお、原判決の引用する判例(最高裁昭和二七年(オ)第五一九号同二九年九月一〇日第二小法廷判決・裁判集民事一五号五一三頁)は、本件の問題とは事案を異にし、右に説示したところと抵触するものではない。

 3 したがって、被上告人には、本件根抵当権につき、上告人に対し、本件仮登記に基づく本登記手続を請求する権利がないものというべきである。

 四 以上のとおりであるから、被上告人の請求を認容すべきものとした原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、原審の確定した事実によれば、被上告人の請求を棄却した第一審判決は正当として是認すべきものであって、被上告人の控訴を棄却すべきである。

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第一小法廷

        裁判長裁判官  井嶋一友

           裁判官  小野幹雄

           裁判官  遠藤光男

           裁判官  藤井正雄

           裁判官  大出峻郎

** [ニュース] 交通部:台湾鉄道の値上げを承認、 2月末ごろ行政院に提出か 
(https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101344)
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(写真:Rti)
台湾の在来線・台湾鉄道の運賃は30年間据え置かれてきたが、値上がりする可能
性が出ている。交通部(日本の国土交通省に類似)運賃審査委員会は21日に開い
た初会合で、平均26.8%の運賃値上げ案を承認した。この案は早ければ2月末ま
でに行政院(内閣)に提出され、承認を得られる予定だ。 ......more (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101344)




** [ニュース] 中国が事前通告なく射撃訓練範囲を公表、総統府が非難 (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101343)
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中国が26日、予告なしに台湾南西海域で「射撃訓練」を行うと発表したことにつ
いて、総統府は27日、非難の声明を発表した。(写真:総統府)
中国人民開放軍が26日、事前予告なしに台湾南部・高雄市と屏東県から約40海里
の海域に演習エリアを設け、「射撃訓練」を行うことを発表しました。これにつ
いて総統府の郭雅慧・報道官は27日、声明を発表し、「台湾海峡とインド太平洋
地域の平和と安定は、国際社会の最大のコンセンサスであり、世界共通の核心的
利益に関わるものである。しかし、中国はこの地域の一員として、連日、ベトナ
ム、フィリピン、ニュージーランドやオーストラリア沖など各国の国際水域で一
方的な威嚇・撹乱行為を行うとともに、また警告なしに演習水域を設定している
。これは地域の安全保障を破壊する、挑発行為であり、......more (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101343)




** [ニュース] リトアニア議員団が台湾訪問 林・外交部長:無人機産業での協
力を深化 (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101342)
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外交部の林佳龍・部長は26日、台湾訪問中のリトアニア議会訪問団と会談、今後
も各分野での協力を強化すると発表した。(写真:外交部)
外交部(日本の外務省に相当)の林佳龍・部長(外相)は26日、台湾を訪問中の
リトアニア議会国家安全保障・国防委員会のイェグリンスカス(Giedrimas 
Jeglinskas)委員長の表敬訪問を受け、双方は、ロシア・ウクライナ戦争の現状
、台湾とリトアニアの国防産業協力、及び、権威主義の拡大に対抗するため同じ
理念を持つ国々と協力することなどについて意見交換しました。林・外交部長は
、「現在国際情勢は急速に変化しており、台湾とヨーロッパの安全保障は密接な
関係にある。 台湾は民主主義陣営の結束を示すため、防衛産業、ドローン、そ
の他様々な分野で協力を深化させると共に......more (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101342)




** [ニュース] 欧州議会訪問団が今年初訪台、団長:協力を強化し民主を守ろう
 (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101341)
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外交部の呉志中・政務次長が26日、今年初めて台湾を訪問する欧州議会議員団の
表敬訪問を受けた。(写真:外交部)
外交部(日本の外務省に相当)の呉志中・政務次長(副大臣)が26日、台湾を訪
問中の欧州議会超党派議員訪問団一行の表敬訪問を受けました。一行は、今年初
めて台湾を訪問した、党派を超えた欧州議会の議員から成るものです。双方は、
世界の地政学的政治情勢、民主主義国によるサプライチェーンの強靭性向上、及
び台湾とヨーロッパ連合(EU)の間における協力などについて突っ込んだ意見交
換を行いましたた。呉・政務次長は、欧州議会が長年にわたり民主的な台湾を支
持してきたことに謝意を表明し、「近年、台湾とヨーロッパの関係は、頻繁な二
国間訪問や投資により、著しく強化されている。 双方は......more (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101341)




** [ニュース] 蕭・副総統:まさかの時の友こそ真の友、台日がインド太平洋地
域の平和維持で連携 (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101335)
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日本の在台湾大使館に相当する、日本台湾交流協会が26日夜、北部・台北市内の
ホテルで「天皇誕生日祝賀レセプション」を開催、蕭美琴・副総統が招かれて出
席しました。蕭・副総統はあいさつの中で、「まさかの時の友こそ真の友」とい
うことわざで台湾と日本の関係を形容するとともに、台湾はこれからも引き続き
自己防衛力を強化し、日本などの理念の近い国々と手を取り合い、共にインド太
平洋地域の自由、平和、安定、繁栄を守っていくと述べました。(写真:総統府
flickr)
日本の在台湾大使館に相当する、日本台湾交流協会が26日夜、北部・台北市内の
ホテルで「天皇誕生日祝賀レセプション」を開催、蕭美琴・副総統が招かれて出
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ションには蕭・副総統のほか、立法院(国会)の韓国瑜・院長(議長)、国家安
全会議の呉釗燮・秘書長、国防部(防衛省)の顧立雄・部......more (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101335)




** [ニュース] 予告なしに演習エリアを設定、外交部が国際社会に共に中国を譴
責するよう呼びかけ (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101340)
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中国が26日予告なしに台湾南部の高雄と屏東から約40カイリの海域に演習エリア
を設け、「射撃訓練」を行うことを発表しました。これについて台湾の国防部は
26日、厳しく非難するとともに、海軍、空軍、陸軍、および沿岸部に駐屯してい
る部隊を通して対応していると発表。外交部も27日、中国の行為を厳しく非難す
るとともに、国際社会に対して引き続き台湾海峡と地域の安全保障に関心を寄せ
、地域の平和と安定を再三破壊する中国の悪質な行為を共に譴責するよう呼びか
けました。(写真:Rti)
中国が26日予告なしに台湾南部の高雄と屏東から約40カイリの海域に演習エリア
を設け、「射撃訓練」を行うことを発表しました。これについて台湾の国防部は
26日、厳しく非難するとともに、海軍、空軍、陸軍、および沿岸部に駐屯してい
る部隊を通して対応していると発表しました。交通部航港局もニュースリリース
を発表し、船舶に対して当該海域から離れるよう注意を呼びかけました。外交部
も27日、中国の行為を厳しく非難するとともに、国際社会に対して引き続き台湾
海峡と地域の安全保障に関心を寄せ、地域の平和と安定を再三破壊する中国の悪
質な行為を共に譴責するよう呼びかけました。外交部......more (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101340)




** [ニュース] 台湾の航空6社が3/1より機内でのモバイルバッテリー使用を禁止
 (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101339)
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台湾の大手航空会社である、エバー航空が25日に、3月1日から機内でのモバイル
バッテリーの使用を全行程において禁止すると発表したのに続き、大手航空会社
の中華航空(チャイナエアライン)も26日に同様の措置を実施すると発表。もと
もと機内でのモバイルバッテリーの使用を禁止しているスターラックス航空と台
湾の格安航空会社、タイガーエア台湾を加え、3月1日から台湾の航空6社はすべ
て機内でのモバイルバッテリーの使用を禁止することになります。(写真:
Freepik)
台湾の大手航空会社である、エバー航空が25日に、3月1日から機内でのモバイル
バッテリーの使用を全行程において禁止すると発表したのに続き、大手航空会社
の中華航空(チャイナエアライン)も26日に同様の措置を実施すると発表しまし
た。もともと機内でのモバイルバッテリーの使用を禁止しているスターラックス
航空と台湾の格安航空会社、タイガーエア台湾を加え、3月1日から台湾の航空6
社はすべて機内でのモバイルバッテリーの使用を禁止することになります。リチ
ウムイオン電池も禁止の対象に含まれます。これは、今年1月28日に韓国の釜山
で発生したエアプサンの旅客機火災事故を受けての......more (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101339)




** [ニュース] 旧正月に日・韓を旅する台湾人が多く、山口と新潟が人気高まる
 (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101338)
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クレジットカード大手のVisaカードが26日、2025年の旧正月期間中における消費
調査の結果を発表しました。それによりますと、日本と韓国は今年も台湾の旅客
が最も好きな旅行先となっています。一方、台湾人旅行客の旅行先は、東京や大
阪などこれまでの人気旅行先から日本本州の山口県と新潟県などに広っているこ
とが分かりました。(写真:freepik)
新型コロナウイルス感染症が落ち着き、海外旅行が再開された後、旧正月の連休
を利用して海外旅行する台湾人が激増。クレジットカード大手のVisaカードが26
日、2025年の旧正月期間中における消費調査の結果を発表しました。それにより
ますと、日本と韓国は今年も台湾の旅客が最も好きな旅行先となっています。こ
の二か国における消費金額の合計は、台湾人旅行客の海外での消費金額の5割を
超えています。一方、台湾人旅行客の旅行先は、東京や大阪など、これまでの人
気旅行先から日本本州の山口県と新潟県などに広っていることが分かりました。
山と海の景色の美しさで知られる山口県における台......more (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101338)




** [ニュース] 2/27は曇り時々雨、南部は26℃の高温 (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101336)
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2/27は曇り時々雨、南部は26℃の高温(写真:CNA)
27日、中国の華南地方の雨雲が引き続き東に移動し、台湾各地は曇りの天気にな
り、中部以北、台湾の東側、および離島の澎湖、金門、馬祖では散発的な短時間
の雨が降る見込みです。朝晩はやや涼しいです。各地の最低気温は14度から17度
、最高気温は20度から24度の予想です。南部の一部の地区では25度か26度の高温
になる可能性があります。離島の澎湖は終日15度から18度、金門は13度から18度
、馬祖は10度から14度の予想です。(編集:王淑卿/本村大資)......more (https://jp.rti.org.tw/news/view/id/101336)

日経平均株価 終値3万7155円(前日比-1100円) 今年最大の下落幅に(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース

【ネットの反応】「なでしこ」の快挙にアジアが衝撃!! 「本当にうらやましい!」SheBelieves Cupで世界1位のアメリカ女子撃破で! - YouTube


必要経費の証明責任 広島地裁平成19年

青栁 証明責任ⅡⅢ掲載  所得税更正処分等取消請求事件

              広島地方裁判所判決/平成16年(行ウ)第23号

              平成19年5月9日

【判示事項】      (1) 組合契約の成立要件

            (2) 本件事業は納税者の単独事業であるとの課税庁の主張が、本件事業を営むに当たっては、納税者とその兄との間で、組合もしくはそれに類似した契約関係の規律に従って、納税者とその兄との共同経営の形態でこれを営むとの合意があり、実際に本件事業は納税者とその兄との共同経営により営まれていたと認めることができるとして排斥された事例

            (3) 本件事業が納税者とその兄との共同事業であって、その出資割合が各2分の1であることからすれば、本件事業による収益等は、納税者とその兄に各2分の1ずつ帰属すると解すべきであって、納税者に賦課されるべき所得税及び消費税の額の計算においては、本件事業の収益等は、その2分の1が納税者に帰属するものとして計算されなければならないとされた事例。

            (4) 必要経費の立証責任

            (5) 課税処分取消訴訟において、納税者が積極的に必要経費を主張立証しないときには、当該経費の不存在について事実上の推定が働くという点は、常に無罪の推定を働かせ、合理的な疑いを超えない限り被告人に有利に解するとされる厳格な刑事事件手続とは大きく異なるところであるとされた事例

           (6) 簿外仕入れの金額を追加して認定すべきであるとの納税者の主張が、課税庁において、具体的証拠に基づき一定額の経費の存在を明らかにし、これが収入との対応上も特段の不自然さが認められないものであるから、これを超える額の必要経費は存在しないものと事実上推定されるものというべきであり、納税者において、これを越える経費の具体的内容を明らかにして、ある程度それを合理的に裏付ける程度の立証をしなければ、この推定を覆すことはできないというべきであるとして排斥された事例

            (7) 年間の接待交際費が1200万円になるように簿外の接待交際費を認定すべきであるとの納税者の主張が、納税者は本件事業における収支について、少なくとも概括的な認識は有していたと認められるところ、本来納税者に有利な経費であるはずの、しかも相当多額の接待交際費について領収書を全く貰わず、またそれを帳簿に記載しないということはおよそあり得ないと考えられ、この点に関する原告の供述は信用することができないし、また、そのほか本件各年度の年間の接待交際費が1200万円であったことを認めるに足りる的確な証拠はないとして排斥された事例

【判決要旨】      (1) 組合契約とは、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって効力を生ずる契約であって(民法667条(組合契約)1項)、その成立には、二人以上の当事者の間で、各当事者において出資をして、共同の事業を営むことについて意思の合致があることが必要である。そして、「共同の事業を営む」というためには、各当事者が自ら利害関係をもって一定の事業を営むこと、及び、各当事者が当該組合の事業の遂行に関与しうる権利を持つことが、合意の内容とされることを要する。そして、組合契約が成立するために必要な「事業の遂行に関与しうる権利」とは、少なくとも、業務の執行を監督する権限を含んでいなければならない。

            (2)・(3) 省略

            (4) 必要経費については課税庁において証明責任を負うのが原則であるが、一般的に必要経費は納税者にとって有利な事柄であり、しかも納税者の支配領域内の出来事であり、これを認識しまた証拠資料を整えておくことは困難ではないから、その主張立証は、通常の場合納税者の方が課税庁に比べてはるかに容易なはずである。したがって、これを納税者が積極的に主張立証しないときには、当該経費の不存在について事実上の推定が働くものというべきである。

            (5)~(7) 省略

【掲載誌】       税務訴訟資料257号順号10707

 

       主   文

 

 1 被告が平成10年3月9日付けでした原告の平成5年分所得税の更正処分のうち、所得税額655万5500円を超える部分を取り消す。

 2 被告が平成10年3月9日付けでした原告の平成6年分所得税の更正処分のうち、所得税額1805万2100円を超える部分を取り消す。

 3 被告が平成10年3月9日付けでした原告の平成7年分所得税の更正処分のうち、所得税額961万7100円を超える部分を取り消す。

 4 被告が平成10年3月9日付けでした原告に対する平成5年分所得税の重加算税賦課決定処分のうち、219万8000円を超える部分を取り消す。

 5 被告が平成10年3月9日付けでした原告に対する平成6年分所得税の重加算税賦課決定処分のうち、622万6500円を超える部分を取り消す。

 6 被告が平成10年3月9日付けでした原告に対する平成7年分所得税の重加算税賦課決定処分のうち、328万6500円を超える部分を取り消す。

 7 被告が平成10年3月9日付けでした原告の平成5年1月1日から同年12月31日までの課税期間の消費税の更正処分を取り消す。

 8 被告が平成10年3月9日付けでした原告の平成6年1月1日から同年12月31日までの課税期間の消費税の更正処分のうち、消費税額301万0300円を超える部分を取り消す。

 9 被告が平成10年3月9日付けでした原告の平成7年1月1日から同年12月31日までの課税期間の消費税の更正処分を取り消す。

 10 被告が平成10年3月9日付けでした原告の平成5年1月1日から同年12月31日までの課税期間の消費税の重加算税賦課決定処分を取り消す。

 11 被告が平成10年3月9日付けでした原告の平成6年1月1日から同年12月31日までの課税期間の消費税の重加算税賦課決定処分のうち、19万2500円を超える部分を取り消す。

 12 被告が平成10年3月9日付けでした原告の平成7年1月1日から同年12月31日までの課税期間の消費税の重加算税賦課決定処分を取り消す。

 13 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

 14 訴訟費用は、これを2分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

  1 被告が平成10年3月9日付けでなした原告の平成5年分、平成6年分及び平成7年分の所得税の各更正処分のうち、

    (1) 平成5年分につき、総所得金額410万9333円、申告納税額11万8700円をそれぞれ超える部分(甲1別表1)

    (2) 平成6年分につき、総所得金額422万2957円、申告納税額12万7900円をそれぞれ超える部分(甲1別表1)

    (3) 平成7年分につき、総所得金額439万6466円、申告納税額11万9500円をそれぞれ超える部分(甲1別表1)

      並びに被告が前同日付けでなした原告に対する上記各年度分の所得税についての重加算税賦課決定処分を、いずれも取り消す。

  2 被告が平成10年3月9日付けでなした原告の平成5年1月1日から平成5年12月31日まで、平成6年1月1日から平成6年12月31日まで及び平成7年1月1日から平成7年12月31日までの各課税期間の消費税の各更正処分のうち、

    (1) 平成5年1月1日から平成5年12月31日までの課税期間につき、課税標準額1億2359万4000円、申告納税額248万9100円をそれぞれ超える部分(甲1別表2)

    (2) 平成6年1月1日から平成6年12月31日までの課税期間につき、課税標準額1億2141万1000円、申告納税額246万0300円をそれぞれ超える部分(甲1別表2)

    (3) 平成7年1月1日から平成7年12月31日までの課税期間につき、課税標準額1億4863万1000円、申告納税額343万8900円をそれぞれ超える部分(甲1別表2)

      並びに被告が前同日付けでなした原告に対する上記各期間分の消費税についての重加算税賦課決定処分を、いずれも取り消す。

第2 事案の概要

   本件は、原告が被告に対して、被告が原告に対して平成10年3月9日に行った、平成5年分ないし同7年分の所得税及び消費税の更正処分並びに重加算税賦課決定処分について、原告の事業は原告の単独事業ではなく原告の兄との共同事業であるなどと主張して、その取消しを請求している事案である。

  1 争いのない事実等

    (1) 当事者等

      原告(昭和23年3月24日生)は、Aの屋号で牡蠣養殖販売業(以下「本件事業」という。)を営む白色申告事業主である(ただし、その事業が単独事業か乙との共同事業かについては争いがある。)。

      丙(以下「丙」という。)は昭和45年に原告と結婚し、平成5年から8年当時の原告の妻であり、乙(以下「乙」という。昭和13年9月1日生)は原告の兄である。

    (2) 所得税の申告と更正処分

     ア 原告は、被告に対し、法定申告期限までに、平成5年分の総所得金額を410万9333円、申告納税額を11万8700円として確定申告をしたところ、被告は、平成10年3月9日付けで、それぞれ3967万1017円、1450万2000円とする所得税の更正処分を行い、原告に通知した。

       上記更正通知とともに、被告は原告に対し、重加算税498万4000円、過少申告加算税1万4000円の賦課決定を行い、原告に通知した。

     イ 原告は、被告に対し、法定申告期限までに、平成6年分の総所得金額を422万2957円、申告納税額を12万7900円として確定申告をしたところ、被告は、平成10年3月9日付けで、それぞれ9212万5757円、3888万9600円とする所得税の更正処分を行い、原告に通知した。

       上記更正通知とともに、被告は原告に対し、重加算税1352万4000円、過少申告加算税1万2000円の賦課決定を行い、原告に通知した。

     ウ 原告は、被告に対し、法定申告期限までに、平成7年分の総所得金額を439万6466円、申告納税額を11万9500円として確定申告をしたところ、被告は、平成10年3月9日付けで、それぞれ6043万5054円、2253万9600円とする所得税の更正処分を行い、原告に通知した。

       上記更正通知とともに、被告は原告に対し、重加算税781万2000円、過少申告加算税9000円の賦課決定を行い、原告に通知した。

     エ 上記アないしウの更正処分は、被告が、広島国税局調査査察部の職員による原告に対する所得税法違反嫌疑事件に関する調査(以下「本件査察調査」という。)に基づき、本件事業は原告及び乙の共同事業ではなく、原告の単独事業であると認定して行ったものである。

      (甲1、乙1ないし3、弁論の全趣旨)

    (3) 消費税の申告と更正処分等

     ア 原告は、被告に対し、法定申告期限までに、平成5年1月1日から同年12月31日までの期間の消費税課税標準額を1億2359万4000円、中間納付額及び確定申告による納付すべき税額の合計額を248万9100円として申告したところ、被告は、平成10年3月9日付けで、それぞれ3億0947万6000円、457万6500円とする更正処分を行い、原告に通知した。

       上記更正処分とともに、被告は原告に対し、重加算税72万8000円の賦課決定を行い、原告に通知した。

     イ 原告は、被告に対し、法定申告期限までに、平成6年1月1日から同年12月31日までの期間の消費税課税標準額を1億2141万1000円、中間納付額及び確定申告による納付すべき税額の合計額を246万0300円として申告したところ、被告は、平成10年3月9日付けで、それぞれ3億6077万1000円、602万0700円とする更正処分を行い、原告に通知した。

       上記更正処分とともに、被告は原告に対し、重加算税124万6000円の賦課決定を行い、原告に通知した。

     ウ 原告は、被告に対し、法定申告期限までに、平成7年1月1日から同年12月31日までの期間の消費税課税標準額を1億4863万1000円、中間納付額及び確定申告による納付すべき税額の合計額を343万8900円として申告したところ、被告は、平成10年3月9日付けで、それぞれ3億6030万1000円、384万8000円とする更正処分を行い、原告に通知した。

       上記更正処分とともに、被告は原告に対し、重加算税14万円の賦課決定を行い、原告に通知した。

    (4) 異議申立て

     ア 原告は、上記(2)(3)の各処分を不服として、平成10年5月7日に異議申立てをしたが、3月を経過しても異議決定がなされなかった。

     イ そのため、原告は、国税通則法75条5項により、平成11年6月28日に審査請求を行った。

       平成16年3月31日、国税不服審判所長は、審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をなし、同裁決の到達の日から起算して3か月以内に、処分取消訴訟が提起できるとの教示を行った。同裁決は同年4月9日原告に到達した。

      (甲1、2、弁論の全趣旨)

    (5) 刑事事件

      本件に関し、原告に対する平成6年分及び平成7年分に係る所得税法違反被告事件(当庁平成10年(わ)第586号)において、公訴提起段階の公訴事実では、原告の総所得金額は、平成6年分が6779万4357円、平成7年分が5223万5154円とされていた。これが後に訴因変更され、原告の総所得金額は、平成6年分が3757万5612円、平成7年分が2978万9123円とされた。同事件判決は、Aは原告と乙の共同事業であって、Aの事業に関する所得について、原告への帰属分はその2分の1を下回るものではないと認定した上で、Aとしての収入及び支出の各2分の1である、平成6年分が3757万5622円、平成7年分が2978万9131円が原告に帰属するものとして、原告の所得税のほ脱額を算定した。

      また、同判決は、① A有限会社及びB有限会社(以下それぞれ「A有限会社」、「B有限会社」という。)のC株式会社(以下「C」という。)への売上げはAの所得に含まれ、上記両有限会社は、宅急便等を利用して個人消費者に牡蠣を販売するために設立された会社として実体を有しているのであるから、両有限会社から支払われた役員報酬は原告の給与所得である、② 牡蠣むき身・殻付き牡蠣のDからの簿外仕入れについては、平成6年から平成7年までの仕入帳票類のうち、平成6年1月21日から同年11月7日までの間の仕入内容を記載した部分が欠落しているが、それ以外の部分は連続性があるものと認められ、平成7年分は簿外仕入れがなく、平成6年分の仕入金額は仕切書等に記載された額に2000万円を加えた額を超えることがない、③ 簿外の接待交際費の存在は認めることができない、との判断をしている。

     (甲3、78、79、弁論の全趣旨)。

    (6) 法令等の定め

     ア(ア) 所得税法の定め

        居住者に対して課する所得税の額は、① 所得を区分し、その所得毎に所得の金額を計算し、② ①の所得の金額を基礎として総所得金額を計算し、③ ②の金額から基礎控除その他の控除をして課税総所得金額を計算し、④ 課税総所得金額を基礎として、89条及び90条のの規定により所得税の額を計算し、⑤ 税額控除の規定により控除を受ける場合には、④の金額からその控除をした後の金額をもって所得税の額とする(21条1項)。

      (イ) 所得税基本通達の定め

        所得税法12条の適用上、資産から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者がだれであるかにより判定すべきであるが、それが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する(12-1)。事業から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その事業を経営していると認められる者(事業主)がだれであるかにより判定するものとする(12-2)。

        生計を一にしている親族間における事業(農業を除く。)の事業主がだれであるかの判定をする場合には、その事業の経営方針の決定につき支配的影響力を有すると認められる者が当該事業の事業主に該当するものと推定する(12-5)。

     イ 消費税法(平成6年法律第109号による改正前のもの。以下同じ)の定め

      (ア) 法律上資産の譲渡等を行ったとみられる者が単なる名義人であって、その資産の譲渡等に係る対価を享受せず、そのもの以外の者がその資産の譲渡等に係る対価を享受する場合には、当該資産の譲渡等は、当該対価を享受する者が行ったものとして、この法律の規定を適用する(13条)。

      (イ) 事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、課税標準額に対する消費税額から控除しない(30条7項)。

     ウ 国税通則法の定め

      (ア) 過少申告加算税

        期限内申告書が提出された場合において、更正があったときは、当該納税者に対し、その更正に基づき納付すべき税額(更正により増加する部分の税額)に百分の十の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。(国税通則法65条1項)。

      (イ) 重加算税

        過少申告加算税を課すべき場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠ぺいし、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠ぺいし、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額(過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額のうち、当該事実のみに基づいて更正があったものとした場合におけるその更正に基づき増加する部分の税額を控除した税額))に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する(同法68条1項、同法施行令28条1項)。

      (ウ) 端数計算

        国税(印紙税及び附帯税を除く。)の課税標準(その税率の適用上課税標準から控除する金額があるときは、これを控除した金額)を計算する場合において、その額に1000円未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨てる。国税の確定金額に100円未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨てる。

        附帯税の額を計算する場合において、その計算の基礎となる税額に1万円未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨てる。附帯税の確定金額に100円未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨てる。

       (同法118条1項・3項、119条1項・4項)

  2 争点

    本件各処分の適法性

    (1) 本件事業所得の帰属(本件事業は原告と乙の共同事業か否か。)

    (2) 本件事業所得の金額

     ア むき身牡蠣の簿外仕入れの存否及びその取扱い

     イ 接待交際費の金額

     ウ A有限会社及びB有限会社との取引関係の取扱い

  3 争点に関する当事者の主張

    (1) 本件事業における所得の帰属

     (被告の主張)

     ア 所得の帰属の判断基準

       所得税法12条は、「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合は、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する」と規定し、課税要件の一つである所得の帰属は、単なる名義・形式ではなく、実体・実質に基づいて判断すべき旨定めているところ、所得が何人の所得に帰するかは、何人が主として勤労したかの問題ではなく、何人の収支計算の下において行われたかの問題である(最判昭和33年7月29日)から、その判定は、収益活動の行為者、収益の管理や処分の行為者、収支活動に伴う各種経費の支払行為者、経費の支払資金の調達者等の要素を総合的に判断して行うべきである(水戸地判平成13年12月21日、乙7)。

     イ 本件所得の帰属

      (ア) 本件事業に係る確定申告手続について

        原告は、丙に対し、本件事業から得られた事業所得を原告及び乙の二人の名義に分けて確定申告するよう指示し、さらに丙が丁(Aの経理担当者)に指示して原告及び乙の収支内訳書を作成させた上で、丙が大柿町役場において確定申告書提出の手続を行っていた(乙11問答7、同問答12、乙14問答3、乙17問答2ないし3、同問答5、乙18問答1及び2)。

        これに対し、乙は、確定申告の手続から納税に至るまで全く手続に関与していないばかりか、自分名義の確定申告書が提出されていることすら認識しておらず(乙28問答15、乙29問答2、同問答7、乙17問答10)、確定申告書上の単なる名義人であったにすぎない。

      (イ) 本件事業における収益活動の主体について

        原告は、本件事業のうち、牡蠣養殖の現場作業に関する事項については乙と話し合って決定していたが、牡蠣の売上先、牡蠣むき身の仕入先の決定や取引先との単価交渉のほか、牡蠣筏の青田買い(他の業者が養殖した牡蠣を筏ごと仕入れること)、船舶の購入や設備新設の決定、従業員の採用及び賃金の決定、借入額の決定や当該借入れに係る金融機関等との交渉など事業資金調達の段取りといった、本件事業の運営方針の決定などの収益活動上の重要な行為はすべて独りで行っており(乙11問答13、乙23問答14、乙24問答3ないし7、9及び13、乙28問答19、乙37第2項)、本件事業についての収支計算を把握していた(乙14問答8、15問答2、乙25問答5)。また、原告は乙同様に現場作業にも従事していた(乙12問答4)が、原告の稼動状況は出面帳(乙38)に記載されていなかった。

        これに対し乙は、「沖の責任者」として、専ら現場作業に従事して(乙11問答13、乙17問答6、乙28問答5)、収益活動上の重要な行為に一切関与していなかった(乙17問答6、乙24問答3、乙28問答19)。乙は本件事業の収支計算に関する認識を有していなかった(乙28問答18)ばかりか、本件事業が個人事業かどうかも、自分がB有限会社の代表取締役となっていたことも認識していなかった(乙28問答4、6、13及び20)。また乙の稼動状況は出面帳に記録され、乙は他の男子従業員と同様に原告から給与及び賞与の支給を受け、その金額は、平成7年5月までは作業日数等に応じて計算され、平成7年6月以降は月額50万円の定額とされた(乙11問答12、乙19問答4、乙28問答6、乙34第8項、乙38、乙49・6ないし8頁)。

        以上によれば、本件事業の収益活動についてその主体となっていたのは原告である。

      (ウ) 本件事業に係る事業資金の調達について

        原告は、本件事業に必要な資金について、預金の残高等を考慮して投入可能な金額を判断し、借入れに係る金融機関等との交渉及び手続についても自ら行っていた(乙24問答9)。これに対し乙は、平成8年以前において、本件事業の資金調達に関わっていたことはない(乙28問答14、16)。(以上につき甲1・59ないし60頁、乙8の1ないし22、乙9・13頁、乙24問答7)

        以上によれば、本件事業にかかる事業資金の調達は原告が行っており、乙の主体的関与はない。

      (エ) 本件事業から得られた収益の管理及び処分について

        原告は、本件事業について定期的に一定額を報酬として得ていたわけではなく、生活費を本件事業資金から直接取得する(乙24問答8)など本件事業資金を思うがままに使用して遊興費等にも多額の金員を費消していた(乙22問答1ないし3、乙27問答2、4ないし7及び10、乙13問答15ないし18)ほか、現在の妻である戊に多額の資金援助をしていた(乙13問答15ないし18、乙30問答3、同問答6、乙31問答3、乙32問答5、乙33問答3及び4)。また原告は、本件事業より得られた利益を自らの預貯金として管理していた(乙9、10、13問答7、17問答8ないし9、28問答16、預貯金の状況につき乙41ないし43)。

        これに対し乙は、稼動実績等に応じた給料及び賞与を受け取っていた(乙24問答8、乙49・6ないし8頁)ほか本件事業資金から国民健康保険、年金等の掛け金の支払を受け(乙24問答10)、また毎月の小遣い3万ないし5万円を受け取っていた程度であって、原告が主張する本件事業の持分割合以下の金額しか得ていない。具体的に乙が支給を受けた給料及び賞与の額は、平成5年分が560万8750円、平成6年分が615万6500円、平成7年分が676万7250円であった(乙49・6ないし8頁)。

        本件各年分において現実に原告が費消したと認められる生活費は、乙が生活費として費消したと認められる金額に対して、平成5年分が約1.89倍、平成6年分が1.48倍、平成7年分が1.84倍にも及ぶものであって、原告及び乙の収益分配が持分割合に応じてなされた形跡はなく、本件査察調査においても、利益配分の約定書や利益配分の計算に必要な決算報告書など原告及び乙が本件事業から得られた収益を分配する取り決めをしていたことを示す書類の存在は認められなかった。

        このように、本件事業から得られた収益の管理及び処分については、原告と乙が相互に主体的に関与して行っていたのではなく、原告が単独で行っていたものである。

      (オ) 組合契約が存在しないこと

        原告ら兄弟には、本件事業にかかる資金を含めて、本件事業にかかる資産が私有財産から独立して混同を生じない組合財産を構成するという認識はなく、また規約等もなかった。また、組合員による出資は組合契約の成立要件であるところ、本件では出資にかかる具体的事実関係が何ら明らかにされていない。しかも、原告らには、組合契約の成立に必要な明示又は黙示の意思表示の合致がない。

     ウ 本件所得の帰属についての結論

       上記アイによれば、本件事業の収支計算は原告が単独で行っていたというべきであるから、本件事業に係る所得金額は、原告一人に帰属すべきものである。

     エ 原告の主張に対する反論

       原告と乙との法律関係は、雇用契約に、原告の乙に対する生活扶助的性格も併有する側面を有する法律関係である(乙17問答5、乙75・3項、甲9・25ないし26頁、民法877条)。

     オ 丙は、調査担当者であるEから誘導がなされたと供述するが、Eが丙を調べる以前から丙は本件事業は原告が経営するものであると供述しているし、丙は原告から財産分与又は慰謝料及び養育費の支払を十分には受けていなかったので原告の機嫌を損ねることを危惧する立場にあるところ、刑事事件の法廷での証言において傍らに居た原告の発言や態度によって供述を変遷させているとみられ、審理に当たった裁判官も同様の指摘をしている。

     (原告の主張)

      原告と乙の関係が組合契約であること

     ア 租税法律主義の下では、課税庁は、法律の根拠なしに当事者の選択した法形式を通常用いられる法形式に引き直し、それに対応する課税要件が充足されるものとして取り扱う権限を認められていない(東京高判平成11年6月21日)。

       原告と乙は、もともと、兄弟の父であるF(以下「F」という。)の下で牡蠣養殖業に従事していたところ、Fの死後、相続財産たる牡蠣養殖業関連の財産を、そのまま牡蠣養殖業に提供して出資し、原告は渉外を中心に、乙は海上作業を中心にそれぞれ労務を提供して牡蠣養殖業を行うとの暗黙の了解をした。かかる関係は民法上の組合契約に当たる。

       乙の給与からは源泉徴収が行われておらず、また乙には労災保険が掛けられていない(乙63)。乙について出面帳が付けられていたのはF生前からの慣行にすぎない(甲7・19頁)。また、原告及び乙は他の従業員と異なり、思うまま不定期に丙から本件事業資金から金員の交付を受けていた(甲7・22ないし24頁、甲9・51ないし53頁、甲8・84ないし85頁、同90頁、甲19・26頁)。これは原告と乙が、両者の契約関係を雇用契約ではなく組合契約と考えていたためである。原告の生活費は月額40万~50万円程度であって(甲9・60頁)、乙とほぼ同額である。また、原告ら兄弟の預貯金は、本件事業の事業資金としてプールされていたものであって、原告と乙の双方に帰属するものである。

       また乙は、借入れの際には最低限連帯保証人、時には債務者になっており、この点からも乙は単なる従業員とは異なる(甲4・22ないし23頁、甲6・32頁、同46ないし47頁、甲32ないし35、乙8の2・3・23・25ないし28)。

       組合契約においては、内部の役割分担は当事者が自由にこれを定めることができるのであるから、能力及び性格に応じて原告と乙が分担した役割をもって、本件事業の主体が原告のみであったということはできない。かえって、本件事業の基本となる仕事は、より良い牡蠣を養殖し生産することであって、この点において乙は充分にその責任を果たしているから、本件事業についての重要事項を原告が独りで行っているとはいえない。

     イ 刑事事件における証言ではっきりと証言しているように、丙は税務署や国税査察調査の段階では、原告に対する夫婦間のいざこざから私情が交じり虚偽を供述している面も多々あるし、様々な感情のもつれや、丙自身の責任への波及への恐怖心(丙も刑事立件された。)などから、真意に沿わない問答書の作成に応じていて、この過程で、国税査察官により、不正な誘導等が行われたようである。また、刑事事件の中で、本件査察調査の責任者であるE税務官は乙とは一度も話をしたことがないし、乙は、刑事事件における証言内容をみれば顕著なように、あまり知的水準が高くなく、コミュニケーション能力に劣る面がある。そして、証人尋問の内容は、公判廷で宣誓の下、裁判官の面前で、反対尋問による弾劾機会付与の中で行われたものであり、その信用性は非常に高いのに反して、課税庁や査察官による調査と評価は一方的かつ片面的なもので、査察官が乙や丙の意思に反し、一方的かつ強圧的に同人らの意思に沿わない問答書面等の調書を作成しているものであり、検察官が共同事業を認定した訴因変更を余儀なくされたことからも明らかなように、問答書面等の調書の信用性については疑問を差し挟むべきである。

    (2) 本件事業所得の金額

     (被告の主張)

     ア 被告が主張する本件各年分の原告の事業所得の金額は、別紙1(32)欄に記載した各金額である。

     イ 原告の主張に対する反論

      (ア) 牡蠣むき身の仕入金額について

        本件各年分の牡蠣むき身の仕入金額は、原告が提示した仕切り書等に基づいて算定した金額である(乙47)。牡蠣養殖販売業を営む原告が、牡蠣のむき身を不特定多数の者から仕入れることなどないであろうから、原告に被告主張以上の仕入れが存在するのであれば、客観的資料に基づく立証が容易にできるはずである。その立証をしないときは、かかる仕入れは(特に平成6年1月21日から同年11月7日までの間の仕入れも含めて)事実上存在しないものとの推定が働くものといわなければならない。なお、原告は、売上数量から打子作業数量に換算率を乗じて算定した換算数量を控除して本件事業に係るむき身牡蠣の簿外仕入数量を推計している(甲69)が、その換算率は根拠が薄弱であり、一応の合理性も有していない。

      (イ) 接待交際費について

        本件各年分の接待交際費は、原告が提示した経費帳等に基づいて算定した金額である。接待交際費は事業者の事業規模、取引先の数等から社会通念上相当と認められる範囲、金額については領収書等の客観的資料が存しなくともこれを必要経費と認めることができるが、右範囲、金額を超えるものについては、事業者において客観的資料に基づき支出が現実になされたこと及び事業遂行上必要であったことを立証する必要がある(大阪地判昭和60年12月20日・税務訴訟資料164号547頁)。

        原告は、本件各年分合計で4500万ないし6000万円の金員を接待交際費として丙から受け取り、そのうち被告が主張する接待交際費の額(1057万5403円)以下の金額しか使途が明らかにできなかったのであるから、少なくともその差額である3442万4597円ないし4942万4597円の使途不明金が存在するというほかなく、本件各年分において原告が多額の金員を出金して自由に費消していた事実を原告自身が認めるものということになる。

      (ウ) A有限会社及びB有限会社のCに対する売上金について

        被告は、A有限会社及びB有限会社の売上げのうち、Cに対する売上げのみを、原告(A)の売上げであると認定した。これは、両有限会社について、Aの売上げを両有限会社の売上げにつけかえ、更に両有限会社の年間の総売上金額が3000万円以下になるようにすることによって消費税の課税事業者にならないようにする、という会計処理がなされていた(乙11問答11、乙20問答1ないし6、乙21問答1ないし5、乙35第3・4項、乙36第6ないし9項)ためである。

        被告は、両有限会社の法人格を否認したものではなく、両有限会社が実際営んでいる宅配便による牡蠣の小売りの売上げまで原告の売上げであると認定したものではないし、両有限会社との間の委任契約に基づき現実に支払われた役員報酬を原告の給与所得として認定し、また両有限会社の経費を原告の経費として認定しないことは、何ら問題がない。

     (原告の主張)

     ア 牡蠣むき身の仕入金額について

       平成6年1月21日から同年11月7日までの間のDからの仕入内容を記載した部分は廃棄等により仕切り書等から欠落しており、この点を考慮しないで行われた本件更正処分は違法である。この点、刑事判決は、「平成7年分の牡蠣むき身の仕入金額は、前記仕入帳票類に記載された額であり、・・・平成6年分のAの牡蠣むき身の仕入金額は前記仕切り書等に記載された額に2000万円を加えた額を超えることはない」と認定し、平成6年分につき2000万円の簿外仕入れを認めている(検察官の訴因自体が2000万円の簿外仕入れを認めている。)。

       丙は、刑事裁判において、牡蠣の仕入れについてはきちんと記帳しておらず、仕切り書もすべてが現存しているわけではないが、Dからの仕入れは年間4000万円から5000万円程度であった(甲9・81ないし82頁、甲10・5頁、甲11・2冊目・44頁)と供述しており、Dからの仕入額が年間4000万円となるように、簿外仕入れの金額を追加して認定すべきであり、その金額は、平成5年分が2861万5410円、平成6年分が2707万3243円、平成7年分が647万0957円となる。丙は、G家出身であり、簿外仕入れを供述することでDが多額の修正申告をなさざるを得なくなるなど不利な立場にあるのに、あえてDからの簿外仕入れを供述する点につき、その信用性は高いというべきである。

     イ 接待交際費について

       原告は、取引先の接待等、本件事業の売上げと関連性を持つ接待交際費を少なくとも月100万円は使用していたから、平成5年分から平成7年分まで、年間の接待交際費が1200万円になるように、簿外の接待交際費を追加して認定すべきであり、その金額は、平成5年分が951万1827円、平成6年分が959万0051円、平成7年分が632万2719円となる。本件事業の売上金額は、被告の主張する金額を前提にすれば年額で3億円から4億円に及んでいるのであって、年額1200万円の接待交際費は対売上金比率で3ないし4パーセント弱に過ぎず、実際に計上されているのが売上げの1ないし1.5パーセント程度にすぎないこともあわせれば、事業規模に比べ非常識なほど高額とはいうことができない。

     ウ A有限会社及びB有限会社のCに対する売上金について

       A有限会社及びB有限会社は法人としての実体を有しているので、その法人格を否認して売上げを原告の所得に加算するのは不当である。仮にこの売上げを原告の売上げとして評価するのであれば、両有限会社に生じた経費も原告の経費と評価すべきであるし、原告が両有限会社から得た給与所得である平成5年分183万7000円、平成6年分185万3800円、平成7年分183万8800円は発生していないことになるはずである。

    (3) その他

     (被告の主張)

      消費税法30条7項により、簿外のむき身牡蠣の仕入額、接待交際費、平成7年分の殻付き牡蠣・牡蠣筏の仕入金額については、法定の帳簿類の保存がなされていない限り、原告は課税仕入れ等の控除を受けることはできない。

第3 当裁判所の判断

  1 証拠(甲1、3ないし26、31、32、38ないし41、42、44、46、49、51、52、55、57、60、61、63、64ないし77、80ないし82、乙1ないし6、9ないし14、17、19ないし21、23ないし29、34ないし85、証人丙、同乙、同戊、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

    (1) Aの経営における原告と乙の役割に関する状況

     ア Fの死亡前後の経緯

      (ア) 元漁師であったFの生前、Aは四十数年前からFの事業として営まれており、経理・出納はFが担当し、中学卒業後家業を手伝うようになった原告が仕入れ・販売等の交渉など、営業全般に従事するほか、繁忙期には養殖の現場作業も行い、同様に中学卒業後家業に従事した乙は営業にほとんど関与することなく、牡蠣揚げ、種付け、沖吊り、筏移動、船・筏の保全修理など養殖の現場作業を指揮していた。

        Fの生前、Aの事業に関することは、原告及び乙に相談した上でFが決めており、原告及び乙は月々の生活費をFからもらっていた。

      (イ) Fは、生前、自分がAの事業に従事できなくなった後のことを乙と相談していた。自分独りで事業を継続することはできないと考えた乙は、原告とともにAの事業を継ぐことにし、その旨Fに話して了解を得た。Fは、その後入院した際、所有する財産の権利証等を原告に渡した。

      (ウ) 昭和58年8月14日、Fは死亡した。その遺書は要旨以下のとおりであった。

        Aの財産のすべては、自分個人のためには絶対に利用しないこと、誰の名義となってもAのものである。最後までAを守った者が、これを自由にする権利がある。乙、甲へ、例え財産権のすべてをお前達に譲るとしても、兄弟に困った者がいれば助け合い、みんなで幸せな人生を送るように。原告は、乙とその長男であるHを幸せにしてやってほしい。乙とHの幸せは原告の双肩にかかっていることを忘れるな。乙は、素直に真面目に働くところが良いところなので、余計なことを言わないように、兄が弟の言うことを守って従うというのは無理だろうが、どうか仲良く幸せに一生を送るように。

      (エ) Fの相続に当たり、原告と乙は家業であるAを共同で営むことと決め、Fの本件事業関係の財産についても二人で共同で相続し、それを独自に処分・利用することをせず、Fの生前と同様にそのまま本件事業(牡蠣養殖販売業)に無償で提供することに決めた。原告には男兄弟としては、乙のほかに兄のIがいるが、IはFの生前から家を出ていてAでは働いておらず、Fから家と土地を生前贈与されていたため、本件事業に関連する財産は相続せず、Iは原告から不動産の贈与を受けることでこの相続に同意し、二人の女の兄弟も了承した。

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